2026年施行「改正労働施策総合推進法」大改正!カスハラ・就活セクハラ防止の義務化で企業が今すぐ準備すべきこと

2026年は、前年に成立した労働施策総合推進法が施行される予定です。今回は大きく4つの改正が行われ、中にはほぼすべての事業主が影響を受けるポイントもあります。法律は4月ならびに10月の2段階に分けて施行される予定であるため、早めの対応が必要になるでしょう。

この記事では、改正労働施策総合推進法について、主な改正ポイントや企業が対応すべき点などについて紹介します。

1. 2026年施行の改正労働施策総合推進法とは?3つの主要改正ポイント

2026年は4月と10月の2つの時期に分けて、労働施策総合推進法の改正が行われる予定です。ここでは、同法の主要改正ポイントや違反時の罰則などについて紹介します。

2025年6月11日公布、2026年4月と10月に段階的施行

さまざまな労働者が活躍できる社会を目指す労働施策総合推進法は、2020年に施行された法律です。施行から5年が経過した2025年に社会の変化などに応じた改正が実施されました。

規定により法律は公布から1年6ヶ月以内に施行される必要があるため、同年6月11日に公布された改正労働施策総合推進法の施行は2026年10月頃の見込みです。

なお、以下の一部規定については同年4月に施行されます。

・治療と仕事の両立支援の努力義務化
・女性活躍推進法の有効期限10年延長
・101人以上の従業員がいる企業に対し、男女間賃金差異・女性管理職比率の情報公表義務化

ハラスメント対策の強化と女性活躍推進が2本柱

今回の改正の主な目的は、ハラスメント対策の強化と女性活躍の推進です。改正労働施策総合推進法に規定されているハラスメント(嫌がらせ)は幅広く、職場における上下関係を背景とするいわゆるパワハラや異性間・同性間のセクハラに加えて、労働者に対する顧客からの嫌がらせ(カスハラ)を防止する内容も盛り込まれています。

また、女性活躍の推進については、2016年4月に10年の期限付きで施行された女性活躍推進法を延長するだけではありません。女性管理職比率や男女間の賃金格差の公表義務付けの対象を301人以上の従業員がいる企業から従業員数101人以上の企業へ拡大します。

対象を小規模な企業にも広げることで女性が活躍しやすい組織づくりがこれまで以上に促進されるでしょう。

中小企業を含む全事業主が対応必須、違反時の行政指導・勧告・公表のリスク

2025年の法改正により事業主に対して、労働者をカスハラから守る対策が義務付けされました。一部、努力義務とされている項目もありますが、基本的には中小企業を含む全事業主による対応が必要です。

事業主の義務とされている内容は多岐にわたり、カスハラが発生したときに速やかに対処するだけでなく、実際に問題が起きる前にあらかじめ企業としての対応方針を策定するといった項目も含まれます。詳細は次の項目で解説します。

なお、対応を怠り、同法違反とされる場合には行政指導や勧告、企業名の公表などの行政上の処置を科せられる可能性があるため注意が必要です。

2. カスハラ防止措置義務化(2026年10月施行予定)の実務対応

労働施策総合推進法の改正により新たに対応が必要になる項目の一つがカスハラ(カスタマーハラスメント)対策です。社会全体でカスハラへの問題意識が高まる中で、現場で働く労働者を守るための措置を企業に義務付ける内容です。

ここでは企業として対応すべきポイントなどを紹介します。

カスタマーハラスメントの定義と3つの要素

カスハラとは、顧客などから労働者に対して行われる著しい迷惑行為のことです。具体的には商品・サービスに対する過剰な要求や不当な言いがかりをつけること、暴言を吐いたり威圧的な行動を取ったりすることなどがカスハラに該当します。

以下は、カスハラを構成する3つの要素です。

・職場において行われる、顧客や施設利用者など事業の関係者の言動である
・業務の性質などの事情に照らしてみても社会通念上許容される範囲を超えている
・労働者の就業環境を害している

商品やサービスの問題に対してクレームを言うことが必ずしもカスハラとされるわけではありません。しかし、土下座を要求したり金銭による補償を求めたりする行為は、カスハラとされる可能性が高いでしょう。

事業主が講ずべき雇用管理上の措置、基本方針の策定と相談窓口の設置

法改正により、カスハラ対策として事業主には以下の3点が義務付けられます。

対策項目 実施内容
雇用管理上の措置 従業員をカスハラから守る方針を明確化する
基本方針の策定 職場でカスハラが発生した際の対処方法を策定する
相談窓口の設置 カスハラまたは判断に迷う事態が起きた際に相談できる窓口を設置する

また、事業主が策定した対応方針や相談窓口へのアクセス方法などはマニュアル作成や研修を通じて従業員に周知する必要があります。

カスハラ対応マニュアルの作成と従業員への研修実施のポイント

カスハラから従業員を守るには、職場でトラブルが起きた際に従業員が上司などの監督者へ報告・相談できる環境を作り、速やかに適切な対応を取ることが大切です。カスハラ対応マニュアルは組織としてカスハラに対して一貫性のある対応を取るためにも必要だといえます。

マニュアルにはたとえば以下のような内容を含めるとよいでしょう。

・カスハラに該当するトラブル発生時には速やかに管理監督者へ報告する
・顧客などに対し、労働者が1人で対応する状況を避ける
・暴行や傷害など犯罪行為といえる言動があれば警察へ連絡する
・現場で対応できない事態は本社へ報告し、対応を検討する

それぞれの職場に合った内容のマニュアルを作成しましょう。

また、マニュアルが効果的に活用されるために従業員への研修実施も必要です。研修ではカスハラに該当する事例や適切な対処方法、相談窓口などを紹介しましょう。

3. 就活セクハラ対策義務化と治療と仕事の両立支援努力義務化

カスハラ同様、ハラスメント対策として求職者などに対するセクハラ、いわゆる就活セクハラへの対策も義務化されます。また、多様な労働者が働きやすい環境を整えるため、闘病中の従業員が治療と仕事を両立できるよう支援することも法改正により企業の努力義務となりました。

ここでは、2つの企業の義務について、詳しい内容や対応方法などを紹介します。

求職者等に対するセクハラ防止措置義務化(2026年10月施行予定)と採用面接での注意点

改正労働施策総合推進法では、就活中の学生や内定者、インターンシップ参加者などに対するセクハラを防止する措置が義務化されます。これまで企業のセクハラ対策は、従業員が対象でした。

2026年10月施行予定の改正法では、就職を希望し採用活動の段階にある人へのセクハラを予防することも企業の義務となります。

企業が講じるべき措置について、改正男女雇用機会均等法にて指針が示されています。基本的にはカスハラ対策と同様にセクハラ防止方針の明確化や従業員への周知・研修の実施などが求められるでしょう。

治療と仕事の両立支援の努力義務化(2026年4月1日施行)で求められる制度整備

法改正で盛り込まれた項目のうち、治療と仕事の両立支援の努力義務化については2026年4月1日に施行される予定です。高齢になっても働く人が増えたことなどを背景に、病気の治療中の従業員が仕事を続けやすい環境を整えることが企業の努力義務となります。

従業員に必要な支援は病状など一人ひとりの状況によって異なるため、主治医や産業医とも連携しながら対応することが必要になるでしょう。

柔軟な勤務制度の導入例、時短勤務・時差出勤・休暇制度の弾力化

治療と仕事の両立支援のため、企業にできる対応の一つが柔軟な勤務制度の導入です。時短勤務は通院や体力の問題で長時間の勤務が難しい従業員も働きやすくなる制度です。

また、勤務時間中に通院が必要になる従業員には時差出勤を認める方法もあります。1日や半日単位ではなく、1時間単位で取得できる休暇制度などを導入するのも方法の一つです。

闘病だけでなく育児や介護などさまざまな事情を抱えながら働く労働者は少なくありません。これらの柔軟な勤務制度の導入は企業としての魅力を高めることにつながる可能性もあります。

4. 女性活躍推進法改正と企業が今すぐ取るべき準備対応

改正労働施策総合推進法には、2026年に有効期限を迎える女性活躍推進法の改正ならびに延長も含まれています。改正によりこれまで301人以上の従業員が対象となっていた情報公表義務が101人以上の従業員がいる企業へ拡大されます。

また、プラチナえるぼしの要件も変更になるため該当する企業は対応が必要です。ここでは、法改正に伴い企業が取るべき対応を紹介します。

101人以上企業の男女間賃金差異・女性管理職比率の情報公表義務化(2026年4月1日施行)

2026年4月1日より101人以上の従業員がいる企業は男女間賃金差異ならびに女性管理職比率の公表が義務付けられます。期日までにデータをまとめ、公表準備を進めておきましょう。

なお、法律上は数値の公表だけでよいとされていますが、データを見た求職者などの外部の関係者、在籍中の従業員などから問い合わせが寄せられる可能性もあります。数値の根拠や理由、今後の見通しなどについて回答できるようにしておくとよいでしょう。

プラチナえるぼし認定の要件追加と女性活躍推進法の有効期限10年延長

2016年4月に10年の期限付きで制定された女性活躍推進法は、改正労働施策総合推進法により有効期限が2026年3月末から10年延長されました。有効期限延長に伴い、えるぼし認定制度なども続けられることになります。

えるぼしとは女性の管理職比率などいくつかの基準を満たす企業を女性が働きやすい企業(えるぼし)として認定する制度です。えるぼしには1~3の3段階があり、さらにえるぼしの認定基準値より高い基準をも上回る企業はプラチナえるぼしに認定されます。

法改正に伴い、プラチナえるぼしの認定要件の一つに求職者などに対するセクハラ防止措置の内容を公表していることが追加されます。

101人以上の企業に「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」の公表を義務化

改正後の女性活躍推進法では従業員101人以上の企業に対し、以下の2つの項目について情報の公表が義務付けられています。

・男女間賃金差異(男女の賃金格差)
・女性管理職比率

これまで「男女間賃金差異の公表義務」は 301人以上の企業のみでしたが、101人以上へ対象が拡大されました。「女性管理職比率」は、改正で101人以上の企業に新たに義務付けられます。なお、従業員100人以下の企業は努力義務です。

まとめ

改正労働施策総合推進法ではカスハラならびに就職セクハラ防止措置の策定、女性活躍推進、治療と仕事の両立支援が主な改正点です。特にカスハラ対策は企業の規模に関わらず、ほぼすべての企業が対象となるため対応を急ぐ必要があるでしょう。

また、101人以上の従業員がいる企業は女性活躍の状況についての情報公開が義務化されます。法改正のタイミングに注意しながら、早めに必要な対応を進めましょう。

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