時短勤務でも手取りを守る!育児時短就業給付金の対象者・支給額・申請方法・注意点を解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

育児と仕事を両立させるため、時短勤務を選ぶ人は少なくありません。しかし、時短勤務はフルタイム勤務に比べると収入が減少してしまうため、2025年4月より育児時短就業給付金制度が開始されました。

この記事では、育児時短就業給付金について、概要や対象者、申請手続きの流れなどを解説します。また併せて手続きしておきたい育児休業等終了時報酬月額変更届についても紹介します。

1. 育児時短就業給付金とは何か?制度の基本を理解する

2歳未満の子どもを育てながら働いている人は、育児時短就業給付金を受給できる可能性があります。ここでは、制度の概要や創設の背景などについて紹介します。

2025年4月に新設された時短勤務者向けの給付制度

育児時短就業給付金とは、育児のために時短で働く人を対象に新設された給付制度です。制度は2025年4月に開始されました。

対象は2歳未満の子どもを育てる人のうち、以下のどちらかの条件を満たす人です。

・育児休業から引き続き時短就業を開始した人(育児休業から時短勤務で復帰した人)
・時短勤務を始める前の2年間のうち雇用保険の被保険者期間が12か月以上ある人

育児休業給付金との違いと制度創設の背景

育児休業給付金とは、原則1歳未満の子どもを育てるために休業する人に対し、賃金の67%または50%を給付する制度です。育児休業給付金の支給対象期間は原則として子どもが1歳になる前日までです。ただし、子どもの預け先が見つからないなどの一定の事情がある場合に限り、2歳まで延長できます。

一方、育児時短就業給付金は子どもを育てながら働いている人が対象である点が、育児休業給付金との違いです。育児時短就業給付金の制度が創設された背景には、生活支援と労働力確保の2点があります。

育児時短就業給付金には育休中の収入減少を補てんし、労働者の生活を安定させる役割があります。時短勤務は休業ではないものの、フルタイム勤務者と比べると働く時間が短くなる分だけ労働者の収入が減ることが多いため、減少分を補うのが育児時短就業給付金が創設された理由です。

また、以前より減少したとはいえ、妊娠・出産をきっかけに退職してしまう女性はまだいます。育児時短就業給付金の導入により、時短勤務の形で職場に復帰したり、就職したりしやすくすることも目的の一つです。

支給対象期間は2歳未満まで、給付率は賃金の10%

育児時短就業給付金の支給対象期間は、子どもが2歳になる前日までです。また、給付率は時短勤務で受け取っている賃金の10%が目安となります。

ただし、時短勤務を始める前(フルタイム勤務時)と時短勤務時の賃金の差が10%未満である場合や、1か月の賃金と給付額の合計が上限額(2026年7月末までは47万1,393円)を超える場合は給付率が10%未満となることもあります。

以下は支給額の例です。

【ケース1】支給額が賃金の10%となる場合

フルタイム勤務時の賃金(20万円)、時短勤務時の賃金(18万円)
18 × 10% = 1.8 支給額1.8万円

【ケース2】支給額が賃金の10%未満となる場合

フルタイム勤務時の賃金(36万円)、時短勤務時の賃金(33万円)
33 × 10% = 3.3
(33 + 3.3) – 36万 = 0.3 支給額3,000円

【ケース3】支給額が上限額によって調整される場合

フルタイム勤務時の賃金(50万円)、時短勤務時の賃金(45万円)
45 × 10% = 4.5
45 + 4.5 =49.5万円は上限額 47万1,393円を上回るため、支給額は以下の通り計算できる
47万1,393 – 45 = 2万1,393  支給額 2万1,393円

2. 誰がもらえる?受給資格と支給要件を詳しく解説

育児時短就業は2025年に開始された比較的新しい制度です。ここでは、給付金の受給資格や支給要件について詳しく解説します。自社に対象となる従業員がいるか確認する際に参考にしてください。

2歳未満の子を養育する雇用保険被保険者が対象

育児時短就業給付金は、雇用保険から支払われる給付金であるため、雇用保険の被保険者が対象です。また2歳未満の子どもを育てるため、時短で就業していることが条件です。ただし、公務員は制度の対象外となります。

なお、育児時短就業給付金が支給されるのは月単位となるため、受給資格があるのは子どもの2歳の誕生日の前日が属する月までです。2歳の誕生日を迎えるまでではないことに注意しましょう。また、月途中で離職したり時短からフルタイム勤務になったりしたときも受給資格を失います。

時短勤務しているかは、1週間当たりの労働時間と所定労働時間の差で判断されます。1週間あたりの労働時間が所定労働時間を下回っていれば、シフト制や変形労働時間制などの働き方でも対象です。

育休から引き続き時短勤務または被保険者期間12か月以上

給付金を受給するには、育休から時短勤務で復帰していること、または時短勤務を始める前の2年間のうち雇用保険に加入していた期間が12か月以上あることが条件です。

雇用保険の被保険者となる目安は、1か月のうち賃金の支払いを受けた日数が11日以上、または1カ月の労働時間が80時間以上です。1週間の労働時間が20時間未満の人は、雇用保険の被保険者資格がないことが多いため、資格の有無を確認する必要があります。

支給されない5つのケースと注意すべきポイント

育児のため時短勤務していても育児時短就業給付金が受け取れないこともあります。ここでは主な5つのケースを紹介します。

・月の途中で退職した
・転職先の週所定労働時間が20時間未満
・時短勤務中の賃金額が時短勤務する前の賃金月額を超えている
・賃金額が支給限度額以上(2026年7月末まで47万1,393円)
・支給額が最低限度額以下であるとき(2026年7月末まで2,411円)

給付金は月単位で支給されるため、月途中で退職するとその月は受給できません。また、週の所定労働時間20時間未満の労働者は原則として雇用保険の被保険者とならないため、受給を失います。

また、給付金には時短就業による賃金額(上限額)や支給額(最低限度額)の制限があることにも注意しましょう。

3. 申請手続きの流れと必要書類を完全ガイド

育児時短就業給付金は、比較的簡便な手続きで受給できるよう工夫されています。ここでは、初回ならびに2回目以降の申請手続きの流れや必要書類について紹介します。

初回申請で必要な3つの書類と提出期限

育児時短就業給付金を初めて申請する際の必要書類は、以下の通りです。初回申請手続きの期限である、最初の支給対象月の初日から4か月以内に提出しましょう。

・育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)育児時短就業給付金支給申請書
・所定労働時間短縮開始時賃金証明書
・休業開始時賃金月額証明書

時短勤務開始前・時短勤務中の勤務時間や賃金を確認できる書類、育児の事実がわかる書類を求められることもあります。その際は賃金台帳や雇用契約書、母子健康手帳などを添付書類として提出するとよいでしょう。また、時短勤務により1週間の所定労働時間が20時間未満となる人は、子どもが小学校に入学するまでに所定労働時間が20時間以上となることが確認できる書類(労働条件通知書や就業規則など)も必要です。

なお、育児休業から復帰し、時短勤務する人は育児休業給付金受給時に一部書類をすでに提出しているため、「育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)育児時短就業給付金支給申請書」のみ提出すればよいケースもあります。

2回目以降の申請は2か月ごと、期限は4か月以内

2回目以降の申請は簡略化されており、必要書類は育児時短就業給付金支給申請書ならびに賃金の支払い状況や金額のわかる添付書類のみとなります。2か月ごとにハローワークへ必要書類を提出しましょう。申請期限は4か月以内です。

2025年4月より前から時短勤務していた人の経過措置

育児時短就業給付金が開始された2025年4月より前から時短勤務していた人も、受給資格を満たしていれば制度の対象となります。ただし、給付が受けられるのは2025年4月分からとなり、それ以前に遡っての受給はできません。

4. セットで申請すべき育児休業等終了時報酬月額変更届

実は、育児時短就業給付金のほかにも、育休から復帰した従業員の経済的負担を減らす制度があります。ただし、労働者本人からの申請をもとに事業主が申請する仕組みのため、活用していない従業員もいるかもしれません。

ここでは、セットで申請したい2つの制度について紹介します。

時短勤務開始後の社会保険料を実態に合わせて減額する仕組み

健康保険料や厚生年金保険料は、一人ひとりの給与額をもとに計算される仕組みです。社会保険料算出の根拠となる数字(平均給与額)を標準報酬月額と呼びます。

原則として標準報酬額は、年に1回しか見直しされないため、育休から復帰するタイミングによっては育休前と同じ割合の社会保険料が給与から天引きされ、手取りがかなり少なくなったように見えることがあります。時短勤務を始めて賃金が下がる人は、育児休業等終了時報酬月額変更届を提出しましょう。

変更届を提出すると、復帰後3か月の賃金月額をもとに標準報酬額が決定されるため、社会保険料負担を抑えられる可能性があります。

なお、変更届は労働者本人からの申請により事業主が提出する書類です。

養育期間標準報酬月額特例で将来の年金額を維持できる

標準報酬月額は厚生年金保険料だけでなく、将来の年金額の算定にも使われているため、育児休業等終了時報酬月額変更届を提出することで受け取れる年金額が減る可能性があります。気になる人は厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例申出書も提出するとよいでしょう。

特例申出書を提出すると将来の年金額を維持したまま、支払う年金保険料だけ時短勤務中の賃金額に合わせることが可能です。この特例申出書も労働者本人からの申請がなければ提出されない書類です。

育児時短就業給付金と同時申請で取りこぼしゼロへ

標準報酬月額を見直す変更届も、厚生年金の特例申出書も、時短勤務する人本人の申請がなければ提出できない書類です。しかし、実際には制度を知らない従業員は多いと考えられるため、人事部などの担当部署から紹介するとよいでしょう。

取りこぼしをなくすため、育児時短就業給付金の申請と並行して社会保険料の手続きも行うのがおすすめです。

まとめ

育児時短就業給付金は、小さな子どもを育てるために時短勤務している人の経済的負担を減らすための制度です。現在でも出産・育児をきっかけに離職する人は少なくないため、制度を利用して時短勤務で復帰する人が増えれば労働力確保にも役立つと期待されています。

また、育児時短就業給付金以外にも時短勤務者の負担を軽減する制度があります。制度を知らない従業員もいると考えられるため、企業からも情報提供し、制度の活用を促すとよいでしょう。

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