拡大する日本の対中国防衛体制と2026年度防衛予算9兆円超の防衛戦略全容を解説

周辺国の緊張の高まりを背景に、日本の2026年度防衛予算は過去最大規模となりました。その多くは東シナ海や尖閣諸島付近で活発な動きを見せる対中国防衛政策に使われる見通しです。
この記事では、日本の防衛政策について、特に中国との関係が重視されている背景や防衛予算の増加により予定されている装備強化、南西諸島への自衛隊配備の進捗状況、日米同盟の現状と今後の課題などについて紹介します。
1. なぜ今、対中国防衛政策が重要なのか
昨今の政府要人による安全保障方針への言及を受け緊張が高まったことで、中国との関係が気になる方は多いでしょう。日本の防衛予算の多くは、周辺国の一つである中国に対する防衛政策のために使われます。ここでは、近年特に対中国防衛政策が重要視されている背景について紹介します。
中国の軍事費が過去最大規模に拡大している背景
2025年3月に開催された全人代において、中国の2025年度の防衛費が公表されました。前年度と比較して7.2%増え、過去最大の規模です。中国の軍事費が近年、毎年増加を続けている理由としては、国の経済規模を表すGDPが拡大していることに加えて、2015年から習近平国家主席が主導している軍民融合という考え方が挙げられます。
軍民融合とは平時から民間資源を軍事利用したり、軍事技術を民間転用したりすることで国力を増大させる考え方です。この考え方は、特に宇宙や海洋、AIなどの領域で成果を上げているとされています。
東シナ海と尖閣諸島周辺での中国の活動が常態化
尖閣諸島のある東シナ海では、中国の船舶による日本の領海への侵入行為などの活動が常態化しています。日本の領海のすぐ外側に位置する接続海域を中国籍の船舶が航行することは、毎日のように行われているうえ、2025年12月には2,000隻もの中国漁船が東シナ海の中国側海域に集結するという不審な行為が見られました。
中国側のこうした活動の背景には、漁船を民兵のように大量動員する体制が整ったことをアピールする目的があると考えられます。また、毎日のように日本領海のすぐ近くを航行することで中国が東シナ海を実行支配していると国際社会に印象付けることも狙っているといえるでしょう。
高市首相の台湾有事発言で日中関係が一気に緊張
2025年11月、「台湾有事の際、米軍を支援することがあれば存立危機事態といえる」との高市首相の発言がきっかけで日中関係は、一気に緊張しました。中国は、台湾が自国の一部であるという「一つの中国」を主張しているため、高市首相が中国の台湾への武力侵攻の可能性に言及したことを内政干渉だと強く反発しています。
中国政府は、報復として自国民へ日本への渡航自粛を呼びかけ、飛行機やホテルの予約にキャンセルが多く発生しました。また、再開したばかりの日本の海産物輸入がストップしたり、さまざまな日本のエンターテインメント作品の中国公開が中止されたりといった影響が出ています。
2. 日本の防衛予算と装備強化で何が変わるのか
日本の2026年度防衛予算は、過去最大規模を見込んでいます。用途は主にミサイルやドローン、レーダーなどの装備強化に使われる予定です。
ここでは、防衛予算の拡大が必要な理由や装備強化の詳細ならびに目的などについて紹介します。
2026年度防衛予算は過去最大の9兆円超を計上
2025年12月に閣議決定された2026年度防衛予算は、過去最大の9兆円超となる見込みです。中国を含む周辺諸国の情勢が緊迫化する一方、少子高齢化などにより自衛隊は人手不足の状態にあります。政府は防衛予算拡大により、特に無人兵器を中心とする装備を強化する考えです。
防衛力抜本的強化の進捗と予算|防衛省
スタンドオフミサイルと無人兵器で多層防衛体制を構築
憲法にもある通り専守防衛の理念に基づき、自衛隊の装備は防衛的な性格のものに限定されるため、予算増によって強化される装備は、防衛に必要なものが中心となります。中でも重点的に強化されるのがスタンド・オフ防衛機能を持つミサイルです。たとえば、トマホークは1600km以上の長距離から低空飛行し、障害物を避けながら目標を攻撃できる精密誘導巡航ミサイルです。
近年、北朝鮮が頻繁に長距離ミサイルの発射実験を行っています。このような空からの脅威に対しては、スタンドオフミサイルが有効といえるでしょう。また、沿岸部の警備強化のためには陸上・空中・水中に対応したドローンを配備し、無人兵器による多層防衛体制を構築する考えです。
次世代戦闘機と宇宙・サイバー領域での防衛力を強化
政府は防衛予算のうち、1600億円以上を2035年配備を目指してイギリス・イタリアと共同開発する次世代戦闘機の開発に投じるとしています。
また、科学技術の進歩により、日本は宇宙やサイバー領域においても他国からの脅威にさらされているのです。たとえば、中国ではAIを活用し、SNSなどでさまざまなメッセージを発信して世論をコントロールするような非軍事的手段を活用することもあります。
そのため、2023年に発表された5カ年の防衛力整備計画では領域横断作戦能力として、宇宙分野での米軍との連携強化や防衛省・自衛隊のサイバー要員の拡充、レーザー妨害機能など高機能な装備の充実などにも予算が割り当てられる見込みです。
3. 南西諸島への自衛隊配備が進む理由と現状
新たに自衛隊の配備が進められている地域の一つが南西諸島です。九州南端の鹿児島から沖縄県に連なる南西諸島は地理的に中国や台湾とも近く、万が一の際の防衛拠点として重要です。
ここでは、南西諸島に属する与那国島・石垣島・宮古島への自衛隊配備の状況や住民が抱える不安などについて紹介します。
与那国島・石垣島・宮古島に地対空ミサイル部隊を配備
石垣島・宮古島に続き、沖縄県の与那国島に航空機やミサイルを迎撃できる地対空ミサイルの配備が進められています。配備されるのは中SAMと呼ばれる国産の03式中距離地対空誘導弾です。車載式のため機動性が高いのが特徴で、首都圏や西日本にはすでに多く配備されています。
第一列島線防衛と台湾有事を見据えた戦略配置
中SAMは石垣島・宮古島にすでに配備されているため、南西諸島の西端に位置する与那国島にも配備されることで防衛力がさらに強化されます。
中国では、南西諸島・フィリピン・台湾を結ぶ第一列島線を防衛線として重視していることから、反対に中国軍の活動を抑えるために与那国島にも防空拠点となる地対空ミサイル部隊の配備が必要だと判断されました。与那国島は台湾から110kmしか離れていないため、台湾有事の際の拠点としての役割も期待されています。
地元住民の不安と政府の丁寧な説明責任
新たに地対空ミサイル部隊が配備された与那国島をはじめとする南西諸島の駐屯地は、万が一の際の防衛拠点であると同時に台湾有事の際は戦略的拠点となる可能性もある場所です。
有事の際、軍事施設は敵の攻撃目標となるおそれがあるため、地元住民の中には安全体制に不安を抱いている人が少なくありません。しかし、すでに南西諸島への地対空ミサイルの配備は始まっているため、政府には住民の理解を得られる丁寧な説明責任と国民保護の措置が求められています。
4. 日米同盟の強化と今後の課題
日本は核保有国でないため、周辺国への抑止力を得るには日米同盟が不可欠です。周辺国の緊張が高まる中、対中国防衛政策と同時に日米同盟の強化が進められています。
ここでは、在日米軍基地の駐留経費負担の問題や拡大抑止の信頼性を高める取り組み、米軍との連携を取りやすくする統合作戦司令部の発足などについて紹介します。
在日米軍駐留経費負担の増額と同盟強靱化予算
周辺国との緊張が高まる中、日米安保体制ならびに日米同盟はますます重要なものとなっています。特に在日米軍との協力は日本の安全保障において不可欠といえるでしょう。これまで在日米軍基地の駐留経費については日米地位協定に基づいて日本が一部負担してきました。
2022年には新たな特別協定が結ばれ、自衛隊とアメリカ軍双方の運用性向上に役立つ訓練資機材の調達に関わる経費も日本が負担することとなりました。増加分の経費は日米同盟をより強化する基盤となるものであるため、通称、同盟強靱化予算と呼ばれます。
特別協定の期間は2022年度から2026年度までの5年間であり、同期間の同盟強靭化予算は1年あたり平均して約2,110億円です。
拡大抑止協議と核の傘の信頼性向上への取り組み
安全保障において重要なのは相手から攻撃されることを防ぐ「抑止力」です。抑止力とは日本を攻撃すれば相手も甚大な被害を受けること、または日本に特定の攻撃を阻止する力があることを相手に認識させ、攻撃させないことです。
しかし、核兵器不拡散条約締約国であり、非核三原則を守る立場である日本は核兵器を保有できないため、核保有国である周辺国(中国・ロシア・北朝鮮)に対する抑止力は十分とはいえないでしょう。そのため、核保有国であるアメリカとの日米同盟による拡大抑止が重要になります。
このように核保有国が核兵器を持たない同盟国が攻撃された際に核兵器で報復する意思を示すことを核の傘と呼ぶことがあります。日本とアメリカの間で定期的に協議が開かれ、拡大抑止のコミットメントの確認や日米同盟に基づくアメリカの対日防衛義務が行われるのは日本の周辺国に対する核の傘の信頼性を高めるためです。
統合作戦司令部の発足と米軍との指揮統制連携
2025年3月、陸上・海上・航空・サイバー防衛隊などに分かれている自衛隊の部隊を横断する司令部として隊員・事務官合わせて総勢約240名が所属する統合作戦司令部が発足しました。
これまで自衛隊は大規模災害や海外派遣などの部隊を超える連携が必要な事態が起こるたびに臨時の統合部隊を編成することで対応してきました。今回、平時から一元運用のための司令部ができたことで、あらゆる事態に部隊の垣根を越えて柔軟かつ迅速に対応することが可能になります。
他国との連携が必要な事態が発生した際に、相手国との指揮統制連携などを担うことも統合作戦司令部の役割の一つです。災害や有事などで同盟国であるアメリカなどと連携する際に共同対処能力の向上が期待されています。
まとめ
以前から中国は尖閣諸島のある東シナ海などの日本の領海近辺で頻繁に船舶を航行させるなど、活動を活発化させています。また、繰り返し行われる北朝鮮によるミサイルの発射実験、ロシアのウクライナへの侵攻など、中国以外の日本の周辺国でも安全保障が懸念される事態が相次いでいます。
中国の第一列島線防衛などの考え方を踏まえ、日本は万が一に備えて防衛政策の強化に踏み出しました。2026年度の防衛予算は過去最大規模の9兆円超となり、装備拡充が進められるほか、日米同盟の強化なども推進されています。
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