オフィスの観葉植物は経費計上できる?正しい仕訳方法と注意点を解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

「オフィスの雰囲気をよくしたい」「従業員にリラックスしてほしい」ために観葉植物の購入を検討しているが、何の経費にしたらいいのかとお悩みではありませんか。会計処理を間違えると税務調査で指摘を受けるリスクが高まるなど、思わぬ失敗を招く可能性もあるため、正しく仕訳する方法を理解しておくことが重要です。

この記事では、観葉植物を購入した際の経費の考えや具体的な勘定科目、仕訳方法の実例を交えながら解説します。適切な処理方法を理解した上で観葉植物を購入し、職場の雰囲気を整えていくためにも、最後まで確認しておきましょう。

会社で観葉植物を購入したとき、経費として計上できる?

オフィスや店舗に置く観葉植物は、事業に必要な目的であれば経費として認められます。社員がリフレッシュして働いたり、来客用の応接室などに置いたりと、業務との関連性が高いことが重要です。

ただし、観葉植物は用途に応じて消耗品費や雑費、交際費など仕訳方法が異なります。特に、事業との関連性や購入目的によってどのように処理するのか、適切な会計処理を行うためのポイントについても確認しましょう。

観葉植物の購入費用は経費になるのか?

観葉植物を経費で処理するためには、業務に関連するかどうかがポイントです。例えば、社内スペースに設置するものであれば消耗品費や雑費として取り扱うことが多く、従業員が利用する休憩室では福利厚生費として仕訳します。

一方、取引先に贈呈する場合は交際費、特定せずに宣伝効果を狙った場合の配布は広告宣伝費とするなど、用途ごとに分けなければなりません。購入した際には「どこに置くのか」「何に使うのか」を帳簿に明記することで整理しやすいでしょう。

また、金額が10万円以上の場合は、経費ではなく固定資産として取り扱う場合もあるため、正しい処理方法を覚えておく必要があります。
 

税務調査で指摘されないためのポイント

観葉植物の仕入費用を経費にする場合、事業目的であることを客観的にみて問題ないと判断されなければなりません。例えば、取引先への贈答なら交際費オフィス環境の美化や従業員の労働環境の改善、事業の宣伝目的での配布などは経費に認められる可能性が高まります。

一方、プライベートでの利用とみられるような場合や、事業の規模に見合わない必要以上の数量は経費として処理することが難しくなるでしょう。特に自宅兼オフィスの場合、事業用のスペースと自宅のスペースを明確にする、計算する際には按分するなども必要です。

重要なのは「購入目的」と「事業との関連性」を客観的に説明できることであり、後日説明するためにも、レシートや領収書は必ず保管しておきましょう。

観葉植物の仕訳パターン別解説

観葉植物を経費に計上する際、どの勘定科目で処理するのか難しいと考える人も多いでしょう。ただし、適切な勘定科目で処理しないと経費で認められないリスクがあるため、正確な会計処理と費用管理のために必ず正しい知識を身に付けておかなければなりません。

ここでは、代表的な以下の勘定科目について解説していきます。

  • 消耗品費

  • 福利厚生費

  • 雑費

  • 交際費

  • 広告宣伝費

各勘定科目を仕訳する際の具体例を交えながら、どの勘定科目が適しているのか理解を深めていきましょう。
 

① 消耗品費として計上するケース

消耗品費として計上できるのは「オフィス内の装飾」や「環境の美化」を目的として購入された場合です。具体的には、応接スペースや執務エリアの見た目を整えるために購入したケースが該当します。

例えば、現金で3万円の観葉植物を購入した場合の仕訳方法は以下の通りです。

(借方)消耗品費 30,000円/(貸方)現金 30,000円

この場合、購入費用を発生した期に費用として計上することが可能です。また、クレジットカードで購入した場合、購入時と引き落とし時で段階的に処理します。

「購入時」

(借方)消耗品費 30,000円/(貸方)未払金 30,000円(摘要:A生花店観葉植物代)

「引落時」

(借方)未払金 30,000円/(貸方)普通預金 30,000円

業務上の支出と判断できるように、目的を明確に記録しておくことが大切です。
 

② 福利厚生費として計上するケース

従業員の職場環境を改善し、満足度を向上させるために購入する場合は、福利厚生費として計上することが適切です。休憩室や化粧室などに置くことで癒し効果やリフレッシュが期待できる場合、働きやすい職場環境づくりに貢献できるという考え方ができます。

具体的な仕訳処理は以下の通りです。

(借方)福利厚生費 25,000円/(貸方)現金 25,000円

仕訳帳の摘要欄に「従業員の休憩室に設置」などと記入しておくことで、後日みたときに目的が明確になります。ただし、従業員が利用できる場所に置かなければならず、特定の役員が個人で観賞するための購入では経費として認められない可能性があるため、注意しておきましょう。
 

③ 雑費として計上するケース

頻度が低い場合や少額である場合には、雑費として計上することも可能です。特定の費用科目に分類するほど重要性が高くない、もしくは経常的に発生しない一時的な支出は雑費として仕訳しても問題ありません。

例えば、年に一度、小さな観葉植物を一つ購入する程度であれば、経理処理の手間が省けます。

雑費で処理する場合の勘定科目は以下の通りです。

(借方)雑費 5,000円/(貸方)現金 5,000円

ただし、観葉植物の購入が継続的に発生するようであれば、消耗品費や福利厚生費など、より具体的に処理する方が適切といえます。
 

④ 交際費として計上するケース

取引先への贈答用として観葉植物を購入した場合、その費用は交際費として計上します。

例えば、事業関係者との円滑な関係の構築や維持、もしくは新たな取引先への取引開始時の記念品として支出するケースです。また、来客をもてなす目的で応接室に設置する際も、交際費として処理します。

現金で取引先への贈答用観葉植物を購入した場合の仕訳は次の通りです。

(借方)交際費 50,000円/(貸方)現金 50,000円

購入する際に発生する送料、花屋までの交通費なども観葉植物本体の費用と合わせて交際費に含めて処理することも可能です。後から内容が確認できるよう、摘要欄に「内、交通費1,200円、送料1,800円」のように内訳を記載しておきましょう。
 

⑤ 広告宣伝費として計上するケース

不特定多数の顧客や消費者に対して、会社名や商品・サービスの認知度を向上させる目的として観葉植物を配布する場合、広告宣伝費として計上できます。展示会や店舗のオープン記念品、イベントなどで観葉植物を配布し、集客やイメージアップを図る場合などです。

ポイントとなるのは、特定の取引先ではなく、一般の消費者など幅広い対象の場合に該当します。クレジットカードで購入し、イベント参加者への記念品として配布した場合の仕訳をみてみましょう。

「購入時」

(借方)広告宣伝費 270,000円/(貸方)未払金 270,000円(摘要:Cイベント 参加者記念品用観葉植物代)

「引落時」

(借方)未払金 270,000円/(貸方)普通預金 270,000円

イベントの企画書や告知物などを確認書類として残しておくことで、後日税務署から説明が求められた場合でも説明がしやすいでしょう。

経費として認められる条件と注意点

観葉植物を経費にするためには、いくつかの条件があります。中でも、個人・事業を区別して購入する場合です。具体的には購入時の目的を明確にすることや価格・数量の妥当性、証拠書類の保存など注意点を押さえておかなければなりません。

また、購入金額が高額の場合は、経費で処理するのか固定資産として処理するのかも理解しておく必要があります。さらに、固定資産として取り扱う場合には減価償却についても把握した上で、それぞれの詳細を確認しておきましょう。
 

経費で買う場合に気を付けるポイント

観葉植物を経費として処理する場合に大切なのが「購入する前に用途を明確にする」ことです。使用する目的によって勘定科目が異なるため、あらかじめ福利厚生用、装飾用、もしくは贈答用かを決めておく必要があります。

さらに、金額が使用目的に対して妥当か、数量も適切かが説明できるようにしておかなければなりません。また、購入金額が10万円以上である場合は固定資産として計上し、さらに減価償却も行うため複数年に分けて処理します。

いずれにせよ、購入目的を明確にすることは必要不可欠であり、後日確認できるようにしておくことが大切です。そのため、領収書や証拠書類を必ず保存し「いつ」「どこで」「どんな目的」で購入したかを明確にしておきましょう。
 

観葉植物の購入費用を資産計上すべきケース

観葉植物を固定資産として計上する場合、10万円以上であれば原則として固定資産に計上し、減価償却を行う必要があります。例えば、オフィスのエントランスに設置する大型の観葉植物などです。

ただし、明確な耐用年数が定められているわけではありませんが「工具・器具・備品」として取り扱うことが多く、5年で減価償却を行うことが妥当と考えられます。

詳しくは「国税庁」が公表している耐用年数表を参照の上で正確な処理を行いましょう。とはいえ、期間を待たずして枯れてしまった場合は、その年の経費とすることもあるため、判断に迷う場合は、税理士など専門家に相談することも必要です。

参考:国税庁|主な減価償却資産の耐用年数表 2100_01.pdf

観葉植物の経費計上に関するよくある質問

観葉植物を仕訳する際には設置場所や使途、さらには処分方法など多岐にわたる注意点があります。例えば、購入以外にも「レンタルした場合の費用はどうなるのか?」「枯れてしまった場合の処理は?」など、よくある質問をまとめました。

特に、仕訳方法など不明瞭な点も多いため、詳しく解説していきます。
 

リース契約で観葉植物を導入する場合の仕訳は?

レンタルやリースで観葉植物を導入する場合も多く、購入とは異なる仕訳処理が必要です。リースでは、毎月の費用は「貸借料」や「リース料」として経費に計上することとなります。

また、レンタルサービスを利用すると、水やりや剪定などのメンテナンス費用を含めた料金を賃借料やリース料とすることも可能です。口座振替によって支払う場合の仕訳方法をみていきましょう。

(借方)賃借料 35,000円/(貸方)普通預金 35,000円

通常のリース契約では、支払額を経費として費用計上する処理で問題ありませんが、中には資産計上が必要なリース取引もあります。契約内容によって会計処理が異なるため、事前にリース会社や専門家から契約の詳細を確認しておきましょう。
 

枯れた場合や交換時の処理はどうする?

観葉植物が枯れた場合には、廃棄費用や新しいものと交換する費用がかかるだけでなく、剪定や植え替え、肥料などの日常的なメンテナンス費用も経費として計上できます。

これらの費用は、観葉植物を良好な状態に保つための維持管理費用として考えられるため、修繕費や支払手数料などの勘定科目で処理することが可能です。また、自社で粗大ごみとして処分した場合は「支払手数料」や「雑費」として、以下の通り処理します。

(借方)支払手数料 10,000円/(貸方)普通預金 10,000円

どの勘定科目を使用するかは、費用の性質や金額によって異なりますが、それぞれ一貫性を持たせておくことが重要です。

まとめ

観葉植物はオフィスの環境を整えるために導入する企業も多くなりつつある中、いざ会計処理をする場合には、処理方法が多岐にわたるため注意しなければなりません。

例えば、オフィスの装飾目的であれば消耗品費、従業員の福利厚生目的なら福利厚生費、取引先への贈答なら交際費と、目的に応じて使い分ける必要があります。また、購入だけでなくリースやレンタルの場合はメンテナンス費用として、枯れた際の廃棄費用では仕訳処理の方法を変えなければいけません。

なお、目的が事業に関連していれば経費として処理できますが、自宅兼オフィスなどの場合は個人か事業かを明確にしなければ、税務署に指摘を受ける可能性もあります。目的が明確になるよう領収書などの証拠書類を保管し、適切な会計処理を心がけつつ、オフィスの環境を快適に整えていきましょう。

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