退職の失業給付・育休が変わる!2025年雇用保険制度の変更点まとめ

[取材/文責]マネーイズム編集部

2025年の雇用保険制度改正により、失業給付や育児給付に関する仕組みが大きく変わります。この見直しは、少子化対策や働き方の多様化といった社会課題に対応するため、制度の柔軟性を高めることを目的としたものです。特に、転職・退職を検討している会社員や、出産・育児を控える共働き世帯にとって、改正内容は将来設計に直結する重要な要素でしょう。

本記事では、制度改正の背景から具体的な変更点、そして個人が取るべき対策までをわかりやすく解説します。これからのキャリアや家庭の計画を立てるうえで、知っておくべき最新情報をお届けします。

1. 雇用保険制度の見直しとは?改正の背景

働く人を支える柱のひとつである「雇用保険制度」は、2025年に法改正が行われ、これまで以上に柔軟な仕組みへと見直されることになりました。この改正は、「労働力の確保」と「子育て支援」の両立を実現するための抜本的な改革です。

具体的には、雇用保険の適用対象の拡大、教育訓練支援の強化、育児給付制度の見直し、新たな支援給付の創設など、生活とキャリアの両立を支援するための制度が段階的に導入されていきます。ここでは、雇用保険制度改正の全体像と、その背景にある国の課題や狙いについて解説します。

雇用保険法等の改正法案の概要(2025年)

2025年に成立した雇用保険法等の改正は、少子化対策と労働力の確保を目的とした抜本的な見直しです。背景には、働き方の多様化や育児との両立支援の必要性があり、制度の柔軟性と持続可能性が問われるようになってきました。

今回の改正では、主に4つの柱が掲げられています。

・雇用保険の適用対象の拡大
・教育訓練・リスキリング支援の拡充
・育児休業給付の安定的な財源確保
・出生後休業支援給付および育児時短就業給付の創設

これらは、段階的に2024年から既に施行されたものも含まれ、2028年まで段階的ににかけて施行される予定です。

財源の見直しと保険料率の調整

育児休業取得者の増加に伴い、給付額も年々膨らんでいます。政府は2030年までに男性の育休取得率85%を目標に掲げており、今後も支出増加が見込まれています。

こうした中で、制度を持続可能にするために、財源の見直しが行われました。国の負担割合は、2024年度から本則通り「1/8」に引き上げられました。

また保険料率については、当面の間は0.4%に据え置かれるものの、2025年度からは本則である0.5%が基準となり、状況に応じて引き下げ可能な仕組みが導入されます。今後の経済状況によっては、保険料率が変動する可能性もあり、企業や個人にとっては制度の動向を注視する必要があるといえるでしょう。

2. 失業給付の見直し|給付率・要件の変化

失業した際に生活を支える失業給付(基本手当)は、雇用保険制度の中核的な機能です。今回の制度改正では、この基本手当の給付率や支給要件に大きな見直しが加えられ、労働者のセーフティネットとしての機能がより実効性のあるものへと進化します。

ここでは、具体的な改正内容とその背景、労働者や企業に与える影響について解説します。

基本手当の給付率見直し

これまでの基本手当の給付率は、年齢や離職理由、退職前の収入に応じて設定されていました。2025年の雇用保険法の制度改正では、この給付率について見直しが行われました。

この見直しにより、失業給付は単なる「つなぎ」ではなく、将来を見据えた再出発の基盤となる制度へと位置づけが変わりつつあります。

自己都合退職の給付制限期間の緩和(議論状況)

従来、正当な理由がない自己都合退職の場合、失業手当の支給までに原則2か月間の給付制限期間が設けられていました。この期間中は、たとえ就職活動を行っていても基本手当を受け取れず、転職を検討する人にとって大きなハードルとなっています。

今回の改正では、この給付制限期間が1か月へと短縮され、経済的な不安を抱える期間が半減されました。さらに、離職日前1年以内、もしくは離職後に教育訓練講座を受講した場合は、給付制限が完全に解除され、7日間の待期期間のみで基本手当の支給が開始されます。

このように、スキルアップやキャリアチェンジを前向きに捉える人にとって、制度の恩恵が受けやすくなる仕組みが整備されました。

3. 育児休業給付の制度変更ポイント

近年、共働き世帯の増加や、男性の育児参加の重要性が社会的に高まりを見せており、2025年4月からは雇用保険制度の改正に伴い、新たな給付制度が2つ創設されました。

ひとつは、出生直後に両親がそろって育休を取得することを後押しする「出生後休業支援給付金」、そしてもうひとつは、育児と就業を両立する時短勤務者への支援となる「育児時短就業給付金」です。

これらの新制度は、育児休業の経済的な不安を和らげ、家庭とキャリアの両立を目的としています。ここでは、それぞれの制度の概要や要件、対象者が活用すべきポイントについて解説します。

「出生後休業支援給付金」の新設

2025年4月から、新たに「出生後休業支援給付金」が創設されました。この制度は、子の出生直後に両親が協力して育児休業を取得することを支援するものです。

共働き・共育てを後押しするため、夫婦のどちらか、あるいは両方が14日以上の育児休業を取得した場合に支給されます。給付金は、通常の「出生時育児休業給付金」や「育児休業給付金」とあわせて支給され、手取りベースで約100%に近い補償(給付は非課税のため給付率80%でほぼ手取り100%)が受けられ、最大28日間支払われます。

この制度の対象にはいくつかの要件がありますが、ポイントは以下の通りです。
・本人または配偶者が、対象期間内に14日以上の育児休業を取得していること
・既存の出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給対象であること(不支給の場合は対象外)

育児休業中は、申し出により健康保険料・厚生年金保険料が免除され、給付金は非課税です。給付額の計算には上限があり、2025年4月時点では日額15,690円(毎年8月1日に改定)が基準となっています。

「育児時短就業給付金」の新設

もうひとつの大きな改正は、「育児時短就業給付金」の新設です。これは、2歳未満の子を育てながら時短勤務を選択した場合に支援する新制度で、2025年4月からスタートしました。

対象となるのは、雇用保険に加入しており、育児休業からの復帰後に時短勤務を選んだ人過去2年間に12か月以上の被保険者期間がある人です。

支給対象となるには、時短勤務を継続していることや、他の給付(育児休業給付・介護休業給付・高年齢雇用継続給付)を同時に受けていないことなど、複数の条件を満たす必要があります。

また、賃金が下がっていない場合や支給額が最低限度のラインを下回る場合などは、支給対象外となります。

この制度は、子育てとキャリアの両立に悩む家庭にとって、大きな後押しとなるものです。柔軟な働き方を選びやすくすることで、母親だけでなく父親の育児参加も促進されることが期待されます。

4. 改正が個人に与える影響と備え方

雇用保険制度の改正は、働く個人のキャリア設計やライフプランに直結する重要な変化といえます。特に、退職・転職を検討している人や、出産・育児を控えた共働き世帯にとっては、給付内容や条件の変化が日常生活の安心感に大きく影響するものでしょう。

ここでは、改正がもたらす影響を具体的に解説し、個人がどのように備えるべきかについて整理していきます。

転職や退職予定者への影響と注意点

2025年4月から施行される雇用保険制度の見直しでは、転職や退職を検討している人にとって重要な変更が含まれています。特に注目すべきは、自己都合退職時の給付制限期間の短縮です。

これまで自己都合による離職者は、ハローワークで失業給付を申請してから約2か月間の給付制限を経て、ようやく失業手当を受け取ることが可能となっていました。

しかし今回の改正により、この待期期間が1か月に短縮されます。また、過去5年間に3回以上自己都合退職した人については、引き続き3か月の給付制限が適用されるため、頻繁な離職が不利に働く点には注意が必要です。

さらに、離職直前または離職期間中に教育訓練を受講していれば、給付制限が解除されることになりました。転職前後にスキルアップの時間を取ることで、経済的不安を軽減しながら再スタートを切ることが可能となります。

この他にも、雇用保険の適用拡大が2028年10月に予定されており、週10時間以上働く人も将来的には雇用保険の対象となります。短時間労働を前提としたキャリア設計を考えている人にとっても、支援の幅が広がるでしょう。

今後のキャリアに備えるためにも、自身の給付対象期間・退職理由・雇用保険加入期間などの条件を早めに確認しておくことが重要です。

共働き世帯・育児中の家庭が活用すべきポイント

育児と仕事の両立を支援する新制度もスタートします。共働き世帯や育休取得を考えている家庭にとっては、非常に心強い制度変更でしょう。

まず注目すべきは、「出生後休業支援給付金」の新設です。従来の育児休業給付金(賃金の67%)に加え、さらに13%が上乗せされることで、最大80%の給付率となり、ほぼ手取りを維持したまま育休を取ることが可能になります。

企業にとっても、制度を積極的に活用することで、男女問わず育児と仕事の両立を支援する姿勢を示せることから、採用ブランディングや定着率の向上にもつながるでしょう。

次に、「育児時短就業給付金」の創設です。2歳未満の子どもを育てながら、短時間勤務を選択した場合、実際に支払われた賃金の10%相当額が給付金として支給されます。これは、時短勤務による収入減を補うための支援であり、育児とキャリア継続の両立を後押しする制度です。

これらの制度は、いずれも条件を満たせば申請可能なものであるため、出産や育休のタイミングが近づいている方は、早めに勤務先の人事部やハローワークに相談し、手続きに必要な書類やスケジュールを確認しておくことが大切です。給付内容を理解し、活用することで、育児中の不安を減らし、より充実したライフスタイルを築けるでしょう。

まとめ

2025年の雇用保険制度の見直しは、「労働力の確保」と「子育て支援」の両立を実現するための、抜本的な改革です。制度をうまく活用することで、キャリアと家庭の両立がしやすくなります。

一方で、給付を受けるには要件や手続きがあるため、制度の内容を早めに確認し、必要な準備をしておくことが重要です。転職や出産などライフイベントを控えている方は、今後のライフプランに制度改正の影響を織り込んでおくことで、安心して次のステップへ進めるでしょう。

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