防衛特別法人税とは?2026年4月から法人税に“1%の上乗せ”スタート

2026年4月から、防衛強化税率(防衛特別法人税)が新たに導入されることが決定しています。これは、法人税に上乗せされる形で課税される仕組みとなっているため、自社の財政にどれくらいの影響が出るのだろうかと不安に感じている方も少なくないでしょう。
ただし、防衛費の財源として課税されるこの仕組みは大手法人を対象としており、中小企業の多くは影響を受けにくい構造になっているため、それほど心配する必要はありません。しかし、制度の概要をしっかりと理解しておくことは重要です。
本記事では、制度の概要や導入スケジュールに加え、企業実務に与える影響や対応する際の注意点などをわかりやすく解説します。
※2025年5月時点の情報に基づきます。
1. 防衛強化税率(防衛特別法人税)創設の概要と導入スケジュール
防衛目的の追加課税として、新たに「防衛強化税率(防衛特別法人税)」が導入されます。これは、企業の法人税に追加的な負担を課す仕組みであるため、経営者や財務担当者にとっては無視できないテーマです。
ここでは、この追加課税導入の目的や基本的な仕組み、導入スケジュールを確認していきましょう。
防衛強化税率の導入目的と基本的な仕組み
防衛強化税率は、急速に変化するわが国の安全保障環境に対応し、防衛費を安定的に確保する目的で新設される税制です。この制度は2026年4月以降に始まる事業年度から適用され、基準法人税額に対して新たに4%の付加課税が行われます。
ただし、基準法人税額が500万円以下の中小企業は課税対象外となり、対象となるのは基準法人税額が500万円を超える企業です。この仕組みにより、日本は防衛力強化に必要な資金を安定して調達しやすくなります。
また、大企業を中心に負担額が大きくなっており、中小企業に対して過度な影響を与えないように配慮された仕組みといえるでしょう。
2026年4月以降の導入スケジュール・対象税制
防衛強化税率は、2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用される予定です。具体的な課税方法としては、基準法人税額から500万円を控除した金額に対して4%を課す仕組みになっており、法人税額が一定水準を超える企業を対象としています。
また、法人税だけでなく、2027年1月以降に導入が検討されている税金にも注目が必要です。それらは防衛特別所得税やたばこ税で、段階的な引き上げも併せて進められる見込みとなっています。(2025年1月5日時点の情報に基づく)
付加課税の対象範囲と法人種別、中小企業への配慮
防衛特別法人税は、原則としてすべての法人が対象です。課税方法はシンプルで、基準法人税額から一律500万円を控除した額に対して4%を乗じて算出されます。
気になる中小企業に関してですが、法人税額が500万円以下であれば課税されません。たとえば、留保金課税・税額控除なしと仮定して、課税所得が約2,400万円までの企業は負担が生じないとされ、多くの中小企業には影響が及ばないよう配慮されています。
過度に心配する必要はありませんが、制度の内容や税率は将来的には変更される可能性があるため、情報収集を継続して行うことが大切です。
2. 防衛強化税率の税率・計算方法と具体例
新たな税制が導入される際には、実際にどの程度の負担が生じるのかを、多くの財務担当者が気にするのではないでしょうか。防衛特別法人税は、法人税額に一定割合を上乗せする仕組みになっているため、正しく制度を理解していない場合は、資金計画や経営判断の中にトラブルが生じる可能性があります。
ここでは、課税ベースや税率の適用方法、控除制度を踏まえた計算手順を整理するため、具体例を通じて企業の負担感を見ていきましょう。
課税ベースと4%税率の適用方法
防衛特別法人税は、通常の法人税に追加で課されるもので、基準法人税額が計算の基礎となります。基準法人税額は、税額控除や特別措置を反映する前の法人税額を指しており、ここから一律500万円を差し引いた金額に対して4%の税率をかける仕組みです。
たとえば、法人税額が2,300万円の企業であれば、そこから500万円を控除した1,800万円に対して4%が課されるため、72万円が防衛特別法人税として加算されます。制度の仕組み上、一定規模以上の企業に負担を求めつつ、中小企業に与える影響は小さくなるよう配慮されている点が特徴です。
税額控除(500万円控除)・対象外企業の条件
防衛特別法人税には、中小企業への配慮として500万円控除が設けられているため、法人税額が500万円以下であれば、実質的にこの制度適用の対象外となります。
たとえば、利益の規模が小さく法人税額が220万円程度の中小企業の場合、法人税額よりも控除額の方が上回るため、防衛特別法人税は課されません。
一方、法人税額が控除額の500万円を超える企業は対象となり、その規模が大きいほど負担も大きくなるのが特徴です。
具体的な計算例と企業負担の実質影響
防衛特別法人税の計算は比較的シンプルで、「(基準法人税額 − 500万円)× 4%」で算出されます。わかりやすく考えるなら、通常の法人税額に対して1%程度上乗せされるイメージです。
法人税率23.2%の4%は約0.93%となり、実質的に税負担が1%弱増える計算になります。規模が大きな企業にとっては一定の影響を考慮する必要がありますが、中小企業の多くは基礎控除により対象外となるため、過度に不安を感じることはありません。主に大企業を中心に負担を求める仕組みになっているといえるでしょう。
3. 制度新設の背景と政府の意図
防衛強化税率という制度が新設された背景には、緊張感を増していく国際情勢があります。近年、近隣諸国における軍事力の拡張や安全保障上のリスクが顕在化しており、日本にとって防衛力の強化はもはや先送りできない課題となっています。
そのための財源をどのように確保するのかについては、企業や国民の生活に直結する大きな問題です。従来の税体系や予算配分だけでは十分な資金をまかなえないとの判断から、政府は新たな税制として「防衛強化税率」を導入する方針を固めました。
ここでは、防衛強化税率が新設された背景と、政府の意図を整理してわかりやすく解説します。
抜本的な防衛力強化と財源確保の必要性
防衛強化税率が導入されるのは、防衛費を増加させるための財源確保が求められるからであり、政府は法人税・所得税・たばこ税などを組み合わせた新たな税負担を導入する方針で調整を進めています。たとえば、防衛特別法人税の他に、所得税は2027年1月から防衛特別所得税として上乗せ、また、たばこ税は2027年4月以降段階的に増税していく予定です。(2025年1月5日時点の情報に基づく)
中小企業・経済への配慮と今後の見直し可能性
防衛特別法人税は、法人税額の一部に追加で課税する仕組みで、法人はすべて対象になりますが、すべての企業が支払うわけではありません。法人税額から500万円を差し引いた残額に4%を課す方式であるため、法人税額が500万円を下回る企業には負担が生じません。多くの中小企業は、法人税額が500万円以下であるため、この制度の影響は限定的であるとされています。
ただし、収益の規模が巨大な法人では、確実に税負担が増大するでしょう。そのため、新たな税負担を見越した資金計画や投資戦略の見直しが重要です。また、法人税額が控除額を上回るようになった中小企業にとっても、新税制が資金繰りや事業拡大に影響する可能性があります。
法人税以外で同時に実施される増税措置(所得税・たばこ税)
防衛特別法人税の導入に加えて、所得税とたばこ税にも増税措置を実施することが予定されています。
防衛特別所得税は2027年1月からの導入が想定されており、納税額に1%上乗せする案が進められていますが、同時に復興特別所得税を現在の2.1%から1.1%に引き下げる代わりに課税期間を延長することで国民の負担感を抑える方針です。
また、たばこ税については、2026年4月に加熱式たばこの税率を引き上げ、紙巻きたばことの税率格差を縮小した上で、2027年4月以降段階的な増税が予定されています。
これらの措置は、防衛費の大幅な増額に必要な財源を確保することを狙いとしており、法人税・所得税・たばこ税が対象となることで広範囲からの税収を見込める仕組みになっていると言えるでしょう。(2025年5月22日時点の情報に基づく)
4. 防衛強化税率導入における実務対応と注意点
2026年4月から導入される防衛強化税率の影響として考えられるのは、単純に税負担が増える点だけではありません。企業の決算や資金繰りにも大きな影響を与える可能性があります。そのため、正しい対応策を知らないことは、将来的なリスクにつながりかねません。
ここでは、会計処理上注意すべき点や税制変更リスクへの備え方、資金計画・経営戦略への影響について具体的に解説します。
会計処理・税効果会計の留意点
防衛特別法人税は、従来の法人税に上乗せして課税されるため、会計処理の際にも特別な対応を要するため注意が必要です。この税は、法人税額から500万円を控除した金額に対しての4%を上乗せするため法人税等にあたると考えられます。
そのため、税効果会計を適用する際にも、法人税や地方法人税と同様に扱わなければなりません。
今後の税制変更リスクへの備え方
防衛特別法人税は、2026年4月から導入されることが決まっていますが、社会情勢や政府の方針が変われば将来的に見直しが実施される可能性もあるでしょう。税率や控除額が変更された場合は、企業の資金計画に直接的な影響が生じるため、経営者は常に最新の情報にアンテナをはっておく必要があります。
具体的には、自社の利益水準の正確な把握が第一歩です。利益が伸びた場合に、防衛特別法人税がどの程度課されるかを概算しておくことで、資金繰りのプランに余裕を持たせられるでしょう。また、税務における優遇措置や設備投資を活用すれば、課税対象外に留めておけるケースもあります。
企業の資金計画・経営戦略への影響
防衛特別法人税が導入されることで、法人税額が500万円を超える企業は、追加の税負担を課されることになります。大規模な企業の場合は、結果として数十万円から数百万円もの増税になる場合もあり、キャッシュフローや投資計画の見直しを迫られるかもしれません。
一方で、中小企業の多くは課税対象外になりそうですが、将来的に課税水準に達することも予測した資金計画を立てることも必要です。また、日本の法人税率は国際的に見ても高い水準にあるため、海外企業との競争力低下や投資抑制に対する懸念も残ります。このため、企業は税負担が増大することを見込んだ長期的な経営戦略を立てることが重要です。
中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。
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