知っておきたい!海外留学中の子どもを扶養控除の対象とするために気を付けること

[取材/文責]マネーイズム編集部

「103万円の壁」で話題のとおり、世の中の人は、扶養控除を意識した家計管理、働き方管理をしています。物価上昇のトレンドの中、家族1人が扶養控除の対象となるかどうかは、生活実態において大変重要な問題です。しかし、扶養控除となる親族の要件を読んでも、具体的なケースをモデルに控除の対象・非対象が書かれているわけではありません。

この記事では、扶養控除の対象となるかわかりにくいケースの一例として、「海外留学している子ども」が扶養控除の対象となることについて紹介します。扶養控除となる考え方と、扶養控除とするための注意事項について、ぜひ参考にしてください。

扶養控除とは?海外留学でも適用可能か

日本で生活する人は全員、給料などで得た収入は、すべて自分のお金となるわけではありません。収入金額に応じて所得税を支払う必要があるため、実際の手取り金額は減ってしまいます。

扶養控除とは、日本の税制における所得控除制度です。一家の大黒柱にあたる人が稼いだ収入から扶養親族1人につき、一定の金額を税金の計算上の収入から差し引くことで、かかる所得税が軽減されます。

扶養親族とは、大まかに言うと「納税者と生計を一にしている特定の親族」です。ここでは、どういう条件を満たしていれば扶養親族と認められるのか、そして、海外留学している子どもはどのような解釈でこれに含まれるのかについて解説します。

扶養控除の基本要件

扶養控除は、その扶養親族の属性により、1人につき38万円〜63万円が所得控除されます。
親族とは、6親等内の血族および3親等内の姻族のことです。扶養親族とは、以下の条件をすべて満たしている親族が該当します。

  • 納税者と生計を一にしている
  • 扶養控除を受けようとする年の12月31日時点において16歳以上である
  • 配偶者以外の親族である
  • 1年間の所得金額が48万円以下である(給与収入のみの場合103万円以下)
  • 青色申告者の事業専従者として給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者でない

3番目の「配偶者以外の親族である」というのは、配偶者は控除の対象とはならないという意味ではなく、「配偶者控除」「配偶者特別控除」という、別途控除される税制があるためです。

これらの条件の中で、1番目の「納税者と生計を一にしている」という条件だけが曖昧で、いくらでも解釈できてしまいそうです。しかし、実際にはしっかりとした基準があり、生計を一にしていると認められる場合が限定されるため、正しく理解する必要があります。

海外留学中の子どもが対象となる条件

「生計を一にしている」というのは、生計を一緒にしているということです。しかし、必ずしも同居していることが条件というわけではありません。勤務や就学、療養などのために住居は一緒でなくとも、生活費、学費、療養費などを納税者が負担しているならば、生計を一緒にしていると判断されます。

反対に、同居している親族でもそれぞれが関与せず、生活資金の出所も別であるならば生計が一緒であるとは判断されない場合もあります。よって、今回解説する海外留学中の子どもは、その生活資金や学費の出所が納税者の収入からであるならば、扶養控除の対象です。

ただし、扶養親族として認められる他の条件である年間所得の上限や、1年以上海外留学している親族については、確認書類の提出が義務付けられていることに注意が必要です。

アルバイト収入が扶養控除に与える影響

扶養親族の条件に、「1年間の所得金額が48万円以下である」というものがあります。これは、アルバイトをする子どもや学生についても当てはまることです。一般的に子どもは、扶養控除についての知識を持ち合わせていないため、うっかり103万円を超えてアルバイトをしてしまった、ということが起きてしまいがちです。

ここでは、収入要件を満たすためのポイントと留学先での留意事項について解説します。

収入要件を満たすためのポイント

扶養親族の1年間の所得金額が48万円以下、給与収入のみの場合は103万円以下という収入要件を満たすために気を付けるべきことを2つ紹介します。

1つ目は103万円の収入は、その年の1月から12月に実際に支払われた給与で判定されるということです。実際に働いた分の給料は、翌月に支払われることが一般的です。つまり、11月までにもらった給料から逆算して12月のアルバイト代を調整しようとしても、12月にもらう給料は11月までの勤務で決まってしまうため、手遅れになることがあります。

2つ目は、アルバイトを掛け持ちしている場合は、すべての勤務先の収入を合計して、103万円以下とする必要があることです。一つの勤務先あたりの収入が103万円を下回っていればよいと勘違いしないよう、気を付けましょう。

留学先でのアルバイトが控除に与えるリスク

海外留学中の子どもが扶養親族の収入要件を満たしつつアルバイトしていたつもりでも、海外居住親族ならではの注意ポイントがあり、確認を怠ると扶養控除に影響を及ぼすリスクがあります。まず、為替レートを意識しましょう。海外でのアルバイト収入は現地通貨で受け取りますが、103万円の年収要件は、当然日本円換算で判定されます。注意していないと、103万円を超えてしまうため、扶養親族から外れてしまう可能性があるでしょう。

また、扶養親族1人あたりの控除金額は、基本的には38万円ですが、19歳以上23歳未満の親族については特定扶養親族といい、63万円が控除されます。19歳以上23歳未満というのは一般的な大学生の年齢です。海外留学はこの年齢を超えてすることも多く、納税者は63万円の控除をあてにしていても、親族の年齢が特定扶養親族の範囲を超えていたということが起こり得ます。

この場合、控除自体が受けられないわけではありませんが、家計管理に影響を及ぼす可能性があるため、年齢には注意しておきましょう。

扶養控除を活用するための注意点

海外留学中の親族について、留学が1年以上継続して扶養控除を受ける場合には、親族であること、生計を一にしていること、留学であることを証明する必要があります。これらを証明するものとして、「親族関係書類」「送金関係書類」「留学ビザ等書類」の3つの書類の提出が必要です。

これら3つの書類を、年末調整もしくは確定申告時に提出します。海外居住親族ならではの手続きのため、しっかりと把握しておきましょう。

申請手続きでの留意事項

親族関係書類とは、戸籍附票の写し、海外居住親族のパスポートの写しなどが該当します。送金関係書類は、海外留学している親族の生活費、学費を納税者が負担していることを証明する書類です。銀行が発行する外国送金依頼書の控えやクレジットカードの利用明細書などが該当します。海外居住の扶養親族が複数人いる場合、扶養親族1人ごと個別に送金する必要があることに注意しましょう。

なお、生活費や学費を現金手渡しした場合には送金関係書類が存在しないため、扶養控除が受けられません。必ず証明できる方法で支払いましょう。留学ビザ等書類とは、外国における査証(ビザ)の写しや在留カードに相当するものの写しが該当します。これらの書類で外国語表記されているものは、翻訳文が必要となる場合があります。

税理士への相談のすすめ

扶養親族の要件を満たすかどうかの判断に自信がない場合や、必要書類が複雑である場合は税理士に相談することをおすすめします。税の知識がないまま年末調整や確定申告をすると、本来適用される控除が受けられないといった残念なことが起きてしまうかもしれません。税理士に相談することで、受けられる控除と必要な書類を正確に教えてくれます。

親族が海外留学している場合は、特に必要書類が複雑なため、税理士の力を借りるのがよいでしょう。最初の年だけ相談すれば、次年度からは同じように行えばいいため、そういった活用を選択肢とするとよいかもしれません。

まとめ

所得税の扶養控除は、海外留学している親族も控除の対象となります。ただし、海外留学している親族が現地で収入要件となる金額を超過しないよう、本人によく伝えておきましょう。

1年以上海外留学している親族を対象に扶養控除を適用するには、「親族関係書類」「送金関係書類」「留学ビザ等書類」の3つの書類を提出する義務があります。これらの書類は扶養控除の適用を受けるための要件を確実に満たす必要があるため、税理士に相談することをおすすめします。

所得税の扶養控除の概要を正しく理解することで、無駄のない家計管理を実現し、安心して家族の教育を支援できるようにしておきましょう。

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