【2025年参院選後】与党過半数割れと今後の政策・日本政治の行方

[取材/文責]マネーイズム編集部

2025年7月の参院選は、与野党の勢力図を大きく塗り替え、日本政治・経済政策の転換点となりました。物価高対応や税制改革、賃上げ・地方創生策など、国民生活や企業活動に直結する政策の行方は、今後の国会運営や補正予算、アメリカとの経済交渉の結果次第で大きく変わる可能性があります。

本記事では、税制・経済政策の動向、今後の注目点まで体系的に整理し、今後の展望を解説します。

1. 第27回参院選の結果と主要政党の動向

2025年7月20日に行われた第27回参議院選挙は、日本の政治地図を大きく塗り替える結果となりました。ここからは、参院選の最終結果・議席配分、各党の議席増減と今後の役割、政局へのインパクトについて詳しく整理し、今後の日本政治の展望を解説します。

参議院選挙2025の最終結果・議席配分

2025年7月20日投開票の参院選では、自民・公明与党が改選議席で合計47議席にとどまり、非改選分を合わせても過半数を割り込む結果となりました。一方、立憲・国民民主・参政党など野党勢力が躍進し、改選後の勢力図に大きな変化が生じています。

与党改選議席数
・自民党:39議席
・公明党:8議席
非改選75議席と合わせても過半数(125議席)に3議席不足している状況となりました。

野党・新興勢力の議席数
・立憲民主党:22議席
・国民民主党:17議席
・参政党:14議席
さらに、日本共産党、日本維新の会、れいわ新選組、日本保守党なども複数議席を獲得しています。

主要政党の議席増減と今後の役割

第27回参院選の結果、自民・公明の与党は過半数を維持できず、国民民主・参政党が大きく議席を伸ばし、国会運営に影響力を持つ勢力構造へ変化しました。これにより今後の国会は「ねじれ状態」の中で、与野党協調・法案調整が不可欠となり、各党の役割がより重要になります。

自民党は39議席を獲得しましたが、改選前から大きく議席を減らしました。32ある改選定数1の1人区では14勝18敗と負け越し、前回の28勝から大幅に減少し、複数区でも東京・千葉・大阪で議席を失う厳しい結果となりました。

公明党も8議席にとどまり、埼玉・神奈川・愛知で現職が議席を失っています。自民・公明の与党合計では47議席となり、非改選の75議席を合わせても過半数の125議席に3議席届かず、重要法案の可決には他党の協力が必要な状況となりました。

立憲民主党は今回の参院選で22議席を獲得し、改選議席数と同じ横ばいの結果となりました。1人区では青森や宮崎で新人候補が勝利し、複数区でも北海道、首都圏の1都3県、愛知、広島などで1議席ずつ確保。ただし、比例代表は7議席にとどまり、全国的な勢力拡大には課題を残しました。

国民民主党は今回の参院選で選挙区10議席、比例代表7議席の合計17議席を獲得し、改選前の4議席から4倍以上に躍進しました。目標として掲げていた「16議席以上」を達成し、非改選の5議席と合わせて参院で22議席となり、予算を伴う法案を単独提出できる議席数に到達しています。

参政党は今回の選挙で比例7議席、選挙区7議席の合計14議席を獲得し、大幅に議席を伸ばしました。東京をはじめとする複数区で議席を確保し、「日本人ファースト」を掲げて支持を取り込み、新たな保守系勢力として急速に存在感を高めています。

日本維新の会は今回の参院選で7議席を獲得し、前回より1議席増と微増にとどまりました。大阪の改選定数4の選挙区では前回同様に2議席を確保し、京都でも議席を獲得するなど、関西圏での地盤を維持しています。

共産党は今回の参院選で3議席にとどまり、改選前の7議席から大幅に議席を減らしました。比例代表は2議席と、現行制度となった2001年以降で最低の結果となり、京都などの選挙区でも現職が議席を守り切れず、組織力低下が顕在化しています。

れいわ新選組は3議席、日本保守党は2議席、社民党は1議席をそれぞれ比例代表で獲得しました。また、政治団体「チームみらい」は1議席を獲得した一方、みんなでつくる党は議席を得られませんでした。

選挙結果が与える政局へのインパクト

今回の参院選の敗北で与党は過半数を割り込み、石破政権は深刻な打撃を受けています。もし石破総理が辞任すれば、国会で総理大臣指名選挙を行う必要があり、現在の少数与党の状況では、野党側に総理の座を奪われるリスクも現実味を帯びてきます。

当時の報道によれば、8月1日にはアメリカの関税措置が発動される予定であり、赤澤経済再生担当大臣が交渉を行い、追加関税15%で合意したとのことです。(2025年7月25日時点の情報に基づく)この交渉の行方は今後の経済対策や物価高対応に直結し、政権運営の成否にも影響を与える見込みです。

今回の参院選結果は、石破政権の存立を揺るがし、与野党の力関係を変化させた大きな節目となりました。今後は秋にかけて内閣改造や臨時国会の開催、経済交渉の結果が政局の行方を左右し、政策の実行力と与野党の駆け引きが日本政治の大きな焦点となります。(2025年7月21日時点の情報に基づく)

2. 参院選2025後の日本経済政策の動向

 
2025年参院選で与野党の勢力図が大きく変わったことにより、今後の日本経済政策の方向性にも変化の兆しが見え始めています。ここでは、日本経済政策の焦点と今後の注目ポイントについて整理します。

新政権・与野党の経済政策公約と争点

自民党はGDP1,000兆円・所得50%増を掲げ、成長産業・地方企業支援・AI人材投資を推進。物価高対応として子育て世代・低所得層への給付金、官公需価格転嫁による賃上げの実施に取り組むとしています。また、防災庁創設や農業支援で安全保障と経済強化の一体化を目指しています。

経済外交・安全保障では各党に共通認識があるものの、対応策や優先順位に違いがある点に注目です。自由貿易やサプライチェーンの安定化は重要な課題であり、与野党協調で「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律」が成立したように、今後も国力向上に向けた協力が期待されています。(2025年7月10日時点の情報に基づく)

選挙結果を受けた景気刺激策・物価高対策

野党は減税や廃止を訴える一方、安定財源の具体策は示せていません。自民・公明は減税を見送り、給付金による物価高対策を提示していますが、将来を見据えた税財政のビジョンは不透明です。

野党3党は財政運営で異なる立場を示しており、国民民主は積極財政と金融緩和で経済成長を重視、立憲は中長期的な財政健全化を目指し、維新は政府支出の見直しによる「小さな政府」を掲げています。(2025年7月8・10日時点の情報に基づく)

海外投資家・市場の反応と今後の日本経済

グローバル投資家によると、日本の国債市場は現在、極めて重要な分岐点に差しかかっています。

また、金融市場では、積極財政志向が強い野党の影響力が高まることで、財政環境がさらに悪化するとの見方が強まっています。このため長期国債の利回りは上昇傾向にあり、円安傾向も続いている見解です。

特に、消費税減税が実施される場合には、海外の主要格付機関が日本国債の格付けを引き下げる可能性も指摘されています。その結果、投機的格付けに近づくおそれもあり、海外投資家の動向が今後の日本経済と金融市場に大きな影響を及ぼす可能性があります。(2025年7月17・22日時点の情報に基づく)

3. 税制改革—参院選2025後の方向性と議論

 
ここでは、税制改革をめぐる動向と注視すべき論点を整理します。

注目の消費税・所得税・インボイス制度の行方

参院選で消費税減税は最大の争点となっており、れいわ新選組、共産党、立憲民主党など野党各党は減税や廃止を主張していますが、安定した財源の確保策は示されていません。

一方、自民・公明両党は減税を見送り、給付金による物価高対策を進めていますが、将来の税財政の方向性については依然として不透明な状況です。

また、令和7年度の与党税制改正大綱では、所得税の基礎控除見直しや、大学生世代の子どもを対象とした新たな控除の創設などが盛り込まれ、子育て世帯や若年層への支援策が打ち出されています。

インボイス制度については廃止を求める声が高まっており、2025年3月には「消費税廃止各界連絡会」に野党議員が出席し、制度廃止を求める約15万人分の署名が提出されました。また同月には全国各地で重税反対集会が開かれ、共産党、社民党、立憲民主党の議員らが参加しました。

2025年4月時点で国民民主党もインボイス制度廃止を政策として掲げており、消費税減税・廃止論とあわせて制度見直しの行方が今後の大きな焦点となっています。(2025年6月26・7月8日時点の情報に基づく)

各党の税制改革案比較:減税・増税・控除

物価高が続く中、消費税減税や所得税控除を含む税制改革は家計支援策として大きな注目を集めています。

自民党
消費税減税に反対し、財政健全化と社会保障維持を優先。
減税を公約に盛り込まず、物価高対策は給付金などで対応。

公明党
一時、食料品の軽減税率を8%→5%へ恒久的に引き下げ検討。
しかし、財政規律を重視する自民との調整で公約から除外。

立憲民主党
2026年度限定で食料品の税率をゼロにする公約。

日本維新の会
食料品の軽減税率ゼロを2年間限定で実施方針を示す。

国民民主党
消費税率を一律5%に引き下げる時限措置。
所得税課税最低限引き上げ、若者向け減税など包括的減税策を掲げる。
年間の減収額は約15.3兆円と試算され、他党より大規模。

各党の減税・控除拡充案は物価高対策として国民生活を支える重要な策ですが、減税による減収分の具体的な財源確保策なしでは実現が困難です。将来の日本経済と社会保障制度の持続可能性を見据えたうえで、減税と同時に財政健全化の道筋を示すことが、各党に求められています。(2025年6月18・7月16日時点の情報に基づく)

「103万円の壁」や給付付き税額控除など新制度の実現可能性

「103万円の壁」の引き上げや給付付き税額控除の導入は、物価高や人手不足が続く中で注目されています。自民、公明、国民民主の3党は「103万円の壁」を178万円に引き上げる方針で合意し、パートや非正規労働者の就労促進と所得向上を目指しています。

一方で税制全体については、累進課税を強化すべきとの意見と、税負担のフラット化を求める声が政党間で分かれており、議論は今後本格化する見通しです。

立憲民主党は、中低所得者の負担軽減を目的に給付付き税額控除を公約に掲げ、軽減税率(食料品など8%)を1年間0%に引き下げる時限措置を提案。最大2年まで延長可能としていますが、野田代表が財政健全性を重視していることから、党内では減税方針をめぐる議論も続いています。

新制度の実現には財源確保と制度設計の具体化が必要であり、今後の国会審議が大きな焦点となるでしょう。(2025年6月26日時点の情報に基づく)

4. 今後の展望【政策転換の注目点と国民生活への影響】

物価高と人手不足、地域経済の疲弊という課題の中で、各党が掲げる賃上げ・減税・子育て支援策が実行されるかどうかは、私たちの生活や企業経営に直接的な影響を与えるでしょう。

ここでは、政策転換が国民生活と企業活動に与える短期・中長期の影響を整理し、今後注視すべきポイントを解説します。

生活や企業活動に与える短期・中長期の影響

今後の税制・労働政策の行方は、家計や企業経営に短期・中長期で大きな影響を与える可能性があります。

企業税制では、国民民主党が賃上げを実施した企業への法人税・固定資産税の減税を掲げ、企業の賃上げを誘導する姿勢を強調。一方、自民党や維新は具体策を示しておらず、立憲民主党は租税特別措置や政府基金の見直しによる優遇制度縮減を重視する立場を取っています。

労働政策では、立憲・国民が最低賃金を時給1,500円以上へ早期に引き上げる方針を示し、企業の人件費負担増となる可能性があるでしょう。自民党は「段階的な引き上げ」にとどめているものの、政府方針では「2020年代に全国平均1,500円」と掲げ、中長期で最低賃金引き上げに向けたロードマップを示しています。

これらの政策は、生活防衛と賃上げを後押しする一方で、企業活動にはコスト増の影響を与える可能性があり、今後の議論の行方が重要となるでしょう。(2025年7月10日時点の情報に基づく)

地方創生・雇用・子育て支援策の変化

物価高対策と人口減少への対応として、地方創生・雇用・子育て支援策の変化が注目されています。

自民党は物価高騰下の生活支援として、子ども・住民税非課税世帯に1人4万円、その他の方々に2万円の給付を実施すると表明。また、正規・非正規の格差是正や最低賃金の段階的引き上げによる所得向上型の改革を進め、すべての働く人の所得を増やす方針です。

また、観光振興や農林水産物輸出の拡大、地方大学・自治体・企業の連携強化などを通じて、地方経済の活性化を図る「地方創生2.0」の実現を目指しています。

一方、日本共産党は不登校休業制度やフリースクール費用の軽減、親同士のつながり支援など親子支援を手厚くする政策を掲げ、安心して子育てできる環境づくりを推進。また「非正規ワーカー待遇改善法」を制定し、非正規労働者の処遇改善と正規雇用化を進める方針を示しています。

これらの施策は、地域での暮らしや働き方、子育て環境の変化に直結する内容であり、今後の議論の行方が注目されます。(2025年6月5日・7月24日時点の情報に基づく)

今後の政策決定プロセスと注視すべきポイント

今後の日本経済政策や物価高対策の行方を左右する重要な政治日程と政策決定プロセスが動き出しています。

自民党は参院選での敗北を受け、今月31日に両院議員懇談会を開催し、党内結束の確認と意見集約を図る方針です。さらに来月1日にはアメリカの関税措置が発動予定であり、赤澤経済再生担当大臣が訪米交渉を進め、追加関税15%で合意しています。合意したものの締結前であるため、今後の進展が焦点となります。(2025年7月25日時点の情報に基づく)

また、秋には物価高対応や経済対策の補正予算編成の必要性が高まれば、臨時国会が開かれるのが通例であり、与野党間での駆け引きが本格化する可能性があります。

今後の政策決定プロセスは、物価高対策、補正予算の規模、内閣改造のタイミング、アメリカとの経済交渉の行方が重要な注目ポイントとなり、日本経済の方向性に大きく影響を与える見通しです。(2025年7月21日時点の情報に基づく)

まとめ

2025年参院選で与党が過半数を割り込み、野党が躍進したことで、国会はねじれ状態の中で重要政策の合意形成が不可欠となりました。物価高対策や賃上げ、税制改革、子育て支援策などの政策実行の可否は、私たちの生活や企業経営に短期・中長期で直接影響を与えます。

今後の補正予算、内閣改造、野党の協調姿勢、国際経済環境の変化を含めて、政局と経済政策の行方を注視しながら、自身の生活・投資・ビジネス戦略を柔軟に調整していくことが大切です。

中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。

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