後払い決済に関するトラブル事例と対処法!安全に活用するための予防策も解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

後払い決済は、インターネットショップで商品を購入する際に利用できる支払い方法の1つです。クレジットカードが不要で、商品を確認した後に支払う仕組みのため、手軽に利用できるメリットがあります。

しかし、後払い決済の普及に伴いトラブルも増加しているのが現状です。本記事では、安心してサービスを活用するために、後払い決済の仕組みやよくあるトラブルのパターン・事例・対処方法、安全に利用するためにできる予防策を解説します。

1. 後払い決済トラブルの実態と急増する相談件数

後払い決済の普及に伴い、トラブルも増加しています。ここでは、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録されている後払い決済に関する相談件数の最新データ・普及した背景・規制強化の動向などについて解説します。

国民生活センターが発表した最新データ:3年で3倍の相談増加

後払い決済は、インターネットショップで商品を購入する際に、利用される支払い方法の1つですが、近年、消費生活センターへの後払い決済に関する相談が増加しています。
国民生活センターによると、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録された後払い決済に関連する相談のなかで、販売方法に問題がある件数は以下の通りです。
・2021年度:14,555件
・2022年度:33,206件
・2023年度:34,137件
・2024年度:43,964件

2021年度と2024年度を比較すると、約3倍に増加しています。

後払い決済サービスとは?基本的な仕組みと普及背景

後払い決済サービスとは、インターネットショップで商品を購入する際に、商品を受け取った後に代金を支払う方法です。支払いは、コンビニや銀行、郵便局などで行えます。

後払い決済では、商品注文後に決済代行会社が販売業者からの情報を基に、審査を実施します。審査に通ると、販売業者は購入者に商品を発送し、決済代行会社は販売業者に代金を立て替え払いする仕組みです。

後払い決済サービスのメリットには、以下のような点が挙げられます。
・クレジットカードを持っていない人も利用できる
・クレジットカード情報を販売業者に伝える必要がない
・商品を確認してから支払うため安心して購入できる

インターネットショップでもっとも多く利用されている支払い方法は、クレジットカード決済です。しかし、クレジットカード決済は便利に利用できる一方、不正利用の被害額が近年増加傾向にあり、情報漏洩を懸念する人も少なくありません。

その点、後払い決済は、クレジットカード情報を入力する必要がないことからも、幅広い世代に普及しています。

金融庁・消費者庁が注目する規制強化の動向

後払い決済やキャリア決済に関連するトラブルが深刻化していることから、内閣府消費者委員会では「支払い手段の多様化に伴う消費者問題」について検討が進められています。中間整理案によると、後払い決済について、収入確認や信用調査などの審査が不十分な状態で利用されるケースがあり、多重債務につながる恐れがあることが指摘されています。

また、詐欺に悪用されるケースが増加していることも示されました。そして、現在の法律が複雑な決済システムに対応できていないことが共通認識とされました。

こういった問題解決には、行政規制に加え、被害者を救済するための民事ルールを整えることも重要であるとの意見が出ており、さらに議論が重ねられる見込みです。(2025年8月25日時点の情報に基づく)

2. よくある後払い決済トラブル事例と被害パターン

後払い決済に関連するトラブルは、身に覚えがない請求トラブル、定期購入解約トラブル、悪質販売業者によるトラブルなどのパターンがあり、幅広い年齢層で発生しています。
ここでは、それぞれの被害パターンとその事例を紹介します。

身に覚えのない請求トラブル:不正利用・なりすまし被害

後払い決済トラブルの1つに、決済代行会社からSMS(ショートメッセージサービス)が届き、購入した覚えがない商品の代金を請求される事例が報告されています。

40代女性に、決済代行会社から「決済が承認されました」とのSMSが届き、購入・受け取りをした記憶がない決済3件(約3万4,000円)を請求された事例があります。インターネットショップが実施した調査により、3点の商品は被害者と無関係の地域へ届けられていたことが判明しました。

しかし、決済代行会社からは「支払いをしなければ弁護士から請求書を送る」と支払いを求められ、適切な対応がなされなかったといいます。

被害者の住所・電話番号・メールアドレスなどの個人情報を入手した第三者が、被害者になりすましてインターネットショップで注文し、商品を受け取ったと考えられます。

定期購入解約トラブル:解約後も続く請求問題

後払い決済に関するトラブルのなかでも、定期購入に関するトラブルは、とくに多く発生しています。

たとえば、70代女性が「初回割引あり・いつでも解約可能」と広告に記載された化粧品を、後払い決済で購入した際にトラブルが発生した事例があります。初回の商品が届いた後に解約を申し込むと、販売業者から解約費用と2回目の商品代金を請求されたのです。

広告だけでなく、契約内容を事前にしっかりと確認することが大切です。

悪質販売業者による後払い決済悪用事例

悪質な販売業者によって、次のようなトラブルも発生しています。

スマートフォンでゲームをしている際に「1回限り・定期縛りなし」と記載された化粧品の広告を見て、後払い決済で購入したところ、実際は定期購入だった事例があります。商品を受け取り支払った後に、不安を感じて販売業者に確認すると「初回で解約する場合は、定価との差額の支払いが必要」と返答されました。

また、10代男性が自動車教習所に申し込んだ翌日に解約を申請したところ、解約が認められず、代金(23万円)を決済代行会社から請求された事例もあります。申し込みの際には、後払い決済について説明されていませんでした。

このように、契約時の説明不足や、問題発生時の不十分な対応によるトラブルが発生しています。

3. トラブル発生時の正しい対処法と相談先

利用した覚えのない後払い決済の請求や、契約内容と異なる請求をされた場合は、まず販売業者や決済代行会社へ連絡しましょう。不安があるときは、最寄りの消費生活センターへ無料で相談が可能です。

また、不正利用や詐欺の疑いがある場合には、警察へ被害届を提出するケースもあります。ここでは、それぞれの対処方法について解説します。

初期対応の手順:販売業者・決済事業者への連絡方法

トラブルが発生した場合は、まず請求内容が自分や家族が注文した内容と一致しているかを確認します。注文した覚えのない請求や、契約内容と異なる請求であれば、速やかに販売業者へ連絡し、状況を伝えましょう。

販売業者の対応に不安がある場合は、決済代行会社にも相談すると安心です。

消費者ホットライン「188」と消費生活センターの活用法

後払い決済を利用した取引に関して不安を感じた場合は、早めに最寄りの消費生活センターへ連絡しましょう。消費生活センターは、地方自治体が運営する公的相談機関で、商品やサービスに関するトラブルについて無料で相談できます。

全国共通の「消費者ホットライン(188番・いやや!)」へ電話すると、最寄りの市町村や都道府県が運営する消費生活センターなどに転送されます。

弁護士からの督促状が届いた場合の適切な対応

督促状とは、設けられた期日までに代金を支払わなかった場合に、支払いを促す目的で送付される書類です。SMSやメール、電話などでの催促に応じなかった場合に送られることがあります。

督促状が届いたときは、まず内容を確認し、自分や家族が実際に利用したものかどうか確認します。利用した代金の支払いを忘れていた場合は、期日までに支払いましょう。

身に覚えがない架空請求の場合は、支払う必要はありませんが、法的手続きを進められる可能性もあるため、最寄りの消費生活センターに相談して対応すると安心です。

警察への被害届提出が必要なケースとは

警察への被害届が必要なケースは、利用した記憶がない請求や、詐欺の疑いがある場合です。たとえば、アカウントを乗っ取られて高額な代金を請求されたケースや、悪質な業者に不正利用されたケースが該当します。このような場合は、決済代行会社や所轄の警察へ相談し、被害届を提出します。

4. 後払い決済を安全に利用するための予防策

後払い決済を安全に利用するためには、契約前の確認、信頼できる業者選び、個人情報管理、計画的な利用が大切です。ここでは、それぞれについて解説します。

契約前の確認ポイント:利用規約・解約条件のチェック方法

契約する前に、広告だけでなく契約内容を十分に確認することが重要です。後払い決済サービスに関するトラブルのなかで、とくに多く発生しているのが定期購入に関するものです。

定期購入を初回だけで解約する場合、解約費用がかかるケースがあります。また広告に「定期縛りなし」や「回数縛りなし」と記載されている場合でも、購入者が解約を申し込まない限り、定期的に商品が届くパターンが多い傾向にあります。

とくに「低価格や無料」をアピールしたり「今だけのキャンペーン」といった広告で注文を急がせたりする場合は、注意が必要です。

国民生活センターは、インターネット通販を契約する前に、次のような点をチェックするよう呼びかけています。定期購入かどうかをチェックし、定期購入の場合は、継続期間や購入回数、解約条件、解約方法など、詳細な契約内容を確認します。

契約内容が記載されている部分は、スクリーンショットのような方法で保存しておきましょう。

信頼できる販売業者・決済サービスの見分け方

信頼できる販売業者や決済代行会社は、次のような特徴があります。

・運用期間やユーザー数の実績があり知名度が高い
・企業の情報(社名・住所・電話番号など)が明記されている
・利用規約や返品・キャンセル条件がわかりやすく示されている
・問い合わせ先が明記されている
・無料や不自然に安い価格を強調していない
・本人確認の仕組みが整っている

このような点を確認することで、信頼できる販売業者や決済代行会社を見分けられます。

個人情報管理と不正利用防止のセキュリティ対策

販売業者や決済代行会社には、個人情報保護や不正利用防止に対しての対策が求められており、次のような対策を実施している企業があります。

・個人情報を保護するシステムの整備
・承認コードや身分証による本人確認
・多要素認証
・取引の監視
・利用上限の設定

消費者も、信頼できる販売業者や決済代行会社を利用し、請求書や電子バーコードの紛失・盗難を避け適切に管理する必要があります。

計画的な利用のための家計管理と支払い能力の把握

後払い決済を利用する際の注意点として、自分の支払い能力を超えて利用してしまうリスクがあります。クレジットカード決済の場合は、支払い履歴や年収、雇用形態などの情報を基に、支払い能力について審査が行われます。

一方、後払い決済の場合は、審査が簡易的に行われる、あるいは実施されないこともあるのです。電話番号やメールアドレスなどの情報を入力するだけで利用できるケースもあり、収入や現金がなくても利用できてしまいます。

さらに複数のサービスを併用すると、利用状況を把握しづらくなり、使いすぎによる支払い負担や遅延につながる恐れがあります。家計管理を徹底し、自分が利用できる金額を把握して計画的に活用することが大切です。

まとめ

後払い決済は、インターネットショップで商品を購入する際に、利用される支払い方法の1つですが、消費生活センターへの後払い決済に関する相談が増加しています。後払い決済に関連するトラブルは、身に覚えのない請求トラブル、定期購入解約トラブル、悪質販売業者によるトラブルなどのパターンがあり、幅広い年齢層で発生しています。

安全に利用するためには、契約前の確認、信頼できる業者選び、個人情報管理、計画的な利用が大切です。

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