
【経営 前編】ピンチの経営を立て直す「経営改善計画」 重要なのは“社長自ら考える”こと
唐澤会計事務所 所長 唐澤寛氏事業が赤字になり、このままでは金融機関の融資も受けられない――。経営環境の悪化などにより、そうした事態に陥るリスクは、どんな中小企業にもある。そんなときに経営立て直しの道筋を描き、金融機関の信頼もつなげる武器になるのが「経営改善計画」だ。一般の事業計画との違いはどこにあるのか、策定に向けたポイントは? この分野で実績とノウハウを持つ唐澤会計事務所(東京都小金井市)の唐澤寛所長(公認会計士・税理士)に話を聞いた。
記事では、「前編」で経営改善計画とはどういうものか、「後編」で計画策定に際してのポイントなどを中心にうかがった。
事業計画とどこが違うのか
――先生は、公認会計士の資格をお持ちです。
唐澤(敬称略) はい。私自身は、非常勤で会計監査もやっています。対象は、一般企業と金融機関が半々くらいでしょうか。
この事務所の開設は1968年で、私は二代目です。お客さまは、業種の偏りなどはなくて、強いて言えば、建設業の方が多いですね。記帳や税務申告はもとより、経営に関するさまざまなご相談に乗り、会社の成長に寄与していける事務所を標榜しています。

――今回は、そんな先生に、事務所のホームページにも掲げられている「経営改善計画」について、うかがっていきたいと思います。最初に、そもそも経営改善計画とはどういうものなのか、説明していただけますか。
唐澤 ひとことで言うと、現状のままでは事業が立ち行かなくなっている会社を対象とした経営計画のことです。中小企業でも、例えば、金融機関から新規に融資を受けようとするような場合には、事業計画を作成して提出する場合があります。そういう「平時」の経営計画とは性格が違い、あくまで業績が悪化して、ピンチに陥った会社の再生を目的としたもの、と理解してください。
そうした企業は、金融機関のランクでいえば、多くの場合「破綻懸念先」だと思います。そのままで追加融資などを頼んでも、応じてはもらえないでしょう。しかし、ちゃんとした経営改善計画を作ることにより、格付けが「要注意先(その他)」に1ランクアップして、融資がOKになることもあるのです。
――なるほど。今は業績が悪くても、ある程度先の見通しが立っているのなら、融資も可能になる。
唐澤 金融機関としても貸し倒れは最悪ですから、潰れてほしくはないでしょう。ですから、金融機関サイドから経営改善計画の作成を求められることも多いですね。そうやって、少しでも再生の可能性を探るわけです。
まずは現状分析から
――追い詰められた会社からすると、経営計画がその命運を握ることになります。どのような計画が求められるのでしょうか?
唐澤 普通の事業計画と違い、まずは「なぜうまくいかなかったのか」という明確な現状分析が必要になります。そこがはっきりしないと、有効な改善策は見つけられませんから。
そのうえで、ではどのようにして立て直していくのか、というプランニングを行います。例えば、原価をかけすぎていたことが明らかになったら、どのようにしてそれを減らすのか。新たな市場を開拓するのなら、そのためにどのような手を打つのか。その結果、利益はどれだけ確保できるのか――。そうしたことを、具体的に詰めて、数字に落とし込んでいくんですよ。
――そのようにうかがうと、何か特別なことをやるのではないようにも感じます。
唐澤 そうです。こうした視点で常に自社の現状を見直して、対応策を考えていくのは、日常の経営にとっても大事なことだといえるでしょう。実践するのは簡単ではなく、実際にやっている会社も多くはないと思うのですが(笑)。
とはいえ、赤字に陥り、それがないと融資もままならないとなると、悠長なことは言っていられないわけです。しかも、改善計画は、具体的で説得力のあるものが求められます。当然のことながら、経営者の「経費を減らします」「売上をこれだけ伸ばします」という主観的で独りよがりな目標ではダメで、しっかりした具体的施策の裏打ちのあるものでなくてはなりません。
――計画は、案件ごとのオーダーメイドのようなかたちになるのでしょうか?
唐澤 経営改善計画は、すべてそうです。金融機関などには、一応フォーマットも用意されていますけど、そこに数字を入れ込めば完成する、といったものではないのです。
ヒアリングを基に、5年先までの計画を作成
――貴事務所も経営改善計画の「フォーマット」をお持ちですね。どのようなサポートを行うのか、説明していただけますか。

唐澤 わかりました。当事務所はTKC全国会のスキームをベースにしております。
会社の状況やニーズにもよりますが、大きな流れとしては、さきほども申し上げたように、改善ポイントの抽出といった「現状診断」からスタートし、業績回復・改善のための具体策の検討、経営目標達成のための行動計画の策定を行い、その結果を「経営改善計画書」にまとめます。
――「計画書」は、具体的にどのような内容になるのでしょうか?
唐澤 箇条書きにすると、次のようなものを作成します。
- ・3期比較変動損益計算書
- ・3期比較貸借対照表
- ・3期比較経営分析表
- ・5か年目標変動損益計算書
- ・5か年目標損益計算書
- ・5か年目標貸借対照表
- ・5か年予測キャッシュ・フロー計算書
- ・商品グループ別売上高表
- ・売上高・限界利益計画表
- ・経営改善・経営革新の対策スケジュール表
- ・目標達成のための行動計画表
- ・既存借入金返済計画表
さらに、計画が実行されてからは、「業績管理の仕組み作り」もお手伝いするんですよ。経営改善計画の内容に加え、短期経営計画策定の支援や、予算実績管理に関する月次経営資料情報の提供などを行い、いわゆる「P(Plan)-D(Do)-C(Check)-A(Action)サイクル」の定着を目標とした管理システムの定着をサポートします。
――あえてうかがうと、お話しになったような計画の指標の中で、特に重視するものはありますか?
唐澤 特に何かの数字がポイントになるというよりは、さきほども言ったように、全体として実現可能性があるのかどうか、といった点が大事になりますね。もちろん、現状は赤字なのですから、きちんと利益の出る計画にしなくてはなりません。ただ、そこに妥当性があるのかどうか。金融機関なども、そうした視点で評価するのではないかと思います。
――経営改善計画は、5年が基本になるのでしょうか?
唐澤 そうですね。計画を立てて再スタートしたといっても、すぐに成果は出ないのが普通です。5年ぐらい先を見据えたものを作るのが基本になりますね。
そのうえで、金融機関の求めがある、などの必要に応じて、予算通りに実績が上がっているのかのモニタリングを継続的に行い、達成率を明確にします。もし、未達が大きければ、その原因を明らかにしながら、計画自体の見直しも実施していく。そんなかたちでサポートするわけです。
――計画を作って終わり、ではないんですね。
唐澤 そこもケースバイケースではあるのですが、けっこう長いお付き合いになることもありますよ。
「後編」では、経営改善計画策定のポイント、心構えなどについて、引き続きお話をうかがいます。
自計化の導入支援をはじめ、電子申告、電子帳簿保存、書面添付制度への対応を専門的にサポート。黒字決算を維持する経営体質への転換を目指した経営支援にも注力しており、税務の専門家として的確かつ実効性の高いサービスを提供する。
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