【創業 後編】「何もわからない」ところからの創業 軌道に乗せていくのに、必要なものとは

鈴木慎吾税理士事務所 所長 鈴木慎吾氏
[取材/文責]マネーイズム編集部

起業1年で法人化を決断

――多くの起業家の姿をご覧になってきたと思いますが、先生の印象に残る事例をご紹介いただけますか。

鈴木 前編でお話したように、独立・開業のステージからお付き合いがあるお客さまがほとんどなのですが、その中に美容系サロンを展開する30代の女性経営者がいらっしゃいました。個人事業からスタートして順調に売上を伸ばし、1年後には「新たな店舗を出したい」と。

そのときに検討課題になったのが、このまま個人事業で行くのか、思い切って法人にするのか、ということでした。現状かなり利益も出ていて、成長性もある。何よりご本人の成長意欲が高い。

――前編でお話いただいた法人化の判断基準を満たしていますね。

鈴木 それで、このタイミングで会社にしましょう、ということになったのです。それを踏まえてあらためて事業計画を作成し、新たな融資を受けることもできました。

このときも、社会保険の問題を含めて、しっかり検討を行ったのは、言うまでもありません。従業員がこれだけいるから、社会保険に加入すれば、経費はこれくらい増えます。でも、利益の伸びがこれくらい見込めるのなら、問題ないですね――。そうした話をして、十分納得した上で、法人化の方針を選択してもらったのです。

――やはり本人の意志が重要ですから。

鈴木 そうです。同時に話し合いの中で、私自身もその事業の法人化にどんどん確信が高まったんですよ。これはいけるんじゃないか、と。そういう意味で、非常に手応えを感じた案件の1つでした。

創業後のスタンスもさまざまある

鈴木 印象的という意味では、建設業を営んでいる方で、スイーツのフランチャイズを始めた事例があります。なぜスイーツかというと、その方はお酒が飲めず、甘いものが好きだから(笑)。以前からやってみたかったのだそうです。

――完全な異業種ですね。何かの事業で成功した人が、料理に興味があるからと飲食店を始めたのだけれど、結局うまくいかなかった、といった話もよく耳にするのですが(笑)。

鈴木 その方の賢いところは、いきなりゼロベースから始めたりせずに、フランチャイズという形を選んだことです。しっかりリスクヘッジしていた。で、店を開いてみたら、けっこうお客さんが集まった。建設業との“二足の草鞋”でしたが、「もう1店舗出したい」とおっしゃっていましたよ。

店舗運営などのノウハウを身に付けたら、独自の展開をすることもできますよね。フランチャイズだと、加盟料などのコストが大きいですし、本当にやりたいことができませんから。

――何歳くらいの方なのですか?

鈴木 当時40代でした。そういうふうに、40~50代くらいになって本業がある程度仕組み化できた段階で、別のことを始めるというのも、見ていて理屈抜きに面白いですね。もちろん、突拍子もないチャレンジは、お勧めしませんよ(笑)。

――創業してからの方向性も、人それぞれなんですね。

鈴木 お客さまの中には、ずっとプレイングマネージャーで、自ら現場に身を置く人もいます。一方で、仕組み化を完璧にやって、自分は経営者として組織を動かすことに専念する方もいる。

どっちがいい・悪いではなく、どちらを目指すこともできるのです。そこも独立・開業の醍醐味といえるのではないでしょうか。

成長のフェーズで「悩み」も変わる

――そうした事業の成長とともに、創業時には「何がわからないのかわからない」状態だった本人の問題意識も、大きく変わってくるのでしょうか?

鈴木 事業を始めると、必ず直面するのが「とにかく売上が足りない」という悩みです。そこを抜けると、人の採用や教育、資金繰り、さらには「自分はこのままでいいのか」といった悩みが顕在化してきます。

私自身、「いつか来た道」なので、経営者の方の話を聞いていると、「ああ、ついにこういう悩みが出てきたか」と。でも、それは嬉しいことでもあるのです。事業が成長してきた証ですから。そうした前向きな悩みに応えられるようサポートしていくのには、大きなやりがいを感じます。

――成長段階に応じたアドバイスを行っていく、ということですね。

鈴木 例えば、「人の問題」が大きくなってきたら、社会保険労務士を紹介して、サポートしてもらう。資金繰りがネックになっているのだったら、信用金庫などからの融資を検討する、といった手立てを打ちます。事業規模が大きくなってくると、コスト削減のために自分でやっていた経理周りの仕事量も増えるでしょう。本業に集中して稼いでもらうために、事務所でその代行を引き受けることもします。

事業計画がカギになる創業融資

――話を創業時に戻すと、さきほども公庫の創業融資について触れられましたが、やはり当座の資金をどう確保するのか、というのは大きなポイントになりますね。

鈴木 みなさん若いですし、お金の余裕がある人は少ないでしょう。起業後の運転資金などを賄えるかどうかは、事業の行く末を左右します。融資が必要ならば、確実に受けられるようにしなくてはなりません。何の実績もないのに、いきなり普通の金融機関に行っても貸してはもらえませんから、ターゲットは日本政策金融公庫の創業融資になります。

――創業融資に関しては、法人のほうが審査を通りやすい、というようなことはあるのでしょうか?

鈴木 それはありません。個人でも、創業間もない場合には、融資を受ける資格があります。個人にしろ法人にしろ、ポイントは、事業が成長して借りた資金を返済できるのか、その道筋を示した事業計画になっているのか、ということに尽きます。

宣伝のようで恐縮ですが、当事務所でサポートしたお客さまに関しては、ほぼ100%審査が通っているんですよ。

――それはすごいですね。公庫の審査もそんなに易しくない、という話も聞きます。

鈴木 自分で申請した場合、融資が下りる確率は半数にも満たない、ともいわれますね。事業の成長性に問題がないのならば、そこから先は、事業計画の作り方がカギになるのではないでしょうか。

あらためて述べておけば、創業融資に限らず、金融機関から事業資金を借りる際には、しっかりした事業計画の提出を求められます。創業融資に関しては、公庫の用意する計画書のフォーマットもあります。ただし、1枚の用紙に記入する形になっていて、それでは通り一遍のことしか書けません。

当事務所は、独自にフォーマットを用意していて、例えば、消費者相手の業種であれば、近隣の同業者と比較した自らの優位点を具体的に記載します。そうすることで、「だからこれだけの儲けが見込めます」「間違いなく返済可能です」という説得力のあるロジックにするんですよ。

――創業支援という役割はありつつも、公庫も金融機関ですから、融資先の返済能力には注目せざるをえないでしょう。計画は、お客さまと一緒に作り上げていくイメージでしょうか。

鈴木 はい。最初の打ち合わせでいろいろ「宿題」を出させていただいて、何度か面談しながらブラッシュアップします。通常は、その作業に2週間ぐらいかけますね。

そのようにして形にするので、お客さまは公庫の担当者に対して、計画の中身をしっかり説明することができます。それも大事なことで、どんなに良いプランでも、部外者が説明するわけにいきませんから。

「わからないこと」は相談する

――創業を成功させるためには、それをしっかりサポートしてくれる存在が必要だということが、よくわかりました。

鈴木 事業を行う上では、「知らない」ことでやり方を間違えたり、損をしたりすることが少なくありません。独立というのは、人生の転機でもあるのですから、専門家の話を聞いて正しい知識を身につけ、自分なりの判断を下していく、という姿勢が特に大事になるのではないでしょうか。

――最初に相談するのは、税理士がいいのでしょうか?

鈴木 私はそう思います。税理士は、なんといっても数字に強いのが強みです。必要な手続きや課題に応じて、司法書士や社労士さんなどにも繋げてもらえますから。

――事例も含めたお話は、大変参考になりました。最後に、貴事務所の今後の展望を聞かせてください。

鈴木 これからもお客さまの創業サポート、その成長段階に合わせたサービスの提供をメインに、貢献していきたいと考えています。ニーズを先取りして、こちらからさまざまな提案を行える事務所にしたいですね。

加えて、ご家族も含めたお客さまの人生全般をサポートできたら、さらに喜んでいただけるかもしれません。そうした展開も検討していきたいと思っています。

――今後の発展を期待しています。本日は、ありがとうございました。

注:記載の「事例」に関しては、情報保護の観点により、お話の内容を一般化したり、シチュエーションなどを一部改変したりしている場合があります。

起業・会社設立・スタートアップに強い浜松市の税理士事務所。会計業務はもちろん、融資支援や経営計画書の作成支援など、事業のフェーズに合わせた幅広いサービスを展開。「本音で経営の相談ができる税理士」として、創業期の悩みから成長戦略までトータルでサポートする。
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