【DX 前編】中小企業のDXのよき相談相手を目指し RPA、AIを活用した業務改革を推進中

税理士法人CROSSROAD 代表社員 三嶋政美氏
[取材/文責]マネーイズム編集部 [撮影]本吉孝光

業務プロセスを自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用が広がっている。税理士法人CROSSROADは、社内でこのRPAとAIを活用した業務の効率化を進め、着々と成果を上げつつある。今後は社内での実践を踏まえ、顧客をはじめとする中小企業のDXの推進に向けた提案、サポートを行っていく考えだ。代表社員の三嶋政美氏(公認会計士・税理士)と、デジタル戦略推進室の西田清和氏に、同社の取り組みについて聞いた。
記事は、「前編」では同社の業務効率化の現状について、「後編」では今後の戦略、中小企業がDXを考える際のポイントなどを中心にまとめている。

RPAの運用経験を持つ人材が中心に開発を推進

――事務所の概要からお聞かせください。

三嶋(敬称略) 顧問先は、特に何かの業種に特化しているというようなことはなくて、規模も含めてさまざまなお客さまがいます。数としては、900件を超える水準です。

税理士法人のほか、社会保険労務士法人、BPO事業の法人とともにCROSSROADグループを形成していて、大阪本社、東京支社の2拠点体制でサービスを提供しています。グループ全体で約100名、税理士法人は65名ほどの体制です。

――貴社は、税務をはじめとする業務のDX化、具体的にはRPAとAIを活用した効率化を積極的に推進しているとお聞きします。今回は、そうした貴社ご自身の先進的な取り組みの中身を中心に、お話をうかがいたいと思います。

三嶋 わかりました。初めに当社のDXの現状について説明します。当社は2014年頃からクラウド会計を、2016年にChatWorkを導入するなど、かねてから積極的にDXを推進してきました。

そのようななかRPAの導入を始めたのは、今から2年ほど前のことです。RPAというのは、簡単にいえばロボットにパソコンの操作を記憶させ、人の代わりをしてもらうシステムです。

当時はAIも今ほどは騒がれていない時代でしたが、DX推進の必要性は強く感じていて、そのためにはこのシステムの活用がカギになるのではないか、という問題意識が私にはありました。ただ、関連する情報収集などを行ったものの、実際に当社に導入した場合にうまく運用できるのだろうかという点で、いまひとつイメージが湧かなかった。

そんなとき、会計事務所でRPAの開発を行っていた西田をたまたま採用することができたのです。西田はITベンダーに勤務していた経験もあり、税理士試験に合格していました。採用面接で初めてそのキャリアを聞いて、「ならば、当社でもシステム構築のほうをやってほしい」と。それでメンバーに迎え、2024年末に社内にRPA推進室を立ち上げました。

その後、AIを本格的に活用すべき時代の到来を展望しながらいろいろ準備を進めてきたのですが、2025年末に今度はAIに詳しい外部の人材にコンサルタントとして入ってもらい、RPA推進室をデジタル戦略推進室に改組しました。現在、そこが司令塔になって、さまざまな取り組みを具体化しています。

年3,500時間の工数削減を目指す

――「ロボットの活用を始めた」というお話ですが、具体的にはどのように導入を進めたのでしょう?

西田 RPAといえば、それなりのITスキルを持った技術者が開発するというのが常識でした。でも、技術者はそれぞれの業務の詳しいところまでは知りませんから、現場が本当に求めるものを作るのは難しい。それでは、効率化には限界があります。

そこで当社では、業務を知る現場の担当者が、自分で開発・改善することが可能なRPAソフトを入れることにしました。この点が、まずは大きなポイントでしたね。

実際にソフトを導入したのは、2024年の11月です。そして、約1週間で第1号のロボを開発し、すぐに実戦に活用しました。ちょうど税務申告システムのリプレースを行うことになっていたのですが、従来のシステムから約3万5,000件のデータの取り出しをおよそ1ヵ月で完了させたんですよ。ロボがなかったら、とても無理だったと思います。

デジタル戦略推進室の西田清和氏

三嶋 ちょっと補足しておくと、その時期に申告ソフトの切り替えを行ったんですね。ただ、以前のシステムに入っているお客さまの税務申告や各種届出などのデータを、新しいシステムに自動的にエクスポートすることはできませんでした。大切なデータに何かあっては困りますから、すべてをPDFファイルに保存することにしたのです。

3万5,000件の処理を人手で行うとしたら、どれだけ膨大な時間とエネルギーが必要になるかは、ご想像の通り。その作業を全部ロボットがやってくれたというわけです。

――なるほど。それは目に見える効率化ですね。

西田 その後、社内にRPA推進のためのプロジェクトチームを組織して、2025年4月から業務への本格的な適用を開始しました。

成果からお話しすると、RPAの活用により、2025年末までの8ヵ月間で1,600時間強の工数削減を実現しました。2026年に関しては、現時点で年間約2,600時間削減できる見込みとなっています。

――どのような業務で削減が実現したのですか?

三嶋 社内でインパクトの大きかった例を1つ挙げると、「決算書・申告書控の自動作成」があります。中小企業の経営者の方などには、顧問税理士から決算書や申告書、内訳書、固定資産税台帳などが、1つのファイルになって届きます。その際、会計事務所の側では、会計ソフトを開いて個々の決算書のデータを取り出し、申告書も申告ソフトから取り出して……という作業を人が行っているんですね。

当社は、代わってこれをやってくれるロボットを開発し稼働させました。データは自動的にファイルの適切な場所に格納されますから、担当者は出来上がったものをお客さまに納品するだけでOK、という状況を実現したのです。

西田 これにより、今年は年間300時間以上の工数削減が可能になりました。このようなプログラムが現在約40の業務で稼働中です。

――RPAソフトを使って独自に開発したロボットが、社内のいたるところで、それだけ動いているということですね。

蓄積したノウハウ生かし、顧客に業務効率化を提案

――大きな成果だと思いますが、短期間にRPAの活用を進めるというのは、簡単なことではなかったようにも感じます。どのようにして浸透を図ったのでしょう?

三嶋 その中心になったのは、さきほど話に出たRPA推進プロジェクトチームです。こちらで人選したのではなく、「RPAに興味がある人」を募ったら、20名ほど手を挙げてくれたんですよ。

メンバーたちにまず求められたのは、RPAはどのようなソフトで、それを使えばどのような業務の効率化が実現できるのかを理解し、社内での説明役になること。そのために、毎月ミーティングを設定しました。西田をチームリーダーに、このメンバーたちが旗振り役になってきたというのも、うまく導入が進んだ理由の1つです。

――メンバーの方は社内のいろんな部門から集まっているのですか?

三嶋 そうです。別に給料が増えるわけではないのですが(笑)。新しいものをやってみたいという人間がそれだけいたというのは、ありがたかったですね。

西田 プロジェクトチームの存在は、私にとっても心強いものでした。三嶋からはいろいろと期待もされるのですけど(笑)、私一人では何もできなかったというのが本音です。

――ロボットの開発も、このプロジェクトチームが中心になって行ったのでしょうか?

三嶋 大半は西田が作ったのですが、他に3名のメンバーがベンダー資格を取って、開発に取り組みました。3名それぞれが自分の業務を効率化するロボットを作成し、全社員を集めて、その3名がスライドやロボットが稼働している動画を用いてプレゼンテーションをおこなう「お披露目会」を開催しました。みんなに「自分のやっている面倒な作業も、ロボットに任せられるのではないか」という意識を持ってもらうのが目的です。

西田 実際に社内でのRPAに対する理解や活用の意識は、かなり高まってきたと実感します。そうしたことを背景に、2025年には、お客さまからDXによる業務効率化の商談を受注することもできました。

三嶋 当社の目指すゴールは、RPAやこれから本格化するAIの活用を含めて、まずは社内での業務効率化をとことん追求し、実現することです。同時に、そこで蓄積されたノウハウなどはお客さまに対しても必ず展開できるはずなんですね。

業務上の「お困りごと」をDXで解決するサービスを提供することにより、CROSSROADビジネスの最大化を図っていく。それが我々の目標です。

「後編」では、AIの活用による業務効率化の取り組みや、企業でDX化を進める際のポイントなどについて、引き続きうかがいます。

大阪・東京エリアを中心に、お客様の成長に貢献するプロフェッショナル集団として経営者を支える税理士法人。税務会計だけではなく、資金調達・事業再生・M&A・経営コンサルティングなど、お客様のあらゆるニーズに対応する。
URL:https://crossroad.or.jp/

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