税金にも「時効」がある ならば「逃げ切れる」のか?

税金にも「時効」がある ならば「逃げ切れる」のか?
公開日:
2020/09/07
 
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銀行や消費者金融などからの借金は、請求などが行われなければ5年で時効、すなわち返済不要になります(※1)。実は税金にも、同じように時効があるのをご存知でしょうか? ただ、税の種類や、申告などに不正があったかどうかによって、期間などは異なります。具体的にどのように決められているのか、解説します。

 

※1 自然に借金が消滅するわけではく、債権者に対し「時効により借金は消滅しています」という意思表示=「時効の援用」を行う必要がある。

税務署は「賦課権」と「徴収権」を持っている

納税は、憲法に定められた国民の義務です。普通の借金、負債のように、破産して“チャラ”になることはありません。支払いが滞った場合、税務署は、当人の財産を差し押さえ、お金に換えてそれに充当する権限さえ持っているのです。

 

とはいえ、そうした権利を未来永劫、行使できるわけではありません。税金にも、借金と同様、時効があります。ただ、普通の借金の場合とちょっと違って、税の時効には、2つの概念が適用されます。

 

税務署は、納税者の申告額が過少だと判断した場合に、税額を増やす「更正」を行ったり、無申告でも税額を決める「決定」を下したりすることができます。このように、税務署が税額を決定する権利を「賦課権」(課税権)と言います。同時に、税務署は、納税者の申告や、上で説明した決定などによって税額が確定した後に、それを納めるよう納税者に求めたり、差し押さえなどの強制執行を行ったりする権限も持っていて、これを「徴収権」と呼びます。この「賦課権」と「徴収権」それぞれについて、「期間制限」が設けられているのです。

「時効」は原則5年 還付請求にも時効がある

では、それぞれについてみていきましょう。

(1)賦課権の「除訴期間」は原則5年だが、不正があると7年

まず、賦課権のほうから説明します。賦課権の期間制限は、この権限が法的に「形成権」というくくりに分類されるため、厳密には「時効」ではなく、「除訴期間」(法律関係の速やかな確定のために、一定期間の経過によって権利が当然に消滅すること)と言います。意味するところは、時効と同じと考えて問題ありません。

 

その除訴期間は、

 

  • ①所得税、相続税、消費税は5年
  • ②贈与税は6年
  • ③偽りその他不正の行為によって税額を免れ、または還付を受けた場合は、①、②にかかわらず7年
  • ④法人税の純損失等の金額については9年(※2)

 

となっています。

 

①、②は税金をごまかす意図がなかった、③はそれがあったと認められた場合で、後者のほうが「時効」の期間が延長される、というわけです。この除訴期間には、(2)で説明する「中断」はなく、この期間を過ぎると、自動的に税務署長の賦課権がなくなって、「納税免除」ということになります。

(2)徴収権の「消滅時効」は、「中断」でリセットされる

次に、徴収権です。こちらには、借金などと同じ民法の「消滅時効」が適用され、「国税の徴収権は、その国税の法定納期限から5年間行使しないことによって、時効により消滅する」(国税通則法)ことになります。また、税金の場合は、冒頭で説明した「時効の援用」、すなわち納税者の意思表示が行われなくても、時効が成立します。

 

ただし、消滅時効には「中断」という仕組みがあって、5年間という期間が延長されることがあります。

 

法律上は、

 

  • ①債権者による請求
  • ②差し押さえや仮処分
  • ③債務者の承認

 

があった場合には、消滅時効は中断となります。そこまで経過した日数は「0」にリセットされ、再び5年間の時効が設定されることになるのです。

 

税金の場合には、(1)のような税務署による更正や決定などが行われた場合にも、時効は中断となります。納税者が申告を行ったり、納税猶予の申請をしたり、税金の一部を納付したりするのも、上記③に当たるものとされて、同じくリセットされます。

 

この消滅時効については、もう1点、注意すべきことがあります。例えばサラリーマンの医療費控除の確定申告のように、還付請求(払い過ぎた税金を返してもらう)を行う場合にも時効がある、ということです。期間は、同じ5年で、これを過ぎると還付が受けられなくなってしまいます。

 

※2 2018年4月1日以降に開始する事業年度において生じるものについては、10年。

「めでたく時効」の可能性は、ほぼない

ここまで述べてきたのは、税務署が関わる国税についてですが、住民税をはじめとする地方税についても、基本的に「賦課権の除訴期間」、「徴税権の消滅時効」が適用されます。こちらのほうは、税務署に代わり、各地方自治体が債権者となります。

 

さて、では、納税を「無視」して時効にこぎつけることは、現実に可能なのでしょうか? 時効制度についてずっと説明してきてこう言うのは恐縮ですが、答えは「まず無理だと考えるべき」です。記事の趣旨は、「税金を免れるためには、5年、7年、税務署から逃げ続ける必要があるのです」というふうに理解してください。

 

税務署は、「徴税のプロ」です。「税の公平」の観点から、無申告や申告漏れは、厳しく調べ上げられるでしょう。説明したように、時効は督促状ひとつでリセットできます。税務署は、逃げ切られないよう、あらゆる手立てを尽くすはずです。

 

怖いのは、「見つかったとき」です。本来支払うべきだった税金を納めれば許してもらえる、というわけにはいきません。納付期限を過ぎた分には、「延滞税」という「利子」がかかってきます。場合によっては、「過少申告加算税」、「重加算税」といったペナルティも課せられることになります。さらに、保有する不動産や給料を差し押さえられてしまうかもしれません。時効を狙うのは、リスクが大きすぎる=割に合わないのです。

 

万が一、「未申告」の税金がある場合には、早めに修正申告などの手を打つことが大事になります。他方、新型コロナの影響もあって、払いたくても納税が困難だ、といったケースもあるでしょう。そんなときには、納税猶予などの方策を考るべきでしょう。

いずれにしても、速やかに税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

まとめ

税金にも「時効」があります。ただし、だからといって、支払いの引き延ばしを図るのは、決して得策ではありません。納税に関して問題を感じたら、税理士などの専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。

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