【終活のすすめ】資産と介護と相続をセットで考える ~間違いだらけの「老人ホーム」選び(上)~ | MONEYIZM
 

【終活のすすめ】資産と介護と相続をセットで考える
~間違いだらけの「老人ホーム」選び(上)~

高齢の親の“終の棲家”として、そろそろ老人ホームを検討しようか、という人は少なくないでしょう。ただ、親にハッピーな時間を過ごしてもらいたい半面、気になるのは「お金」のことです。できる限り出費を抑えたいところですが、「料金ありき」で決めると、思わぬ落とし穴も。今回は、当社スタッフが現場でうかがった「失敗事例」を紹介しながら、「介護施設選びで大事なこと」を考えてみます。

【ケース1】楽しみが少なく、認知症が進行

奥さんを亡くされて、自宅で長男夫婦と暮らしていた82歳の男性Aさんのケースです。子どもは、他に次男と長女がいました。

 

Aさんは中度の認知症と診断されていました。家族のことは認識できるのですが、外出して家に帰れなくなり、警察から家族に連絡が入るというような「事故」が、何度か起こるようになりました。長男のお嫁さんも、一日中相手をしているわけにはいかず、子どもたちで介護施設への入居を検討することになったのです。

 

会社勤めだったAさんは、厚生年金、企業年金を受給していたのに加え、賃貸アパート経営もしていたため、月の収入は70万円超。同世代に比べても、経済的に余裕のある方でした。

 

ところが、子どもたちがそろって望んだのは、「ひと月の総支払額が25万円以下の介護施設」でした。理由は、「相続財産をできるだけ多く残してもらいたいから」。決して父親はどんな生活になってもいいというわけではなく、「設備などは『豪華』でなくても、認知症のケアはちゃんとやってもらえるのだろう」という認識だったようです。

 

結局、月額利用料20万円という子どもたちの要望に沿った介護付き老人ホームが見つかり、入居されました。ただし、低予算のために、例えば人員配置は法定の「3:1」(職員3対要支援2以上の入居者1)ギリギリでした。介護付き有料老人ホームなどには、介護保険法で入居定員に対する必要な職員配置数の基準が定められていて、それが「3:1」。ただし、これも24時間ずっと3人に1人の介護・看護職員が常駐しているということではなく、常勤の総数が3対1の基準を満たしている、という意味です。

 

当然のことながら、職員1人当たりの入居者数が少ないほど、手厚いケアが期待できます。レクリエーションなどに時間やエネルギーを割く余裕もできるでしょう。残念なことに、Aさんが入居した介護施設には、そうした余裕があまりありませんでした。結局、Aさんは食事以外はほとんど居室で過ごすことになり、そのせいと断定はできませんが、認知症が進行。ほどなく子どもたちの顔も、あまりわからなくなってしまいました。

【ケース2】「何歳生きるかわからない」で妥協

ご主人が亡くなり5年間独り暮らしの女性Bさん(87歳)には、長男と長女の2人の子どもがいます。母親想いの長女が週に1度、実家に通って生活をフォローしていましたが、脊柱管狭窄症を発症して腰の痛みがひどくなり、自炊も困難な状況になってしまいました。そこで、介護施設への入所を検討することになったのですが、そこで姉弟の意見が対立してしまいます。

 

母親に残りの人生を楽しく生きてほしいと考えた長女は、屋上庭園が設えられたきれいな建物で、昔好きだったフラワーアレンジメントのレクレーションもある老人ホームを見学し、すっかり気に入りました。利用料金についても、預金が3,000万円ほどあり、月に15万円の年金が入る母親ならば、十分賄っていけるだろうと考えたのです。ところが、その提案に対して、兄は「そんなにいい介護施設に入って、もし100歳まで生きてお母さんの預金が底をついたらどうするのだ。お前が払っていけるのか」と言うのです。

 

そうまで言われた長女は返す言葉もなく、その介護施設は諦めて、自分の家に近い一時金300万円、月額利用料18万円の介護施設で「妥協」しました。面倒をみてもらった手前もあってか、Bさんも特に拒絶はしなかったようです。しかし、そこは建物も古く、共用設備もイマイチ。レクレーションといっても、食堂で行われる体操くらいだったのです。

 

結局、長女からすれば「寂しい晩年」を過ごし、母親は95歳で亡くなりました。子どもには数千万円ずつの財産が残されましたが、長女の方は「お母さんのお金は、自分で使って欲しかった」と後悔を口にしていました。もっと楽しく暮らせたはずの介護施設への入居に反対した長男との仲も、それ以降、険悪なものになってしまったそうです。

「なるべく低予算」で安易に選ぶのは問題

【ケース1】では、父親をもっと利用料金の高い介護施設に入居させることが、十分可能でした。有料老人ホームの料金は、建物や設備だけでなく、介護の要であるマンパワーに反映することを忘れないようにしましょう。

 

例えば、さきほど人員配置の話をしましたが、「3:1」というのは、説明したように法に定められた最低基準です。「2.5:1」以上の体制を整えた介護施設には、介護費を料金に上乗せして徴収することが認められていますから、基本的に料金が高い介護施設ほど、入居者に対して多くの職員を配していることになるのです。

 

老人ホームに入居してもらって、家族の介護の負担が減ったとしても、それで本人の認知症が進行してしまったのでは、元も子もありません。あえて言えば、相続財産を多く残してもらおうとケアが不十分な介護施設を選んだ結果、認知症で相続そのものが大変になってしまうこともありえます。

【ケース2】では、母親を妹に任せきりの兄は、実際に介護施設の見学にも行っていませんでした。それで口を出すのは、やはり問題だと言わざるをえません。実際に足を運び、説明を聞くことによって、「高いか安いか」も見えてくるのです。

 

ただ、「100歳まで生きたらどうするのだ」という指摘は、的外れとは言えないでしょう。安心して入居してもらうためには、〇歳まで生きることを想定し、そこから逆算して予算を出してみるという作業が必要です。仮に長生きして予算をオーバーした場合には、子どもが分担して負担するといったルールも、しっかり話し合っておきたいものです。

(下に続く)➡

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