消費税はミスをしやすく、またミスをしてしまったときの損害が大きくなりやすい税目です。特に消費税の処理を慎重に行わなければならない業種がいくつかありますが、そのうちの1つが貿易業です。この記事では、最近増えている個人輸入をビジネスにしている方、海外とネットビジネスをしている方向けの注意点をまとめます。
輸出入を行う事業者は消費税に注意!
輸入する場合の注意点
外国から輸入した商品は「保税地域」という外国から輸入した貨物の一時保管場所に置かれます。輸入した方は、保税地域から貨物を受け取る際に関税や消費税を支払う必要があります。
保税地域から貨物を受け取る場合には、ご自身が税関で手続きをする方法と通関業者に代行してもらう方法があります。
どちらの方法を採ったとしても、消費税の申告の際に支払った消費税を預かった消費税から差し引くことができます。しかし、海外との取引はあまり一般的ではありませんから、ご自身で税務申告をしている場合はもちろん、税理士に依頼している場合でも輸入をした際の消費税を差し引く計算を忘れているケースが多いようです。
特に、運送業者を兼ねている通関業者に代行してもらっている場合には、自分が消費税を支払っている認識がなく、運送業者に支払った全額を送料として処理してしまうケースが見受けられます。
自分が税関で手続きをする場合には、消費税の金額は商品の価格に港までの海外運賃、保険料を加えた金額(これを貿易用語でCIF価格といいます)に関税を加えた金額の8%であることに注意しましょう。
通関業者に代行してもらう場合には、くれぐれも輸入業者の名義を自分にしてもらうようにお願いしておきましょう。
通関業者は保税地域から貨物を受け取る際の手続きを代行してくれ、関税や消費税の申告や立て替え払いまでしてくれる業者です。郵便事業株式会社、いわゆる郵便局をはじめとして、多くの運送業者が通関業の許可を受けていますから、知らず知らずのうちに通関業者を利用しているケースも多くあります。
本来、通関業者は輸入業者の代理人ですから、税関や港で通関業者が手続きをする際にもそのように記載しなければいけません。しかし、そのような適正な手続きをすると面倒だという理由で、税関や港で輸入業者の名義を通関業者にしてしまう業者がいます。
しかし、あくまで税関で消費税を支払った方人が消費税の控除を受けられます。したがって、上記のような手続きをしてしまうと、輸入した人が消費税の控除を受けることができなくなってしまいますから、気をつける必要があります。
輸出する場合の消費税
輸出する場合には消費税が課税されません。しかし、国内で仕入をした際の消費税の仕入税額控除を受けることは可能ですから、国内で仕入を行って海外に輸出することを主要業務としている場合には消費税の還付を毎期受けられるケースが多くなっています。
しかし、輸出業に不慣れな税理士に依頼していると、輸出した商品の仕入をした際の消費税を控除できることを知らず、毎期還付を受けられるにもかかわらず還付請求をしたことがないというケースも見受けられます。
また、消費税の免税事業者になっていたり、課税事業者であっても簡易課税を選択している小規模事業者が多くいます。しかし、免税事業者や簡易課税を選択している事業者は消費税の還付を受けることができません。
免税事業者、簡易課税を選択している事業者が本則課税の事業者になることを希望する場合、その期が始まる前に手続きをする必要があります。輸出業を営んでいる場合には十分に注意しましょう。
インターネットを利用した海外取引を行う場合の消費税法の改正
海外にサービスを提供する場合の改正点
平成29年から、インターネットなどを介したサービスの提供による売上は消費税が不課税とされています。
それまでは、インターネット上でサービス、特に音楽や映画などを配信するサービスを提供している場合には、サービスを利用している顧客が国内にいるか海外にいるかわからないため、海外にサービスを提供している場合でも消費税が課税されていました。
しかし、平成29年からは利用者が申告した住所地をクレジットカードの発行国情報と照合して確認するなど、一定の方法で海外へのサービス提供であることを確認することで消費税を不課税とする取り扱いを受けることができるようになっています。
海外からサービスの提供を受ける場合の改正点
同じく平成29年から、インターネットなどを介してサービスの提供を受けた場合の消費税の取扱が改正されています。改正以降、インターネットなどを介して受けるサービスが2種類に区分されています。
<事業者向け電気通信利用役務の提供に該当する場合>
ご自身の課税売上割合が95%以上の場合など一定の場合には、リバースチャージという新たな方法で消費税が課税されます。詳しくは後述します。
<消費者向け電気通信利用役務の提供に該当する場合>
サービスを提供している業者が「登録国外事業者」に該当する場合には、支払った消費税額について仕入税額控除を受けることが可能です。しかし、「登録国外事業者」に該当しない場合には、支払った消費税額について仕入税額控除を受けることができません。
アマゾンやグーグル、アドビ、ドロップボックスなど、日本で利用者が多い主要なサービスは登録国外事業者となっています。ご自身が利用しているサービスを提供している事業者が登録国外事業者に該当するかどうか「登録国外事業者名簿」で確認できますので、一度目を通してみましょう。
新制度「リバースチャージ方式」とは
消費税は本来、売上を計上した会社が売上と一緒に顧客から消費税を預かり、納税する義務を負っています。しかし、この方式では海外の事業者が日本国内に向けてオンラインサービスを提供している場合に税務署が捕捉できず、税金を受け取ることができないという問題点があります。この問題を解決するために、海外の事業者からサービスを受ける一定の場合には、料金を支払う側が消費税の納税義務を負う制度がリバースチャージ方式です。
つまり、外国の会社のサービスを利用している事業者は、自分が仕入をする立場であるにもかかわらず消費税を納税しなければならないことがあります。すでに施行されている制度ですが、なかなか制度の理解が進んでおらず、先日も多くのホテルが申告漏れを指摘されたという報道がなされたばかりです。
現在は経過措置が設けられており、以下のような事業者には適用が見送られています。
- 課税売上割合が95%未満の事業者
- 消費税の簡易課税制度を選択している事業者
- 免税事業者
したがって、小規模な事業者には影響がありません。しかし、経過措置は順次廃止されることが決まっています。具体的な廃止の時期などは明らかになっていませんが、海外の事業者からサービスを受けている事業者は徐々に影響を受けることが予想されます。
経理システムを対応させるなど、準備に時間がかかることも予想されますので、今から対応に向けて準備しておきましょう。
まとめ
これまで問題が指摘されていながら対応されていなかったインターネット上での国際取引と消費税の問題を解決するため、近年活発に法改正が行われています。消費税の処理方法を誤ってしまうと大きな損害が発生しますから、海外取引を行っている事業者は改正に注意しましょう。