法人が配当金を受け取ったら?税金・仕訳・益金不算入の処理方法を2026年最新版で解説


法人が他の法人の株式を所有している場合や投資信託をしている場合などに、配当金を受け取ることがあります。この配当金は税金が既に引かれていたり、法人税の計算上で益金に不算入のものがあったりして、処理方法が複雑だったり、税額に影響を与えたりします。ここでは、法人が配当金を受け取った場合の処理方法を解説します。なお、個人向けの「NISA(少額投資非課税制度)」とは異なり、法人はNISA口座を開設することができません。法人名義での株式投資・投資信託には、本記事で解説する源泉徴収・益金不算入のルールが適用されます。
法人が配当金を受け取った場合の処理方法
法人が口座などで受け取る配当金は、既に税金が差し引かれています。そのため、差し引かれた税金のことも考えて会計処理する必要があります。 ここでは、法人が配当金を受け取った場合の処理方法について見ていきましょう。 受け取った配当金は税金が引かれている 法人が配当金を受け取ったときの会計処理を正しくするためには、配当金から差し引かれている税金のことや、仕訳について理解する必要があります。それぞれについて確認していきましょう。 配当金の受け取りの際にあらかじめ決められた税率により、所得税等(所得税+復興特別所得税)が差し引かれています。これを源泉徴収といいます。差し引かれる所得税等の税率は、所有している株式が上場株なのか非上場株なのかで次のように異なります。
例えば、配当金が1万円である場合は、上場株式の配当金なら1,531円、非上場株式の配当金なら2,042円の所得税等が源泉徴収されています。 法人の配当金には、個人向けのNISA(少額投資非課税制度)は適用されません。個人がNISAを通じて配当金・売却益を非課税で受け取れるのとは異なり、法人が受け取る配当金はすべて源泉徴収・益金不算入のルールのとおり処理されます。「法人でもNISAが使えるのでは?」と混同されるケースがありますが、現行制度上、法人NISAは存在しません。 配当金を受け取ったときの仕訳 受け取った配当金からは、所得税等が源泉徴収されています。そのため、配当金を受け取った場合は「受取金額」「源泉徴収された所得税等」「源泉徴収される前の配当金」の3つを用いて仕訳をする必要があります。具体例で確認しましょう。
例)所有している上場株式の配当金が普通預金に振り込まれた。振込金額は8,469円、源泉徴収された所得税等の金額は1,531円、源泉徴収される前の配当金の金額は1万円だった。
一般的に、源泉徴収された所得税等の勘定科目は、「法人税、住民税及び事業税」を使います。その他「法人税等」などの別の科目を使用する場合もあります。お使いの会計ソフトの科目や今まで使ってきた科目がある場合は、それに合わせてください。今回は、所得税と復興特別所得税を分けずに仕訳しましたが、分けて仕訳しても問題ありません。 通常、株式を発行している会社や、証券会社等から送られてくる配当金明細書などに、源泉徴収された所得税等の金額は記載されています。
株式発行会社や証券会社等から送られてくる配当金明細書は、源泉徴収された所得税等の確認のために必要です。破棄せず保管しておきましょう。

受取配当金の益金不算入制度
受取配当金は法人の収入となりますが、法人税の計算上は一般的に益金不算入となります。ここでは益金不算入になる理由と、対象となる配当金の種類を解説します。
なぜ受取配当金は益金不算入になるのか?
理由は二重課税を防ぐためです。益金不算入とは、会計上は収益として仕訳するものの、税金の計算では収益(益金)から除くことをいいます。
法人の利益に他の法人からの配当金が含まれている場合、次のような二重課税が生じます。
・① 他の法人から受け取った配当金は会社の利益となり、法人税がかかります(1度目の課税)
・② 法人はその利益の中から株主である個人に配当をします
・③ 株主である個人が配当金を受け取る際に税金が源泉徴収されます(2度目の課税)
つまり、1つの利益(他の法人から受け取った配当金)に二重で課税されてしまいます。この二重課税を防ぐために「受取配当金の益金不算入制度」が設けられています。
益金不算入の対象となる配当金とは
益金不算入制度はあくまで二重課税の排除が目的です。配当金という名称でも、そもそも二重課税にならないものは対象外となります。益金不算入になるものとならないものは、それぞれ次のとおりです。
①受取配当金の益金不算入になる配当金
・剰余金の配当や利益の配当、剰余金の分配(普通の会社の配当金) ・投資信託や投資法人から受け取る金銭の分配 ・資産の流動化に関する法律に規定する特定目的会社等からの金銭の分配 ・特定株式投資信託(外国株価指数連動型特定株式投資信託を除く)の収益の分配
②受取配当金の益金不算入にならない配当金
・外国法人、公益法人等又は人格のない社団等から受ける配当等 ・保険会社の契約者配当金 ・協同組合等の事業分量配当等 ・公社債投資信託以外の証券投資信託の収益の分配 ・特定目的会社及び投資法人から受ける配当等
「配当」といっても様々な種類があります。益金算入になるのか、益金不算入になるのか、判断に迷うものも多いので、税理士に相談することをおすすめします。

受取配当金の益金不算入額の計算方法
・ここからは、受取配当金の益金不算入額の計算方法について見ていきましょう。 益金不算入額は、株式等の保有割合で異なる ・受取配当金の益金不算入額の計算では、所有している株式を4つのグループに分けて計算を行います。 通常、一般的な会社からの配当金は益金不算入になります。しかし、他の会社の株式を所有している場合によくみられるのが、子会社や関連会社などの株式を所有しているというものです。子会社や関連会社と、全くの他社の株式を一律同じ割合で益金不算入とすると不都合が生じるため、次の4つの区分に分けて損金不算入割合を定めています。
負債利子とは 負債利子とは、借入をして株式を取得しているときに、その年に支払った借入金利子のことです。受け取った配当金を益金不算入にする代わりに、支払った借入金利子も損金不算入(負債利子控除)にします。 2022(令和4)年4月1日以降に開始した事業年度からは、グループ企業に関して「①保有割合」「②負債利子控除」の2点について考え方が変わります。 ① 保有割合の判定方法の変更 関連法人株式等・非支配目的株式等に該当するかどうかの判定基準が次のように変わります。 ・2022年3月31日以前:法人単体の保有株式の割合で判定 ・2022年4月1日以降:完全支配関係がある他の法人が有している株式も含めて判定 【具体例】A社・B社・C社のケース A社はC社の株式を20%保有。A社の親会社B社(A社株式を100%保有)もC社の株式を30%保有している場合で比較します。 ・2022年3月31日以前:A社単体20%のみで判定 → 保有割合5%超1/3以下 → 「その他の株式等」→ 益金不算入50% ・2022年4月1日以降:A社20% + B社30% = 50%で判定 → 保有割合1/3超100%未満 → 「関連法人株式等」→ 益金不算入100%(負債利子控除あり) ② 負債利子控除の計算方法の変更 関連法人株式等から受け取った配当金は100%が益金不算入ですが、一定の負債利子がある場合は配当金から差し引いて計算します。 ・2022年3月31日以前:当年度の支払負債利子 × (関連法人株式等の帳簿価額 ÷ 総資産)で計算 ・2022年4月1日以降:関連法人株式等からの配当金等の4%相当額が負債利子控除額(計算が簡便化) ※ただし、借入金などの利子を支払っている場合は、支払利子の金額の10%が上限となります。 法人が配当金を受け取った場合の申告方法 ・法人が配当金を受け取った場合は、株式の種類に応じて、益金不算入額を計算します。では、申告はどうするのでしょうか。 受取配当金を益金不算入にするためには、通常の申告書と、 「別表八(一)受取配当等の益金不算入に関する明細書」 ・を作成して提出する必要があります。 「別表八(一)受取配当等の益金不算入に関する明細書」 ・は、益金不算入額を計算するための明細書です。該当する箇所に数字を記載していけば、益金不算入額を算出できます。 また、別表四の減算欄にも受取配当等の益金不算入額を記載する欄があるので、忘れずに記載し、申告するようにしましょう。
完全子法人株式等の配当に係る源泉徴収不適用制度
・原則、配当金はあらかじめ税金が差し引かれた金額で、口座などに振り込まれます。配当金を支払う法人や証券会社は、出資者ごとに配当金から差し引く税金の金額を計算するとともに後日、差し引いた税金を税務署に納める必要があります。 税金を差し引いたり、後日税務署に納めたりすることを「源泉徴収」といいます。源泉徴収は国内の株式であれば種類にかかわらず、原則すべての配当金から行われてきましたが、納税者や税務署などの労力が大きかったため、2023(令和5)年10月1日以後に支払を受ける完全子法人株式等に係る配当等からは、源泉徴収が不要となります。 源泉徴収が不要となる株式の種類は、完全子法人株式等と一定の関連法人株式等です。源泉徴収が不要となる条件は、それぞれ下記のとおりです。
完全子法人株式等
・直接保有(直接支配) 完全子法人株式等は株式の保有割合100%の株式ですが、源泉徴収が不要となるのは直接100%の株式を保有している場合のみです。例えば当社A社のみでB社の株式を100%保有している場合は、直接100%の株式を保有しているため源泉徴収は不要です。 一方、当社A社と当社の子会社C社で合わせてB社の株式を100%保有している場合は、A社が直接100%の株式を保有しているわけではないので、受取配当金に対して源泉徴収がされます。 ・継続保有要件 源泉徴収が不要となるのは、配当金の計算期間にわたって継続して保有している必要があります。
一定の関連法人株式等
・直接保有(直接支配)2022(令和4)年4月1日以降に開始した事業年度からは、完全支配関係がある他の法人が有している株式を含めて、株式の種類を判定しますが、源泉徴収が不要かどうかはこの判定とは別です。 保有割合1/3超100%未満の株式は関連法人株式等に区分されますが、源泉徴収が不要となるのは、直接1/3超の株式を保有している場合のみです。 例えばA社とA社の親会社B社で、C社の株式をA社20%+B社30%=50%と保有していた場合、保有割合1/3超100%未満の関連法人株式等に区分されますが、A社は直接1/3超の株式を保有してはいないので、源泉徴収が必要です。
配当に関する制度は非常に分かりづらいことに加え、令和4年、令和5年と相次いで税制改正がされています。ご自身で判断せずに、税理士に依頼することをおすすめします。

法人の余剰資金運用と税務上の注意点
・受取配当金の処理を正しく行ったうえで、「法人として余剰資金をどこに投資すべきか」を考えることも重要な経営課題です。近年、金利上昇や株式市場の動向を受け、法人の余剰資金を運用する経営者が増えています。 法人の余剰資金の主な運用先と税務 ・法人がNISAを利用できない中で、余剰資金の主な運用先には次のようなものがあります。それぞれ税務上の取り扱いが異なります。
・法人で株式の配当金や投資信託の分配金を受け取る場合は、源泉徴収と益金不算入の両方のルールを正しく把握したうえで申告することが求められます。一方、定期預金・国債の利息(受取利息)には益金不算入の適用がなく、全額が法人税の課税対象になる点も覚えておきましょう。 余剰資金の運用は税理士に相談を ・法人の余剰資金をどの商品で運用するかは、税負担に直結する重要な経営判断です。益金不算入制度の適用可否、源泉税の還付手続き、申告書(別表)の作成など、専門的な処理が多く発生します。 「自社の余剰資金をどう運用すれば税務上有利か」「配当金の益金不算入はどこまで使えるか」 ・といった疑問は、税務の専門家に相談することで的確なアドバイスが得られます。ビスカスでは、法人の資産運用・節税に詳しい税理士を無料でご紹介しています。お気軽にご相談ください。 参照:受取配当等の益金不算入(法人税基本通達)|国税庁
記事監修者 三嶋税理士からのワンポイントアドバイス
・今回は、法人が配当金を受け取った場合の処理方法について確認しました。法人が配当金を受け取った場合には、会計処理と、法人税の計算で益金不算入が生じることに注意する必要があります。 会計処理では、受取金額、源泉徴収された所得税等、源泉徴収される前の配当金の3つを用いて仕訳します。 法人税の計算では、まずその配当金が、益金不算入になる配当金なのかを考え、益金不算入になる配当金であるなら、株式の種類に応じた割合で、益金不算入額を計算する必要があります。 受取配当金の処理は、かなり複雑です。処理方法などで不明点などがある場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。 【関連記事】: 受取配当の税金はどうするの?個人事業主と法人の違いを解説 参照サイト ・受取配当等の益金不算入(法人税基本通達)|国税庁 ・法人税のテキスト(第4章)|国税庁税務大学校
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。

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