受取配当の税金はどうするの?
個人事業主と法人の違いを解説
受取配当の税金はどうするの?  個人事業主と法人の違いを解説
最終更新日:
2019/2/26
 
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配当金は入金されるタイミングで税金が天引きされ、受取配当にかかる所得金額を確定申告する流れになります。しかし、個人と法人では確定申告時の税金の計算方法が異なり、天引きされる税率もさまざまです。そこで、個人と法人の違いを中心にそれぞれのパターンに応じた受取配当の税金について解説します。

受取配当の税金の概要

受取配当の税金は独特です。個人事業主か法人かによって取り扱いが異なり、確定申告のやり方も複数あります。

受取配当に課税される税金

受取配当に課税される税金は個人事業主か法人か、また株式の種類によって決まってきます。

(1)個人

上場株式等か上場株式等以外の株式等かによって税率や税目が異なります。

1.上場株式等
  • 源泉所得税15.315%
  • 住民税利子割5%
2.上場株式等以外の株式等
  • 源泉所得税20.42%
    上場株式等以外の株式とは、非上場株式および上場株式等の大口個人株主(上場会社等の発行済株式等の3%以上を保有する個人)のことを指します。なお、住民税利子割は課税されません。
(2)法人

法人は上場株式等か非上場株式等かによって税率が異なり、個人と違って住民税利子割は一切課税されません。

1.上場株式等
  • 源泉所得税15.315%
2. 非上場株式等
  • 源泉所得税20.42%

確定申告の必要の有無

受取配当には確定申告が必要かどうかは個人と法人によって異なります。

(1)個人

上場株式等と上場株式等以外によって取り扱いが違ってきます。

1.上場株式等

所得税と住民税に共通して、次の3つの方法から選択できます。

  • 総合課税として確定申告をする
  • 分離課税として確定申告をする
  • 確定申告不要(申告をしない)
2.上場株式等以外

少額配当と通常の配当によって取り扱いが異なります。

 

イ、少額配当

所得税は総合課税での確定申告と申告不要の選択制になります。一方、住民税は総合課税として確定申告をしなければなりません。

少額配当とは、1銘柄について1回に支払を受けるべき金額が、次の算式で計算した金額以下であるものをいいます。

10万円×配当計算期間の月数(最高12ヵ月)÷12

たとえば、年1回の配当なら配当計算期間の月数は12ヵ月であり、受取配当金が10万円以下なら少額配当に該当します。一方、半年ごとの配当なら配当計算期間の月数は6ヵ月であり、受取配当金が5万円以下なら少額配当に該当します。
 

ロ、通常の配当

所得税と住民税ともに、総合課税として確定申告をします。

(2)法人

個人と違い、受取配当金のすべてが確定申告の対象です。

税金の計算方法

受取配当金にかかる税金の計算方法について個人と法人に分けて説明します。

(1)個人

確定申告のやり方によって計算方法が決まってきます。

1.総合課税

受取配当金にかかる配当所得は他の所得金額を合わせて申告をするため、計算方法は次の通りになります。

イ、所得税

課税総所得金額(配当所得を含む)×税率(5%~45%までの7段階)-配当控除(後述します)-源泉所得税

ロ、住民税

課税総所得金額×税率10%-住民税利子割
2.分離課税

配当所得を他の所得金額と独立させて税率を適用します。

イ、所得税

配当所得×15.315%

ロ、住民税

配当所得×5%
3.確定申告不要

配当所得などの計算は一切不要です。

(2)法人

受取配当金をいったん法人所得に加算した上で、「受取配当等の益金不算入額」という税務調整により所得金額から差し引きます。計算方法は次の通りです。

①受取配当金を会計処理する段階
受取配当以外の利益+受取配当金の額=決算書上の利益
②税務調整の段階
決算書上の利益-受取配当等の益金不算入額=所得金額
③税金の計算
所得金額×法人税率-源泉所得税=納付税額

受取配当金の益金不算入額を税務調整するかどうかは法人の任意です。そのため、計算することによる節税効果より事務的手間が大変な場合は税務調整をしない選択肢もあります。

個人編|配当所得・配当控除の計算方法

個人の場合は配当所得と配当控除を計算することで、受取配当金にかかる税金を求めることができます。

配当所得

配当所得は確定申告のやり方ごとに計算方法が決まってきます。

(1)総合課税・分離課税で確定申告をする場合
収入金額(源泉徴収税額を差し引く前の金額)-株式などを取得するための借入金の利子

なお、借入金の利子には確定申告不要の受取配当金にかかる金額は除かれます。

(2)確定申告不要

収入金額(源泉徴収税額を差し引く前の金額)が配当所得になります。

配当控除

配当控除は受取配当金の種類と課税総所得金額によって、控除率が決まってきます。控除率は次の表の通りです。

課税総所得金額 1,000万円以下の部分 (所得税) 1,000万円以下の部分 (住民税) 1,000万円超の部分 (所得税) 1,000万円超の部分 (住民税)
利益の配当等 10% 2.8% 5% 1.4%
証券投資信託等 (外貨建証券投資信託以外) 5% 1.4% 2.5% 0.7%
証券投資信託等

(一般外貨建証券投資信託)

2.5% 0.7% 1.25% 0.35%

 

たとえば、課税総所得金額1,100万円のうち、利益の配当等にかかる配当所得が200万円とした場合、配当控除の金額は次の通りになります。

(1)所得税
  • 1,000万円超の部分:課税総所得金額1,100万円-1,000万円)×5%=5万円
  • 1,000万円以下の部分:(配当所得200万円-1,000万円超にかかる配当所得100万円)×10%=10万円
  • 合計:15万円

(2)住民税
  • 1,000万円超の部分:課税総所得金額1,100万円-1,000万円)×1.4%
    =1万4,000円
  • 1,000万円以下の部分:(配当所得200万円-1,000万円超にかかる配当所得100万円)×2.8%
    =2万8,000円
  • 合計:4万2,000円

上場株式等に係る配当所得を申告するメリット・デメリット

上場株式等にかかる配当所得について「適用税率-配当控除の控除率=正味税率」を「源泉所得税や住民税利子割の税率」と比較することにより、申告するメリット・デメリットが分かります。そこで、利益の配当等を例に所得税と住民税に分けて比較します。

(1)所得税

総合課税で申告したほうが得するケースは課税総所得金額が900万円以下の場合です。たとえば、課税総所得金額が850万円の場合、正味税率は13.273%に対し、源泉所得税は15.315%になります。

一方、分離課税で申告したほうが得するケースは借入金の利子がある場合です。税額計算のベースとなる税率は同じでも、申告することで借入金の利子分だけ配当所得が圧縮され、所得税と住民税の節税につながります。

(2)住民税

総合課税で申告すると、正味税率が住民税利子割5%を超えるため、不利になります。

一方、分離課税で申告をしたほうが得するケースは所得税と同じように借入金の利子がある場合です。

法人編|受取配当等の益金不算入の計算方法

受取配当等の益金不算入は個人の配当所得や配当控除と計算方法が異なります。それでは、詳しく見ていきましょう。

益金不算入

株式の種類ごとに計算方法は次の通りになります。

(1)完全子法人株式等(保有割合100%の株式等)
受取配当金の額×100%
(2)関連法人株式等(保有割合が3分の1超100%未満の株式等)
(受取配当金の額-控除負債利子額)×100%
(3)その他の株式等(保有割合が5%超3分の1以下の株式等)
受取配当金の額×50%
(4)非支配目的株式等(保有割合5%以下の株式等)
受取配当金の額×20%
(5)証券投資信託
受取配当金の額×100%

ただし、特定株式投資信託は上記(4)と同じ計算方法になります。

控除負債利子額

控除負債利子額は原則法と簡便法の選択制になり、個人の「借入金の利子」と違い、実額で計算せず、算式を用いるのが特徴です。

(1)原則法
支払負債利子額の合計額×(当期末・前期末の関連法人株式等の帳簿価額の合計額÷当期末・前期末の総資産の帳簿価額の合計額に調整を加えた金額)
(2)簡便法
支払負債利子額の合計額×(基準年度において原則法で計算した期末関連法人株式等にかかる控除負債利子額の合計額÷基準年度の支払負債利子額の合計額)

基準年度とは、「2015年4月1日から2017年3月 31 日までの間に開始した各事業年度」のことを指します。

まとめ

受取配当にかかる税金は源泉所得税や住民税利子割を天引きした後の計算方法が複雑です。個人と法人の違いを知り、より理解を深めてみてはいかがでしょうか。

項目 個人 法人
税目 源泉所得税、住民税利子割 源泉所得税のみ
控除方式 配当控除:税額控除 受取配当等の益金不算入:所得控除
阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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