消費税免税事業者は、取引停止の危機に直面!?
軽減税率導入に伴う「インボイス」がもたらす問題
消費税免税事業者は、取引停止の危機に直面!?  軽減税率導入に伴う「インボイス」がもたらす問題
最終更新日:
2019/8/29
 
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消費税率の8%から10%への引き上げが、いよいよ目前に迫りました。今回の税率引き上げでは、食料品や新聞など一部の商品を税率8%に据え置く軽減税率が、初めて導入されることになります。ところで、この軽減税率導入に伴って、2023年9月から始まる「インボイス制度」をご存知でしょうか? 2本立ての税率を明確に区別するために導入される仕組みなのですが、実は免税事業者にとっては死活問題になりかねないといった問題点も指摘されています。どういうことなのか、わかりやすく解説します。

仕入れ税額控除とは

最初に、消費税の仕組みを簡単におさらいしておきます。「消費」税とは言いながら、それを実際に納税するのは、消費者ではありません。例えば私たちが商店Aで買い物をした場合、商品の対価とは別に、現在なら8%の消費税を支払います。商店Aがそれをいったん「預かり」、納付期限までにまとめて税務署に納付しているのです。

 

一方、商店Aは、消費者に売るための商品を仕入れる際に、仕入先に消費税を支払っています。消費税を納める時には、消費者から預かった金額から、この仕入れの際に払った税額を差し引くことができます。これを「仕入税額控除」と呼びます。

 

控除はありがたいのですが、取引が多岐にわたる場合など、その計算は今でも大変。軽減税率の導入で、消費税率が標準税率との2本立てになることにより、その作業はさらに煩雑になることが避けられません。具体的には、納品先に対して消費税率10%と8%を書き分けた請求書を発行する必要が生じることになります。

 

このような請求書を発行し、保存する仕組みを「インボイス制度」(適格請求書等保存方式)と言います。正式導入は、税率引き上げから4年の経過措置を経た23年10月からの予定になっています。

インボイスがないと仕入税額控除が受けられない。その「副作用」

ただし、このインボイスの導入は、消費税免税事業者にとっては、請求書作りが大変になるというレベルを超えた、深刻な事態を招く可能性が指摘されているのです。

 

消費税は、売上高が1000万円を超えた2年後に課税されます。つまり売上1000万円以下の場合は免税事業者として扱われ、納税の必要はありません。顧客から預かった消費税は「益税」として、自らの利益に組み入れることが許されています。

 

ところが、インボイスが始まることで、その立場は一気に“ピンチ化”します。23年10月以降、原則として納税者の手元にインボイスが保存されていなければ、さきほど説明した仕入税額控除が受けられなくなるのがポイントです。免税事業者は消費税を納めていませんから、このインボイスを発行することができないのです

 

免税事業者から原材料や商品を仕入れたり、彼らに仕事を発注したりしている事業者にとって、これは困ったことです。相手が免税事業者だと、インボイスが発行してもらえない→仕入税額控除が使えない→すなわち実質的な増税になる、というわけです。取引が数万円程度の少額ならば問題ないかもしれませんが、仮に100万円に10%の消費税だったら、10万円の経費増。だったら、インボイスが発行できる課税事業者に変えようか、という話になりかねません。

 

免税事業者への影響を中心に述べてきましたが、困るのは彼らだけではありません。いま説明したように、免税事業者に仕事を依頼している企業は、そのままだと増税を受け入れるしかありません。課税事業者にチェンジといっても、相手が見つかる保証はありません。代わりが見つかっても、零細に近い免税事業者に比べ、同じ仕事でも高い報酬を要求される可能性もあるでしょう。

課税事業者になるか、スキルを売るか

以上を踏まえて、今考えられる対処法とそのメリット・デメリットについて述べてみます。

 

ある意味、最もすっきりするのは、インボイスを発行できる立場になることでしょう。売上高1000万円以下でも、自ら消費税課税事業者になることはできます。取引先から、「課税事業者になってほしい」と依頼されるケースもあると思われます。それに応じれば、インボイスの問題で発注者から「切られる」リスクはなくなります。

 

ただし、当然のことながら「益税」は消えます。さらにインボイス発行により、事務量が増加します。多くが個人事業主で恐らく儲けもそんなに厚くない免税事業者が、果たしてその「二重苦」に耐えられるのか? 「仕事を失いたくない」一心で、駆け込み的に課税事業者に鞍替えするのは、考えものです。必要であればその分野に詳しい税理士などプロの知恵も借りながら、十分な検討を行うべきでしょう。

 

理想を言えば、名実ともに消費税課税事業者になる、すなわち売上高1000万円超の水準まで事業規模を引き上げるのがベスト。そうなれば、いまの「二重苦」にもなんとか耐えられる体力がついているのではないでしょうか。

 

「それができれば苦労はいらない」と言われるかもしれません。でも、制度の導入まで、4年あります。さらにその後6年間、29年10月までは、免税事業者からの仕入れの一部を税額控除できる経過措置が継続されるのです。その間に「大台突破」を実現できる事業計画を策定し、ピンチをチャンスに変える気概で頑張るというのも、大いにアリだと思います。

 

免税事業者のままで生き残る道も、もちろんあります。取引先が「切りたくても切れない」スタンスを確立すれば、多少の増税があっても安泰です。最も強いのは、他者に真似のできないスキルを確立していること。そのための努力を、今から重ねていくことが大事になります。

 

免税事業者と取引のある企業にとっての問題は、おおむね今の話と裏腹になるでしょう。

 

相手に課税事業者になってもらうのが一番手っ取り早いのですが、話をもちかけても「うん」と言ってくれるかどうかはわかりません。課税事業者になったことがアダとなって、仕入れに支障をきたすようなことになってしまっては、元も子もないでしょう。

 

課税事業者への切り替えは、逆にコストアップになったり、納期などの融通が利かなくなったりといったデメリットを生む可能性もあります。やはり「増税回避ありき」ではなく、中長期的に見て利益のある選択を、慎重に検討することが必要になります。

まとめ

2023年10月に予定されるインボイス制度の導入は、消費税免税事業者に打撃を、その取引先にも混乱をもたらす可能性があります。デメリットを生まないよう、最新の情報に注意しつつ、今から準備、検討を進めるべきでしょう。必要に応じて、税理士などの専門家にアドバイスを求めるのも有効です。

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