「チュートリアル徳井さん事件」であらためて“学ぶ”
「申告漏れ」「所得隠し」って? そのペナルティは?

「チュートリアル徳井さん事件」であらためて“学ぶ”  「申告漏れ」「所得隠し」って? そのペナルティは?
公開日:
2019/10/30
最終更新日:
2019/11/08
 
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またもや、吉本興業所属芸人の「反社会的行為」が発覚しました。お笑いコンビ「チュートリアル」の徳井義実さんの設立した会社が、3年間にわたって税務申告を怠っていたなどとして、東京国税局の指摘を受けたことが明らかになったのです。ところで、不祥事を伝える記事には、「申告漏れ」、「所得隠し」の文字が並びました。その定義とは? 「脱税」ではないの? あらためて整理してみました。

なぜ会社をつくったのか?

「事件」の概要は

  • 徳井さんが2009年に個人会社を設立し、吉本からのギャラなどタレント活動に基づく収入は、すべてその会社に振り込ませ、本人はそこから役員報酬のかたちでお金を受領していた。ところが、その会社がたびたび法人税の申告、納税を怠っていた
  • その結果、2016年5月頃には、銀行預金を差押えられる事態も発生した。
  • 度重なる申告漏れや税の未納を受けて、会社は18年9月頃に国税局の税務調査(※1)を受け、16年(3月期、以下略)~18年の無申告を指摘された。
  • 同時に、12年~15年の税務申告(税務署の指摘を受けて行った申告)において経費として計上していた旅費、衣装代などの一部が、「経費として認められない」と否認された。
  • 会社から受け取った報酬についても、その所得税をたびたび申告していなかった。

というものです。

 

会社は、これらの指摘を認め、16年~18年分について確定申告を行い、12年~15年分については修正申告書を提出したうえで、法人税の追徴課税として約3700万円を納付。その金額には、否認された経費約2000万円に対する「重加算税」約180万円、申告漏れ金額約1億1800万円に対する「無申告加算税」約510万円が含まれていたそうです。

 

問題の主な舞台になったのは、徳井さんの設立した会社ですが、これはギャラを受け取ることだけを目的にしたペーパーカンパニーだと思われます。なぜそんなことをするのかといえば、節税対策になるから。個人にかかるのは所得税、会社が払うのは法人税。所得が一定水準を超えると、税率の関係で、後者の方が支払う税金の額を低く抑えられるのです。会社から受け取る報酬には所得税がかかりますが、その額をコントロールすれば、トータルの税金は、少なくて済む。

 

このやり方自体は、なんら違法性を問われることのない「節税」なのですが……。わざわざそこまで対策を講じたのに申告さえしなかったというのは、解せない話ではあります。ちなみに、法人は社会保険への加入が義務付けられていますが、徳井さんの会社はそこもスルー。すなわち、保険料の支払いもしていませんでした。

 

※1税務調査
国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。

「申告漏れ」「所得隠し」の意味は?

今回の一件では、多くのメディアが徳井さんの行為を「申告漏れ」「所得隠し」だと報じました。申告をしていないと指摘を受けたのが「申告漏れ」、私的な支出を経費に乗せて、所得を低く見せようとしたのが「所得隠し」というわけです。でも、わざと申告しなかったり、所得をごまかしたりしたら、それは「脱税」ではないのか?

 

実は、これらの用語に、法や規則などに基づく明確な定義はありません。例えば「脱税」。架空の宣伝広告費を計上して法人税法違反で逮捕、起訴され、懲役刑(執行猶予)が言い渡された「青汁王子」のように、悪質な税逃れには刑法が適用されます。このレベルになって初めてその言葉を使うメディアもあれば、徳井さんのように重加算税という思いペナルティを課せられたら「脱税」だと定義する専門家もいるのです。

 

「申告漏れ」というのは、言葉の感じからしても、「うっかりミス」のイメージですが、何度も税務署の指摘を受けながら、それを怠っていた徳井さんのケースが、それに当てはまるのか? 議論の余地はあるでしょう。

 

「所得隠し」というのも、実に曖昧な日本語です。それを「脱税」と言うのではないか、とツッコまれても明確な反論は難しい。「『所得隠し』か『脱税』かは、その悪質度によって決まる」という解説もありましたが、その線引きが明示されているわけではないのです。

 

ただし、メディアの言葉づかいはそれとして、納税は憲法に記された国民の義務。正当な理由なくしてそれを怠り、事実が発覚すれば、相応のペナルティが課せられることになります。以下に、簡単にまとめてみました。

「悪質度」によって税率は異なる

納税に関するペナルティには、4種類の「加算税」と、「延滞税」「利子税」の計6種類があります。加算税は、脱税が発覚した時期や悪質度、納税者が申し出たのか・税務署に指摘されたのか、などによって税率が異なってきます。決定されると、本来納める必要があった「本税」に加えて、これらの税金を支払わなくてはなりません。

 

  • 過少申告加算税
    申告期限内に申告はしていた。でも、申告額が本来支払うべき税よりも少なかった――という場合に課税されます。
  • 無申告加算税
    定められた申告期限、所得税であれば3月15日までに申告をしなかった場合に課税されます。
  • 不納付加算税
    源泉所得税(※2)を納付期限までに納めなかった場合に課税されます。
  • 重加算税
    納税額を意図的に偽装・隠蔽したうえで、無申告、過少申告を行った場合に課税されます。とりわけ悪質性が高いと判断されるケースで、追加して支払う本税に最大40%(繰り返した場合はさらに10%上乗せ)という高い税率が課せられることになります。
  • 延滞税
    納付すべき税金を納付期限までに納めない場合に、納付期限の翌日から課税されます。加算税が課せられている場合には、それにプラスして支払わなくてはなりません。
  • 利子税
    納付期限に一括で納税できず、残りを「延納」する場合に課税されます。

 

以上は、国税通則法という法律に基づく「行政処分」です。さらに悪質な脱税行為が発覚した場合には、「お金のペナルティ」に加えて、さきほども述べた刑事罰が規定されています。基本的には「10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金」で、その両方が課せられることもありますから、甘く考えないほうがよさそうです。

 

※2源泉所得税
企業が従業員や報酬を受け取る人から源泉徴収し、本人に代わって納める所得税。

まとめ

「申告漏れ」「所得隠し」「脱税」……。言葉の使い方はさまざまですが、「税逃れ」には、ペナルティもあります。くれぐれも「節税」の意味を取り違えないようにしましょう。税金について不明な点、不安に感じることなどがあったら、税理士に相談を。

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