スタートした「キャッシュレス・ポイント還元」 その仕組みをわかりやすく解説 | MONEYIZM
 

スタートした「キャッシュレス・ポイント還元」
その仕組みをわかりやすく解説

2019年10月の消費税増税と同時に、「キャッシュレス・ポイント還元」が始まりました。対象となる店舗で、現金ではなくクレジットカードなどで買い物をした場合に、支払額の一部がポイント還元される――という制度なのですが、いまひとつ「よくわからない」ところがあるのも事実。どんな仕組みなのか? どのくらいのメリットがあるのか? まとめてみました。

キャッシュレス化推進のための「期間限定」のサービス

ポイント還元といっても、どんな買い物にも適用されるわけではありません。その条件は……

 

◆加盟店登録をした店舗であること

ポイント還元の対象になるのは、この制度への加盟店登録をした小売り、飲食、サービスなどの中小店舗になります。ですから、大手の百貨店、スーパー、量販店などは対象外です。

 

加盟店登録は現在も受け付けられていて(2020年4月末まで)、経済産業省の発表によれば、10月11日現在の登録加盟店数は、約52万店。10月21日には約61万店になる見込みだといいます。

 

加盟店には、店頭に、それを表示するポスターが掲出されています。あらかじめ確かめたい場合には、地図上に加盟店を表示するアプリを活用することもできます。

 

◆対象商品であること

加盟店で購入しても、次のような商品は、ポイント還元の対象にはなりません。

 

  • 換金性の高い切手、商品券、プリペイドカードなど
  • 株式、投資信託などの金融商品
  • 住宅、自動車

 

◆キャッシュレス決済であること

これが今回の制度の肝で、ポイント還元の恩恵にあずかるためには、現金ではなくキャッシュレス決済であることが条件です。増税の「痛み」を抑制して、消費の落ち込みを防ぐことと同時に、諸外国に比べて遅れているキャッシュレス決済を普及させようというのが、主な目的だからにほかなりません。

 

具体的には、クレジットカード、「Suica」「nanaco」などの電子マネー、「Line Pay」「PayPay」などのスマホQRコードが、主な決済手段になります。ただし、加盟店であっても、すべてのキャッシュレス決済に対してポイント還元が受けられるとは限らないことに、注意が必要です。加盟店は、それぞれの決済事業者ごとに加盟店登録申請を行うことになっています。例えば、「VISA」カードは登録しているけれど、「Suica」はしていない、という場合、後者で決済してもポイント還元はゼロなのです。

 

◆2020年6月までの期間限定

なにはともあれ、消費者にとって「得する」仕組みであることは間違いありません。ただし、国の制度としては、20年6月までの9ヵ月限定です。

「税込み価格」から5%ないし2%が還元される

さて、肝心のポイント還元率ですが、基本的には5%が還元され、コンビニや外食、ガソリンスタンドなどフランチャイズチェーンの店舗に限って2%還元となっています。同じコンビニ店舗でも、大手企業の直営店に関しては、制度の対象外です。

 

ところで、この還元率が適用されるのは、税込みの金額なのか、それとも税抜きの本体価格なのでしょうか? 答えは「税込み価格」。本体価格1万円の商品を消費税率10%で購入し、ポイント還元率5%の場合には、1万1,000円×5%=550円が返ってくるのです。つまり、本来1万1,000円の支払いの必要だった商品が、1万450円で手に入ることになります。

 

ちなみに、セブンイレブン、ローソンなど大手コンビニ4社は、ポイント還元ではなく、その場で2%を還元する「即時充当」を採用しました。電子マネーやQRコードを使えば、目の前で「値引き」。クレジットカードを使った場合には、還元分が翌月の請求額から自動的に差し引かれることになります。当然のことながら、この決済では、還元分のポイントはつきません。他の決済と混同しないようにする注意が、必要かもしれません。

「軽減税率」との関係は?

このポイント還元制度がややこしく感じられる一因は、同時に消費税の「軽減税率」という、やはり初めての仕組みが導入されたところにもあります。軽減税率は、食料品や新聞など一部の商品に適用され、対象となるものは従来通り消費税率8%で購入することができます。

 

これとキャッシュレス・ポイント還元の関係がどうなっているかというと、「関係なし」なのです。軽減税率は、増税によって特に低所得者層の負担が大きくなり過ぎないように導入されたもので、所管は国税庁。ポイント還元制度の目的はさきほど説明しましたが、こちらの管轄は経済産業省です。

 

両者が「関係なし」というのは、「軽減税率が適用される商品でも、ポイント還元を受けられる可能性がる」ことを意味します。さきほどの例に当てはめると、税率引き上げによって、本来は1万1,000円の支払い額になる本体価格1万円の商品が、軽減税率(8%)の適用で従来通り1万800円で購入でき、さらに5%のポイント還元。1万800円×5%=540円が戻るので、実質的な支払いは1万260円になる計算です。

見逃せない事業者のサービス

以上説明してきたのは、国が正式に導入したポイント還元制度について。還元分のコストは、国費で賄われます。実は、それに「便乗」して、電子マネーやQRコードの事業者を中心に、さまざまな新サービスが始まっているのをご存知でしょうか。さきほども言ったように、この制度はキャッシュレス決済を根づかせるのが狙い。関連業者にすれば、顧客を増やし囲い込む絶好の機会というわけです。

 

そうした事情を背景にした「出血大サービス」の例を挙げてみましょう。

  • 「PayPay」は、19年11月30日まで、ポイント還元対象店舗での利用に、さらに5%のポイント還元(最大10%還元)を行う(ソフトバンクグループ)
  • 「楽天ペイ」は、経済産業省が対象外とする大手のチェーン店でも、5%を還元するキャンペーンを同12月2日まで実施(楽天)
  • 「モバイルSuica」を利用すると、乗車料金の2%をポイント還元(JR東日本)

 

かなりお得感の強いキャンペーンが、この他にもたくさんあります。ただし、多くがやはり期間限定なので、利用を考えるのならば、すぐに会員登録などを行う必要があるでしょう。

まとめ

家計にありがたい、ポイント還元。ただ、恩恵を受けるには、まずは「決済のキャッシュレス化」が不可欠です。期間も区切られていますから、早めの行動を。

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