個人事業主が税金を白色申告で 確定申告をするケースについて徹底解説 | MONEYIZM
 

個人事業主が税金を白色申告で
確定申告をするケースについて徹底解説

確定申告の時期になると青色申告がクローズアップされますが、個人事業主は白色申告を選択することも可能です。しかし、白色申告に関する情報はあまり多くなく、帳簿の記帳は必要ないと勘違いしている個人事業主がいるかもしれません。そこで、個人事業主が白色申告をするケースについて徹底解説します。

白色申告とは

まずは白色申告のアウトラインについて見ていきましょう。

「青色申告書以外の申告書」が白色申告

実は所得税法や法人税法の法律(条文)には「白色申告」という用語は存在せず、所得税法百五十条や法人税法百二十七条に「青色申告書以外の申告書」という表現をしています。あくまでも法律には「青色申告」という記述しかありません。

白色申告のメリット・デメリット

青色申告と比較した場合の白色申告のメリット・デメリットを紹介します。

(1)メリット
  • ①事前申請が不要
    青色申告のような事前申請が不要です。そのため、開業後に何も手続きをしなければ自動的に白色申告で確定申告をすることになります。
  • ②帳簿の記帳が簡単
    不動産所得、事業所得、山林所得のある個人事業主が帳簿の記帳対象者ですが、青色申告よりも記帳が簡単です。
(2)デメリット
  • ①節税対策の幅が狭い
    青色申告よりも節税対策の幅が狭くなります。青色申告特別控除65万円などの青色申告の特典が利用できず、白色申告は税制上不利になってしまいます。
  • ②対外的な信用が落ちる
    融資を受ける場合などの際に提出する確定申告書に対する対外的な信用が落ちる傾向にあります。帳簿や決算書などの信ぴょう性では青色申告のほうが上回るためです。

白色申告の記帳方法

白色申告の帳簿の記帳は簡単といえども、起業したばかりの個人事業主にとってはハードルが高いかもしれません。そこで、白色申告の記帳方法について説明します。

帳簿の記帳は税法上、義務付けられている

白色申告の場合、以前なら不動産所得、事業所得、山林所得の合計が300万円以上の個人事業主のみが帳簿の記帳対象者でしたが、2014年からすべての個人事業主に義務付けられました

記帳する項目

白色申告で帳簿に記帳する項目は確定申告書と一緒に提出する「収支内訳書」の項目になります。事業所得の収支内訳書は次の4項目に区分できます。

(1)売上

商品販売高などの売上収入の項目

(2)雑収入等

臨時収入などの売上収入以外の雑多な収入の項目

(3)仕入

売上原価を構成する部分であり、1年間の仕入高と期首・期末の在庫の項目

(4)経費

売上収入を得るために必要な家賃や通信費などの諸経費の項目

帳簿のひな型

白色申告の帳簿には「所得金額が正確に計算できるように、整然とかつ明瞭にする」ことが求められています。具体的には次の項目を記載します。

 

  • 取引の年月日
  • 事由・相手方の名称
  • 金額

 

また、帳簿の記帳方法は次の2つになります。

(1)取引単位で記帳する方法

一つひとつの取引ごとに記帳するのが原則になります。たとえば、掛売上の場合、請求書ごとに売上高を記帳します。また、消費税が8%の場合、「※」などを用いて軽減税率の対象品目であることを分かるようにする必要があります。

(2)簡易な方法

簡易的な方法により記帳したり、上記(1)の原則と併用して記帳したりすることも認められています。簡易的な方法とは、次の通りになります。

 

区分 記帳方法
売上・雑収入等 イ、日々の合計額のみを記帳する項目

  • 小売業などの現金売上
  • 納品書や請求書など書類で取引の内容が確認できる場合
  • その他の少額な現金売上
  • ロ、現実に入金したタイミングで記帳する(併せて売掛金などの年末の未収入残高も記帳する)
仕入・経費 イ、日々の合計額のみを記帳する項目

  • 少額な仕入・費用
  • 納品書や請求書などの書類で取引の内容が確認できる場合
  • ロ、現実に出金したタイミングで記帳する(併せて買掛金・手付金などの年末の未払・前払残高も記帳する)

 

つづいて、取引単位で記帳する方法と簡易な方法の例を見ていきましょう。

例)11月30日の取引

  • ①A得意先に30万円の納品書兼請求書(#11)を発行
  • ②B得意先に20万円の納品書兼請求書(#12)を発行
  • ③C得意先に40万円の納品書兼請求書(#13)を発行

(1)取引単位で記帳する方法

日付 摘要 売上
11月30日 掛売上 A得意先 30万円
  掛売上 B得意先 20万円
  掛売上 C得意先 40万円

(2)簡易な方法

日付 摘要 売上
11月30日 掛売上 納品書兼請求書#11,12,13 90万円

青色申告を見据えた記帳方法

会計ソフトの存在により、白色申告と青色申告との記帳に費やす労力の差が縮まってきています。そのため、今は白色申告でも青色申告に切り替えることも検討すべきでしょう。そこで、白色申告から青色申告に切り替えることを見据えた記帳方法について説明します。

貸借対照表の科目残高を把握するのがポイント

「収支内訳書」になく、「青色申告決算書」にしかない貸借対照表の科目の期首・期末残高を把握するのが青色申告にスムーズに移行するポイントになります。実際に移行した場合、各科目残高を入力するだけで青色申告に必要な帳簿や決算書が作成できるためです。貸借対照表の科目は現金預金、売掛金・買掛金などの債権債務、商品などの在庫、車などの固定資産などに区分されます。

現金預金残高の管理方法

現金預金残高の管理を預金残高と現金残高に分けて説明します。

(1)預金残高

預金残高は口座残高に記録されているため、残高管理に簡単です。ただ、青色申告を見据えた場合、口座を事業用とプライベートに分けるのがポイントになります。青色申告では銀行取引も記帳しなければならないためです。そのため、事業用とプライベート用が混在していると、取引量が多くなり、記帳する量も多くなってしまいます。

(2)現金残高

現金残高の管理は事業用の現金出納帳を記帳するのが一般的です。しかし、本業で忙しい個人事業主が記帳するのは大変かもしれません。そのため、現金残高を管理しなくても済む方法の選択肢もあり得ます。

 

現金残高を管理しない方法は2つあります。

  • ①取引に現金を用いない
    入金や出金はすべて銀行口座を経由させれば、現金を用いなくても済みます。たとえば、小口現金の支払いもクレジットカードやデビットカードに統一する方法があります。
  • ②ポケットマネーで小口現金の支払いをする
    上記①よりはおすすめできませんが、ポケットマネーで小口現金の支払いをすれば、現金残高の管理が不要です。現金勘定の代わりに事業主借勘定を用いるためです。たとえば、110円のボールペンをポケットマネーで現金払いしたとします。仕訳は次の通りになります。

 

日付 借方 貸方 金額
11月30日 消耗品費 事業主借 100円

債権・債務・在庫の管理方法

債権、債務、在庫に分けて管理方法を説明します。

(1)債権

売上にかかる売掛金などの未収入残高を把握するのがポイントです。回収漏れを防ぐ意味でも日ごろから債権は管理すべきでしょう。

(2)債務

掛仕入や外注費にかかる買掛金、経費などの未払残高を把握するのがポイントです。

(3)在庫

在庫の残高は「在庫の原価×期末数量」になりますが、いかに在庫の種類ごとの期末数量を把握するのかがポイントになります。12月31日時点で棚卸しをするのが原則ですが、実務上では年末から多少前後した日に棚卸しをしても差し支えないといわれています。

固定資産の管理方法

車やパソコンなどの固定資産の貸借対照表の科目残高は収支内訳書の2ページにある減価償却費の計算の「未償却残高」と同額になります。そのため、白色申告であっても青色申告を見据えて特別に管理する項目ではありません。

まとめ

白色申告について解説してきましたが、個人事業主なら青色申告に移行すべきでしょう。会計ソフトにより、白色申告と青色申告の帳簿の記帳方法はほぼ同じのためです。「白色申告のメリット=青色申告のデメリット」が薄まってきている以上、「白色申告のデメリット=青色申告のメリット」を意識してはいかがでしょうか。

阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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