FRB、FOMCが決定する利上げが円安につながる仕組みについて解説 | MONEYIZM
 

FRB、FOMCが決定する利上げが円安につながる仕組みについて解説

ご存知の通り、アメリカの「ドル」は基軸通貨のなかでも最も影響力のある通貨です。世界経済はアメリカの政策金利の動向に左右されるといっても過言ではありません。今回は、アメリカの金融政策を支える政策金利と、その政策金利を決定する「FRB」「FOMC」とは何か?円安との関係は?等について解説していきます。

アメリカにおける政策金利決定の仕組みについて解説

アメリカのFRB、FOMCとは何か?

「FRB」(英語:Federal Reserve Board)はアメリカの中央銀行制度の総称であり、日本でいうところの日本銀行の機能を果たす機関です。日本と違いアメリカは連邦国家ですから、各連邦に地方連邦準備銀行という組織があります。これらの地方銀行をとりまとめ、協調して金融政策を実施するための統括機関という位置づけになります。
 

「FOMC」((英語:Federal Open Market Committee)はFRBが行う各種金融政策のうち、公開市場操作についての具体的な提言を行う委員会として存在します。
 

「FOMC」が行った提言に基づいて「FRB」の理事会で討議が行われ、多数決により最終的な金融政策が決定される、といった流れになります。
 

これは単にアメリカの金融政策の決定にとどまりません。FRBが発表する政策金利に基づいて、世界の金融資産が利潤を求めて一斉に移動を開始するからです。
 

金融市場に大きな影響を与えるこの決定ですので、金融市場関係者はこの「FRB」「FOMC」の動向に注目しています。

政策金利を決定する重要な機関

一般的に、自国の経済政策を実現するための手段の一つとして「政策金利」を使うケースが多く見られます。「政策金利」とは、政府の意向に基づき中央銀行が国家全体の金利を操作する際の目標金利を指します。アメリカも政策実現のための「政策金利」を設定しており、具体的には「FF金利」(英語:Federal Funds rate)という金利を操作することで市場をコントロールしています。
 

「FF金利」とは、銀行間の一時的な資金の貸し借りの際に発生する金利のことを指します。このFF金利を上下させることで、国家全体の資金流通量をコントロールすることが可能となります。
 

「FF金利」が上がれば、資金の貸し借りで生じる金利コストが上昇しますので資金が動きにくくなります。また、「FF金利」が下がれば金利コストが下落しますので借り入れがおこしやすくなり、資金の動きが活発になります。
 

貨幣の流通量が増加し過ぎるとインフレが起こりやすくなりますので、金利を上げて流通量を抑えるような政策がとられます。逆に、貨幣の流通量が減少するとデフレが起こりやすくなりますので金利を下げて流通量を増やす、といった政策がとられます。

アメリカの政策金利と為替レートの関係とは?

アメリカの政策金利が為替レートに与える影響

国際的な金融取引を行うにあたって、基準的な役割を果たす通貨のことを「基軸通貨」と呼びます。
 

「基軸通貨」と呼ばれるものは現在「ドル」「円」「ユーロ」の3つがありますが、その中でも「ドル」は最も信頼性の高い通貨として、現在も金融取引で中心的な役割を果たしています。それだけにドルを国家の通貨としているアメリカの金融政策や、政策に伴い決定される政策金利が「世界経済のグローバルスタンダード」となるのは必然の流れだといえます。
 

実際に、今回のような政策金利の引き上げにより、日本経済が少なからず影響を受けたというケースはいくつもあります。過去に、アメリカの政策金利が引き上げられた直後には、日経平均株価が大きく下落した、といったケースもあります。
 

株価だけではなく為替レートも同様に、政策金利が引き上げられると円安に推移する傾向があります。金融資産が「円」から「ドル」にシフトすることで、円が売られドルが買われますから必然的に円の価値が下がりドルの価値が上がります。為替レートは貨幣間のパワーバランスを示していますので、円が余剰になり希少価値が失われれば弱くなる、といったイメージでしょう。

アメリカの政策金利が為替レートに与える影響

では、アメリカの政策金利が引き上げられると為替レートにどのような影響を与えるかについて、その仕組みを解説します。
 

結論からいえば、政策金利の引き上げは「円安ドル高」に誘導される傾向にあるのです。
 

わかりやすい例として、定期預金をあげてみましょう。
 

例えば、A銀行の定期預金の金利が1%、B銀行の定期預金の金利が3%だったとします。A銀行で預金を保有している方にとっては、より多くの金利を貰えるB銀行に切り替えた方が得策だと考えるでしょう。
 

そこで、A銀行の定期預金を解約しB銀行で新たに定期預金を組むという動きにでます。
 

上記の例でいえば、A銀行が景気回復を目指して低金利政策を行っている日本、B銀行がインフレ脱却のために高金利政策を行っているアメリカとなります。
 

低金利の日本円より高金利のアメリカドルで資産を保有した方が儲かることになりますので、円が売られドルが買われることになります。
 

その結果、円の価値は下がりドルの価値は上がります。これが「円安ドル高」の状態です。

円安が日本経済に及ぼす影響とは?

円安になった場合のメリット、デメリット

過去の自動車や半導体の輸出をみてもわかるとおり、日本経済は資源を輸入して付加価値をつけた状態で輸出することにより、貿易黒字を生み出してきました。
 

「貿易大国」として成長してきた日本経済を支えていたのは、長きにわたる「円安状態の維持」が挙げられます。円安により製品のもととなる資源の調達コストは確かに上がります。
しかし、製品に付加価値を付けて輸出することで調達コスト以上の円安メリットを受けることができるのです。
 

今回の円安推移も、日銀が低金利による景気回復を優先させたことのほかに、元々円安のほうが日本経済にメリットが大きいと捉えていることが考えられます。
 

しかし、円安はメリットばかりではありません。メリットとして挙げた輸出によるアドバンテージはあくまで輸出を行っている企業にその恩恵が大きいというだけです。
 

輸出による恩恵を受けることがない、国内販売がメインの企業や一般の消費者にとっては円安のデメリットだけが直撃する、という状態になります。
 

【関連記事】:「いい円安」と「悪い円安」 同じ円安でも何が違う?円安についてわかりやすく解説

資源輸入国の日本にとってはデメリットが大きい

現在の日本経済は、かつてのような右肩上がりで貿易黒字が増加していくといった局面にはありません。それだけに、過度の円安推移が進行してしまうと国内経済に悪影響を与えるだけになってしまいます。適度な円安であれば経済にも少なからず好影響を与えるでしょうが、今回の円安推移はメリットが少ない、あまり良い「円安」ではないと言えます。
 

事実、産業の主要な資源である原油や鋼材、木材、小麦粉などの輸入価格高騰により、国内の販売価格が軒並み上昇しています。電力や車の燃料、食材など全体的な生産コストの上昇で、企業がコスト増を自社で吸収しきれなくなっているのです。
 

一つ一つを見れば大きな値上がりではなくても、積もり積もれば家計への負担は大きなものとなります。アメリカという経済大国の「くしゃみ」で私たち消費者の負担が増加することになるのです。

まとめ

「政策金利」といっても、私たちの生活に直接関係するものではありませんので、あまりピンと来ないかもしれません。しかし、現在進んでいる物価高が実はアメリカの「政策金利」の影響を受けているものだということを理解しておくべきでしょう。
 

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奥谷佳子
Webライター/ライター
フリーランスとして様々な記事を執筆する傍ら、経理代行業なども行う。 自身のリアルな経験を活かし、税務ライターとして活動の場を広げ、実務で役立つ生きた税法の解説に努めている。 取材を通じて経営者や個人事業主と関わることも多く、経理や税務ほか、SNSを使った情報発信の悩みにも応えている。