子どもの国民年金保険料を親が払うと節税に その仕組みと注意点を解説 | MONEYIZM
 

子どもの国民年金保険料を親が払うと節税に その仕組みと注意点を解説

20歳になると、国民年金保険料の支払い義務が生じます。ただ、親の仕送りに頼っている学生などの場合は、年間20万円近い保険料の負担は、難しいことも多いはず。このような場合、親が代わりに保険料を納めることができ、節税にもつながることをご存知でしょうか? なぜ節税が可能になるのか、親が代わりに支払う際の注意点と併せて解説します。

収入のない学生が年金保険料を納めるには

障害にも備えられる国民年金

国民年金は、保険料を納めることで、老後の暮らしを支えるだけでなく、万が一事故や病気によって障害が残ってしまった場合には、「障害基礎年金」も受給できる制度です。20歳以上60歳未満の人に保険料の支払い義務があり、サラリーマンなどとして働いていて厚生年金に加入していれば、本人の給与から差し引かれます。
 

一方、自営業者のほか学生なども、自ら国民年金保険料を納める必要があります。収入のない(少ない)学生については、保険料を本人が支払う以外に、次のような納付が認められています。

「学生納付特例制度」を利用する

1つは、学生の間(就職するまでの間)は、国民年金保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」の利用です。猶予された分の保険料は、就職後に納める(追納)ことで、初めから納めていたのと同じ年金額を受け取ることができます。
 

ただし、追納が認められるのは猶予された年から10年以内です。また、3年目以降の追納には、加算額が発生します。

親が支払う

もう1つは、親など親族が代わって支払う方法です。日本年金機構から送られてくる「納付書(国民年金保険料納付案内書)」を使用して、親自身がコンビニや銀行窓口などで保険料を納付します。
 

口座振替やクレジットカード払いにすることもできますが、その場合は年金事務所などでの手続きが必要です。「国民年金保険料口座振替納付申出書」または「国民年金保険料クレジットカード納付申出書」に必要事項を記入して、年金事務所(口座振替の場合には金融機関でもOK)に提出します。
 

ただし、次に説明する社会保険料控除が受けられるのは、口座名義人またはクレジットカード名義人のみであることに、注意しましょう。例えば、親が保険料を払っていても、子ども名義の口座から引き落としされていたりすると、控除を受けることはできません。
 

「子どもと生計を一にしている」という条件がありますが、親が学費や生活費を支出していれば、離れて一人暮らししていても問題ありません。

贈与にはならないのか?

子どもにとってはありがたい援助ですが、贈与に当たらないかという心配があるかもしれません。もし保険料の支払いが贈与に当たれば、親が他に譲りたいものがあっても、年間110万円の基礎控除額を超えると贈与税が発生することになります。
 

この点に関しては、国民年金の保険料は、国税庁が「贈与税が課税されない財産」としている「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」に該当する、とされています。つまり、贈与にはなりません。逆に、親が代わって支払う保険料は、節税効果を生むことで「減額」されるのです。

親が保険料を負担すると節税になる理由

国民年金保険料は、社会保険料控除の対象

なぜ子どもの国民年金保険料の支払いが節税になるかというと、その全額が社会保険料控除として、親の所得から差し引けるからです。控除は、年末調整や確定申告の際に、日本年金機構から送られてくる「国民年金保険料控除証明書」を提出すれば、受けることができます。社会保険料控除が受けられるのは、国民年金保険料を支払った日が該当する年になります。

節税額はどれくらい?

どのくらいの節税になるのか、一例を挙げてみましょう。
 

  • 保険料を支払った親の所得は400万円(所得税率:20%、住民税率:10%)
  • 2022年度の国民年金保険料は、月額16,590円×12ヵ月=年間19万9,080円
  •  

    上の条件に当てはめて計算すると、節税額は
    19万9,080円×30%(所得税+住民税)=59,724円
    となります。

    なお、国民年金の保険料は、所得などにかかわらず同一です。また、年度ごとに改定され、23年度(23年4月~)は月額16,520円です。

    前納すれば割引になる

    国民年金保険料には、まとめて支払うことで、割引が受けられる「前納」の制度があり、子どもの保険料を代わって支払う場合にも、使うことができます。期間は6カ月分、1年分、2年分から選ぶことが可能で、まとめる期間が長いほど割引が大きくなります。2年分の前納で、15,000円程度の割引が適用されます。

    親が保険料を支払う場合に注意すべきこと

    子どもが就職したら保険料が重複する

    注意したいのは、今説明した「前納」で年金保険料を支払っていた子どもが就職した場合です。就職して厚生年金に加入すると、給与から国民年金の保険料も天引きされます。その際、前納した時期や期間によっては、親が納めていた分と重複して引かれる可能性があるのです。
     

    保険料納付の重複があると、日本年金機構から還付請求書が届きます。届いた書類に必要事項を記入して返送するだけで、重複分は返ってきますが、この手続きを忘れないようにしましょう。時効があるため、還付請求できるのは2年です。

    「収入がないから未納」は避けるべき

    仮に20歳になったのに保険料を支払わず、最初に述べた「特例制度」の申請も行わないと、年金「未加入」(未納)の状態になります。
     

    年金額は、支払った期間に応じて決まる仕組みになっています。基本的に、20歳から60歳までの40年間支払えば満額が支給されますが、期間が短いと、その分減額されてしまいます。また、未加入状態だと、学生時代に事故や病気などで障害を負った場合、障害基礎年金を受給することができない可能性があるのです。収入がないからといって、未納状態を放置するのは、避けましょう。

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    まとめ

    子どもが、国民年金保険料の支払いが難しい場合には、親が代わって納めることができます。子どものために支払った保険料は、全額が所得税、住民税の控除の対象になるというメリットがあります。親に負担能力がある場合には、検討してみてはいかがでしょうか。

    マネーイズム編集部
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