海外移住のときに必要な手続きは?税金や必要な準備を徹底解説 | MONEYIZM
 

海外移住のときに必要な手続きは?税金や必要な準備を徹底解説

仕事の都合などで急に海外移住が決まると、何から手を付けていいのか戸惑うものです。整理された状態で必要な手続きがわかれば、準備もしやすくなるのではないでしょうか。今回は、海外移住するときの手続きを紹介します。日本の税金に対応する納税管理人の説明や、役場での手続きなどをまとめました。

海外移住で必要な手続きは?納税管理人を解説

海外移住するとき、納税管理人の手続きが必要な場合があります。まずは納税管理人について説明します。

海外移住のときに手続きする納税管理人とは

納税管理人とは、日本非居住者に代わって日本の税金に対応する人を指します。非居住者とは「海外に1年以上住んでいる」「海外に1年以上住む予定がある」人をいいますから、たとえば1年以上、海外赴任が決まっている場合は出国のときから非居住者になります。非居住者が日本で納税する必要がある場合、納税管理人を選任します。納税管理人の主な業務も確認しておきましょう。以下のとおりです。
 

  • 確定申告書を作成・提出する
  • 各種税金を納付する
  • 還付金を受け取る
  • 税務署などから届く書類を受け取る

海外移住をするときに納税管理人の手続きが必要な人は?

具体的にはどのような場合に納税管理人が必要なのでしょうか。海外移住をするとき、主に納税管理人の手続きが必要なケースは以下のとおりです。
 

  • 日本で所有している不動産に係る収入がある場合
  • 地方税の納税義務がある場合
  • 相続税や贈与税が発生した場合
  • 海外に移住するまでに一定の所得がある場合
  • 株式を売却した場合

 

それぞれ説明します。

・日本で所有している不動産に係る収入がある場合

例えば賃貸アパートを経営するなど、日本にある不動産に係る収入がある場合は日本で確定申告が必要です。この場合、納税管理人の選任をします。

・地方税の納税義務がある場合

住民税や固定資産税といった地方税の納税義務がある場合も、納税管理人の選任が必要です。1月1日時点で日本に居住していた場合は住民税の納税義務がありますし、1月1日時点で日本に不動産を所有している場合は固定資産税の納税義務が発生します。

・贈与税や相続税が発生した場合

例えば親が亡くなるなど、相続によって財産を取得したときに発生する相続税は、日本で納税しなければなりません。また個人から財産を譲り受けるときに発生する贈与税も、日本での納税義務が生じます。

・海外に移住するまでに一定の所得がある場合

海外に移住する年の1月1日から出発までの間に日本で一定の所得がある場合、所得税が発生します。原則として海外移住する日までに確定申告をして納税することになっていますが、申告書の提出などができない場合、納税管理人を選任します。

・株式を売却した場合

海外に移住し、日本で株式を売却した場合も申告や納税が必要です。この場合も納税管理人を選任しましょう。なお、特定口座であれば原則として申告は必要ありません。

納税管理人は誰が適任か

納税管理人に条件はあるのでしょうか。結論として、納税管理人に資格要件はありません。居住地が日本の人であれば、問題ないのです。ただし、確定申告書の作成や税務相談は税理士の独占業務です。申告書の作成が難しく依頼したり、納税の相談をしたりする場合は税理士に任せるようにしてください。周りに信頼できる人がいない場合も、税理士に任せると安心でしょう。

納税管理人の届出手続きはどうやればいい?

納税管理人を選任するには、手続きが必要です。税金の種類によって手続きが異なりますので、注意してください。

【所得税】

「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出します。提出先は以下のとおりです。
 

出国者の納税地とされていた日本国内の住所に親族が居住している場合:その住所地の所轄税務署
出国者に国内不動産の賃貸収入がある場合:その不動産のある所轄税務署
いずれも該当なし:依頼人が今まで利用していた税務署
 

【住民税】

「納税管理人申告書」を1月1日の住所地の市区町村に提出します。所得税で提出した「納税管理人の届出書」とは書類が違う点に注意してください。
 

【固定資産税】

「納税管理人申告書」を所有している不動産の所在地の市区町村に提出しましょう。

海外移住をするときの注意点は?

年の途中で海外に移住する場合は注意が必要です。納税管理人を選任しない場合、所得税などの申告期限が原則と変わってきます。期限内に確定申告しないと無申告加算税などのペナルティが課せられます。
 

また、納税管理人を選任しなければ納税通知書が手元に届かなくなります。送付先の住所が分からない場合は公示送達(役場の掲示場に一定期間公示することで書類が送達されたものとみなす制度)を行う場合もあります。納税管理人を選任せずに海外に移住してしまった人は、すぐに届出書を提出しましょう。

海外移住をするときの税金以外の手続き

ここで、海外移住するときの税金以外の手続きを紹介します。次の手続きを行いましょう。

・海外転出届

「海外転出届」を提出しましょう。転出届を提出する目安は1年以上の海外移住ですが、提出をすすめる市区町村もあります。海外転出届を提出することで「転出証明書」が発行され、住民票の除票手続きが完了します。

・国民年金

海外転出届を提出すると、国民年金への加入義務がなくなります。ただし任意で加入することもできますので、将来受け取る年金額のことも考えて継続するか判断しましょう。

・マイナンバーカード、通知カード

海外移住する場合はマイナンバーカード、通知カードは返却しなければなりません。市区町村役場に提出し、返却したことを記載してもらいます。

・健康保険

日本の公的医療保険には「国民健康保険」と「健康保険」の2つの制度があります。自営業者など会社勤めをしていない人は国民健康保険に、会社員などは健康保険に加入します。海外転出届を提出すれば、国民健康保険料を支払う必要はありません。一方、健康保険は海外移住後も被保険者資格があれば任意での加入が可能です。万が一移住期間中にけがや病気で病院にかかった場合は、日本で診療を受けたときの費用を基準に「海外療養費」として支払われます。

・運転免許証

海外移住など長期で日本を離れる場合は更新期間前に運転免許証の更新手続きを行えます。この場合、パスポートなど海外に移住することを証明する書類が必要です。また、一時的に帰国して免許証の更新を行う人もいるでしょう。住民票を除いている人については、一時滞在先を管轄する免許センターで更新が可能です。
 

ここまで、海外移住するときに必要な手続きを紹介してきました。公的な手続きはもちろん大切ですが、ほかにも必要な準備は多くあります。たとえば海外移住する前に体調不良に備えて移住先の病院を調べておくと安心ですし、歯科治療を済ませておけば海外の高い歯科治療費がかからなくなるので負担が少なく済みます。移住して働く場合、銀行口座を開設するためあらかじめ調べておくのも1つでしょう。海外移住後の生活を思い描き、入念に準備してください。

まとめ

海外に移住するときの手続きは、必要な事項をリストアップして取り掛かるとわかりやすくておすすめです。今回の記事を参考に、まずはリストを作成することから始めてみてはいかがでしょうか。日本で不動産収入があるなど、納税管理人が必要な人はリストにその旨を入れておきましょう。手続きをしっかり済ませて、安心して海外移住を始めてください。
 

渡邉身衣子
東証1部上場企業法務部の経験を経て金融ライターとして独立する。ビジネス実務法務検定2級を取得済み。難しくなりがちな金融・税金・法律をやわらかく解説します。
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