デジタル地域通貨とは?導入メリットと使用例について解説 | MONEYIZM
 

デジタル地域通貨とは?導入メリットと使用例について解説

デジタル地域通貨には地域を活性化するという効果があり、導入する自治体が増えています。しかし課題がないわけではありません。この記事ではデジタル通貨の説明と導入事例だけでなく、課題についても解説します。

デジタル地域通貨とは

そもそもデジタル地域通貨とはどのようなものなのでしょうか。デジタル地域通貨を説明する前に地域通貨について知っておく必要があります。地域通貨とは特定の地域のみに流通する通貨のことです。その地域限定の通貨で、他の場所に行くと、通貨としての価値はありません。
 

その地域通貨をデジタル化したのが、デジタル地域通貨です。デジタル地域通貨の場合、紙の地域通貨と違い、スマホのアプリで決済ができるため、簡単に使えます。またデジタル地域通貨は、紙よりも発行するコストがかかりません。
 

デジタル地域通貨は、地域のみで使える通貨です。そのデジタル地域通貨を使って地域活性化を行おうと、みずほ銀行などの大手の金融機関も参画しています。そのため日本全国でデジタル通貨が見られるようになってきました。

法定通貨と地域通貨の違い

地域限定で使える地域通貨に対して、日本全国で使えるのが法定通貨です。法定通貨は国や中央銀行が発行しています。お札をじっと見ることは無いかと思いますが、お札には「日本銀行券」と書かれています。
 

法定通貨は国と中央銀行が独占的に発行しているため、勝手に法定通貨を作成するのは法律違反です。法定通貨を勝手に作成すれば、偽札を作ったとして逮捕されるでしょう。日本銀行では、偽札を作らせないように透かしを入れるなどして工夫しています。2024年7月には、約20年ぶりに新紙幣が発行される予定です。
 

一方地域通貨は前述したように、その地域でのみ使える通貨で、信用組合やNPOなどが発行しています。法的な通用力はないので、別途、信用の裏付けが必要です。地域通貨は各自治体が運営母体であり、地域内の経済活動の活性化に役立てています。
 

地域通貨というとなじみが薄いかもしれませんが、地域通貨は今に始まったものではなく、1990年代後半から見られました。ただし運用などの問題から、2005年以降は減少傾向にあります。しかしまた大手の参入などで盛り上がりを見せている状況です。

デジタル地域通貨を導入するメリットは?

デジタル地域通貨を導入する自治体がある理由としては、デジタル地域通貨にメリットがあるからです。ここではデジタル地域通貨のメリットを3つ紹介します。

地域経済の活性化

デジタル地域通貨を利用できる場所は、その地域のお店のみです。そのためその地域でお金を使ってくれることになり、地域活性化につながります。もちろん法定通貨も使えますが、デジタル地域通貨を購入してもらい、その地域で消費してほしいというのが地方自治体の希望です。
 

そのため地域内で利用できるポイントをつけるなど、付加価値をつけることで、お得感を出して、その地域でデジタル通貨を購入して使ってもらおうとしています。

地域コミュニティの活性化

デジタル地域通貨はスマホでチャージ可能ですが、それ以外にも地域内でボランティアを行うとポイントが付くなどの施策が行われています。そのため地域コミュニティの活性化に活用している自治体もあります。
 

またデジタル地域通貨を使う場合のみ、裏メニューが利用できる地域もあるようです。さらに検診の受診や歩数でポイントをつけるなど、健康増進に利用している自治体もあります。このように地域活性化の手段としてデジタル地域通貨を活用しているわけです。

観光や移住の促進

デジタル地域通貨を使って、観光や移住を促進している地域もあります。たとえばその地域でしか買えないものを地域通貨でのみ買えるようにすれば、観光客の誘致にも使えます。
 

またデジタル地域通貨を使って、住みやすい地域を実現できれば移住の促進にもつながるでしょう。こうした観光誘致や移住促進の取り組みにも、デジタル地域通貨は使われているわけです。

デジタル地域通貨の導入事例

デジタル通貨は日本全国で導入されています。ここでは代表的なデジタル通貨を3つ紹介します。

さるぼぼコイン

さるぼぼコインは飛騨信用金庫が発行する電子コインで2017年からスタート。地域に根ざした信用金庫だからこそ実現できたデジタル地域通貨です。チャージ金額にポイントがつくため、地域のためだけでなく、自分にとっても得です。そのため活用している人が多くいます。
 

市県民税や水道料金、国民健康保険料などの支払いもさるぼぼコインで可能で、主婦層からも支持されています。アプリ経由で自治体の情報も発信しており、情報発信のプラットフォームとしても活用されているようです。デジタル地域通貨の成功例としてよく紹介される通貨です。

アクアコイン

アクアコインは君津信用組合・木更津市・木更津商工会議所が 連携して、普及に取り組んでいるデジタル地域通貨です。2018年からスタート、市内のお店同士の取引にも活用可能です。
 

使用しないコインは1年で無くなってしまうので、貯めずに使わなければなりません。地元での買い物以外にも、ボランティアに参加したり、毎日8000歩以上歩いたりするとポイントがもらえます。市民同士のやり取りやボランティア団体への寄付も可能で、地域活性化にも役立っています。

高崎通貨

高崎通貨は群馬県高崎市が運用しているデジタル通貨で、みずほ銀行が提供しているJ-Coin Payを利用しています。加盟店手数料は市が負担しており、「中小企業就職奨励金」「出産・子育て応援ギフト」で活用されています。
 

「中小企業就職奨励金」は、市内在住かつ市内中小企業に就職した若者1人あたり10万円分の電子地域通貨「高崎通貨」が提供される制度です。高崎通貨は、市内の加盟店で使用可能です。 

また「出産応援ギフト」「子育て応援ギフト」として、妊婦1人につき5万円分の高崎通貨、お子さん1人につき5万円分の高崎通貨がもらえる施策も行われています。

デジタル地域通貨の課題

地域で導入が進むデジタル地域通貨ですが、課題もあります。ここではデジタル地域通貨の課題を2つ紹介します。

持続可能なサービスにできるかどうか

デジタル地域通貨を運用するためには、財源が必要です。その財源に関して、国の支援に頼っている自治体も多く、地域通貨を継続的に運用できるかどうかが課題です。 

デジタル地域通貨の中には、財源が無くなれば終わりとなりかねないものもあります。いかに持続可能なサービスにするかが課題となります。

地域内での収益サイクルの確立

デジタル地域は地域活性化のために導入している自治体が多くあります。そのため通貨地域内で収益サイクルが回らなければ意味がありません。地域通貨を持っていても使う場所がなければ継続しません。そのため加盟店の増加は必須の課題です。
 

また地域通貨を地域内でうまく循環させる仕組み作りが大事です。ボランティアに参加するとポイントがもらえるなどの仕組みが参考になるでしょう。同時に地域通貨を使うインセンティブを考える必要があります。
 

ポイントの加算など、法定通貨よりもデジタル地域通貨を使った方が得になる仕組みを、継続的に実施していく必要があるでしょう。

まとめ

ここまでデジタル地域通貨導入のメリットと使用例、課題について解説してきました。今後、デジタル地域通貨が継続的に運用されるためには、財源の問題と仕組みの問題を解決する必要があります。
 

地域活性化の有効な手段ですので、これらの課題を解決して、永続的な運用ができるように各自治体の努力が求められるでしょう。

福井俊保
渋谷区で一から立ち上げたプログラミング教室スモールトレインで代表として、小学生に対するプログラミングと中学受験の指導に従事。またフリーランスのライターとしても活躍。教育関係から副業までさまざまな分野の記事を執筆している。
著書に『AI時代に幸せになる子のすごいプログラミング教育』(自由国民社)、共著で『#学校ってなんだろう』(学事出版)がある。