中小企業の事業縮小で抑えておくべき
整理解雇ルールと雇用調整助成金

中小企業の事業縮小で抑えておくべき  整理解雇ルールと雇用調整助成金
公開日:
2020/05/20
 
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社会や経済の状況により業績不振となり、事業規模縮小を考える場合に問題となるのが労働者の雇用の継続です。企業を存続させるために解雇を行って人員を削減する際は、どのように実施するべきなのでしょうか?ここでは中小企業における整理解雇の手順や注意点をお伝えします。

事業規模縮小を要因とする労働者の解雇方法

人員削減で行われる整理解雇

労働者との雇用関係を解消する解雇には、普通解雇と懲戒解雇、そして整理解雇の3種類があります。普通解雇は労働者の勤務態度や能力などの理由により行われる解雇で、病気やケガで働けなくなったことによる労働契約解消も含まれます。

 

懲戒解雇は労働者に責められるべき行為があった場合に行われます。重大な過失や意図した行為により企業に損害を与えたときなどに行われ、退職金不支給といった処遇が適用されます。

 

整理解雇は企業が事業規模を縮小するために、人員削減の目的で行われる解雇です。普通解雇や懲戒解雇が労働者側に問題があって発生するのに対し、整理解雇は企業側の責任によって実施に至ります。また一度に複数の労働者が解雇される点が、普通解雇や懲戒解雇とは異なります。

整理解雇に求められる4つの要件

整理解雇は企業が経営不振となった場合に、事業継続のために必要不可欠に迫られて行われるべきものです。現状のままでは企業活動を維持していくことが不可能であり、やむを得ずに人員削減をしなければならない場合にのみ実施が認められます。整理解雇の実施が受け入れられるためには、以下の4要件を満たしていることが必要です。

1.人員削減の必要性

整理解雇を行うためにまず要件として求められるのが、人員削減の必要性です。客観的視点から必要があると判断されないかぎり、整理解雇の実施は認められません。

2.解雇回避の努力

解雇は労働者に一方的に不利益を与える行為で、事業主には徹底した解雇回避のための努力が求められます。保有資産の売却や経費削減、新規採用の中止、配置転換などを行った上で、さらに企業存続のために必要な場合にのみ、整理解雇の実施が認められます。

3.人選の合理性

特定の労働者を解雇するために整理解雇が利用されることは絶対にあってはなりません。整理解雇の対象となる労働者は、合理的に選ばれることが不可欠です。

4.解雇手続きの妥当性

解雇は法律に定められている手続きをしっかりと踏んで、行われるべきものです。煩雑ですが勝手に省略することは許されません。

整理解雇の前にすべきことと進め方

整理解雇前に行うべきこと

整理解雇は対象となった労働者に大きなダメージ・ショックを与えるのはもちろん、対象から外れた労働者に対しても大きなダメージを与えます。整理解雇はいきなり実施せず、早期希望退職者募集や退職勧奨といった段階を踏んだ上で取り掛かる必要があります。

1.早期希望退職者募集

希望者を募り、定年前に退職してもらう人員削減方法です。労働者の意思が尊重されるため、トラブルになりにくい点がメリットにあげられます。デメリットは企業に残って欲しい有能な労働者が退職してしまう可能性がある点です。

2.退職勧奨

整理解雇の対象となる労働者に、整理解雇前に退職を促す方法です。退職金の上積みなど好条件を準備して、労働者が退職の意思を示すように働きかけます。メリットは選定した労働者に退職勧奨できる点ですが、応じてもらえない場合もある点がデメリットです。また過ぎた退職勧奨は強要となり、トラブルに発展する恐れがあるので注意が必要です。

整理解雇の手順と注意点

整理解雇の大まかな手順や注意点は、以下の通りです。

1.実施の決定

経営不振の原因を究明し、対策として整理解雇の実施を決定します。具体的に事業規模をどの程度縮小するか、何名の人員削減が必要かを検討します。

2.対象範囲の選定

整理解雇の対象となる労働者の範囲を決めます。整理解雇されることで受けるダメージの少ない労働者であることを基本に、能力やスキル、企業に対する貢献度から対象範囲を決定します。一般的には年齢や勤続年数、部署、職種等が基準に用いられます。

3.発表・通知

整理解雇の実施を社内に発表し、対象となった労働者に通知します。労働基準法で解雇は30日前までに労働者に通知することが規定されているので、違反とならないよう余裕を持った日程とする必要があります。

4.実施

対象者に退職金を支払うとともに書面を渡して、解雇を実施します。整理解雇では実施後のトラブル発生も多いので、きちんと解雇辞令のような雇用契約解消の事実を示した書面を作成し、相手に渡しておくことが大切です。

中小企業における解雇回避のための方策

中小企業に求められる解雇回避努力義務

中小企業は事業規模が小さいことから、一般的に親密で良好な人間関係が築けています。対象となって職場を去る者と、対象とならずに職場に残る者とに労働者を二分する整理解雇は、どちらの労働者にも良い影響を与えません。職場に残る労働者には、とくに事業主に対して強い不信感を抱かせるため、今後の業務遂行に支障が出る恐れがあります。

 

中小企業は整理解雇を行う前には、十分な解雇回避のための努力が求められます。とくに事業主をはじめとする経営陣の報酬カット、余計な会社資産の売却等を行わずの労働者の解雇は、反発を生みます。会社側は自らも痛みを背負う努力が必要です。労働者側だけが犠牲となるような整理解雇は絶対に避けましょう。

解雇回避に利用可能な雇用調整助成金

整理解雇前の回避努力のひとつに、休業があります。人件費削減や事業の立て直しを図る目的で、企業活動の全部か一部について休業期間を設けます。休業中は労働者に対して通常の給料の60%に相当する休業手当を支払う必要がありますが、この休業手当支給を行う企業が申請して受けられるのが雇用調整助成金です。

 

雇用調整助成金は労働者に支払う休業手当に対して、中小企業は3分の2、大企業は2分の1の金額が助成される制度です。雇用保険適用事業所であること、売上金額や生産量などが一定基準より下回っていること、新規雇用をしていないことなどの条件を満たしている場合に、申請により受けることが可能です。雇用保険被保険者である労働者を対象に、1年間で100日、3年間で150日を支給限度日数とした雇用調整助成金が受けられます。

雇用調整助成金における新型コロナウイルスに対する特例措置

新型コロナウイルス感染症対策として、雇用調整助成金は拡充された特例措置が適用されます。新型コロナウイルス感染症で影響を受けた事業主全てに対し、生産支給要件の緩和が行われ、助成率も100%に引き上げられます。雇用保険被保険者ではない労働者も対象となり、支給限度日数は通常の1年間で100日、3年間で150日間に加えて4月1日から6月30日までの日数も加えられます。

まとめ

労働者の安定した生活を奪う解雇は、企業存続のために必要不可欠な場合のみ行われるべきものです。十分に解雇回避のための努力をした上での実施が求められます。雇用調整助成金の活用も検討し、慎重に判断しましょう。

矢萩あき
複数の企業で給与計算などの業務を担当したことから社会保険や所得税などの仕組みに興味を持ち、結婚後に社会保険労務士資格とファイナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。現在はライターとして専門知識を活かした記事をはじめ、幅広い分野でさまざまな文章作成を行う。
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