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個人事業主が事業譲渡する方法と 関係する税金を徹底解説

個人事業主が事業譲渡する方法と  関係する税金を徹底解説

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事業譲渡といえば、法人が行うものと思う個人事業主も多いでしょう。しかし、事業譲渡は法人に限ったことではありません。個人事業主でも事業譲渡は可能です。   実は、経営者の高齢化が進む中、個人事業主であっても事業譲渡をするケースが増えています。ここでは、個人事業主が事業譲渡する方法と税金について解説します。

■個人事業主が事業譲渡する場合の代表的な方法

個人事業主が事業譲渡をする場合には、いくつかの方法があります。ここではまず、個人事業主が事業譲渡する場合の代表的な2つの方法について見ていきましょう。

相続と贈与による事業譲渡の方法

個人事業主が事業譲渡をする場合、事業譲渡をする相手は、子供や孫などの親族である場合が多いです。そのときに用いられる事業譲渡の方法が相続と贈与です。それぞれ見ていきましょう。

①相続

相続では、経営者の死亡時に親族に財産を引き継ぎます。その際、事業で使っていた資産も引き継ぐため、結果として事業譲渡が行われます。

 

親族の誰を後継者にするのかを決めている場合は、あらかじめ遺言書を作成する必要があります。後継者に事業で使っていた資産も引き継ぐことを遺言書に記載することで、ほかの親族にその資産が相続されることを防ぎます。

 

相続で事業譲渡をする場合は、相続税の申告はもちろんのこと、亡くなった経営者の準確定申告と後継者の「開業届」「青色申告承認申請書(青色申告の場合)」などの書類を税務署へ提出する必要があります。

②贈与

贈与とは、生前に財産を無償で引き継ぐ行為のことです。後継者に事業で使っていた資産などを贈与することで、事業譲渡を行います。後継者にアドバイスを送るなど、生前に事業を譲渡し、後継者を見守りたい場合などは、相続よりも贈与で事業譲渡します。

 

贈与では、財産を渡す側と引き継ぐ側、双方の同意が必要です。双方の同意があればスムーズに事業譲渡ができるため、従業員などの第三者に事業譲渡する際には、贈与を選ぶケースが多いです。

 

贈与で事業譲渡をする場合は、贈与税の申告はもちろんのこと、経営者の「廃業届」や「青色申告の取りやめ届出書」などの書類と、後継者の「開業届」「青色申告承認申請書(青色申告の場合)」などの書類を税務署へ提出します。

M&Aによる事業譲渡の方法

M&Aによる事業譲渡とは、事業で使っていた資産などを第三者に売却する方法のことです。M&Aによる事業譲渡では、相続や贈与と違い、経営者が資金を獲得することができます。また、親族や従業員だけでなく、幅広く後継者を募ることも可能です。

 

最近では事業譲渡したい経営者と事業を譲り受けたい人をつなぐ、M&A仲介会社やM&Aマッチングサイトなども多くあるため、比較的簡単に、M&Aによる事業譲渡ができるようになっています。

 

M&Aで事業譲渡をする場合は、経営者の「廃業届」や「青色申告の取りやめ届出書」などの書類を税務署へ提出する必要があります。また、場合によっては、確定申告で譲渡所得税の申告なども必要です。

 

■個人事業主が事業譲渡する場合の税金

ここまでは、個人事業主が事業譲渡する場合の代表的な方法について見てきました。

 

事業譲渡する場合には、それぞれの方法により異なる税金が発生します。そこで、ここでは個人事業主が事業譲渡する場合の税金について見ていきましょう。

相続と贈与による事業譲渡の税金

相続での事業譲渡の場合は、後継者に相続税がかかります。相続税では、法定相続人(配偶者や子供など)の数により次のように控除額が決まっています。

 

基礎控除額=(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)

 

例えば相続人が1人の場合の基礎控除額は3,600万円です。この場合、相続財産が3,600万円を超えると、超えた部分に対して相続税が発生します。

 

贈与での事業譲渡の場合は、後継者に贈与税がかかります。贈与税では、年間110万円までの基礎控除額があるため、贈与した財産が110万円を超えると、超えた部分に対して贈与税が発生します。

 

次に、経営者側の税金です。相続の場合も贈与の場合も、経営者は所得税を納める必要があります。相続なら亡くなる日まで、贈与なら贈与した日(廃業日)までに事業活動で得た利益に対して、確定申告(相続の場合は準確定申告)を行い、所得税を納めます。

M&Aによる事業譲渡の税金

M&Aによる事業譲渡の場合は、経営者に所得税がかかります。事業譲渡した日までに、事業活動で得た利益に対して確定申告を行い、所得税を納めます。

 

また、事業譲渡した資産の中に、土地や建物が含まれていた場合は、譲渡所得税が発生します。土地や建物を売却した場合は、通常の事業所得とは分離して納める税金を計算します(分離課税)。

 

確定申告の際には、通常の申告書とは別に第三表(分離課税用)を作成して、税務署に提出します。

 

■個人事業主でも利用できる事業承継税制

法人では、事業を承継させやすくするために、事業承継税制があります。個人事業主においても、令和元年度の税制改正により事業承継税制が創設されました。

 

ここでは、個人版の事業承継税制を解説します。

個人事業主が利用できる事業承継税制とは

近年、経営者の高齢化や後継者不足による企業の倒産が増加しています。そこで登場したのが、事業承継税制です。

 

事業承継税制とは、税金を優遇することで後継者に事業を承継しやすくする制度です。

具体的には、一定の要件を満たせば、個人事業主の事業承継で発生する贈与税・相続税を猶予もしくは免除する制度となっています。後継者としては、事業承継時に納税資金を用意する必要がなくなるので、事業を承継しやすくなります。

事業承継税制の要件と手続き

事業承継税制は「個人事業主の事業承継で発生する贈与税・相続税を猶予もしくは免除する」というかなり優遇された制度であるため、すべての事業承継に適用することはできず、一定の要件を設けています。事業承継税制には、次のような要件があります。

①特定事業用資産の取得であること

特定事業用資産とは、次のものをいいます。

 

  • ・土地(400平方メートルまで)
  • ・建物(床面積800平方メートルまで)
  • ・固定資産税の課税対象となる資産
  • ・自動車・軽自動車ほか

 

後継者が、これら資産を承継した場合に、その資産にかかる贈与税・相続税が猶予もしくは免除されます。

②後継者の主な要件

後継者の主な要件は次のとおりです。

 

  • ・贈与の日において20歳以上であること(贈与の場合)
  • ・都道府県などで円滑化法の認定を受けていること
  • ・贈与の日まで引き続き3年以上、承継する事業に従事していたこと。または、相続直前までに受け継ぐ事業に従事していたこと
  • ・贈与税などの申告期限において開業届を提出し、青色申告の承認を受けていること、または受ける見込みであること
  • ・承継する事業が、資産管理事業及び性風俗関連特殊営業に該当しないこと
③先代経営者の要件

先代経営者の主な要件は次のとおりです。

 

  • ・廃業届出を提出していることまたは贈与税の申告期限までに提出する見込みであること(贈与の場合)
  • ・贈与(相続開始)の日の属する年、その前年及びその前々年の確定申告書を青色申告書により提出していること

 

事業承継税制を受けるには、あらかじめ各都道府県に「個人事業承継計画」を作成・提出し、各都道府県に円滑化法の認定を受ける必要があります。

 

個人事業承継計画は、個人の事情でその内容が異なることがあります。「個人事業承継計画」の具体的内容や「円滑化法の認定」の手続き等については、税理士などの専門家や都道府県の担当課にお問い合わせください。

 

■まとめ

事業譲渡は、法人だけでなく個人事業主であっても重要です。事業譲渡を円滑に行うことで、スムーズに後継者に事業承継を行うことができます。

 

事業譲渡の方法には、相続・贈与やM&Aがあります。相続・贈与の場合には、事業承継税制の適用を受けることができます。M&Aの場合は、経営者が資金を受け取ることができるなど、それぞれで異なるメリットがあります。自分に合った方法で事業譲渡を行うことが、重要になるでしょう。

長谷川よう(ライター)
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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