「知らないと危ない」2026年労働基準法改正で何が変わる?企業が今から備えるべきポイント

[取材/文責]マネーイズム編集部

人手不足や働き方の多様化を背景に、2026年に労働基準法が大きく改正される見通しです。厚生労働省が立ち上げた労働基準関係法制研究会が公表している報告書に沿って法改正が行われれば、規模にかかわらず多くの企業に影響を与えるでしょう。

当記事では、2026年労働基準法の改正を前に、企業が押さえておくべきポイントや早めの対応が必要な項目などについて解説します。

1. 2026年労働基準法改正とは?約40年ぶりの大改正の全体像

厚生労働省では、2024年より労働基準法の改正を視野に有識者会議を開催しており、2025年1月には改正案を取りまとめた報告書を公開しました。今後、報告書の内容を踏まえて2026年度には労働基準法が改正されると予想されています。

約40年ぶりとなる労働基準法の大改正を前に、ここでは改正の背景や目的、経営者が特に押さえておきたいポイントなどを解説します。

なぜ今、約40年ぶりの大改正が行われるのか?背景と目的

2026年に実施が見込まれている労働基準法の見直しは、改正点が多岐にわたることから約40年ぶりの大改正として注目されています。その目的は、以下のような社会や働き方の変化に合わせることです。

・人手不足を背景とする長時間労働の防止
・副業やフリーランスなど、多様化する働き方の実態に対応
・「つながらない権利」に代表される労働者の抱える新しい問題への対応

サービス業や運送業など、一部の業界では人手不足が深刻化しており、限られた人員が長時間働くことで業務を進めている状況があります。しかし、このような状況は労働者が疲弊し、結果として早期離職やさらなる人手不足につながります。

また、副業やフリーランスとして働く人が増えたり、スマホの普及により業務時間外も簡単に連絡が取れるようになったことで「つながらない権利」が注目されたり、労働者を取り巻く環境はここ数年で大きく変化しました。現代の労働者が抱える問題に対応することも労働基準法改正の目的の一つです。

改正案の検討状況と施行時期の見通し

結論からいえば、2026年の労働基準法改正はまだ決定していません。厚生労働省では2024年1月に有識者を集めて「労働基準関係法制研究会」を開催し、2025年1月には同研究会による報告書にて、労働基準法の改正案が公表されています。2025年秋の時点では、労働政策審議会・労働条件分科会での審議が続けられていることから、早ければ2026年には労働基準法が改正される見込みです。

ただし、法改正が国会で成立した場合でも政令・省令・告示などの整備が必要なため、施行日まである程度の期間が設けられるのが一般的です。2026年に労働基準法が改正されたとしても、実際に施行されるのは2027年4月頃になるでしょう。

経営者が押さえるべき7つの主要改正ポイント

「労働基準関係法制研究会」の報告書で示された労働基準法の改正案のうち、経営者にとって特にポイントとなるのは以下の7つです。

・14日以上の連続勤務の禁止
・勤務間インターバル制度の義務化
・法定休日の特定義務化
・週44時間勤務特例の廃止
・有給休暇取得時の賃金算定ルール明確化
・副業・兼業者の割増賃金算定ルール見直し
・つながらない権利に関するガイドライン策定

自社の事業を分析し、上記のうち、特に影響を受ける項目を把握しておくことが大切です。以降の項目では、この7つの改正ポイントについて業種別の影響度や経営課題などを解説しますので参考にしてください。

2. 経営に直結する4大改正項目の詳細解説

ここでは2026年に実施される見通しの労働基準法の改正について、特に経営に直結する4つの項目を詳しく解説します。

14日以上連続勤務の禁止とシフト制勤務への影響

現行の労働基準法では、4週4休の変形休日制の特例により理論上は最長48日間の連続勤務が可能です。そのため、改正案では変形休日制の特例を2週2休に変更することで、連続勤務が最大13日までに制限される見通しです。

現行法でも法定休日は原則として1週間に最低1日とされています。しかし、特にシフト制勤務を取り入れている職場を中心に、変形休日制の特例を利用することで繁忙期などには従業員の連続勤務で対応している例は少なくありません。

連続勤務の制限が厳しくなれば、シフトの作り方や人員の確保に工夫が必要になるでしょう。

勤務間インターバル11時間の義務化と実務的対応

勤務間インターバル制度とは、退勤後、次回の出勤までに一定時間以上を空ける(インターバルを設ける)制度のことです。労働基準法の改正により11時間の勤務間インターバルを設けることが義務化される見込みです。

11時間という数値は諸外国の同様の制度を参考に、睡眠・休息の時間(7時間)+食事や入浴など最低限の生活時間(4時間)を合算して設定されました。

勤務間インターバル制度については2019年より努力義務とされていますが、実際に導入している企業は数%に過ぎません。そのため、同制度の義務化の際はスムーズな移行のための措置としてインターバルの短縮や経過措置を一定期間設けることなどが検討されています。

法定休日の特定義務化と週44時間特例の廃止

現行法では1週間に1日以上を休日とすることが原則とされていますが、明確に休日となる曜日を特定することは求められていません。しかし、労働者の健康維持には休日の特定が欠かせないとして、2026年の改正では法定休日の特定が義務化されると予想されています。

また、小規模かつ商業・接客娯楽業など一部の業種で認められてきた週44時間特例も廃止され、すべての業種・事業者において法定労働時間は週40時間に統一される見込みです。

つながらない権利ガイドライン策定と業務連絡ルールの見直し

「つながらない権利」とは、休日など業務時間外に従業員が仕事に関する電話やメールなどの対応を拒否できる権利のことです。スマホなどのモバイルデバイスの普及により簡単に連絡が取れるようになったことにより、勤務時間中かそうでないかにかかわらず、常に仕事の連絡がくることで十分に休めなかったり、ストレスを感じたりしている従業員は少なくありません。

労働基準法の改正により、従業員のつながらない権利を守るためのガイドラインが策定される見通しです。企業はガイドラインに沿って、自社の業務連絡ルールを見直すことが求められるでしょう。

3. 業種別の影響度分析と具体的な経営課題

次回の労働基準法改正ではさまざまな業種が影響を受けることになるでしょう。ここでは、特に影響が大きいと考えられる複数の業種について影響や経営課題を紹介します。

小売・飲食・サービス業における人手不足下での対応策

小売・飲食・サービス業は人手不足が深刻化しているため、必要最低限の人数で店舗運営などを行っている企業が多い業種です。これらの業種は14日以上の連続勤務の禁止勤務間インターバル制度などが導入されると従業員のシフトを組むのがさらに難しくなると予想されています。

機械化によりさらなる店舗運営の効率化や、採用強化などの対策が必要となるでしょう。場合によっては営業時間の短縮といった思い切った方法も選択肢となるかもしれません。

医療・介護業界の夜勤シフトと勤務間インターバルの両立方法

医療・介護など24時間対応が求められる業種では夜勤を含む2交代制・3交代制のシフト制を取り入れている職場が多くなっています。労働基準法の改正により勤務間インターバル制度が導入されると、退勤後次の勤務に入るまで一定時間以上空けなければいけないためシフト作成が現在よりも複雑化するでしょう。

また、勤務できない時間が増えることで、より多くの人員が必要になる可能性もあります。実際に労働基準法が改正されるまではまだ時間があるとはいえ、それぞれの従業員勤務間インターバルが規定時間未満とならないようチェックするシステムの導入や、採用活動の強化などは早めに進めるほうがよいでしょう。

製造・建設・運送業の交代制勤務と法定休日特定の実務対応

製造・建設・運送業など繁閑の差が大きな業種は、繁忙期には従業員の連続勤務が常態化している企業もあるでしょう。

次回の労働基準法改正では法定休日の特定義務化14日以上の連続勤務の禁止などが盛り込まれると考えられているため、繁忙期でも従業員が休めるようなシフトの組み方、人員確保などが必要です。

また、これらの業種でも勤務間インターバル制度は適用されるため、それぞれの従業員の始業時間・終業時間を適切に管理できるシステムの導入を検討しましょう。

4. 経営者が今すぐ始めるべき5つの準備対応

具体的な時期は未定ですが、近い将来に労働基準法は改正・施行される見通しです。項目によっては対応に時間がかかると考えられるため、すでに示されている改正方針にしたがって早めに準備を進めておくことが大切です。

ここでは、今すぐ始めるべき5つの項目について紹介します。

2025年中に実施すべき現状分析と就業規則の全面見直し

2026年に実施が予想されている労働基準法の改正は、規模にかかわらずほとんどの企業に影響を与えます。法改正が行われてから施行までは一般的に半年程度しか時間がないため、2025年度中に自社の現状を分析し、就業規則の見直しを進めましょう。

特に今回は残業代の計算方法、連続勤務の禁止、勤務間インターバル制度導入など、見直すべき項目は多岐にわたります。就業規則を全面的に見直すつもりで計画的に対応しましょう。

2026年前半に完了させる勤怠管理システム導入と人員配置計画

既存の勤怠管理システムでは勤務間インターバル制度の導入や連続勤務の禁止などの法改正に対応できない企業は多いでしょう。新しいシステムの運用に慣れるまでには時間がかかるため、できる限り2026年前半には勤怠管理の導入を完了させておくのが望ましいといえます。

また、シフトの組み方を見直したり採用計画を立てたりするために、2026年の早い時点で人員配置計画も立てておく必要があります。

コスト試算と助成金活用による財務インパクトの軽減

労働基準法の改正に対応するため、システムを導入したり新たに従業員を雇用したりすることにはコストがかかります。あらかじめコストを試算し、予算に組み込んでおきましょう。

また、財務インパクトを軽減するため、各種の助成金を活用するのも方法の一つです。たとえば勤務間インターバル制度を導入しようとする企業は、厚生労働省による「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」を利用できる可能性があります。

まとめ

2026年に約40年ぶりとなる労働基準法の大幅な改正が行われる見通しです。中でも連続勤務の禁止や勤務間インターバル制度の義務化、法定休日の特定義務化などは企業経営に大きな影響を与えると考えられます。

新たなシステムの導入や就業規則の見直しには時間がかかります。実際に法案が成立して施行されるタイミングは未定ですが、早めに対応を始めることが大切です。

中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。

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