ガソリン暫定税率廃止で1L約28円安——経営者・個人事業主が確認すべき燃料費の実務対応【2026年4月最新】

2025年末にガソリン暫定税率が廃止され、ガソリン価格は1リットルあたり約28円下落しました。家計だけでなく、業務で車両を使う経営者・個人事業主にとっても燃料費の変化は損益に直結する経営課題です。
当記事では、ガソリン暫定税率廃止の基本的な仕組みと価格への影響を整理しながら、経営者・個人事業主が確認すべき燃料費の実務対応についても解説します。
1. ガソリン暫定税率廃止とは?基本的な仕組みと2026年の最新状況
これまで、ガソリンの小売価格には暫定税率として一定額が上乗せされていました。ここでは、ガソリン税の仕組みや廃止が決定した経緯などについて紹介します。
暫定税率とは何か?50年続いた「一時的な税金」の歴史
ガソリン税とは、ガソリンなどの揮発油にかかる揮発油税ならびに地方揮発油税、石油石炭税、地球温暖化対策税の総称です。このうち国税である揮発油税と地方揮発油税には、廃止が決定した暫定税率が上乗せされてガソリン価格が決定されていました。
暫定税率とは、オイルショックを背景に、道路整備費用の確保と石油消費量の抑制を目的として1974年に導入された仕組みです。名前の通り、当初は一時的な措置として導入されたものの、廃止が決定した2025年まで50年以上にわたって適用されてきました。
なお、ガソリン1リットルあたりの税額の内訳は以下の通りです。
【合計】56.6円
揮発油税(国税):24.3円
暫定税率(国税):25.1円
地方揮発油税(地方税):4.4円
石油石炭税:2.04円
地球温暖化対策税:0.76円
2025年12月31日に廃止完了:ガソリン税の実施スケジュール
2025年10月に、ガソリンの暫定税率が同年12月31日をもって廃止されることが決まりました。
ただし、急激な価格変動を防ぐため、2025年11月以降は段階的に小売価格が下がるよう補助金を活用する仕組みが採用されています。
軽油の暫定税率は2026年4月1日に廃止完了:物流業界への影響
ガソリンと同様、軽油の暫定税率も2026年4月1日に廃止されました。軽油の暫定税率は軽油引取税に含まれており、1リットルあたり17.1円です。
トラックや大型バスは軽油を使っていることが多いため、暫定税率の廃止により軽油価格が下落すれば物流業界には大きな恩恵があると考えられます。事業者の負担が減ることによりドライバーの待遇改善や運賃値下げにつながれば、物価高を抑制する効果も期待できるでしょう。
与野党合意までの政治的経緯と背景
暫定税率については、過去にも何度か廃止の動きが強まったことがありました。直近では、2025年6月にも廃止案が国会へ提出され、衆議院では可決されたものの参議院で否決され廃案となっています。
今回、2025年12月に暫定税率の廃止が決定したことには、政治状況の大きな変化が関係しています。2025年10月に発足した高市内閣は、物価抑制を政策の一つとしており、野党の主張する暫定税率の廃止が実現する議運が高まりました。
暫定税率の廃止による税収減を懸念する与党自民党は当初、慎重な姿勢を見せていたものの結局は2025年内に廃止する方針で合意したのです。
2. ガソリン価格はいつからいくら安くなる?実際の値下げ効果を解説
暫定税率の廃止は2025年末に実施されましたが、実際にはより早い段階からガソリン価格への影響がみられました。ここでは、暫定税率の廃止による価格への影響や家計の負担軽減額などを解説します。
暫定税率廃止による価格への影響:1リットルあたり約28円の軽減
暫定税率は、ガソリン1リットルあたり25.1円であり、実際の販売価格にはさらに10%の消費税が課せられていたことから、廃止による価格への影響は約28円です。ただし、ガソリン価格は世界的な原油の市況や為替相場などにも影響されるため、暫定税率の廃止が決定する前の価格(2025年10月)から約28円下落するとは必ずしもいえません。
2025年10月のガソリン価格にはすでに補助金10円が含まれていたため、暫定税率の廃止とともに補助金が廃止され、かつ原油価格の変動がなければガソリン価格の変動は17円程度になるでしょう。
補助金との関係:段階的な価格引き下げの仕組み
ガソリンの暫定税率は、2025年12月31日をもって廃止されましたが、実際には同年11月以降、補助金を活用することによって段階的な価格引き下げが行われていました。
補助金額の引き上げは以下のスケジュールで2週間ごとに実施されました。
【補助金の額】
11月12日以前:10円
同月13日:15円(5円引き上げ)
同月27日:20円(5円引き上げ)
12月11日:25.1円(5.1円引き上げ、暫定税率と同水準)
暫定税率の廃止に先立つ12月11日には、ガソリン価格はすでに廃止後と同水準まで引き下げられていたことになります。
家計への影響:年間の負担軽減額はいくら?
暫定税率の廃止による家計への影響は、家庭によってさまざまです。
自動車の燃費を1リットルあたり15km、1リットルあたりの値下げ額を17円とすると、月間の走行距離別の負担軽減額は、以下のように試算できます。
500km(給油量約33リットル):約561円(年間約6,700円)
1000km(給油量約66リットル):約1,122円(年間約13,500円)
一般的に自家用車を保有しており、年間走行距離数が多い家庭ほどメリットは大きくなります。
ガソリンスタンドでの価格反映と在庫の関係
今回は暫定税率の廃止より前に補助金の引き上げが行われるため、2025年12月31日以降にガソリン価格が急激に下がることはないでしょう。
また、ガソリンスタンドは一般的に数日から数週間分の在庫を持っているため、補助金の引き上げが行われてもすぐに店頭価格が下落するとは限りません。在庫がなくなり次第、順次価格の引き下げが行われると考えられます。
3. 暫定税率廃止の課題:年間1.5兆円の財源不足と代替財源の議論
暫定税率の廃止の課題として財源不足が指摘されています。代替財源について与野党の間で議論が行われている最中です。ここでは、暫定税率が廃止されることによる国や地方の財政への影響、代替財源の候補などについて紹介します。
財源不足の実態:国と地方で年間1.5兆円の税収減
ガソリンならびに軽油の暫定税率が廃止されると、国と地方で年間1.5兆円の税収減が予想されています。1リットルあたり25.1円の暫定税率だけでなく、消費税相当分も減収になるためです。
日本は国債残高が1,000兆円にも上っていることからわかるように財源不足であり、暫定税率廃止による税収減を補うことが課題となっています。
代替財源の議論:租税特別措置の見直しと新税創設の可能性
暫定税率の代替財源としては、2025年1月時点で結論は出ていません。税収減は恒久的なものであることから、与党自民党は毎年安定的に税収を得られる方法を探すべきだとしています。そこで現在議論されている案の一つが、租税特別措置の見直しです。
租税特別措置は、企業の法人税を優遇する仕組みです。2兆円規模の租税特別措置は、暫定税率廃止により予想される税収の落ち込みとほぼ同水準であり、かつ対象が個人ではなく大企業を中心とする法人であることから、比較的実現しやすいと考えられています。
なお、代替財源を確保するために新しい税を創設すべきという議論も一部ではあります。しかし、物価高による国民の負担を軽減することが暫定税率が廃止された理由の一つであることから、個人の負担増につながる新税創設は簡単ではないでしょう。
道路インフラの維持管理への影響と今後の懸念
道路インフラの整備は、1974年に暫定税率が導入された目的の一つです。2009年に道路特定財源制度は廃止となり、一般財源に移行したあとも暫定税率による税収は、道路インフラの維持管理に活用されていました。
現在は、暫定税率が導入された当時のように次々と新しい道路が建設される状況ではありません。一方で、日本国内にあるインフラの多くが建設から数十年経ち、更新時期を迎えています。暫定税率廃止による税収減により、道路インフラの維持・管理が難しくなることが懸念されています。
地方財政への影響と自治体の対応
都市部より地方に住んでいる人のほうが自家用車の保有率が高い傾向にあるため、暫定税率廃止は地方経済の活性化につながる可能性があります。ガソリン価格が下がって遠出する人が増えれば観光業にもよい影響があるでしょう。
一方で、暫定税率廃止は地方財政を悪化させる懸念もあります。特に地方では道路インフラの重要性が高いため、維持管理の財源がないことは大きな問題です。代替財源が確保されるまで、税収減に対して地方自治体は国へ補てんを求めています。
4. 環境政策との整合性と今後の展望:脱炭素社会への影響
暫定税率廃止の影響は、環境政策にも及びます。ガソリン価格の引き下げは消費量増加につながる可能性があり、世界的な脱炭素の流れに反するためです。ここでは、暫定税率の廃止が脱炭素社会を目指す政策に与える影響や、今後の見通しについて解説します。
脱炭素政策との矛盾:CO2排出量増加の懸念
気候変動対策の一環としてCO2の排出量を削減することが有効であり、日本政府も脱炭素政策を進める方針です。しかし、ガソリン価格の引き下げは消費量を増加させるきっかけとなる可能性があるため、環境政策との矛盾が指摘されています。
国際比較で見る日本のガソリン税負担:OECD諸国との比較
国際比較でみると、日本のガソリン税負担は必ずしも重くありません。日本ではガソリン税を含めた価格に対してさらに消費税も課せられるため、二重負担だと批判する声もあります。
しかし、OECD(経済協力開発機構)に加盟している35ヶ国で比較すると、消費税も含めたガソリン1リットルあたりの税負担額は32位です。暫定税率が廃止されたことで負担はさらに軽くなります。
EV普及への影響:電気自動車への移行は加速するか遅延するか
ガソリン暫定税率廃止は、EV(電気自動車)への移行を緩やかにしてしまうおそれがあります。日本において、EVは車両本体価格がガソリン車より高いというデメリットがある一方で、燃費がよいため維持費を抑えられることがメリットとされてきました。
しかし、ガソリン価格が下がれば相対的にガソリン車の魅力が増すため、EVへの移行は遅れると考えられます。
今後の政策の方向性:炭素税や走行距離課税の可能性
ガソリン暫定税率は「一時的な税金」という名称とは反対に、国や地方の財源として大きな役割を果たしていました。そのため、廃止されたことで財源確保の問題や脱炭素政策との矛盾などさまざまな問題が発生しています。
これらの問題を解決するため、将来的に炭素税や走行距離課税などが導入される可能性が指摘されています。今後の政策動向をチェックし、自身の生活や企業への影響を想定して対策しておくことが大切です。
5. 経営者・個人事業主が確認すべき燃料費の実務対応
ガソリン暫定税率の廃止により、業務で車両を使う経営者や個人事業主には実務上の影響が生じています。以下の3点を確認しておきましょう。
① 燃料費が下がると「利益」が増える——課税所得への注意
業務でガソリンを使う法人・個人事業主にとって、ガソリン代の下落は直接コスト削減につながる一方で、経費が減る分だけ課税所得が増えるという側面もあります。
特に運送業・配達業・外回り営業の多い業種では、燃料費がコスト構造の中で一定の割合を占めているため、下落幅がそのまま税負担の増加に影響する可能性があります。
決算が近い時期には、燃料費の変動が損益に与える影響を改めて試算しておくことをお勧めします。
② 個人事業主・フリーランスの車両按分——経費計上の基本確認
個人事業主やフリーランスが事業とプライベートで同一車両を使っている場合、ガソリン代は事業使用割合に応じて按分して経費計上します。
按分の基本ルール
事業に使った走行距離 ÷ 総走行距離 × ガソリン代 = 経費算入額
この按分割合は合理的な根拠が必要なため、業務日誌や走行記録を日頃から記録しておくことが重要です。ガソリン価格が変動したことで「単価は変わったが按分率はそのまま」で問題ないかを、この機会に一度確認しておきましょう。
③ 燃料費の変動を経営計画に反映する
ガソリン代の下落は、原価や間接費の見直しのチャンスでもあります。特に外注先への配送委託費・社用車の維持費などを含む間接コストを再集計すると、想定外のコスト圧縮効果が見えてくることがあります。
一方で、将来的に炭素税や走行距離課税が導入された場合(前章参照)、燃料コストが再び上昇する可能性があります。短期的なコスト削減効果を過信せず、複数のシナリオで中期的な経営計画を立てておくことが重要です。
燃料費・車両費の経費処理や節税対策について疑問がある方は、税理士へのご相談をお勧めします。
まとめ
50年以上前に一時的な措置として導入されたガソリン暫定税率は2025年末をもって廃止され、軽油の暫定税率も2026年4月1日に廃止が完了しました。1リットルあたり約28円の価格下落は、家計だけでなく法人・個人事業主の燃料コストにも影響しています。
財源確保の問題や環境政策との矛盾については今後の政策動向を引き続き注視する必要があり、将来的な新たな課税導入の可能性も念頭に置いておきましょう。
業務で車両を使う経営者・個人事業主の方は、燃料費の下落が損益・課税所得に与える影響を確認し、必要に応じて税理士に相談することをお勧めします。
中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。
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