
【経営計画 前編】やりたいことを言語化し、数字をつくる 社長がワクワクする経営計画書とは
中小企業経営グループ(株式会社 中小企業経営、税理士法人 中小企業経営) グループCEO 佐奈徹也氏(右)、代表税理士 眞船雄史氏(左)「中小企業にも経営計画が必要だ」と言われても、「本当に意味があるのか」「どのように作ったらいいのかわからない」という経営者は少なくない。今回は、「『力』ある中小企業をつくる」をミッションに掲げ、経営計画書作りを積極的にサポートしている中小企業経営グループ(株式会社 中小企業経営、税理士法人 中小企業経営)の佐奈徹也氏(グループCEO)、眞船雄史氏(税理士法人代表税理士)に、疑問に答えてもらった。
記事は、「前編」でそもそも経営計画書とはどういうものか、「後編」で計画を策定したことで大きく変わった会社の事例や、作成のポイントなどを中心にまとめている。
数字を「会社を良くするため」に使う
――事務所の概要から聞かせてください。
佐奈(敬称略) 税理士法人を母体に、経営コンサルタントの会社とともにグループをつくっています。設立したのは2年ほど前で、現在のメンバーは10名です。
クライアントは40~50社くらいになりました。税務のみの顧問先もありますが、そこを入り口に、経営全般の支援につながるケースが多いですね。
――「中小企業経営」というネーミングには、どんな意味が込められているのですか?
佐奈 普通は、法人にこういう名称はつけないですよね(笑)。私はもともと、会計事務所で財務コンサルティングや事業承継のお手伝いなどをしてきたのですが、会計にタッチする人間だからこそ、もっと踏み込んで中小企業の役に立てることがあると強く感じるようになりました。数ある士業の中でも税理士というのは、お客さまに一番近いというか、例えば困りごとがあったら何でも相談してもらえるポジションにいるわけですから。
同じ志を持った、眞船さんが独立しておられたなかで、グループで一緒にやった方がもっと中小企業のサポートができるはずと考えたことがグループ設立の経緯です。
眞船 名前の通り、中小企業の経営支援にかかわる“ど真ん中”の仕事をしようということです(笑)。
佐奈 会社の数字に関して言えば、きちんと税金の計算をするのは当然として、社長にその数字の意味をきちんと理解してもらい、経営に生かせるようなサポートをしていくことが当事務所の基本的なスタンスなんですよ。毎期、「財務戦略レポート」という資料を作成しているのですが、自社の事業構造をしっかり把握していただいたうえで、財務体質はどうなっているのか、利益をどのように活用していくべきか、といった具体的なお話をさせていただきます。

眞船 節税のお手伝いというのは、税理士の大事な仕事なのですが、今佐奈が申し上げたようなことを抜きにして、「節税ありき」のようになるのは本末転倒です。
――かえって業績に悪影響を及ぼすこともありますね。
眞船 そうです。ですから節税も含めて、何のために利益を上げたいのか。設備投資のためなのか、人への投資か、あるいは将来に向けて内部留保を積み上げたいのか――。そういったことを経営者にしっかり考えていただくというのが、私たちの重要な任務だと思っているのです。
やりたいことを言葉にする
――わかりました。貴事務所はそうした基本方針に沿って経営計画書の作成に力を入れているとうかがいました。最初に、そもそも経営計画書とはどのようなものなのか、お話しいただけますか。
佐奈 中小企業が作る計画というと、金融機関から融資を受ける際などに作成される、いわゆる事業計画が頭に浮かぶ方が多いと思います。当事務所でも、もちろんその作成をサポートします。ただ我々の考える経営計画書では、そこから一歩進んで掲げられた数字の意味とか、込められた思いだとかを「言語化」します。
――言語化ですか。
佐奈 と言うと難しく聞こえるかもしれませんが、要するに経営者の方が自分のやりたいこと、やるべきことが、頭の中で十分整理されていない、思いはあっても社員に伝わっていないという会社がほとんどだと思うのです。ですから一度きちんと言葉にして、紙に残しましょうということなんですよ。
数値目標だけ示されれば、それは単なる「ノルマ」です。社員のモチベーションアップにはつながりにくいでしょう。一方、例えば、「この数字を達成して、これだけ社員に還元したいんだ」という社長の思いが伝わるだけで、社内の雰囲気は変わると思うのです。
――なるほど。同じ目標でも大きな違いになりそうです。
佐奈 言語化する意味は、突き詰めれば社員が頑張る理由を明確にすることです。その理由は会社によっていろいろあると思いますけど、まずは給料が上がって生活が豊かになっていくという展望を持てることが重要です。それがなければなかなか頑張れない(笑)。
――そう思います(笑)。
佐奈 ただし給料を上げるためには、会社が利益を出す必要があります。その利益は自然に「出るもの」ではなく、「出さなくてはならないもの」ですよね。ですから、そのためにみんなで何をするのか。方針と目標を明示するのが、経営計画書の骨格になります。

眞船 経営計画書を作成することは、日々の仕事の「基準点」を明確にするという点でも、大きな意味があると考えています。例えば今やろうとしていることは、経営計画に示された考え方に照らして正しいのだろうか。そういう軸が会社にあるかどうかというのは、とても重要です。
佐奈 そうですね。我々も含めて、経営者といえども完璧な人間はいません。その意味でも、「ありたい姿」に基づく行動基準を明確にした経営計画が必要だと思うのです。往々にして、そういうモノサシがないために、社長が部下にものが言えないでいたりするんですよ。基準があれば、それに従って適切な指導もできるはずです。
――指導されたほうも、理由がはっきりしていれば納得がいきますよね。
事業承継も経営計画から
――お話をうかがうと、経営計画書はなにか特別な文書とかではなく、経営にとって当たり前にあるべきものという感じがします。
佐奈 いろんなご相談を受けていると、自然に「やっぱり経営計画が必要ですね」という話になるんですね。例えば、事業承継も例外ではありません。
前職で事業承継のサポートをしていたと言いましたが、当事務所でも年に15~20件ほどの案件を扱っています。そうすると多くの場合、「自社株をどうするか」というところから始まるわけです。でも、「その前に、誰にどのように引き継ぐのですか」と話を詰めていくと、結局「会社の事業や財務の現状や今後の展望が明確になっていないと、スムーズな承継は難しい」ということになっていきます。
ちなみに事業承継というと、10年前は8割ぐらいが子どもなどに引き継ぐ親族内承継でしたが、今は親族、従業員、M&Aが均等に近くなっています。そうなると、ますます「どんな会社なのか」を明確にした経営計画のようなものがないと、引継ぎのハードルは高くなるのではないでしょうか。
――事業計画書との違いもお話しになりましたが、金融機関から融資を受ける際に、経営計画書は有利に働くのでしょうか?
佐奈 それはあると思います。融資の基準はこれまで売上高や利益率といった定量評価がメインでした。ただ金融庁もそれに加えて、例えば経営者の人柄とか会社の事業戦略とかの定性評価を重視すべきだ、ということを言っていて、そんな流れができつつあります。しっかりした経営計画書があったら、貸す側としてはゴーサインを出しやすいのは確かでしょう。
「後編」では、経営計画書を作成して成長を実現した企業の事例、計画書の作成のポイントなどについて、引き続き語っていただきます。
注:記載の「事例」に関しては、情報保護の観点により、お話の内容を一般化したり、シチュエーションなどを一部改変したりしている場合があります。
『「孫世代」が生きやすい日本社会の実現』をビジョンに掲げ、事業・人材・地域の持続的発展を見据えた次世代型支援に取り組む専門家集団。これまでに5,000社以上の中小企業の経営を支援、経営計画の作成実績1000件以上、事業承継の実績は500件以上と豊富な経験を持ち、中小企業の成長と安定をサポートする。
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