円満な相続のため親が元気なうちにやるべきこと3つ

[取材/文責]マネーイズム編集部

相続対策の必要性は理解していても、「まだまだ先だ」と思っていたり、具体的に何をやったらいいのかわからなかったりして、特に行動を起こさずにいるケースは少なくないでしょう。しかし、突然相続になって困るのは、残された家族です。元気なうちにやっておくべき相続対策を、3点にまとめました。

相続対策はなぜ必要か

相続は揉めやすい

相続対策の目的は、第一に遺産をめぐる相続人同士の争いを防ぐことにあります。「うちは財産が少ないから大丈夫」と思っているかもしれませんが、相続争いの結果、裁判所に持ち込まれる(調停・審判)案件のうち、35%超は「遺産額1,000万円以下」のケースで、8割近くは「同5,000万円以下」となっています(2024年度家庭裁判所司法統計)。

今は関係が悪くない兄弟姉妹でも、たとえ親の遺産が少なくても、相続では普通に揉め事が起こると考えておきましょう。

税金が高くなる

また、多くの財産がある場合は、生前に対策しておかないと、子どもが高額の相続税を支払わなくてはならなくなるかもしれません。対策は、基本的に早く対策を始めるほど、大きな効果が期待できます。

【生前にやるべきこと・その1】財産を整理し、リスト化する

相続人のために財産リストを作成する

相続対策といっても、自分がどのような財産をどれくらい持っているのかを正確に把握しなければ、有効なものにはならないでしょう。もしかすると、自分でも記憶が曖昧になっている財産(例えば、親から受け継いだ遠方の不動産、古い株券など)があるかもしれません。一度、「棚卸し」してみましょう。

財産を把握したら、相続人が一目でわかるように、リストにしておくことが重要です。遺産分割をスムーズに進めるためであるのはもちろん、相続税が発生する場合には、その対策でもあります。相続税の申告・納税期限は、相続発生から10ヵ月と限られています。相続人が、相続財産の確定に戸惑ったりしないよう、万全の手を尽くしておくべきです。

預貯金口座

普段、子どもに自分の預金口座のことを話したりはしないと思います。しかし、子どもがその存在を知らなければ、財産を引き継ぐことが困難になってしまいます。税務署は、被相続人(亡くなった人)の口座を調査する権限を持っていますから、相続人の知らない貯えがあれば、税務調査を受けた場合に問題になるかもしれません。

預金のあるすべての金融機関と支店名、口座番号をリストアップしておきましょう。

注意すべき「デジタル遺産」

ネットバンクに口座を持っている場合には、さらに注意が必要です。相続人が故人の口座にたどりつくためには、まずスマートフォンやパソコン本体のロックを解除する必要があります。そのためには、パスワードやPINコードなどの情報が欠かせません。さらに、ネットバンクのログインにもIDやパスワードが必要です。これらの情報を持たない第三者は、たとえ口座の存在を知っていても、その中身を確認することさえできないのです。

このように、デジタルで保管されていた故人の財産を「デジタル遺産」といい、他に証券口座、FX口座などがこの形で残されることがあります。

相続人がちゃんと口座を開けるように、必要な情報は明確に記載しておくのを忘れないようにしましょう。

不動産

多数の投資用不動産を所有しているような場合にも、子どもに詳しく話していないケースが多いのではないでしょうか。どこにどのような物件を持っているのか、一覧にしておくべきでしょう。

遠隔地にある山林、海外不動産なども漏らさずにリストアップします。

【生前にやるべきこと・その2】生前贈与を進める

相続財産が多ければ、相続税は高額に

相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除額があり、これを超えた遺産額に相続税が課税されます。この税は、累進課税といって、遺産額が大きくなるほど税率もアップしていくため、納税額が思わぬ高額になることもあります。

一方、子どもなどに財産を渡すのには、生前贈与という方法もあります。この場合にも贈与税がかかりますが、年110万円という基礎控除額(非課税枠)があるため、これをうまく活用すれば、税負担なし(あるいは少額)で財産を移すとともに、相続の際の遺産額を減らすことが可能です。

生前贈与には、次の2つの方法があります。

暦年課税で贈与していく

一般的に贈与といえば、この暦年課税による贈与(暦年贈与)をイメージすると思います。毎年1月1日~12月31日まで(暦年)の贈与には、今述べた110万円の基礎控除額が設けられているため、長期に渡って少額の贈与を行うほど、節税効果は大きくなります。

ただし、この暦年贈与には、相続発生前の一定期間に行われたものは、相続財産に戻して相続税の計算対象とする(「持ち戻し」する)というルールがあります。この期間の基礎控除は認められません。

2023年税制改正で、この持ち戻しの期間が、相続開始前3年から7年に延長されることになりました。24年以降の相続から持ち戻しの期間は順次延長されていき、7年間に完全移行されるのは、2031年1月1日以降です。暦年贈与にとっては、不利な変更でした。

相続時精算課税制度を使う

一方、相続時精算課税は、税務署に届け出をしたうえで、総額2,500万円に達するまでは、贈与税非課税で財産を譲ることができる、という制度です。贈与された分は、相続時に遺産額に加算して、相続税として納税します。形のうえでは、税の支払いの先送りといえます。

この制度のメリットは、第一に先々値上がりする不動産を贈与しておけば、節税効果が見込めることです。相続時の不動産評価額は、贈与時の価額でカウントされるからです。

また、23年税制改正では、相続時精算課税に、それまではなかった基礎控除額(年110万円)が新設されました。こちらには、持ち戻しの決まりはなく、相続発生まで基礎控除を使ったフルの生前贈与が可能になっています。

ただし、この制度を使うと、小規模宅地等の特例(一定の要件を満たすと、相続した自宅などの相続税評価額を8割減額できる)が利用できなくなる、一度選択すると暦年贈与には戻れない、などのデメリットもあります。

【生前にやるべきこと・その3】遺言書を作成する

遺言書を残す意味

遺言書は、財産分与に関する被相続人の遺志を示したもので、それがあれば、相続人同士の争いは起きにくくなります。逆にいえば、遺言書がなく、遺産の分け方を初めから相続人の話し合い(遺産分割協議)で決めようとする場合に、揉め事は起こりやすいのです。

相続についての自分の思いを実現し、「争続」を起こさないためにも、きちんと残すことを考えましょう。

主な遺言書の作成方法には、「自筆証書遺言書」と「公正証書遺言書」があります。

自筆で遺言書を作る

遺言者(遺言を行う人)本人が、遺言の全文と作成の日付、遺言者の氏名を自書し、捺印して効力を発揮するのが、自筆証書遺言書です。財産目録については、パソコン作成でもいいことになっています。作成した遺言書は、遺言者の自宅などに保管します。

この自筆証書遺言書については、自筆で作成した遺言書を法務局に持参すれば、そこで預かってもらえる「自筆証書遺言書保管制度」ができました。自筆証書遺言書には、紛失したり、誰かに書き換えられたり、といったリスクがありましたが、そうした心配はしなくて済むようになりました。

公正証書にする

公正証書遺言書は、公証役場に出向いて、公証人に遺言の内容を代筆、保管してもらう、という仕組みです。

作成には、2名の立会人が必要で、遺産額に対応した費用もかかります。自筆証書遺言書に比べて、作成は大変ですが、そのぶん遺言書としての「安全性」は高まるでしょう。遺産が高額な場合、複雑な相続の場合などには、公正証書にしておくことを検討しましょう。

内容にも注意を払う

遺言書には、相続の争いを防ぐ効果があるといいましたが、あまりにも偏った分け方をすれば、かえって火種になる可能性もあります。相続人には遺留分(最低限受け取れる遺産の割合)があることにも、配慮するようにします。

また、遺言書には「付言事項」として、親族に対する思いなどを記載することも可能です。感謝の気持ちや、分け方に込めた思いなどを記載しておけば、「争続」防止の効果は、さらに高まるはずです。

生前に相続について話し合っておくのが理想

とはいえ、遺言書を開いて、自分の予想(期待)とは違う内容のことが書かれていれば、相続人は驚くでしょう。できれば、家族が集まる機会を利用して、相続についてフランクに話し合っておくのがベストといえます。

親の相続について、子どもから切り出すのは難しいものです。親がイニシアティブをとって、話し合いの場を設定するのがポイントです。

親の考えを直に聞けば、子どもの理解は深まり、無用なトラブルの起こる可能性を消すことができます。子どもの意見に耳を傾けることも大事です。

相続税が発生する相続の場合には、必要に応じて相続に詳しい税理士などの専門家のアドバイスを受けながら、遺産分割の方法や納税資金についても、検討しておくのがいいでしょう。

まとめ

しっかりした生前対策は、円満な相続につながります。記事も参考にしながら、早めに準備に着手するようにしましょう。

中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。

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