相続税がゼロ・申告不要でも要注意!必要になるお金の手続きについて解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

相続税には基礎控除額があり、被相続人(亡くなった人)の遺産額がそれ以下ならば、課税はされず、基本的に税務署への申告も必要ありません。ただし、そのような場合でも、残された親族の手続きが必要になることは、多々あります。ここでは、忘れがちな“お金まわり”の手続きについてまとめました。後段では、そもそも相続税の課税対象かどうか判断する際の注意点も解説していますので、参考にしてください。

相続税の申告不要でも必要になる手続きとは

9割の相続は相続税がかからない

2015年に基礎控除額が大幅に引き下げられて以降、相続税の課税対象となるケースが増えました。ただ、それでも実際に課税されているのは、全体の約10%です。9割の相続には、相続税はかかっていません。

基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。被相続人の財産が現預金などに限定され、この金額に満たないことが明らかな場合などには、相続税の支払いを心配する必要はないのです。

しかし、それで安心して相続人に求められる手続きを怠っていると、問題の起こることもあります。

公的年金の受給停止の手続き

厚生年金の場合は亡くなった日から10日以内に、国民年金は亡くなった日から14日以内に、年金相談センターまたは年金事務所で、年金受給停止の手続き(「年金受給権者死亡届」の提出)を行う必要があります。なお、日本年金機構に被相続人の個人番号(マイナンバー)が収録されていれば、届出をする必要はありません。

公的年金は、「2ヵ月分を後払い」する仕組みなので、多くの場合、故人への「未払い金」が発生します。その分は、上記届出の際に、「未支給年金・未支払給付金請求書」を提出することで、該当する親族が受け取れます。

逆に届出が遅れ、「受け取りすぎ」の年金が発生すると、返金手続きが必要になりますから、注意しましょう。

銀行口座への対応

金融機関が口座の名義人の死亡を知ると、口座は凍結されます。一部の相続人などが、勝手に預貯金を引き出すトラブルなどを防ぐためです。そのような可能性がある場合には、金融機関に口座凍結を要請すべきでしょう。

一方、口座が凍結されると、現金の引き出しはもちろん、毎月の引き落としや残高照会などが、一切できなくなってしまいます。例えば、被相続人と同居していた親族がいた場合、公共料金やローンなどの引き落とし口座が凍結されると、事業者への支払いが不能になり、延滞金など問題が発生する可能性があるのです。凍結要請や解約の前に、引き落とし口座を変更するなどの手立てを講じるべきでしょう。

凍結された口座は、相続後に解約、名義変更の手続きを取ることで、出金などが可能になります。ただし、相続人が複数いる場合には、遺産分割協議での合意が必要になることもあります。

不動産の名義変更

遺産に不動産がある場合には、相続した人が法務局で名義変更(登記)の手続きを取る必要があります。

2024年4月1日から、この相続登記の申請が義務化されました。相続によって不動産を取得した人は、3年以内に申請を行わなくてはならず、正当な理由なく義務に違反した場合は、10万円以下の過料の適用対象となります。

公共料金の解約、名義変更

被相続人の名義で契約していた電気、ガス、水道などは、解約手続きが必要です。また、同居していた親族などが利用し続ける場合は、名義変更を行いましょう。いずれも、被相続人の使用料金の未納分については、相続人が支払わなくてはなりません。

手続きは、契約している事業者や自治体に電話やインターネット経由で行うことができます。

被相続人の所得税の支払い

被相続人が個人事業主だったり、年収2,000万円を超える給与所得者だったりして、生前に確定申告を行う必要があった場合には、相続人がその手続きを引き継ぎます。これを「準確定申告」といい、相続発生から4ヵ月以内に行わなくてはなりません。

生命保険の請求手続き

被相続人が契約していた生命保険の受取人になっていた場合には、必要書類を集めて生命保険会社に保険金の請求手続きを行います。保険金の請求には基本的に3年という時効があり、それを過ぎると請求権を失いますから、注意しましょう(実際には、3年を過ぎて、保険金の支払いに応じてもらえるケースもあります)。

相続税は本当に申告不要か

繰り返しになりますが、被相続人の遺産額が基礎控除額以内であれば、相続税は課税されません。ただし、実際には、遺産額の計算にミスがあったりして、「課税対象ではないと思っていたが、そうではなかった」ということもあり得ます。以下のような点には、特に注意が必要でしょう。

不動産の評価額

現預金や債券などは、価格が明確ですが、財産には評価が必要になるものもあります。特に注意すべきなのは、高額になりやすい不動産です。評価には専門知識が不可欠ですから、相続に詳しい税理士などに依頼する必要があります。

相続時精算課税を利用していないか

親族などに財産を譲る場合、相続ではなく生前贈与を行うという方法もあります。この生前贈与には、2,500万円までの贈与税が非課税になる「相続時精算課税」という制度があります。これは、いわば税の先送りで、相続時には贈与した財産額を相続財産の額と合算したうえで、相続税として支払うことになります。

被相続人が、この制度を利用して生前贈与していれば、残された遺産自体は基礎控除額の範囲内であっても、相続税の申告の対象になる場合があります。自分は贈与を受けていなくても、他の相続人が受けているかもしれませんから、しっかり調べるようにしましょう。

相続発生前3年(7年まで延長中)の贈与はないか

生前贈与には、年110万円という贈与税の基礎控除が適用される暦年贈与というやり方もあります。ただし、財産を贈与した人の死亡以前の一定期間に行われた贈与は、相続財産に「持ち戻し」(合算)され、相続税の対象とされます。この間の基礎控除も認められません。

この持ち戻しの結果、相続財産が基礎控除額を超え、相続税が発生する可能性があります。持ち戻しの期間は、2024年以前の贈与分は3年間、2024年以降の贈与からは順次延長され、最終的には7年間が対象となります。

なお、2024年1月以降、さきほどの相続時精算課税にも110万円の基礎控除が設けられました。こちらの制度を使って行われた贈与については、持ち戻しは行われません。

遺産のカウントは正確か

遺産に見落としがあったり、遺産には含まれないと誤解していたりすると、知らずに相続税が発生しているかもしれません。税務署には、例えば被相続人ばかりでなく相続人の口座を閲覧できるなど、大きな権限と調査能力があることは、頭に入れておきましょう。

問題になる財産には、次のようなものがあります。

タンス預金
名義預金
 被相続人が、勝手に子どもや孫などの名義で開設した口座⇒実質的な被相続人の財産と判断される
みなし相続財産
 生命保険金や死亡退職金⇒受取人固有の財産であり、遺産分割の対象とはならないが、税法上は相続財産とみなされるため、遺産に合算する必要がある(1人500万円の非課税枠がある)
貸付金などの債権
相続人の知らない不動産

相続税がかからなくても申告が必要な場合がある

「相続税が非課税の場合は、基本的に申告も不要」といいましたが、次のような相続税の特例(軽減措置)を使った結果、非課税になった場合には、申告が必要です。

配偶者の税額軽減:配偶者は、相続による取得財産の額が「法定相続分」または「1億6,000万円」のいずれか大きい額以下の場合、相続税が課税されない
小規模宅地等の特例:被相続人と同居していた場合など一定の要件を満たせば、自宅などの不動産評価額を最大8割減額できる
・相続財産を公益法人などに寄付した場合の非課税の特例  など

まとめ

相続税の申告が不要な場合でも、相続発生後に親族(相続人)が行うべき手続きには、さまざまなものがあります。うっかり忘れていると、経済的な負担を生むかもしれません。関係者で協力もしながら、漏れのないように対処する必要があります。

相続税の課税対象かどうか迷うときには、相続に詳しい税理士などに相談するようにしましょう。

中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。

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