フラット35のローンが残る実家、そのまま相続して大丈夫?知っておくべき3つの選択肢を解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

住宅ローンを利用してマイホームを購入する際には、通常、団体信用生命保険(以下、「団信」)への加入が義務付けられ、契約者が亡くなった場合には、団信が「肩代わり」する形で、ローンの残債はゼロになります。ただし、一部金融機関のローンや、住宅金融支援機構の「フラット35」では、団信への加入が任意となっているため、未加入の状況で契約者が亡くなり、ローン残高が相続人に引き継がれる状況になることがあります。そうなった場合、相続人には、どのような対処が可能なのでしょうか。住宅ローンが残った自宅の相続について考えます。

相続では「マイナスの遺産」も引き継ぐ

相続人が被相続人(亡くなった人)の財産を受け継ぐときには、預貯金や不動産などの「プラスの財産」だけでなく、借金をはじめとする「マイナスの財産」も相続しなくてはなりません。住宅ローンの残額も、存在すればそれに該当します。

場合によっては、「マイナスの財産」が「プラスの財産」を上回ることもあります。そうしたケースでは、相続によって経済的なダメージを受けることを避けるため、相続放棄も検討されます。

相続で住宅ローンが問題になるケース

団体信用生命保険とは

ただし、被相続人が組んでいた住宅ローンは、通常、「マイナスの財産」にはなりません。ローンを組む際に、同時に団信への加入が求められるからです。

団信は、住宅ローン契約者が死亡または所定の高度障害状態となった際に、生命保険会社が、契約者に代わってローン残高相当分の保険金を金融機関に支払う保険です。契約者が亡くなったらローン残高は0円となり、相続人はその状態で不動産を相続することができるわけです。

なぜ「フラット35」が問題に?

しかし、中には団信の契約なしで組むことのできる住宅ローンがあります。代表的な商品が、「フラット35」です。

「フラット35」は、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供される最長35年の全期間固定金利の住宅ローンです。住宅購入資金の受取時に、返済終了までの借入金利と返済額が確定し、長期にわたるライフプランが立てやすくなることなどから、人気があります。

この「フラット35」にも、2017年10月1日以降に保険に加入した場合の「金利組込方式」と、それ以外の「特約料方式」による団信が設けられています。同時に、「健康上の理由その他の事情」で団信に加入しなくても、ローンを組むことが可能です。

団信に加入しなければ、契約者には、月々の出費を抑えることができる、というメリットがあります。半面、ローン完済前に亡くなった場合にも、団信による補償はありません。ローン残高は、丸々残ることになります。

契約者(被相続人)が団信に加入していなかった場合の扱いについて、「フラット35」のホームページには、「融資住宅を相続された方が債務を引き継ぎ、ご返済をしていただきます。相続される方が複数いる場合は、法定相続人のうち、返済能力のある方がお一人で機構(旧公庫)の債務を引き継ぐようお願いしています。」と記載されています。

ローンの残る住宅を相続したときの選択肢

このように、ローンの返済義務のある住宅が相続財産に含まれていた場合の選択肢には、大きく次の3つがあります。ローンの残高や、他の遺産の内容、相続人の状況や希望などを考慮しながら、どれを選ぶのかを検討する必要があります。

相続放棄をする

ローンの残った不動産以外にこれといった財産がなく、残額を支払うことが困難な場合には、さきほども述べたように相続放棄を検討することになります。

相続放棄を行うときには、原則として相続の開始を知ったときから3ヵ月以内に、家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。相続放棄をした場合、住宅ローンなどの「マイナスの財産」だけでなく、預貯金などの「プラスの財産」も引き継ぐことができなくなります。一度認められた相続放棄は、撤回できません。

住宅ローンを引き継いで、そこに住む

残されたローンを返済しながら、相続人が住み続けることも、もちろんできます。不動産の価値よりも住宅ローンの残額が少ない場合や、住宅ローンの返済が可能な場合、ローンが残っていても、その家を手放したくない理由がある場合などには、検討の余地があるでしょう。その方法を選択した場合には、住宅の相続登記(被相続人から相続人へ名義変更)を行ったうえで、住宅ローンの担保に設定された抵当権の債務者も、被相続人から相続人に変更する登記を行います。

ただ、注意しなくてはならないのは、ローンの返済に関しては、債権者(この場合は、住宅ローンを融資した金融機関)の権利が優先される、ということです。逆に言うと、債務者の都合だけで決められないこともあります。

この場合、実家を取得した特定の相続人だけが、住宅ローンを引き受けるのが自然で、さきほどの「フラット35」の説明にも、そうあります。ただし、「返済能力のある方が」という但し書きがあることには、注意しなくてはなりません。

相続人のうちの1人が債務を引き継ぐには、遺産分割協議で話し合い、合意を得ることになります。それは、相続人の間での取り決めとしては有効ですが、その内容を債権者に主張することはできないのです。「マイナスの財産」は、相続開始と同時に、法定相続分に応じて引き継がれることになり、原則として相続人が自由にその負担割合を決定することはできません。返済能力のない人にすべての債務を引き受けさせるようなことになると、債権者の権利が害される可能性があるからです。

住宅を相続した特定の相続人がローン残高の全額を支払う場合には、金融機関の承諾が必要です。

なお、債権者の権利として付け加えておくと、残った住宅ローンの返済を目的に、相続した住宅を賃貸に出すのは、原則NGです。住宅ローンは、契約者がそこに住むことを前提に、金利の設定などが行われているからです。金融機関に黙ってそれを行った場合、発覚すれば残高の一括返済を求められるだけでなく、ケースによっては詐欺罪で刑事告発されるようなこともありえます。

住宅ローンが残っている限り、その不動産契約に変更が必要になるようなことを行う場合には、必ず金融機関に相談するようにしましょう。

任意売却を行う

他に受け取りたい遺産がある場合などには、不動産の任意売却を行う、という選択肢があります。任意売却とは、住宅ローン残高を残したまま、不動産を売却することをいいます。手続きは、通常の不動産の売却とあまり変わりはありませんが、住宅資金を貸し付けている金融機関などの債権者から同意を得る必要があります。

売却代金は、住宅ローン残高の返済に充てますが、完済させることができない場合は、引き続き債務が残ることになります。その点も含めて、債権者の同意が得られるか、そもそも残った債務を返済できるかどうかといったことは、検討が必要になるでしょう。

まとめ

住宅ローンが残っている不動産を相続した場合には、ローン残高などを考慮して、相続放棄、相続して住む、任意売却という選択肢を検討する必要があります。相続放棄や相続税の申告(相続税が発生する場合)には、期限もあります。判断を誤らないために、早めに相続に詳しい税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

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