ネット副業の税金、どう対応すれば安心?税務署が見ているポイントと対処法を解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

ネット副業を始めたものの「どのくらいの収入から申告が必要?いくらの儲けから申告するのか」「会社に副業を申告しない場合のリスクって?」といった不安を抱えていませんか?最近では副業を手軽に始められる一方、正しい知識がないと後になって思わぬトラブルが発生する可能性も否定できません。

この記事では、申告義務の対象や税務署が副業収入を把握する方法、万が一申告漏れがあった場合のペナルティについて分かりやすく解説します。最後まで読むことで安心して副業を行い、不安なく収入が増やせるようにしましょう。

1. ネット副業の収入、どこからが申告義務になる?

ネット副業で得た収入は、一定の条件を満たすと確定申告が必要です。所得の種類や金額によって申告義務の有無が変わるため、収入はいくらあるのか、自身の副業がどの所得に該当するのかを把握しておかなければなりません。

特に「雑所得」と「事業所得」の違いを理解することで、申告が必要となる基準を正しく認識しましょう。

給与所得者でも20万円を超えたら確定申告が必要

会社員やアルバイトなどの給与所得者が、副業で年間20万円を超える「所得」を得た場合、原則として確定申告が必要となるでしょう。「所得」とは、収入から必要経費を差し引いた金額のことです。

例えば、アフィリエイトの収入25万円、経費10万円の場合、所得は15万円となるため申告義務は生じません。ただし、副業がアルバイトなどの給与所得に該当する場合は、年末調整されなかった「給与収入」の合計額が20万円を超えると、確定申告が必要です。

給与収入の合計から一部所得控除を差し引いた金額が150万円以下で、給与・退職所得以外の所得が20万円以下の場合は申告不要となる可能性もあります。
 

雑所得・事業所得の扱いと注意点

副業で得た所得が「雑所得」と「事業所得」のどちらに該当するかは、事業の活動実態があるかどうかです。2022年の所得税基本通達の改正により、帳簿書類を作成・保存していない場合、原則として雑所得とされるようになりました。

ただし、帳簿が保存されていれば必ず事業所得になるわけではなく、営利性や継続性などの実態が重要なポイントです。

雑所得は他の所得に該当しない所得のことですが、特に以下のような場合を指します。
・帳簿を作成していない場合
・収入に対する割合が低い場合
・赤字続きで営利性が認められない場合

なお、副業収入が300万円を超える雑所得は、帳簿書類の保存義務が発生します。また、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超えるケースでは、収支内訳書の提出が必要となるため注意しておきましょう。
 

フリマ、アフィリエイト、YouTube…課税対象になる収入例

副業は種類によって所得の区分が異なります。

例えば、フリマアプリで生活用品を販売した収入は基本的に非課税です。しかし、1点30万円を超える貴金属や美術品を営利目的で継続的に販売すると、課税対象となる可能性があります。

また、アフィリエイト収入やYouTubeでの広告収入は、事業所得または雑所得に該当しますが、会社員の場合は雑所得となることが多いでしょう。その他、不動産投資による賃料収入は不動産所得、アルバイトで得る収入は給与所得です。

キャバクラ等での収入も、店との従属関係があれば給与所得ですが、オーナーであれば事業所得の可能性があります。競馬などのギャンブル収入は一時所得、宝くじは非課税となるなど、どの所得に該当するかを正しく把握することが適切な申告につながるでしょう。

2. 「バレなければいい」は危険!税務署が収入を把握する仕組み

副業の収入は「黙っていればバレない」と考えるのは非常に危険です。近年、デジタル化が進む中で、税務署は私たちが思う以上にさまざまな方法で情報収集する術を持っています。

例えば、銀行口座の動きや取引先からの情報提供までと幅広く、副業で得た収入を完全に隠し通すことはまずもって難しいでしょう。安易な考えで申告をしないと、後々になって大きなペナルティを課されるリスクもあります。

そのため、税務署がどのように副業収入を特定するのか、具体的な仕組みなどについて確認しましょう。
 

銀行口座・振込記録・報酬支払調書から収入を特定

副業収入が税務署に把握されるケースとして挙げられるのが「銀行口座の調査」です。

税務署は、税務調査の際に銀行に対して口座情報を照会する権限があるため、不審な入出金履歴などについて調査するケースもあります。副業の収入とプライベートの支出が混在している口座は、取引数が多い傾向にあるため税務署の目に留まりやすいでしょう。

また、企業が個人に報酬を支払った際には「支払調書」を作成し、税務署に提出する義務が発生します。支払調書には「誰に」「いくら」支払ったか記録されており、税務署は個人の確定申告に内容との照合で申告漏れを発見できる仕組みです。

さらに、第三者からの匿名通報によって無申告が発覚するケースもあります。
 

住民税で会社にバレるパターンも多発

副業の収入を会社に知られたくないと考える方は少なくないはずです。そのため、確定申告の内容が住民税によって会社に伝わってしまうリスクを把握しておかなければなりません。

副業が会社にバレるパターンの最も大きな要因が、住民税の徴収方法の違いを把握していないためです。会社員の住民税は、通常「特別徴収」によって給料から天引きされますが、副業の所得が加算されることで合算後の税額が自治体から会社に送付されます。

仮に、送られてきた税額通知の金額が本業の給与水準と合わない場合は目立ってしまうため、会社にバレてしまうでしょう。確定申告書にて住民税の納付方法を「普通徴収」としておくことで、副業分は自身で納付することが可能です。

3. 申告漏れが発覚したときのペナルティと税務調査の流れ

確定申告の義務を把握せずに申告を怠ったり、正しく申告していなかったりする場合、税務署から指摘を受ける可能性が高まります。万が一、指摘によってペナルティが発生すると、本来納めなければいけない税金以外の税負担も増えるため、負担も大きくなるでしょう。

仮に、意図的な隠ぺいが疑われてしまえば、さらに重い税金を課せられることで、資金繰りの悪化も懸念されます。さらに、税務署は申告内容の正当性を把握するため「税務調査」を行うことも想定されるため、注意が必要です。
 

無申告加算税・延滞税・重加算税の違いと金額イメージ

確定申告は毎年決まった時期に行う必要があるため、期限を過ぎると「無申告加算税」が課されます。

無申告加算税の利率は以下の通りです。

・50万円以下の部分:15%

・50万円超300万円未満の部分:20%

・300万円超の部分:30%&

ただし、申告期限から1ヶ月以内の自主的な申告、法定納期限までの納税など、一定の要件を満たせば免除される可能性もあります。

また、納期限までに税金を納付しなかった場合には「延滞税」も掛かるため、注意が必要です。原則として年「7.3パーセント」、ただし、令和3年1月1日以後の期間は、年「7.3パーセント」と「延滞税特例基準割合(注2)+1パーセント」のいずれか低い割合が適用されます。

さらに、隠ぺいや虚偽の申告を行うなどの悪質なケースでは「重加算税」が課され、納付すべき税額の35〜40%の支払いが必要です。
 

税務署からの「お尋ね」が来るまでのプロセス

税務署が行う「税務調査」では、納税者の確定申告が正しく行われているかどうかが確認されています。確定申告の中には、誤った内容や、中には虚偽の申告が見られる場合があるからです。

申告内容に疑義があると、任意調査として通常は税務署から電話、もしくは書面で事前に通知され、日程や場所、対象の税目が示されます。調査当日、事業内容に関する質問から始まり、数日にわたって帳簿や領収書などの書類がチェックされるでしょう。

申告漏れや誤りが指摘された場合は修正申告と追徴税額の納付が必要となり、過去5年、悪質な場合は7年まで遡って調査される可能性があります。なお、調査官は調査に対して協力的かどうかを判断しており、不誠実な発言や態度によってはさらなる疑念を招くこともあるため、注意が必要です。
 

税務調査を受けやすい副業とは?

副業によっては税務調査を受けやすい項目があります。例えば、株や仮想通貨の取引、不動産売買による投資などです。中でも、大口の取引や海外投資による利益は、申告漏れがないか重点的に見られる傾向があります。

また、アフィリエイトやネット通販など、インターネットを活用した分野も、税務署が情報収集と調査を強化している分野の一つです。バー、キャバクラ、ホストクラブなどの水商売は、報酬が現金、かつ手渡しの場合もあり、高額な申告漏れが発生しやすい業種として注視されています。

4.ネット副業を始める上で知っておくべき管理ポイントとは

ネットでの副業を円滑に進めるためにも、確定申告をスムーズに行う必要があり、日ごろからの適切な管理を行うことが不可欠です。

中でも、資金管理は重要な項目で、プライベートの資金と副業の資金を明確に分けることで、経費の把握や収支の計算も楽になります。仮に、屋号付きの口座を開設することで取引先からの信用度を上げられるだけでなく、法人化を見据えた土台を作ることも可能です。

なお、準備が遅れるほど後から手間も掛かるため、売上が少ないうちから取り組むことをおすすめします。
 

副業専用口座を作るべき理由

ネット副業を始める際、プライベート用とは別に副業専用口座の開設をおすすめします。口座を分けておくと、多くのメリットを受けられるからです。

まず、副業に関する収入と支出を一元管理できると、お金の流れを把握しやすくなります。次に、確定申告時の会計処理の手間を省くことも可能です。

申告の種類を問わず帳簿を付ける際には、専用口座の取引履歴をそのまま帳簿作成の基礎データとして活用できます。会計ソフトの連携によって、さらなる効率化が図れることもメリットの1つです。

さらに、屋号付き口座を開設しておくと、取引先からの信用度の向上も期待できるでしょう。
 

副業口座を作る上での確認ポイント

屋号付きの口座を開設しようとする際、銀行側で事業の実態や信用度を慎重に判断するため審査が厳しくなるでしょう。そのため、屋号付き口座を開設する場合は事業実態の有無を確認するため、開業届の控えの提出や郵送物の発送などが行われます。

審査を通過すると口座開設に進みますが、仮に審査に落ちたとしても具体的な理由が開示されないことが一般的です。口座開設を成功させるポイントとして、既に個人取引のある銀行を選ぶことが挙げられます。

既に口座を持っている銀行で新たに口座を開設する方が、取引のない銀行で口座を開設するよりも妥当性があると言えるからです。なお、メガバンクよりも地方銀行や信用金庫、個人事業主のための商品を揃えているネット銀行の方が審査のハードルは下がる傾向にあります。

まとめ

ネット副業者の数は増えている一方、申告義務の基準や税務署が調査する仕組みを把握することは難しく、後になって対応に迫られる可能性があります。税務署は支払調書や銀行口座情報などから収入を把握しているため、少しぐらいならバレないと考えるのは危険です。

そのため、副業による所得が年間20万円を超える場合に確定申告が必要である場合や、副業の所得区分などは把握しておかなければなりません。

また、申告漏れに対して掛かる無申告加算税や延滞税、悪質な場合は重加算税といったペナルティも理解しておくべき項目です。副業を開始するにあたって、口座を分ける、帳簿をこまめに付けるなどし、スムーズな確定申告のためにも事前に準備を心がけておきましょう。

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