使えるリスキリング助成金解説!制度の種類、活用方法、申請のポイントまで

[取材/文責]マネーイズム編集部

近年、求職者または在職中の人が新たなスキルを身につけてキャリアアップを目指すリスキリングが注目されています。リスキリングには講座受講費用などがかかるため、国や自治体の支援策を活用するのがおすすめです。

当記事では、企業や個人向けのリスキリング助成金制度、一般的な助成金の申請方法などについて紹介します。

1. リスキリング助成金とは?制度の基本と種類を理解する

2022年に政府は、リスキリングを促進するためにさまざまな支援策の実施を発表しました。ここでは、リスキリング助成金制度の概要を紹介します。

リスキリングが注目される背景と政府の支援方針

リスキリングとは、仕事を続けながら新たな技術や知識を身につけることです。現代では、速いスピードで技術が進歩している一方、人々のスキルが変化に追いついていないという現状があります。

たとえば、ITは専門性が高く、給与水準も高い分野であるにもかかわらず、高度なスキルを持つ人材が不足しています。ITを学んだ人がIT分野に転職・就職すれば、企業の人材不足が解消するだけでなく、労働者の所得向上にもつながるでしょう。

政府は生産性を向上させ、賃上げを促すリスキリングを推進するため、個人・企業向けに大規模な支援を実施する方針を発表しました。

補助金・助成金・給付金の違いと特徴

国や自治体から企業や個人が受け取れるお金には、大きく分けて補助金・助成金・給付金の3種類があります。それぞれの特徴は以下の通りです。

補助金:補助金は、特定の政策を推進するため、国や自治体が条件を満たす企業に対して支払うお金のことです。申請の上、審査に合格した企業だけが受け取れます。

助成金:助成金は、補助金と同様に国や自治体から企業に支払われるお金で、審査がありません。条件を満たす企業は原則として受け取れるため、補助金よりハードルが低いのが特徴です。

給付金:給付金とは、国や自治体が一定の条件を満たす個人事業主や個人に支払うお金です。申請が必要ですが、条件を満たしていれば原則として受け取れるため、利用しやすいでしょう。

企業向けと個人向けの支援制度の全体像

国や自治体によるリスキリング支援制度には、企業向けと個人向けがあります。主な支援制度は以下の通りです。

【企業向け】
・人材開発支援助成金
・リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(企業向け)
・地方自治体のリスキリング助成金(東京都DXリスキリング助成金など)
・特定求職者雇用開発助成金

【個人向け】
・教育訓練給付金制度
・リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(個人向け)
・求職者支援訓練・職業訓練受講給付金
・地方自治体の個人向け支援制度(東京都・大阪府など)

2. 企業が活用できるリスキリング助成金制度

リスキリング助成金制度には、大きく分けて企業向けならびに個人向けがあります。ここでは、企業向けの主なリスキリング助成金制度を紹介します。

人材開発支援助成金の7つのコースと申請方法

人材開発支援助成金とは、従業員向けのスキルアップ研修を実施した企業に対し、費用と研修中の賃金の一部を助成する制度です。対面研修だけでなく、オンライン研修やeラーニングも対象です。

人材開発支援助成金には、賃金助成額や経費助成率の異なる7つのコースがあり、研修内容に併せて選択できます。

・人材育成支援コース
・教育訓練休暇等付与コース
・人への投資促進コース
・事業展開等リスキリング支援コース
・建設労働者認定訓練コース
・建設労働者技能実習コース
・障害者職業能力開発コース

従業員のリスキリングが目的である場合、該当するコースの一つが事業展開等リスキリング支援コースです。当コースの経費助成率ならびに研修中の賃金助成率は以下の通りです。

経費助成率:最大75%(中小企業)、60%(大企業)
人件費助成率:1人1時間あたり1,000円(中小企業)、500円(大企業)

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(経済産業省)

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業とは、DXやAIといった新しい分野のスキルを身につけられる研修や、講座などを通じてキャリアアップを支援する企業が対象です。具体的には、転職エージェントや社会人向けの研修事業者、各種スクールなどが利用できます。

ただし、制度の対象は、キャリア転換やスキルアップを目指す在職者や離職者で、個人・法人のいずれにも間接的に機能する設計です。

この制度を利用すると、受講者の受講状況や就業状況に応じて以下のような補助が受けられます。

受講者が講座受講修了:40万円を上限として講座費用の最大1/2
受講修了後に転職した職場にて1年間継続して就業している:16万円を上限として講座費用の最大1/5

地方自治体のリスキリング助成金(東京都DXリスキリング助成金など)

リスキリングを支援するため、独自に助成金制度を設けている地方自治体もあります。たとえば、東京都DXリスキリング助成金は、自社のDXを推進するため、従業員向けスキルアップ研修を実施する東京都内の企業が対象です。

主な支給要件は以下の通りです。

対象:教育機関が実施する集合研修またはeラーニング(3時間以上10時間未満)
助成率:経費の4分の3(受講者一人あたり上限75,000円)
上限額:1社1年度あたり100万円

IT導入補助金・ものづくり補助金の活用方法

IT導入補助金とは、主に中小企業や小規模事業者が業務効率化のために、ITツールを取り入れる費用を補助する制度です。ITツールの導入目的に応じて通常枠やインボイス枠など合計5つの枠があります。

一方、ものづくり補助金は中小企業・小規模事業者を対象に事業環境の変化に対応するための、設備投資などの資金を支援する制度です。2つの枠のうち、リスキリングが対象となるのは製品・サービス高付加価値化枠です。

いずれも補助金制度のため、利用するには申請後、所定の審査に合格する必要があります。募集要項をよく確認し、期限に余裕を持って申請しましょう。

3. 個人が活用できるリスキリング給付金・支援制度

国や自治体によるリスキリング支援策の中には、個人で利用できる制度もあります。ここでは、個人向けの支援制度として4つの制度を紹介します。

教育訓練給付制度の3つの種類と給付率(最大80%)

教育訓練給付制度とは、雇用安定のため個人のスキルアップを支援する制度です。厚生労働省が指定する講座を修了すると、受講費用の一部を受け取れます。

教育訓練給付金が受け取れる講座は、内容によって以下の3つに分かれており、それぞれ給付率が異なります。特に専門性の高いスキルを身につけられる専門実践教育訓練に該当する講座の場合、給付率は受講料の最大80%です。

専門実践教育訓練(給付率最大80%):IT、看護、介護など
特定一般教育訓練(給付率最大50%):介護支援専門員実務研修、大型自動車第一種・第二種免許など
一般教育訓練(給付率最大20%):社会保険労務士、税理士、簿記、TOEICなど

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(個人向け・最大70%)

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業は、個人でも利用できます。転職エージェントや研修事業者などが実施している指定の講座を修了すると、負担が軽減された価格で講座を受講できます。

また、修了後に転職し、1年間継続して就業していると、さらに受講費用の2割(上限額16万円)が受け取れるため、合計すると最大70%(上限56万円)もの金額が補助される制度です。

求職者支援訓練・職業訓練受講給付金(月10万円)

求職者支援訓練は、求職中の人の就職を支援するため、ハローワークが無料で実施している職業訓練です。内容はITや介護、障がい者福祉など幅広く、対面のほかeラーニングやオンライン講座もあります。

また、職業訓練受講給付金は、職業訓練受講中の生活費を補助する制度です。月の給与収入や世帯の金融資産額など、一定の要件を満たしていれば、月10万円の給付金を受け取れます。

地方自治体の個人向け支援制度(東京都・大阪府など)

一部の地方自治体では、リスキリングを目指す個人向けに独自の支援制度を設けています。

たとえば、東京都の短期集中型資格取得支援訓練は、ITパスポートや宅地建物取引士などの資格取得のための講座です。講座は、eラーニングと合宿から構成されており、受講料や宿泊費は無料です。

受講資格は、都内在住の求職者や非正規雇用の人、ならびに都内に通勤している非正規労働者に限定されており、東京しごとセンターで利用者登録する必要があります。

建設業や運送業などに関する資格取得を目指す大阪府民は、大阪府スキルアップ支援金制度を利用できる可能性があります。支援額は資格の種類によって異なり、建設業や運送業関連の資格では教育訓練費の最大75%が上限です。

自治体の支援制度は多くの場合、当該自治体内で居住していることや勤務していることが条件となります。

4. リスキリング助成金の申請方法と活用時の注意点

ここでは、リスキリング助成金の申請方法や注意したいポイントを紹介します。

助成金申請の基本的な流れと必要書類

助成金は、申請できる期間が決まっていることが多いため、まずは期限と必要書類を確認しましょう。特にリスキリングに関する助成金の場合は、研修実施前に計画書を提出しておき、実施後にはあらためて支給申請が必要になることもあります。

以下は助成金支給までの大まかな流れです。

・計画作成
・計画届の申請
・計画の実行
・助成金支給申請
・支給決定通知の受領

また、申請に必要な書類の例は以下の通りです。

・申請書
・研修内容がわかる書類やパンフレットなど
・参加した従業員の名簿

なお、最近はオンライン申請が主流のため、GビズID(プライムアカウント)などを持っていない場合は、あらかじめ登録しておくとよいでしょう。

申請時の注意点と不採択を避けるポイント

助成金の受給には審査が必要なため、支給要件を満たしていなかったり、書類の不備や提出期限超過などがあったりすると不採択になることもあります。

研修の計画書を作成する段階から支給要件や必要書類を把握し、計画的に進めることが大切です。なお、支給要件や申請書類などに関して不明点がある場合は、管轄の労働局などに問い合わせるとよいでしょう。

助成金を最大限活用するためのリスキリング計画の立て方

新たなスキルを身につけるための講座受講には、数万円から数十万円の費用がかかることが少なくありません。収入増加やスキルアップのためにリスキリングを検討しているなら、助成金を活用するのがおすすめです。

リスキリングで利用できる助成金制度にはさまざまな種類があり、それぞれ受給要件が異なります。受講前に申請が必要なものもあるため、取りたい資格などが決まったら使える助成金を調べ、申請期限や対象者を把握しておきましょう。

まとめ

国や自治体による助成金制度を利用することで、費用を抑えながらリスキリングに挑戦できます。企業向け、個人向けの制度があり、対象となる講座や条件はさまざまです。申請期限や必要書類を確認し、計画的に制度を活用しましょう。

中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。

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