金利上昇で注目「債券ラダー運用」とは?“堅実な債券運用”の新常識を解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

債券のラダー型運用とは、残存期間が異なる債券を分散して同額ずつ保有する運用手法です。金利が上昇する局面において、恩恵を受けながら平均的な利回りを安定して得られる手法として注目されています。

本記事では、この手法の基本的な仕組みから、注目される理由、そして個人投資家が実践するための方法について解説します。

1. 債券ラダー運用とは?基本の仕組みと「はしご」の意味

ここでは、ラダー型運用の仕組みと、バーベル型運用・ブレット型運用との違いについて解説します。

残存期間の異なる債券に均等投資する「はしご型」ポートフォリオ

ラダー型運用とは、債券の運用手法の1つで、残存期間が異なる債券を分散して同額ずつ保有する手法です。

たとえば、次のように残存期間を分散させて購入します。

・残存期間が1年の債券:10万円
・残存期間が2年の債券:10万円
・残存期間が3年の債券:10万円
・残存期間が4年の債券:10万円
・残存期間が5年の債券:10万円

残存期間が6年〜10年の債券も同様に10万円ずつ購入します。

「ラダー」は、日本語で「はしご」を意味する言葉です。投資額を縦軸、残存期間を横軸として棒グラフを作成した場合に、はしごを横に倒したような形に見えることから、ラダー型運用と呼ばれています。

ラダー運用の仕組み:償還金を最長期債に再投資する機械的な手法

ラダー型運用のルールは、シンプルで機械的に続けられます。残存期間が異なっている債券を同じ金額ずつ購入し、満期を迎えたら、償還金をポートフォリオで設定する最長期間の債券を購入するだけです。

先ほどの例では、1年が経過すると「残存期間1年」の債券は満期を迎え、額面金額が償還金として戻ってきます。ほかの債券はそれぞれ残存期間が短くなり、残存期間が1〜9年の債券が手元に残ります。

ここで、戻ってきた償還金10万円を使って、新たに「残存期間10年」の債券を購入するのです。すると、残存期間が1〜10年の債券を保有している状態が整います。

これを毎年繰り返すことで、常に残存期間が1〜10年までの債券が揃った状態が維持されます。この機械的なルールに従うことで、購入タイミングを悩む必要がなく、感情に影響されずに運用を続けられるのです。

バーベル型・ブレット型との違いと特徴比較

債券の代表的な運用方法には、ラダー型以外にも「バーベル型」と「ブレット型」があります。バーベル型運用は、短期債と長期債に投資し、中期債は持たない構成です。

たとえば、残存期間が1年・2年・9年・10年の債券を同額ずつ購入します。投資額を縦軸、残存期間を横軸として棒グラフを作成した場合に、重量挙げに用いられるバーベルの形に似ていることから、名付けられました。

短期債で流動性を確保しつつ、長期債で高い利回りが得られる可能性がありますが、定期的にポートフォリオのバランス調整が必要とされます。

一方、ブレット型運用は、特定の残存期間に債券を集中させる運用方法です。中期債に集中させるのが一般的です。

たとえば、残存期間が5年と6年の債券を同額ずつ購入します。「ブレット」は、日本語で弾丸を意味します。棒グラフを作成した場合に、弾丸の形に似ていることから、名付けられました。

定めた時期に確実に資金を確保でき、金利によっては高い収益を得られる反面、金利変動のリスクを分散しにくい手法です。

これらに対し、ラダー型運用は短期・中期・長期に分散して保有します。バーベル型やブレット型に比べて管理が複雑になりにくく、集中投資のリスクを抑えながら、平均的な利回りを安定して得られる手法です。

市場環境による変動はあるものの、長期的に見て利回りのブレを抑えやすいとされています。

2. なぜ今ラダー運用が注目されるのか?日銀利上げと金利上昇局面

ラダー型運用が注目されているのは、金利上昇局面と関係しています。

日銀の利上げで変わる債券投資環境(2024年〜2025年の動向)

2024年から2025年にかけて、日本の債券投資環境は大きな転換期を迎えています。2024年3月、日本銀行は長らく続いたマイナス金利政策を解除し、政策金利を引き上げました。

その後も段階的に利上げが実施され、2025年12月時点で0.75%まで引き上げられました。金利が上昇局面に入り、新しく発行される新発債の利息収入が増加したことで、投資対象としての魅力が高まっています。

一方で、既に低い金利で発行されている既発債の市場価格は下がります。こうした環境下で、金利変動リスクを抑えながら運用を続けられる手法として、ラダー運用が注目されているのです。

金利上昇局面でラダー運用が有効な理由:償還タイミングの分散効果

金利上昇局面でラダー型運用が有効とされる理由は「償還タイミングの分散効果」にあるといえるでしょう。ラダー型運用では、定期的に債券が満期を迎え、一定の金額が戻ってきます。

金利上昇局面では、その償還金を用いて新しい高金利の債券を購入することで、より高い利回りの債券をポートフォリオに組み込めます。定期的に新しい債券を組み込むことで、金利上昇局面でもポートフォリオ全体の金利を徐々に引き上げられるのです。

一方、長期債を一括で購入した場合、長期間低い金利の債券を持ち続けることになり、金利上昇の恩恵を受けられません。

価格変動リスクを抑えつつ金利上昇の恩恵を受ける仕組み

金利が上昇すると、債券の価格は下がる傾向があります。とくに、満期までの期間が長い債券ほど、価格変動幅が大きいとされています。債券は満期まで保有すると額面金額が戻ってくる仕組みです。

しかし、途中で現金が必要になった場合や、価格下落に耐えられなくなった場合など、満期前に売却して損失を確定してしまうケースもあります。

ラダー型運用では、保有している債券の一部が短期で償還され、定期的に満期も迎えます。そのため、急に現金を確保したい場合にも対応しやすく、価格が下がっている長期債を売却しなければならないリスクが低くなるのです。

短期債は価格変動が小さく、長期債は利回りが高い特性を組み合わせることで、ポートフォリオ全体としては安定性を保ちながら、金利上昇の恩恵を徐々に取り込めます。

3. ラダー運用のメリットとデメリット:向いている人・向かない人

さまざまなメリットがあるラダー型運用ですが、デメリットも存在します。

ここでは、メリットとデメリット、向いている人・向かない人の特徴について解説します。

ラダー運用の5つのメリット:金利変動リスク分散と管理の容易さ

ラダー型運用の主なメリットには、次のようなことが挙げられます。

・金利変動リスクを分散できる
・定期的にキャッシュフローを得られる
・運用ルールが明確で判断に迷いにくい
・長期的に安定した運用がしやすい
・シンプルな構造でメンテナンスも簡単

とくに、安定性と続けやすさは、ラダー型運用の大きなメリットといえます。

ラダー運用のデメリット:極端な運用成績は期待できない理由

ラダー型運用は、大きなリターンを狙うための運用には向いていません。残存期間が短期から長期までの債券に分散することで、金利変動リスクを抑えているため、平均的な結果が出るのです。

一方で、金利に合わせて集中投資すると、大きな値上がり益を得られる可能性があります。ただし、集中投資は大きな利益を得られる可能性がある反面、その分リスクも高くなるでしょう。

また、ラダー型運用では金利が下がる局面では、高い金利の債券が満期を迎え、低い金利の債券に再投資します。ラダー型運用では、このような局面を含めた結果が出るため、安定して平均的な成果を得やすいものの、集中投資のような大きな利益は期待できません。

ラダー運用が向いている投資家・向かない投資家の特徴

ラダー型運用が向いている人の特徴は、以下の通りです。

・安定した資産形成を重視する人
・金利変動リスクを分散して抑えたい人
・長期的に投資したい人
・感情に影響されずルールに従って投資を続けたい人

一方、短期売買や高いリターンを求める投資家には、あまり向いていない手法といえます。

4. 個人投資家がラダー運用を始める3つの方法と選び方

個人投資家が債券のラダー型運用を始めたい場合には、投資信託、債券ETF、個別債券の3つから、自分の投資資金、知識、手間をかけられる時間などに応じて選択できます。

ここでは、3つの方法についてそれぞれ解説します。

方法1:ラダー運用型の投資信託を利用する(少額から可能)

もっとも手軽なのは、ラダー型運用を採用している投資信託を購入する方法です。ラダー型運用を採用し、さまざまな債券に分散投資している投資信託があります。運用会社が銘柄選定や再投資をしてくれるため、メンテナンスの手間がかかりません。

また、1万円前後で購入できるものもあり、少額から始められる点もメリットです。ただし、信託報酬のようなコストがかかる点と、満期が設定されていない点には注意が必要です。

満期がないため、いつでも売却でき自由度が高い反面、満期まで保有すれば必ず額面の金額が戻ってくる制度はありません。投資信託の価格は変動するため、売却する際の市場価格によっては、元本を下回る可能性があります。

少額から始めたい人や、運用をプロに任せたい人、管理に手間をかけたくない人などは、投資信託の活用を検討してみるとよいでしょう。

方法2:債券ETFで自分でラダーを組む(米国債iBONDS ETFなど)

債券ETF(上場投資信託)を活用する方法もあります。満期が設定されているETFもあるため、組み合わせることで、手軽に柔軟な運用ができるでしょう。

たとえば、ブラックロック社が提供する米国債を中心としたiShares iBonds ETFには「2025年満期」「2026年満期」といったように、特定の年に満期を迎える債券ETFがあります。

このようなETFを複数組み合わせることで、簡単にラダー型ポートフォリオを構築できます。ETFは、株式のようにリアルタイムで取引でき、個別債券と比べると少額で分散投資が可能な点がメリットです。

ただし、米国ETFには為替リスクが伴う点に注意が必要です。少額から手軽に、自分でポートフォリオを構築したい人は検討してみるとよいでしょう。

方法3:個別債券を購入してラダーを構築する(必要資金と注意点)

もっとも自由度が高いのは、自身で個別債券を購入してラダー型ポートフォリオを構築する方法です。自由に銘柄を選択できますが、ある程度のまとまった資金が必要です。

個人向け国債は1万円から購入できますが、銘柄によっては数十万円〜100万円程度必要なものもあります。ラダー型ポートフォリオを形成するには、複数の債券を購入する資金が必要とされます。

また、債券にはデフォルトリスクがある点に注意が必要です。発行元の状況によっては、利息や償還金の支払い遅延・減額・全額支払い不履行といった可能性があるのです。

日本国債や米国債のデフォルトリスクは比較的低いとされていますが、新興国債券や社債にはデフォルトリスクが存在します。ある程度まとまった資金を準備して、自分の方針に合うポートフォリオを組みたい方は検討してみるとよいでしょう。

まとめ

債券ラダー型運用は、残存期間が異なる債券を同額ずつ分散して保有し、償還金を機械的に再投資する運用手法です。

運用ルールに従うことで、感情に影響されず、金利変動リスクを分散しながら、定期的なキャッシュフローを確保できるメリットがあります。金利が上昇する局面のなか、ラダー運用は個人投資家にとって魅力的な選択肢とされています。

大きな利益は期待できませんが、安定性と管理の容易さから、長期的な資産形成に有効です。ラダー型運用を実施するには、投資信託、債券ETF、個別債券の3つから、自分の投資資金、知識、手間をかけられる時間などに応じて選べます。

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