【2025参院選】立候補にかかる費用とは?選挙活動の実態と供託金・公費負担を解説

「立候補にはどれくらいお金がかかるの?」「ポスターや政見放送って誰が払ってるの?」と疑問を感じている方も多いでしょう。参院選を支える選挙のコストは、私たちの税金からも一部が使われています。
この記事では、立候補者が選挙に出るために必要な費用や、公費による選挙活動支援の仕組み、そして税金の使われ方について解説します。
1. 参院選に立候補するための費用とは?
選挙に立候補するには、思っている以上に多くのお金がかかります。特に国政選挙である参議院選挙では、供託金や人件費、事務所の維持費など、さまざまな費用が必要です。ここでは、参院選に立候補する際にかかる主な費用についてわかりやすく解説します。
選挙区と比例代表で異なる「供託金」の額
参議院選挙に立候補する際、まず必要となるのが「供託金」です。
これは、法律で定められた金額を法務局に一時的に預ける制度で、立候補のハードルを設けることで、売名目的や当選の意志がないような、無責任な立候補を防ぐために存在します。
供託金の額は選挙の種類によって異なり、参議院の場合、小選挙区で立候補するなら300万円、比例代表では候補者1人あたり600万円が必要です。
これらの供託金は、一定の得票率を満たせば返還されますが、規定に届かない場合や、立候補取りやめの場合などは没収されてしまいます。この制度を設けることで、真剣に当選を目指す候補者だけが名乗りを上げることが期待されているのです。
供託金は得票率が足りないと没収される
供託金は、ある程度の得票数を得ることが求められた上で設定されたものです。
もしもそのラインを超えなければ、納めた供託金は没収されてしまいます。たとえば、参議院比例代表での没収額は「名簿登録者数から当選数の2倍を差し引いた数×600万円」です。
また、立候補の届け出後に取りやめたり、立候補の届け出が却下されたりした場合にも、供託金は同様に没収となります。没収された供託金は、公職選挙法第93条・94条によると、国政選挙なら国庫、地方選挙なら地方自治体に帰属するものです。
実際に、2014年の東京都知事選挙では16人中12人が基準に届かず、計3,600万円もの供託金が没収されており、没収されたお金はポスター設置や投票所の設置、選挙公報の配布、職員への手当など、選挙費用の一部に充てられます。
その他:事務所費・スタッフ人件費・移動費などの実費
立候補にあたっては、ほかにもさまざまな実費がかかります。
まず家屋費は、選挙期間中に使う拠点として、仮設プレハブやテナントの賃貸を利用するため、その建設費や賃料が必要です。電気・水道・インターネットの引き込み工事なども費用に含まれます。
次に人件費として挙げられるのは、ハガキの宛名書き、ポスター貼り、運転手などの労務への報酬です。ただし、有権者への支持を訴える人や、幹部・責任者などに対する報酬は禁止されています。労務者への報酬としても、人数や支払い額に上限が定められています。
さらに、印刷代、郵送料、電話代、選挙カーの看板代や拡声器代などの広告費も出費として挙げられるでしょう。ポスターやビラなどの印刷代は、公費でまかなわれる部分もありますが、それ以外の印刷物については負担が必要です。
そのほか、文具費やお茶代・お弁当代、選挙運動員の宿泊費や雑費なども必要です。これらはすべて「選挙運動費用収支報告書」として報告しなければならず、活動中の費用としてしっかりと管理することが求められます。
2. どんな費用が“税金”でまかなわれるのか
選挙にかかる費用は、すべてを候補者自身が負担しているわけではありません。実は、選挙運動にかかる費用の一部は「公費負担制度」によって税金から支払われています。
この制度は、資産の有無にかかわらず、誰もが公平に選挙へチャレンジできるように設けられた仕組みです。ここでは、どのような費用が公費でまかなわれるのか、またその条件について詳しく見ていきましょう。
公費負担制度とは?
公費負担制度とは、国や自治体が、選挙運動にかかる一部の費用を税金でまかなう制度です。この仕組みにより、資産の有無にかかわらず、立候補や選挙運動を行うチャンスが平等に得られるようになっています。
対象となる費用や上限額は、選挙の種類や地域によって異なりますが、参議院選挙の場合は以下のようなものが対象となります。
・選挙カーのレンタル代、ガソリン代、運転手代
・選挙カーや事務所などに掲げる看板や立て札の作成費
・ビラ、ハガキ、ポスターなどの印刷費
・政見放送の作成費
ただし、一定の得票数に達しなかった場合には、公費負担を受けられないため注意が必要です。
公費負担制度を利用できる例
公費負担制度を利用できる例として代表的なのが、選挙運動用の自動車、ビラ、ポスターの作成費用です。
選挙カーの費用は、一般運送契約か個別契約かによって、認められる上限額が異なります。いずれの場合も、限度額を定額で支給するわけではなく、実際にかかった費用の範囲内で支給するものです。
ビラについては、法定枚数が定められており、その範囲内で実際にかかった印刷費用を公費負担の対象とします。ビラには選挙管理委員会が発行する証紙が必要であり、その点にも注意が必要です。
また、ポスター作成についても限度額が定められており、実際にかかった費用の範囲内で支給されます。このように、選挙活動にかかる主要な費用の一部は公費で補助されますが、いずれも一定の条件や手続きを満たす必要があるのです。
条件(得票率や法定数)を満たさないと支給対象外になる場合も
選挙運動用自動車の使用やビラ・ポスターの作成にかかる費用については、実際に要した金額のうち、限度額の範囲内で公費負担が認められます。ただし、公費は候補者本人に支払われるのではなく、候補者が契約した事業者へ自治体から直接支払われる仕組みです。
なお、得票数が供託物没収点に達しなかった場合は、公費負担の対象とはならず、これらの費用はすべて自己負担となるため、注意が必要です。
3. なぜ税金が使われているのか?その意義と課題
選挙運動には多額の費用がかかることから、候補者間での資金力の差が選挙活動の内容に影響を与え、公正な競争ができないおそれがあります。このような問題を解消し、すべての候補者が平等に選挙活動を行えるように、「選挙公営制度」が設けられています。
ここからは、この制度の意義と税金の使い道、現状の課題について考えていきましょう。
「お金のかからない選挙」の実現
選挙運動には多大な費用がかかることから、資金力の差によって候補者の活動に格差が生まれるおそれがあります。これを防ぎ、すべての候補者に公平な機会を提供するために設けられているのが「選挙公営制度」です。
たとえば参議院議員選挙においては、候補者に対してポスター掲示場の設置、選挙公報の発行、演説会の公営施設使用、選挙運動用自動車の使用、通常葉書の交付・作成、ビラやポスターの作成、新聞広告などに適用されています。
候補者間の選挙運動の機会均等
選挙は本来、有権者が自由な意思で代表者を選ぶための重要な機会ですが、現実には候補者の資金力によって大きな差が生じるおそれがあり、それを防止するために導入されているのが「選挙公営制度」です。
この制度は、候補者の経済的な背景に関係なく、できる限り平等な条件で選挙運動を行えるようにすることを目的としています。国や自治体が、選挙運動にかかる一部の費用を負担するなどの支援を行うことで、経済的な格差による不平等を防止するものです。
今後も選挙公営制度の適正な運用と、さらなる合理化が求められています。
4. 選挙を支える“税金のリアル”
選挙の運営には、多大な労力と費用がかかります。その費用の多くが私たちの税金によってまかなわれていることは、意外に意識されていない現状があります。投票所の設営から候補者への支援、選挙管理業務など、選挙にかかわるさまざまな活動が、税金に支えられているのです。
ここでは、選挙にかかる莫大な費用の内訳や、選挙管理委員会の運営実態などを解説します。私たちが納めた税金が、どのように選挙の場で活かされているのかを、リアルな視点で見ていきましょう。
選挙1回あたりの全体費用は?(参院選・衆院選)
選挙には、莫大な費用がかかります。
たとえば衆議院選挙では、毎回600億円から700億円近い支出が発生しており、国民の税金からまかなわれています。2014年の衆院選では、総額約617億円がかかっており、有権者1人あたりの金額にするとおよそ600円に相当する額です。
内訳を見ると、投票所の運営や期日前投票の対応に必要な「一般経費」が大きな割合を占めており、約365億円でした。また、選挙公報の発行やポスター掲示板の設置など候補者にかかる「公営費」も約251億円と、かなりの金額になります。
選挙費用は物価や制度の見直しによって変動しますが、たとえ下がったとしても一票あたり数百円の税金が使われている現実には変わりありません。税金を無駄にしないためにも、この事実にしっかりと向き合い、私たち一人ひとりがその一票を大切にすることが求められます。
選挙管理委員会・事務経費もすべて税金で運営
選挙を公正に行うため、自治体には「選挙管理委員会」が設置されています。選挙に伴っては、投票所の運営や期日前投票の対応、選挙公報の発行、人件費、ポスター掲示板の設置など、多くの費用がかかります。
そしてこれらの費用は、税金によってまかなわれるものなのです。選挙には、その運営にもお金がかかっていることを、私たちはもっと意識するべきでしょう。
選挙制度の“コスト”と“民主主義のコスト”は別物?
「政治にはお金がかかる」と言われますが、そのコストについては疑問を感じる場面も少なくありません。たとえば、ある政治家が多額の政治資金を高級ホテルのバーや飲食に使っている実態が報じられています。政治活動の一環としての会食であったとしても、その使い方には議論の余地があるものでしょう。
一方で、候補者が選挙活動を行うには、チラシの作成やポスティング、交通費、事務所運営といった費用も必要です。人件費だけでも相当な額になり、選挙区内に複数の自治体がある場合では、事務所を複数持つ必要があり、これが大きな負担となる場合もあります。
そうすると、資金力に乏しい野党側は、選挙において不利になってしまう場合も考えられるでしょう。育児や介護をしながら政治を志す人々が参加しにくいのも、この構造が一因だといわれています。
まとめ
選挙は「政治家を選ぶイベント」であると同時に、「私たちの税金で支えられている制度」でもあります。立候補の費用や公費負担制度の仕組みを理解することで、選挙がどれだけ公共性の高い仕組みなのかが見えてきます。税金の使い道をチェックする側として、まずはその構造を知ることが第一歩です。
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