【会社員から独立】
退職後の個人事業主の税金について解説
【会社員から独立】  退職後の個人事業主の税金について解説

2019/4/15

 
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会社員が退職し独立すると、取り巻く税金が変わってきます。しかも、独立1年目だけに必要な手続きなどがあります。確定申告をスムーズにするためにも退職後の税金について知っておきたいところ。そこで、退職後に会社員から独立する個人事業主に絞って、必要となる税金について解説します。

独立する個人事業主の税金のアウトライン

会社員が独立をすると、個人事業主として自分で税金を納めなければなりません。そこで、個人事業主の税金のアウトラインについて説明します。

独立後に課税・還付される税金

個人事業主が独立後に課税される税金、還付(返金)される税金は次の通りです。

(1)課税される税金

事業でのもうけに相当する所得金額に対して次の税金が課税されます。

①所得税

所得税は累進課税制度を採用しているため、税率が所得金額に比例するのが特徴です。税率は5%~45%までの7段階になります。

②復興特別所得税

所得税に税率2.1%を掛けた金額が課税されます。

③個人住民税

所得金額に一律10%の税率を掛けた金額が課税されます。

④個人事業税

所得金額から次の事業主控除額を差し引いた残額に業種に応じた税率3%~5%を掛けた金額が課税されます。

事業を行った月数 事業主控除額
1ヶ月 242,000
2ヶ月 484,000
3ヶ月 725,000
4ヶ月 967,000
5ヶ月 1,209,000
6ヶ月 1,450,000
7ヶ月 1,692,000
8ヶ月 1,934,000
9ヶ月 2,175,000
10ヶ月 2,417,000
11ヶ月 2,659,000
12ヶ月 2,900,000
(2)還付される税金

還付される税目は所得税です。前納に相当する源泉所得税や後述する予定納税の金額が所得税よりも多い場合、差額分が銀行口座に振り込まれます。

独立する個人事業主は失業保険がもらえない

失業保険は求職する失業者の生活の安定を図りつつ、求職活動を容易にすることを目的としています。独立した個人事業主は失業中に該当せず、求職活動もしていないため、失業保険をもらうことができません。仮に個人事業主が失業保険をもらえば、不正受給になってしまい、受け取った金額の3倍の金額を返還しなければなりません。

一般教育訓練給付金はもらえる

個人事業主は一般教育訓練給付金をもらうことが可能です。たとえば、ライターとして独立する個人事業主がファイナンシャルプランナーの資格取得を目指すとします。「教育訓練給付制度 検索システム」で「AFP資格審査試験」の欄にチェックを入れて検索をすると、給付金の対象となる教育機関がヒットします。

 

一般教育訓練給付金をもらうためには、次のすべての条件を満たす必要があります。

  • 勤務先において雇用保険の加入期間が最低1年以上であること
  • 離職日(退職日)の翌日から1年以内に給付金の対象となる教育機関で受講すること
    •  

      また、雇用保険と同じように虚偽の申告で給付金をもらった場合は不正受給となり、受け取った金額の3倍の金額を返還しなければなりません。

      開業手続きをする

      個人事業主として独立する場合には開業手続きが必要であり、おもな提出書類は次の通りです。

      (1)開業届

      税務署と各都道府県に対して開業届を提出します。

      (2)青色申告承認申請書

      節税対策の幅を広げるためにも、税務署に対して青色申告承認申請書を提出しましょう。提出期限は開業日から2ヵ月以内です。ただし、1月15日以前に開業する場合の提出期限は3月15日です。

      確定申告をする

      会社員の場合、年末調整により所得税など税額計算は勤務先が代行し、税務署に申告する手続きも必要ありませんでした。しかし、個人事業主の場合、自分で所得税の税額計算をし、確定申告書を税務署に提出しなければなりません。

      初めての確定申告のポイント

      独立後、初めての確定申告をスムーズにするためのポイントについて説明します。

      必要書類を用意する

      確定申告の必要書類について次の区分ごとに見ていきましょう。

      (1)通常の必要書類

      個人事業主が確定申告をする際の必要書類は次の通りです。

      • 確定申告書B
      • 青色申告決算書(白色申告者は収支内訳書)
      • 社会保険料控除証明書(国民年金および国民年金基金の支払証明書)
      • 生命保険料控除証明書
      • 地震保険料控除証明書
      • 住宅ローン控除関連書類

      など

      (2)独立1年目のみの必要書類

      独立1年目のみの必要書類は次の通りです。

      • 源泉徴収票
      • 預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書(納付する所得税の口座引き落としを希望する場合)

      など

      確定申告書を提出する

      個人事業主は確定申告書を毎年3月15日の提出期限までに税務署へ提出しなければなりません。提出期限を過ぎると、青色申告特別控除65万円の所得控除が10万円に減額されたり、追徴課税を課されたりするなど、不利益を被ってしまいます。

       

      確定申告の提出方法は次の通りです。

      • 税務署の窓口に直接提出する
      • 郵送する
      • 電子申告でオンライン送付をする

      退職金・失業等給付金は確定申告の必要なし

      勤務先の収入にかかる給与所得は確定申告をする必要がありますが、退職金は確定申告の対象外です。勤務先から受け取る段階で退職所得にかかる所得税は分離課税により税額計算が終了しているためです。

       

      また、失業保険など失業等給付金は雇用保険法により非課税のため、確定申告をする必要はありません。

      源泉徴収票がもらえない場合の対処法

      万が一、源泉徴収票が勤務先から入手できない場合の対処法について説明します。

      会社には源泉徴収票の交付義務がある

      そもそも会社は所得税法226条により原則、翌年1月31日までに源泉徴収票を本人に交付する義務があります。また、年途中での退職者に対しては、退職日から1ヵ月以内に源泉徴収票を交付しなければなりません。

      「源泉徴収票不交付の届出書」を提出する方法もある

      会社に源泉徴収票の交付義務があっても、実際に入手できないケースもあり得ます。その対処法が「源泉徴収票不交付の届出書」を税務署に提出することです。届出書の提出後、源泉徴収票を交付しない会社に対して行政指導を実施します。

       

      源泉徴収票不交付の届出書は本人が自署する必要があり、交付しない会社に対して本人の氏名を通知する・しないの選択が可能です。そのため、会社に対して源泉徴収票不交付の届出書を提出したことを隠すことができます。

       

      また、入手した源泉徴収票の年にかかる給与収入と源泉徴収税額を記載するため、給与明細書を用意しましょう。

      翌年に納付する税金

      事業でのもうけに相当する所得金額について、確定申告をし、所得税を納付するだけで終わるわけではありません。個人事業主は翌年にも自分で納付する税金があります。それでは、詳しく見ていきましょう。

      住民税の普通徴収

      会社員時代は特別徴収により住民税が給与天引きされていましたが、個人事業主は普通徴収により自分で納付しなければなりません。納付回数は4回であり、納付期限は6月末日、8月末日、10月末日、1月末日になります。

      事業税の納税

      住民税と同じように事業税も自分で納付します。納付回数は2回であり、納付期限は8月末日、11月末日になります。

      所得税の予定納税

      所得税が15万円以上の場合は原則、予定納税が必要になります。納付回数は2回であり、所得税の3分の1相当額を納付します。また、納付期限は7月末日、11月末日です。

       

      ただし、原則に代えて、予定納税額を減額、免除することが可能です。具体的には、「予定納税額の減額申請書」を税務署に提出し、承認を受ける必要があります。

      まとめ

      退職した個人事業主は通常の確定申告に加えて、独立1年目だけに関係する税金の知識が必要になります。また、求職者と異なり失業保険は受け取れず、自営業者と違って教育訓練給付金は受け取ることが可能です。独立後、事業を軌道に乗せるためにも退職後の税金をきちんと理解しましょう。

      阿部正仁
      TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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