国保の保険料上限が2023年も引き上げ!?改正内容や計算方法を知る | MONEYIZM
 

国保の保険料上限が2023年も引き上げ!?改正内容や計算方法を知る

2023年度から国民健康保険料の上限が引き上げられるという報道がありました。昨年の同じ時期にも同様の報道があり、国民健康保険に加入している人にとっては気になるところです。
そこで2022年度に引き続き上限が引き上げられた国民健康保険料についての内容や、国民健康保険のしくみそのものについて解説します。

2023年度からは国民保険料の上限2万円引き上げ

はじめに、2023年度から国民健康保険料の上限が引き上げられることについて見ていきましょう。
 

国民健康保険制度においては、被保険者の保険料負担に一定の限度額が設定されています。
2022年度においては、この限度額が102万円とされていました。2021年度において3万円引き上げられた結果としての限度額102万円ということでした。
 

2023年度からはさらにこの上限額を2万円引き上げることが厚生労働省の社会保障審議会にて決定し、上限額は104万円となります。この保険料負担の上限引き上げによって影響を受けるのは、高所得者層です。
 

どれくらいの収入があれば国民健康保険料の上限額を支払う対象となるのかは、世帯の構成などで異なりますが、単身世帯で試算しますと年収がおよそ1,150万円以上の人が対象になります。
考え方として、限度額超過世帯となる高所得者の割合が加入者全体の1.51%になるように設計されています。
 

今回の国民健康保険料上限額の引き上げ理由としては、次の点が挙げられます。

➢ 高齢化等による医療給付費の増加
➢ 被保険者の所得が十分に伸びないこと
➢ 保険料率の引き上げをすると、中間所得層の負担が大きくなるため

 

保険料率の引き上げをしても既に限度額に達している高所得者層の負担は変わりません。
そこで、国民健康保険料上限額の引き上げにより、高所得者層により従来より多くの負担を課すものの、中間所得層に配慮した保険料の設定をするという趣旨です。

そもそも国民保険料の仕組みとは

ここでそもそもの国民保険料の仕組みをおさらいしておきましょう。
 

日本には、国民は誰もが必ず公的医療保険制度に加入する必要があります。これを「国民皆保険制度」といいます。医療保険制度に加入して毎月一定の保険料を納めることで、病気やケガなどで治療等を受ける場合に適切な医療給付を受けられます。
 

日本の医療保険制度は一つではありません。
個人事業主や会社員などの立場や年齢などによって、主として3つに分かれています。

制度名 主な団体など 主な加入者 運営団体
健康保険 健康保険組合 大企業の従業員など 各企業
全国保険協会(協会けんぽ) 中小企業の従業員など 独立行政法人
共済組合 公務員など 各組合
国民健康保険 上記以外の75歳未満の者 市区町村
後期高齢者医療制度 75歳以上の者 後期高齢者医療広域連合

 

国民健康保険は個人事業主や学生、年金受給者など、企業勤めを対象とした社会保険に加入していない人が対象です。(75歳未満の人に限ります)
 

国民健康保険に加入している人は、病院などで医療行為を受ける際に一定額の医療費を自己負担し、差額は国民健康保険が負担します。医療費の自己負担の割合は、年齢や所得により1〜3割負担までの間になっています。例えば、実際の医療費が1万円で自己負担が2割の場合、国民健康保険の加入者は2千円の自己負担で済みます。
 

次に、毎月支払う国民健康保険料について見ていきましょう。
毎月支払う健康保険料は、次の3つの区分を合計したものです。
 

区分 主な加入者 R4年度までの
上限額
R5年度からの
上限額

医療分 加入者の医療に対する保険料 65万円 65万円
後期高齢者支援分 後期高齢者医療制度への支援分 20万円 22万円
介護分 40~64歳までの介護保険の保険料 17万円 17万円
上限の合計額 102万円 104万円

 

国民健康保険料は世帯の人数や年齢、前年度の収入(所得)に応じて、保険料が計算されます。
上の表でもわかるように今回の上限額の引き上げは、後期高齢者支援分についてのみの引き上げとなります。

国民健康保険料の計算方法とは

国民健康保険料は、世帯の人数や年齢、前年度の所得に応じて計算されます。ここからは国民健康保険料の計算方法について簡単に見ていきます。

国民健康保険料の計算手順

国民健康保険料の基本的な計算は全国共通と言えますが、細かい部分は市区町村によって計算方法が異なるケースがあります。
実際は、各自治体が計算を行って被保険者に保険料の金額が通知されます。しかし、自分の来年の保険料がだいたいいくらになるのかを知りたいという人向けに、東京都を例に国民健康保険料の一般的な計算手順を見ていきましょう。
 

東京都の国民健康保険料は次の4つの項目を合計して計算します。
 

項目

概要
所得割 世帯の所得合計に応じて計算 所得×保険料率
資産割 世帯の固定資産に応じて計算 固定資産税額×保険料率
均等割 世帯の人数に応じて計算 加入者数×均等割額
平等割 一世帯あたりの金額が決まっている 一定額

 

実際、特別区や多くの市区町村では、所得割と均等割のみが健康保険料の計算対象となっています。
国民健康保険料の一般的な計算手順は、次のようになります。

・ 所得金額を調べる

所得割は世帯の所得合計で保険料を計算するため、まずは世帯の所得を調べます。
個人事業主は確定申告書に所得金額が記載されています。
他の保険制度に加入している人を除いて一世帯の家族の所得金額を合算する必要があります。

・基準額(基礎所得金額)を計算する

所得割は、所得金額-基礎控除43万円などの控除額を差し引いた金額をもとに計算します。これを基準額(基礎所得金額)といいます。

・所得割額、均等割額を計算(上限あり)する

医療分、支援分、介護分ごとに、所得割額、均等割額を計算し、すべての金額を合算して納める保険料の金額を求めます。

具体的な国民健康保険料の計算手順

次に、国民健康保険料の計算手順を具体例で見ていきましょう。
 

例)家族構成:夫 40歳…年収484万円、所得金額343万円
        妻 40歳…専業主婦
        子ども 10歳…東京都港区在住
 

【基準額】

所得金額 343万円-43万円=300万円

【所得割額、均等割額の計算】

・医療分
所得割 = 基準額300万円×保険料率7.16%   =214,800円
均等割 = 42,100円×3人               =126,300円
合計 = 所得割214,800円+均等割126,300円=341,100円
 

・支援分
所得割 = 基準額300万円×保険料率2.28% =68,400円
均等割 = 13,200円×3人             =39,600円
合計 = 所得割68,400円+均等割39,600円=108,000円
 

・介護分
所得割 = 基準額300万円×保険料率2.02%  =60,600円
均等割 = 16,600円 × 2人(40歳以上)   =33,200円
合計 = 所得割60,600円+均等割33,200円=93,800円

【国民健康保険料の計算】

国民健康保険料=医療分341,100円+支援分108,000円+介護分93,800円=542,900円
 

また、国民健康保険料には軽減措置もあります。軽減されるのは次のような場合です。
 

  • 所得が一定の基準以下の場合
  • 後期高齢者医療制度に移行した人(75歳到達時)の被扶養者(65歳以上75歳未満)が国民健康保険に加入する場合
  • 自発的でない失業者の場合 など

 

軽減の対象になるかどうかについては、所得の有無に関係なく申告することが基本です。まず、自治体か税務署に所得を申告してください。
そのほかにも、軽減の対象となるケースがあり、自治体独自の軽減制度が設けられている場合もあります。詳しくは各自治体にお問い合わせください。

まとめ

日本全体で高齢化が進み、国民全体の医療費は増加の一途であり、保険財政は悪化しています。
そこで、厚生労働省は高所得者を対象に、国民健康保険の年間保険料の上限額を2023年度から2万円引き上げて、104万円に引き上げることとなりました。
国民健康保険料は、各自治体が保険料を計算するため、自分で計算する必要はありませんが、基礎的な計算手順を知っておけば、おおよその保険料がわかり、家計のシュミレーションも容易となるでしょう。

岡和恵
大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。 システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。 2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。
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