個人事業主が国民年金を支払った場合や
受け取った場合の税金や処理方法

個人事業主が国民年金を支払った場合や  受け取った場合の税金や処理方法
公開日:
2020/05/15
 
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新型コロナウイルスの影響で、給付金はもちろんのこと、国民年金などの支払いについても注目が集まっています。とくに、個人事業主にとっては税金に関わることであり重要です。

そこで、個人事業主が国民年金を支払った場合や、受け取った場合の処理などについて詳しく解説します。

まずは国民年金とはどのような制度か再確認しよう

国民年金を支払った場合や受け取った場合の処理を見ていく前に、国民年金とはどのような制度なのかをご紹介します。

 

年金とは、老後や障害、死亡などによって金銭的な収入が減少した場合などに、長期にわたって支給されるお金のことです。年金制度とは、将来的に年金の支給を受けるために、働くことができる若い間に、一定金額を国などに支払っておく制度です。日本の年金制度は、国民皆年金制度とも呼ばれ、原則、20歳以上60歳未満の人全員が年金に加入することとなっています。

 

日本の年金制度は、国民年金、厚生年金、私的年金(私的保険)の3階建てになっています。会社員や個人事業主などで加入する年金制度は異なるものの、すべての人が必ず加入するのが、国民年金です。

 

個人事業主は国民年金に加入し、毎月保険料を支払います。一方、会社員は厚生年金に加入することで、同時に国民年金にも加入しています。両方の保険料を合わせたものを、社会保険料として毎月の給料から天引きという形で支払っているのです。

 

新型コロナウイルスの影響で、国民年金を支払えない場合は、令和2年2月分以降の国民年金保険料を免除または猶予することが可能です。免除または猶予を受ける場合は、国民年金保険料免除・納付猶予申請書、所得の申立書を必要な添付書類とともに、住民登録をしている市(区)役所・町村役場または年金事務所へ郵送する必要があります。

国民年金の保険料を支払った場合の処理方法

ここからは、個人事業主が国民年金の保険料を支払った場合の税金と会計処理方法について見ていきましょう。

国民年金は社会保険料控除になる

国民年金は、個人事業主であるかどうかにかかわらず、国民全員が支払う義務のあるものです。支払いが個人事業主だけに限定されていないため、個人事業の経費にはなりません。その代わり、1年間に支払った国民年金の全額が、社会保険料控除になります。

 

社会保険料控除とは、所得控除の一部で、税金の計算上、差し引くことのできる控除です。所得税の計算式を簡単に説明すると、次の計算式になります。

 

所得税の納付額=(売上-必要経費(-青色申告特別控除)-所得控除)×所得税率

例えば、売上800万円、必要経費600万円、1年間の国民年金の支払い額15万円で白色申告をしている場合(説明上、他の所得控除はないものとする)、売上800万円-必要経費600万円-社会保険料控除15万円=185万円に対して、税金が課されます。

 

国民年金の保険料の支払いは、老後の保障になるだけでなく、税金の納付額も減らせるのです。

個人事業主が国民年金の保険料を支払った場合に仕訳は必要?

個人事業主だけが国民年金の保険料を支払うわけではないため、個人事業の経費にはなりません。そのため、国民年金をプライベートの現金や預金から支払った場合には、帳簿付けをする必要はありません。

 

ただし、事業用の現金や預金から国民年金を支払った場合には、残高を実際と帳簿と一致させる必要があるため、帳簿付けが必要になります。では、具体例で見ていきましょう。

 

例)国民年金の保険料16,540円を普通預金から引き落としで支払った。

・普通預金がプライベート用の場合
仕訳不要

 

・普通預金が事業用の場合

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
事業主貸 16,540円 普通預金 16,540円 国民年金保険料

事業に関係のない支払いのため、借方勘定科目は「事業主貸」勘定で処理します。

国民年金を受け取った場合の処理方法

ここまでは、個人事業主が国民年金の保険料を支払った場合の処理方法についてご紹介しました。次に、個人事業主が国民年金を受け取った場合の税金と会計処理方法について見ていきましょう。

個人事業主が国民年金を受け取った場合の税金とは

原則、国民年金は65歳になったら受け取ることができます。では、受け取った国民年金には、税金はかかるのでしょうか。実は、国民年金であっても、受取金額が一定の基準を超えた場合は所得税の対象になります。

 

国民年金に税金がかかるのは、1年間の受給額が一定金額を超えた場合ですが、この一定金額は令和元年までと令和2年以後では金額が異なります。

①令和元年まで

令和元年までは、年齢により、国民年金の非課税枠が次のように決まっていました。

年齢 国民年金の非課税枠
65歳未満 年間70万円まで
65歳以上 年間120万円まで

 

令和元年までに受け取った1年間の国民年金の金額が、65歳未満の場合は70万円まで、65歳以上の場合は120万円まであれば、国民年金に税金はかかりません。

②令和2年以後

令和2年以後では、年齢だけでなく、国民年金以外の所得に係る合計所得の金額によっても国民年金の非課税枠が次のように決まっています。

 

・国民年金以外の所得金額が1,000万円以下の年

年齢 国民年金の非課税枠
65歳未満 年間60万円まで
65歳以上 年間110万円まで

 

・国民年金以外の所得金額が1,000万円超2,000万円以下の年

年齢 国民年金の非課税枠
65歳未満 年間50万円まで
65歳以上 年間100万円まで

 

・国民年金以外の所得金額が2,000万円超の年

年齢 国民年金の非課税枠
65歳未満 年間40万円まで
65歳以上 年間90万円まで

 

令和2年以後では、国民年金に税金がかからないかどうかは、事業所得など国民年金以外の所得金額の計算が終わるまで、判定できません。事業所得などが高い場合は、国民年金に思わぬ税金の支払いが発生する可能性があるので、注意が必要です。

個人事業主が国民年金を受け取ったら仕訳は必要?

非課税枠を超えた金額の国民年金を受給すると、所得税などが課されます。ただし、国民年金の受給額は事業所得ではなく「雑所得」に該当します。事業の所得には該当しないため、個人事業主が国民年金を受け取っても帳簿付けをする必要はありません。

 

ただし、国民年金が入金される通帳が事業用の通帳である場合は、実際の通帳残高と帳簿の残高を一致させるため、帳簿付けが必要になります。では、具体例で見ていきましょう。

 

例)普通預金に、国民年金が14万円入金された。

・普通預金がプライベート用の場合
仕訳不要

 

・普通預金が事業用の場合

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
普通預金 14万円 事業主借 14万円 国民年金

事業に関係のない入金のため、貸方勘定科目は「事業主借」勘定で処理します。

まとめ

個人事業主の場合、国民年金は毎月、現金や預金で支払う必要があります。また、国民年金を受け取った場合、事業所得など国民年金以外の所得金額によって税金がかかるかどうかが異なるため、注意が必要です。

 

国民年金は、事業所得には該当しないため、支払った場合も受け取った場合も帳簿付けは不要です。ただし、事業用の通帳を経由して支払いや受給がある場合は、仕訳が必要となります。

 

国民年金は、老後の生活保障のために、必要不可欠なものです。そのため、新型コロナウイルスの影響による支払免除や猶予の措置もしっかりととられています。

 

新型コロナウイルスの影響がある場合は、まずは、支払免除や猶予の措置が受けられるかどうかを、年金事務所などに問い合わせしてみましょう。

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