「起業したいけどお金が不安…」女性起業家向け助成金・補助金・低利融資を徹底解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

起業にあたっては、設備投資や運転資金などで多額の資金が必要になるのが一般的です。そのため、自己資金のほかに外部から資金調達を考える方は多いでしょう。資金調達にはいくつかの方法がありますが、女性の起業を支援する助成金は比較的低リスクで利用しやすいものの一つです。

本記事では、女性起業家が利用できる助成金について具体的に紹介します。補助金や融資との違いや申請・審査通過のコツも解説しますので、参考にしてください。

1. 女性起業家向け助成金とは?基本知識と資金調達の全体像

助成金とは、個人事業主や企業の創業や事業継続を支援するために公的機関などから支給される支援金です。ここでは助成金と他の資金調達の方法との違いや助成金を活用すべき理由、メリットなどを紹介します。

助成金・補助金・融資の違いと特徴

起業の際、頭を悩ませる方が多いのが資金調達です。資金調達の方法として一般的な助成金・補助金・融資の3つについて、違いや特徴を紹介します。

助成金:助成金とは企業や個人事業主に交付される支援金のうち主に厚生労働省が管轄している公的資金です。返済不要であり、受給要件を満たしていればほぼ支給されるため利用しやすいのが特徴です。

補助金:補助金とは、経済産業省(中小企業庁)が管轄する支援金です。支給金額が数十万円~100万円以上と比較的大きいのが特徴です。ただし、受給するにあたっては事業計画など一定の審査が必要なため、条件を満たしていても受け取れないことがあります。

融資:日本政策金融公庫などの公庫のほか、自治体や民間の金融機関から資金を借りる方法です。借り入れできる金額や利率などの条件は年齢や年収などの信用情報、事業計画などに基づいて決定されます。起業したばかりで実績がない場合、民間の金融機関より公庫や自治体などのほうが融資を受けやすい可能性があります。

女性起業家が助成金を活用すべき3つの理由

女性起業家が資金調達するなら、助成金を積極的に活用するのがおすすめです。助成金を活用すべき理由としては以下の3つが挙げられます。

・条件を満たせば基本的に受給できるため計画が立てやすい
・返済不要のためリスクが低い
・女性起業家限定の支援制度もあるため選択肢が豊富

受給要件を満たしている企業や個人事業主が申請すれば、ほとんどの場合で助成金を受け取れます。申請時点で受給要件を満たしているか=助成金を受け取れるか、を自分で確認できるため、見通しが立てやすくなります。また、基本的に返済不要のため融資に比べるとリスクが低いのは助成金の魅力の一つです。

さらに女性起業家の活躍を後押しするため、女性限定の支援制度も少なくありません。資金調達の選択肢が広がることも助成金を活用すべき理由です。

助成金・補助金の返済不要というメリットと後払いという注意点

助成金・補助金の大きなメリットの一つが返済不要である点です。一般的な資金調達の方法の一つである融資は元本に加えて利子の返済が必要なため、長い目で見たときに負担が大きくなったり、最悪の場合は返せなくなったりするリスクがあります。返済不要の助成金・補助金は、特に収入の不安定な創業初期は大きな助けになるでしょう。

ただし、助成金・補助金は申請から実際に受け取れるまでに数か月~1年以上かかる点に注意しましょう。たとえば機材の購入資金の一部に助成金・補助金を使う場合でも、いったんは立て替えが必要になります。特に補助金は申請が認められない可能性もあるため、資金繰り計画を立てる際は慎重になることが大切です。

2. 女性起業家が申請できる国の助成金・補助金制度

女性起業家が申請できる助成金・補助金制度のうち、国(厚生労働省や経済産業省など)が管轄しているものを3つ紹介します。従業員を雇用していたり、販路開拓や設備投資を検討している方は申請できる可能性があります。

雇用関係助成金(厚生労働省)の活用方法

雇用関係助成金とは厚生労働省による従業員の雇用に関するさまざまな助成金の総称です。目的や条件の異なる助成金が複数あるため、自身の事業に合うものを選べます。厚生労働省のWebサイトの雇用関係助成金検索ツールを使うと探しやすくなります。

なお、女性起業家の場合は、以下のような助成金を使うことが多いでしょう。

人材開発支援助成金:人材育成や従業員のスキルアップなどにかかった費用を助成する
特定求職者雇用開発助成金:ハローワークを通じて高齢者や障がい者を雇用する事業者が対象
トライアル雇用助成金:就業経験が少なく就職が困難な求職者を試験的に雇用する場合に利用可能

小規模事業者持続化補助金(創業枠)で販路開拓を支援

小規模事業者持続化補助金は、常時雇用する従業員が5人以下(宿泊業・娯楽業を除く商業・サービス業)または20人以下(商業・サービス業以外の事業者)を対象とする助成金です。

中でも創業枠とは、開業から3年以内の小規模事業者に対して最大200万円を支給するものです。補助金は機械設備のほか展示会出展、ウェブサイト制作などさまざま用途に使えます。小規模事業者持続化補助金(創業枠)の受給には、商工会・商工会議所や金融機関が実施しているセミナーなどの受講が必要です。

ものづくり補助金・IT導入補助金で設備投資を実現

ものづくり補助金(製品・サービス高付加価値化枠)は小規模事業者が新製品・新サービス開発のための設備投資を支援する補助金です。書類審査に加えてオンラインでの口頭審査があり、代表者1名で臨む必要があるためややハードルは高いものの、ものづくりに取り組む女性起業家におすすめの補助金の一つ。

一方、IT導入補助金は生産性向上や業務効率化にITを活用する小規模事業者に対して支給される補助金です。経理ソフトや給与計算ソフト、セキュリティ対策なども対象となるため、これから起業する人が利用しやすい補助金といえます。

3. 地方自治体の女性起業家支援制度と融資制度

国による助成金のほかに、地方自治体による女性起業家支援制度もあります。事業の本店所在地や事業内容によって条件が異なるため、自身の事業が該当するか確認してみましょう。

また、助成金制度とは異なりますが女性起業家を対象に融資の際の利率を下げる制度もあります。併せて利用を検討してみましょう。

東京都「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」

東京都で出店予定の女性起業家は若手・女性リーダー応援プログラム助成事業を利用できる可能性があります。このプログラムは東京都内の商店街活性化を目的としているため、以下のような申請条件があります。

・都内商店街に出店予定であること
・申請者が女性または年度末時点で39歳以下の男性であること

なお、女性の場合は申請に際して年齢制限はありません。条件を満たす場合はぜひ利用を検討しましょう。

地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)

地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)は中小機構、都道府県及び地域金融機関などが拠出した基金(ファンド)の運用益をもとに中小企業に支給される助成金です。

「地域中小企業応援ファンド」と「農商工連携型地域中小企業応援ファンド」の2種類があり、全国約23都道府県の状況に応じて組成されています。内容や申請条件はファンドによって異なるため、事業の本店所在地のある都道府県のファンドを確認する必要があります。

地域中小企業応援ファンドの場合、地域の農林水産物や伝統技術を活用した商品開発、販路開拓に関わる費用が助成の対象です。返済不要で複数年にわたって受給できるケースもあるため、まずは地域のファンドの募集要綱を確認しましょう。

日本政策金融公庫の女性起業家向け特別利率融資

日本政策金融公庫とは主に中小企業や小規模事業者に対して、創業時の融資や災害時の復旧支援などを行う政府系金融機関です。国民生活事業において個人事業主や小規模事業者の創業を支援しているため、起業を予定していて、日本政策金融公庫からの融資を検討する方は多いでしょう。

特に女性の場合は「女性、若者/シニア起業家支援資金」制度に基づき通常よりも低い利率で融資が受けられる可能性があります。同制度は新規創業または創業から約7年以内の女性、もしくは35歳未満か55歳以上の男性が対象です。女性は年齢制限なく対象となるため、興味のある方は近くの支店へ相談するとよいでしょう。

4. 助成金・補助金の申請方法と成功のコツ

助成金・補助金は申請できる期間が決まっているうえ、それぞれ必要な書類や受給要件が異なるため慎重に準備を進めることが大切です。助成金・補助金によっては審査があり、申請が却下されてしまうこともあります。ここでは助成金・補助金の申請方法と審査通過のコツを紹介します。

申請の流れと必要書類の準備

受給要件を元に申請したい助成金が決まったら、公募要領や申請ガイドラインで必要書類や申請期間を確認します。必要書類は助成金によって異なるものの、以下の書類を求められることが多いでしょう。

・申請書
・事業計画書
・決算書類
・勘定科目明細書
・(設備投資など費用の)見積書
・従業員名簿
・納税証明書
・履歴事項全部証明書または定款(法人の場合)
・開業届または確定申告書控え(個人事業主の場合)

また、申請はオンラインで行われるのが一般的です。GビズIDプライムアカウントなどをあらかじめ取得しておくとスムーズです。

審査を通過するための事業計画書の書き方

起業に際して助成金に申請する場合、事業計画書が必要になることがほとんどです。事業計画書はできるだけ具体的に記載すると審査を通過しやすくなります。特に以下のポイントを意識するとよいでしょう。

・根拠とともに無理のない数値目標を示す。必要に応じて表やグラフも使う
・事業のリスクや課題に触れ、対策も記載する
・事業の目的や資金用途と照らし合わせて、一貫性を持たせる

簡潔で説得力のある内容になっているか、第三者にチェックしてもらうのもよい方法です。

申請時の注意点と併用可能な制度の見極め方

原則として、同時に利用できる助成金や補助金は1種類までです。複数の助成金や補助金に申請することは可能ですが、2つ以上採択された場合は1つだけを選び、残りは辞退する必要があるため注意しましょう。

ただし、助成金や補助金を管轄する機関が異なれば併用できることもあります。公募要領や申請ガイドライン併用不可の規定がないか確認しましょう。また、利用できる助成金や補助金が複数あり、併用できない場合はどれを選ぶべきか専門家に相談する方法もあります。

まとめ

女性起業家の資金調達には助成金を活用しましょう。返済不要でリスクを抑えられるうえ、女性起業家限定の支援制度もあるためチャンスが増えます。

国や自治体からさまざまな助成金が用意されているため、事業内容や設備投資計画に合うものを選びましょう。なお、申請には事業計画書など複数の書類が必要になるほか、申請が採択されてから実際に資金が得られるまで時間がかかることが多いため、時間や運転資金に余裕を持って申請することが大切です。

中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。

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