生成AI研修を「 人材開発支援助成金」で実施しよう! 制度内容・助成額・申請方法を徹底解説

生成AIの技術は急速に普及し、業務に活用する企業も増えています。しかし、中には生成AIを使いこなせる人材が社内にいないとお悩みの企業もいるでしょう。国や自治体では企業が従業員に対して一定の職業能力開発のための研修を実施する際、助成金を支給する制度があり、生成AI導入では人材開発支援助成金などが対象です。
本記事では生成AIに関する研修を実施予定の企業のために、人材開発支援助成金制度について紹介します。利用できるコースや助成率、申請の注意点などを解説しますので参考にしてください。
1. 生成AI導入に使える人材開発支援助成金とは?
生成AI導入のため、従業員に対して研修を実施したい企業は人材開発支援助成金の利用がおすすめです。ここでは人材開発支援助成金について、仕組みや利用できるコースなどを紹介します。
人材開発支援助成金の基本的な仕組みと目的
人材開発支援助成金(人開助成金)とは、従業員に対してスキルアップにつながる研修を実施した企業に対し、研修費用と研修中の賃金の一部を助成する制度です。
条件を満たせば基本的に受給できるうえ、対面研修だけでなくオンライン研修やeラーニングも対象となるため使い勝手のよいのが特徴です。
人開助成金には対象となる研修内容や賃金助成額や経費助成率が異なる6つのコースがあります。
なぜ生成AI研修が助成対象になるのか?DX推進との関係
2022年11月にChatGPTが公開されたのをきっかけに、生成AIは至るところで活用されるようになりました。業務効率化やイノベーション創出に生成AIを取り入れている企業も増えています。しかし、中小企業にとっては生成AIのような新技術を採用したり、技術を活用できる社員を育成したりする費用を捻出するのが難しい場合もあるのが実情です。
一方、政府は企業の競争力を高めるため、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しています。そこでDXを推進する観点からも生成AIに関する従業員向け研修が助成金の対象となりました。
特に人材開発支援助成金制度においては、6つのコースのうち以下の3つが生成AI研修に利用できる可能性があります。
・人材育成支援コース
・人への投資促進コース
・事業展開等リスキリング支援コース
助成金と補助金の違い|生成AI導入で選ぶべき制度
助成金と補助金はどちらも公的機関(国や自治体)から支給されるもので、返済不要という共通点があります。ただし、助成金が受給要件を満たしていれば基本的に受給できるものであるのに対し、補助金は審査を通過した場合のみ支給される点が異なります。
特に生成AIの導入に関しては助成金である人材開発支援助成金制度が利用しやすいためおすすめです。特段の理由がない限りは人材開発支援助成金制度を選ぶとよいでしょう。
2. 生成AI研修で活用できる3つのコースと助成額
人材開発支援助成金制度には6つのコースがあり、そのうち生成AI研修で活用できるのは3つです。ここではそれぞれのコースの内容や条件、助成率などについて紹介します。
【最もおすすめ】事業展開等リスキリング支援コース|最大75%助成
生成AI研修に人材開発支援助成金制度を活用するのであれば、最もおすすめなのは事業展開等リスキリング支援コースです。このコースはDX推進や新規事業展開を目的とする人材育成の支援に使われるもので、生成AI研修と内容の一致度が高いうえ、最大75%の経費や人件費が助成されます。
事業展開等リスキリング支援コースを利用するには以下の3つ条件を満たす必要があります。
・合計10時間以上の研修実施
・研修が職場外で行われること(OFF-JTのみ、OJTは不可)
・研修内容がDXや新規事業展開に関連している
経費の助成率、助成の上限金額は以下の通りです。企業規模や研修実施時間数によって異なります。
・10時間以上100時間未満:30万円
・100時間以上200時間未満:40万円
・200時間以上:50万円
人件費助成率:1人1時間あたり1,000円(最大1,200時間)
人材育成支援コース|幅広い従業員のスキルアップに対応
従業員のスキルアップを目的とする生成AI研修の実施費用を補助する制度です。非正規雇用者も対象となるため、幅広い従業員のスキルアップに対応します。
人材育成支援コースが適用されるのは以下の3種類の研修です。
・人材育成訓練:10時間以上のOFF-JT
・認定実習併用職業訓練:新入社員向けのOJTとOFF-JTの混合研修
・有期実習型訓練:非正規雇用者の正社員化を目的とするOJTとOFF-JTの混合研修
経費助成率は正社員が45%、非正規雇用者は70%です。ただし、一定の賃金要件を達成すると助成率が上乗せされることがあります。また、非正規雇用者が対象の認定実習併用職業訓練については、かかった経費の75%が助成されます。
中小企業の場合、研修時間に応じた経費助成額の上限は以下の通りです。
・10〜100時間未満で15万円
・100〜200時間未満で30万円
・200時間以上で50万円
1事業所あたり年間1,000万円が上限
人への投資促進コース|高度デジタル人材の育成に特化
従業員に生成AI研修を実施する企業は人への投資促進コースも利用できる可能性があります。このコースは2026年度までの期間限定です。
人への投資促進コースを利用できるのは、高度デジタル人材の育成のための訓練や大学院での訓練などを従業員に受けさせている企業です。ただし、企業の主たる事業が情報通信業であり、DX認定を受けていることなどの要件があります。
人への投資コースは以下の5種類です。
・高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練(経費助成率75%、賃金助成1時間あたり1,000円)
・自発的職業能力開発訓練(経費助成率45%、賃金助成なし)
・長期教育訓練休暇等制度(20万円、賃金助成1時間あたり1,000円)
・定額制訓練(経費助成率60%、賃金助成なし)
・情報技術分野認定実習併用職業訓練(経費助成率60%、賃金助成1時間あたり800円)
3. 申請の流れと必要書類|研修開始1ヶ月前が絶対期限
ここでは人材開発支援助成金の申請の流れや必要書類などについて紹介します。申請期限に遅れたり、提出書類に不備があったりすると助成金が支給されないおそれもあります。慎重に準備を進めることが大切です。
申請前の準備|職業能力開発推進者の選任と計画策定
人材開発支援助成金を利用する企業は、申請前に以下の準備が必要です。
・職業能力開発推進者の選任(計画届提出日まで)
・事業内職業能力開発計画の策定・周知
・事業主が助成金申請の基本要件を満たしていることの確認
職業能力開発推進者は事業内職業能力開発計画の作成や、労働者への相談・指導などを行うため、労務・人事部門の部課長などが適しています。原則として事業所ごとに1名以上の職業能力開発推進者を選任する必要がありますが、労働者が100名以上いる事業所で適任者がいない場合に限り、本社と事業所で兼任することもできます。
事業内職業能力開発計画の策定・周知とは、職業能力開発の方針を定め、計画を従業員に知らせることです。また、人材開発支援助成金制度を利用できるのは以下の条件を満たす事業主に限ります。念のため確認しておきましょう。
・雇用保険適用事業所の事業主である
・雇用保険被保険者が対象
・労働保険料を滞納していない
計画届の提出|研修開始1ヶ月前までに労働局へ提出
職業訓練実施計画届は研修開始の6ヶ月前から1ヶ月前までに労働局へ提出する必要があります。提出は、GビズIDプライムを用いたオンライン申請のほか、郵送や窓口へ持参することもできます。
また、計画届のほかには訓練内容が確認できるカリキュラムなどの提出が必要になります。コースによっては追加の書類が要求されることもあるため、厚生労働省のホームページなどで必要書類を確認しておきましょう。
支給申請|研修終了後2ヶ月以内の手続きと入金時期
訓練終了日の翌日から起算して2ヶ月以内に支給申請書などの必要書類を提出しましょう。
賃金台帳や給料明細書、雇用契約書などの添付書類を求められることもあります。
申請書に問題がなければ支給決定通知書、何らかの問題のため助成金が支給されない場合には不支給決定通知書が送付されます。
4. 助成金申請の注意点と失敗しないためのポイント
ここでは助成金申請に際して特に注意したいポイントを3つ紹介します。人材開発支援助成金は研修前の申請に加えて、研修後に支給申請も必要です。確実に助成金を受け取るためのポイントを押さえておきましょう。
【最重要】研修開始後の申請は不可|計画的なスケジュール管理
生成AI導入にあたり人材開発支援助成金制度を利用する場合は、必ず研修開始の1ヶ月前までに申請しましょう。研修開始後の申請は対象外となるため、助成金を受給できません。計画的なスケジュール管理が大切です。また、申請後に研修内容などに変更がある場合は変更届の提出が必要です。
対象外となる研修と対象となる研修の見極め方
人材開発支援助成金は受給要件を満たしていれば原則として支給が認められます。実施を予定している研修が助成金の対象となるかどうかは、以下のポイントをチェックするとよいでしょう。
・研修内容はDXや新規事業展開に関連している
・研修時間は10時間以上
・研修が勤務時間内に実施される
・(一部のコースを除き)職場外で行われるOFF-JT研修である
そのほか、コースごとに異なる受給要件が設定されている場合があります。申請しようとしているコースの対象者や必要書類などをよく確認することが大切です。
書類不備・期限超過を防ぐ|記録管理と申請サポートの活用
助成金の申請にはさまざまな書類が必要なため、手続きが煩雑になりがちです。せっかく申請しても、書類に不備があれば却下されてしまうおそれもあるため、募集要領や申請ガイドラインをよく確認しながら準備を進めましょう。
また、研修終了後、支給申請を行う際に研修の効果を示すレポートの提出を求められることもあります。研修の資料や受講者の名簿などは記録に残しておくことが大切です。
なお、助成金の申請に慣れていない場合や人員不足などで手続きの負担が大きいと感じる場合は、申請サポートを利用するのも方法の一つです。外部の専門家に依頼することによって、期限超過による申請漏れも防げます。
まとめ
急速に普及している生成AIの技術は企業の業務効率化やイノベーションにも役立ちます。従業員に生成AIの研修を習得させたいと考えている企業は、人材開発支援助成金制度を活用しましょう。
人材開発支援助成金制度は、国が推進しているDXなどに関連する研修を実施した企業に対し、研修費用や人件費の一部を支援する制度です。中小企業の場合は研修費用の最大75%が支給される可能性があります。受給要件や申請期限、必要書類などを確認し、時間に余裕を持って申請しましょう。
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