イスラエル・米国のイラン攻撃が生活に与える影響とは?ガソリン・電気代・食品への波及を解説

2026年2月から始まった米・イスラエル・イランの軍事衝突は、原油価格の高騰を招き、ガソリンや電気代、食品価格の上昇など、私たちの生活に直結する影響が懸念されています。プラスチックを始めとする日用品の多くが石油由来の原料を使用しているため、供給が不足する状況が続けば影響は広範囲に及ぶでしょう。
本記事では、イラン攻撃とホルムズ海峡の封鎖が日本経済や日常生活に与える影響について解説します。
1. 何が起きているのか?イラン攻撃とホルムズ海峡封鎖の経緯
2026年2月に米・イスラエルがイランに攻撃することで始まった今回の軍事衝突は、中東地域全体を巻き込み、ホルムズ海峡が封鎖される事態へと発展しました。ここでは、イラン攻撃とホルムズ海峡の封鎖の経緯をたどり、中東で何が起きているのかを解説します。
2026年2月28日の米・イスラエルによるイラン攻撃と情勢の経緯
2026年2月28日、米・イスラエルはイランへ軍事攻撃を開始しました。イランは直ちに報復として湾岸諸国の米軍基地や石油施設などへの攻撃を始めたのに加えて、原油などの流通の要であるホルムズ海峡の封鎖に踏み切りました。4月8日に米国とイランは2週間の停戦で合意したものの、交渉は難航していると見られており不安定な状況が続いています。
ホルムズ海峡が封鎖されると日本が困る理由と原油輸入94%依存の実態
ホルムズ海峡はイランとオマーンの間に位置しており、ペルシャ湾からアラビア海(外界)へアクセスする経路上にある海峡です。ペルシャ湾沿岸には産油国が集中しているため、日本が輸入する原油の約94%を中東地域に依存しており、そのうち8割のタンカーがホルムズ海峡を通過しているといわれています。
米・イスラエルによるイラン攻撃への報復として、イランはホルムズ海峡の封鎖に踏み切りました。原油の調達が遅れる事態となり、ガソリン価格を含めて日本経済にさまざまな影響が表れ始めています。
楽観・ベース・悲観の3シナリオで見る原油価格と日本経済への打撃
2026年2月末のイラク攻撃前、原油価格は1バレルあたり67ドル程度で推移していました。しかし攻撃を受けて価格は急上昇し、1ヶ月以上経過した4月9日時点でも100ドルの大台を突破しています。
今後の原油価格について、楽観・ベース・悲観の3つのシナリオは以下の通りです。
【楽観】
軍事衝突やホルムズ海峡の封鎖が早期に解決する→原油価格は再び65ドル程度へ落ち着く
【ベース】
軍事衝突や海峡封鎖の影響が長期化する→原油価格は100ドル前後で推移する状況が続く
【悲観】
軍事衝突が中東地域全体へ拡大し、ホルムズ海峡は完全に封鎖される→原油価格は過去最高値である140ドル台へ上昇
悲観シナリオの場合、日本国内のガソリン価格は1リットルあたり200円程度となり、電気代・ガス代も10%程度上昇することが見込まれます。食料品などの物価も上がり、日本経済にとって大きな打撃となる可能性があります。
2. ガソリン・電気代・食品 すでに始まっている「値上がりの波」
エネルギー源として使われるだけでなく、工業製品などの原料にもなる石油の価格上昇は、さまざまな形で物価の押し上げにつながります。軍事衝突の開始から約2ヶ月が経過した2026年4月時点ではガソリンや電気・ガス代、食品価格に値上がりの波が来ている状況です。
ここではイランでの軍事衝突が物価に与える影響や今後の見通しを解説します。
ガソリンは1ヶ月で65ドルから100ドル超に政府補助で170円に抑える綱渡りの実態
イランの位置する中東地域には産油国が集中しているため、イラン攻撃を受けて大きく変化したのが原油相場です。ガソリン価格は攻撃開始から1ヶ月で65ドルから100ドル超へ大きく上昇しました。これはロシアのウクライナ侵攻が起きた2022年に匹敵する水準です。
原油価格の高騰により、日本では2025年12月にガソリン暫定税率が廃止されたことでいったん下がっていたガソリン価格が再び上昇する事態となりました。国民生活への影響を避けるため、政府は補助金制度を再開してガソリン価格を暫定税率廃止前の170円程度に抑える方針を発表。その後、4月6日時点のレギュラーガソリン価格は、1Lあたり167.4円で前週と比べて2.8円値下がりしている状況です。
ただし、国際情勢が不安定な状況が続けば原油相場がさらに上昇することも考えられます。価格がさらに大きく上昇することがあれば、ガソリン価格の安定が難しくなるかもしれません。
電気代・ガス代は3〜5ヶ月遅れで上昇し夏に家計を直撃する
中東情勢の悪化は原油だけでなく、液化天然ガスなどの価格高騰も招いています。その結果、ガソリンに加えて電気代やガス代も今後上昇する見込みです。
ただし、1~2週間程度で市場価格の変化が小売り価格に転嫁されるガソリンに対し、燃料費調整制度を採用している電気代やガス代の変化は、遅い傾向にあります。通常、相場の変化が請求額に反映されるには3~5ヶ月かかるため、具体的に影響が出るのは夏頃になる予想です。
ここ最近、猛暑となる年が続く日本では、エアコンなどの冷房使用のため夏に電力消費が高まるため、エネルギー価格の上昇は家計にとって大きなダメージとなるおそれがあります。
食品・日用品への波及 洗剤・シャンプー・食品包装材も値上がりが始まった
原油を含むエネルギー価格の上昇は、食品や日用品の価格にも影響します。日本では多くの食品原材料を輸入に頼っているため、輸送コストや製造コストの上昇分を価格に転嫁する必要があるためです。
また、食品包装材に多く使われているプラスチックは石油を原料としているため、間接的に食品価格を押し上げる要因となります。同様に、石油系界面活性剤を原材料とする洗剤やシャンプーなどの日用品も値上がりが予想されます。
3.「ナフサ危機」とは何か ガソリン値上がりより怖い見えない連鎖
今回の軍事衝突、特にホルムズ海峡の封鎖により懸念されていることの一つが「ナフサ危機」の深刻化です。原油調達を中東に依存している日本では、さまざまな工業製品や化学品の原料となるナフサの供給が不安定になり、幅広い産業に影響が出始めています。
ここではナフサ危機について解説します。
ナフサとはプラスチックから合成繊維まで現代生活を支える基盤原料
ナフサとは、原油を精製する過程で生まれる石油製品の一つです。ナフサはガソリンのようにエネルギーとして使われる代わりに、再加工することでさまざまな工業製品や化学品の原料となります。
たとえば、レジ袋やペットボトルなどのプラスチック製品、タイヤに代表される合成ゴム、ナイロンやポリエステル繊維などの合成繊維もナフサから作られます。現代生活には欠かせない基盤原料といえるでしょう。
ナフサの備蓄はわずか数週間分で原油250日分との決定的な違いがある
原油価格の高騰はナフサを原料とするさまざまな工業製品・化学品の供給や価格に影響します。国内需要の250日分の備蓄があるといわれている原油に対し、ナフサの備蓄はわずか数週間分です。
また、備蓄分の原油を精製して得られるナフサはそれほど多くありません。現在のように中東情勢が不安定化し、原油価格が上昇したり供給が減少したりすることはナフサを原料とする幅広い工業製品・化学品にとって大きなダメージを与えます。
出光・三井化学などが相次ぎエチレン減産しサプライチェーン断裂が始まった
イスラエル・米国によるイラン攻撃から約2週間が経過した3月中旬から、すでにナフサの供給不足の影響が出ています。出光や三井化学などの大手石油化学メーカーがナフサを原料とする化学品の一つであるエチレンの減産を開始しました。
エチレンはレジ袋やペットボトル、洗剤などの原料です。メーカーが減産している一方で、生活必需品であるこれらの製品の需要は変わらないため、供給不足の状態が長引くほどサプライチェーンに問題が起こりやすくなるでしょう。
4. 医療・建設・食品「モノが作れない」分野別の深刻な影響
ナフサを原料とするプラスチック製品や合成繊維などの供給制限は、さまざまな分野で深刻な影響を与えています。特に医療現場では人の命や健康へのリスクが懸念される状況にもなっています。
一方、建設・自動車などの産業では部品が足りないことで「モノが作れない」状況にもなりかねません。ここでは産業別に、ナフサ危機による具体的な影響を解説します。
点滴チューブ・血液バッグ・透析回路が数週間で底をつくリスク
衛生面での安全性を確保するため、医療用器具は使い捨てが可能なプラスチック製品が一般的です。しかし、ナフサの供給不足は点滴チューブや血液バッグ、透析回路といった患者の命を支える器具の生産にも影響を与えており、製品によっては数週間で在庫が底をつくリスクがあるといわれています。
特に人工透析に用いられるダイアライザーと呼ばれる人工腎臓は、特殊なプラスチックを用いて作られており、代替品がありません。政府は厚生労働省と経済産業省が連携して医療機器メーカーのサプライチェーンを把握し、限られた資源を効率的に配分するとしています。
断熱材・配管・塗料が届かず工事が止まり住宅価格にも影響が出る
断熱材や配管、塗料など住宅建材にもナフサ由来の製品が少なくありません。すでに一部商品の値上げや出荷制限を始めているメーカーもあるため、工事の進行や住宅価格にも影響が出ることが懸念されています。
たとえば、省エネ住宅に欠かせないポリスチレン製の断熱材は、4~5月出荷分から40%値上げされることが発表されました。水道管や床材に使われる塩化ビニル樹脂、シンナーを含む塗料も値上げとなります。
新築住宅の場合、全体で数百万円単位の価格上昇となるケースもあると考えられるため、住宅価格の上昇は避けられないでしょう。一部製品は出荷制限が課せられていることから、新規受注に慎重になっている工務店もあります。
食品トレー・容器・洗剤ボトルでも値上げと供給制限が始まっている
ナフサを加工したエチレンからは、食品トレーや容器、洗剤ボトルなどに欠かせないポリエチレンが作られます。すでに解説した通り、エチレンの減産が続いているためこうした包装材でも値上げと供給制限が始まっています。
消費者にとっては、食品包装用のラップや洗剤などの日用品の価格上昇という形で影響が出る見込みです。また、食品トレーや容器の価格上昇が企業努力で吸収できる水準を超えれば、食料品価格も値上がりすることになるでしょう。
Oリング1個の欠品が生産ライン全体を止める自動車・電子機器への波及
ナフサの供給不足による影響は、自動車や電子機器産業へも波及しているのです。たとえば、自動車には、車体の軽量化や機能向上のためプラスチックや合成繊維などを使った部品が多く使われています。バンパーやエンジン回りには、ポリプロピレンやABS樹脂、シートやエアバッグにはポリエステルやナイロンなどの合成繊維が使用されています。また、合成ゴム製のタイヤが一般的です。
いわゆるゴムパッキン、Oリングも合成ゴムで作られている製品です。車のエンジンや家電、半導体機器などには欠かせないものであり、一つでも足りなければ製品を完成させられないため、生産ライン全体を止めてしまう原因となります。
まとめ
イランでの軍事衝突はホルムズ海峡の封鎖による原油の供給不足を通じて、日本経済や消費者の生活に影響を与えています。電気代やガス代のように遅れて価格に反映されるものもあるため、今後もさまざま形で日常生活に値上げや供給不足の影響が現れるでしょう。国際情勢が落ち着くにはまだ時間がかかると考えられるため、できる範囲で早めの備えが重要です。
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