法人の社長は確定申告が必要?不要?
中小企業経営者の税金について解説

法人の社長は確定申告が必要?不要?  中小企業経営者の税金について解説
公開日:
2020/02/21
 
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確定申告は個人事業主だけでなく、法人の社長も対象になり得ます。もちろん、無申告の場合はペナルティーが科されてしまいます。しかも同族会社の社長の確定申告には独自のルールが存在します。一方、確定申告により還付を受けることも可能です。そこで、社長の確定申告について詳しく解説します。

確定申告の必要なケース・不要なケース

法人の社長が確定申告の必要なケースと不要なケースについて説明します。

社長は給与所得者である

会社から支給される社長の役員報酬(給料)は給与所得になります。そのため、年末調整により所得税の計算が完結すれば確定申告は必要ありません。

確定申告が必要な社長

次のいずれかに該当する社長は確定申告が必要になります。

 

  • (1) 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
  • (2) 1ヵ所から役員報酬の支払を受けている場合、副収入にかかる所得(給与所得および退職所得以外の所得)の合計額が20万円を超える人
  • (3) 2ヵ所以上から役員報酬や給与の支払を受けている場合、「年末調整の対象外となる給与の収入金額」または「副収入にかかる所得の合計額」が20万円を超える人
    ただし、年末調整の対象外となる給与の収入金額が20万円を超えていても、次の条件を満たす場合は確定申告が不要です。

    • 給与の収入金額の合計額から雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた残額が150万円以下
    • 副収入にかかる所得の合計額が20万円以下
  • (4) 自社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている同族会社の役員
  • (5) 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
  • (6) 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
  • (7) 退職所得にかかる所得税が源泉徴収税額よりも多くなる人

確定申告をしないデメリット

確定申告をしないデメリットはペナルティーに相当する追徴課税を余分に負担しなければならない点です。しかも、国税庁は無申告であることが発覚しやすい仕組みを構築しています。それが法定調書と国税総合管理(KSK)システムです。

 

法定調書は「社長の収入金額」と「支払者などからの支払金額」を税務署が突き合わることを容易にしています。それら全国津々浦々の収入金額と支払金額をコンピュータで一元管理するのが国税総合管理(KSK)システムです。そのため、たとえ遠隔地の収入金額でも税務署は把握できます。

確定申告の必要な所得(副収入)の種類

副収入にかかる所得が20万円を超えたときに確定申告の対象になる所得の種類について説明します。

不動産投資をした場合

賃貸物件や月極駐車場などの不動産投資にかかる所得は不動産所得になるのが原則です。ただし、有料駐車場などの収入にかかる所得は雑所得になります。

 

不動産所得に該当する場合、青色申告の所得計算は収入金額から経費のほか、青色申告特別控除も差し引くことができます。一方、雑所得は「収入金額-経費=所得」になります。

株式投資をした場合

株式投資の売買益にかかる譲渡所得や配当金にかかる配当所得は原則、確定申告が必要です。しかし、次の場合は確定申告が不要になります。

 

  • 株式売買により損失を計上した場合
  • 株式投資などの副収入にかかる所得が20万円以下の場合
  • 証券会社などに対して開設した源泉徴収口座の特定口座にかかる株式の売買益と配当金
  • 非上場株式等(上場株式等及び投資法人以外)からの少額配当(1銘柄ごとに1回に支払いを受けるべき金額が「10万円×配当計算期間の月数(最高12ヵ月)÷12」以下の場合)

    例)年1回の配当の場合は10万円以下、年2回の配当の場合は5万円以下

  • 上場株式等に係る配当等(上場会社等の発行済株式等の3%以上を保有する大口株主等を除く)
  • 特定株式投資信託と公募証券投資信託の収益の分配
  • 特定投資法人の投資口の配当等

その他の副収入を得た場合

ほかにも確定申告の対象になる雑所得(副収入)が存在します。

  • (1) オークションサイトやフリーマーケットアプリなどを利用した個人取引
    • 衣服、雑貨、家電などの資産の売却による所得(生活用品の売却益を除く)
    • 自家用車などの動産資産の貸付けによる所得
    • ベビーシッターや家庭教師などの人的役務の提供による所得
  • (2) 仮想通貨の売却等による所得
  • (3) 民泊による所得

税務申告で還付が受けられる社長

社長が税務申告をすると還付が受けられるケースについて説明します。この税務申告を「還付申告」といいます。

還付申告とは

還付申告とは給与(役員報酬)からの源泉徴収税額および予定納税額の一部の還付を受けるための税務申告のことを指します。具体例はおもに次の通りです。

 

  • (1) 年末調整を受けずに源泉徴収税額が納め過ぎになっている場合
  • (2) マイホームの取得などをした場合(住宅ローン控除)
  • (3) 災害や盗難などで資産に損害を受けた場合
  • (4) 多額の医療費を支出し(一般的には10万以上)、医療費控除を受ける場合
  • (5) 特定の寄附をし、寄付金控除を受ける場合
  • (6) マイホームに特定の改修工事をした場合(特定増改築等住宅借入金等特別控除)
  • (7) 認定住宅の新築等をした場合(認定住宅新築等特別税額控除)
  • (8) 給与所得にかかる特定支出控除の適用を受ける場合

還付申告の期間

還付申告の期間は申告の対象となる年の翌年1月1日から5年間になります。たとえば、令和元年の所得税の還付申告は令和2年1月1日から令和7年12月31日までが期間になります。

確定申告をすれば還付されるケース

申告不要の社長でも確定申告をすることにより還付されるケースがあります。

(1)不動産投資で赤字を計上した場合

不動産所得に該当する不動産投資で赤字を計上した場合には、損益通算により赤字額を給与所得から控除することができます。そのため、役員報酬にかかる源泉徴収税額のうち、赤字の計上額に相当する部分が還付されます。

(2)株式投資等で損益通算を利用する場合

源泉徴収口座の特定口座の開設により確定申告が不要な場合でも、確定申告により株式投資等にかかる損失計上額の他の口座にかかる株式投資の譲渡益や配当金と相殺することで、源泉徴収税額の一部が還付されます。

 

また、上場株式等に係る譲渡損失を繰越控除する特例を適用する場合にも確定申告が必要です。繰越控除の期間は3年間になります。

(3)配当控除を受ける場合

株式配当などの配当所得を総合課税で申告する場合、一定の方法で計算した金額の税額控除を受ける制度が配当控除です。配当控除の金額と配当金にかかる源泉徴収税額の一部が還付されます。配当控除の税率は次の通りです。

 

課税総所得金額 1,000万円以下の部分 (所得税) 1,000万円以下の部分 (住民税) 1,000万円超の部分 (所得税) 1,000万円超の部分 (住民税)
利益の配当等 10% 2.8% 5% 1.4%
証券投資信託等 (外貨建証券投資信託以外) 5% 1.4% 2.5% 0.7%
証券投資信託等(一般外貨建証券投資信託) 2.5% 0.7% 1.25% 0.35%

まとめ

税務申告の対象であることに気づくことが社長の確定申告のポイントになります。所得税を納付する場合の確定申告はもちろん、還付申告も忘れないようにしたいものです。この記事の具体例を参考にしたり税理士などの専門家を活用したりすることをおすすめします。

▼参考URL

阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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