“ポイ活”で残した「財産」は相続できる? 亡くなった人が貯めていた「ポイント」や「マイル」の相続について解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

店舗での買い物もネットショッピングでも、購入額に応じたポイントが付与されるのは、今や当たり前になりました。いうまでもなく、顧客を囲い込むためのサービスなのですが、最近は意識的にポイントを貯め、生活費などに充てる“ポイ活”もブームになっています。ところで、親などがこうしたポイントや航空会社のマイルなどを残して亡くなった場合、それらは預金などと同じように相続できるのでしょうか。注意点と併せて解説します。

拡大するポイントサービス

市場は3兆円に迫る

クレジットカードや電子マネーの利用をはじめ、家電量販店やドラッグストアでの買い物、ネットショッピング、携帯電話料金の支払い時など、ポイントサービスはすっかり日常のものになりました。では、このようなポイントサービスの市場はどれくらいあるのか、みなさんはご存じでしょうか。

矢野経済研究所の調査(2024年8月29日付プレスリリース)によると、2023年度の国内の市場規模(ポイント発行額ベース)は、およそ2兆7,000億円。28年度には、約3兆3,000億円規模への伸長が予測されているのです。

市場拡大の理由としては、コロナ禍からの回復、ポイントが使える店舗数の増加、キャッシュレス決済の拡大、“ポイ活”の一般化――などが挙げられています。

最も使われているのは「楽天ポイント」

具体的にどんなポイントサービスが利用されているのかについては、MMDLabo(株)が運営するMMD研究所の調査(「2024年1月ポイント経済圏のサービス利用に関する調査」)があります。24年1月19日~同22日の集計データをまとめたもので、消費者に最も使われているのは、「楽天ポイント」「dポイント」「PayPayポイント」の順でした。

●現在活用しているポイントと、その中で最も活用しているポイント(n=25,000) ※上位10位抜粋

活用しているポイント(複数) 最も活用しているポイント(単数)
順位 ポイント名 比率 順位 ポイント名 比率
1位 楽天ポイント 59.3% 1位 楽天ポイント 34.1%
2位 Tポイント 48.3% 2位 dポイント 14.4%
3位 Pontaポイント 40.5% 3位 PayPayポイント 12.4%
4位 dポイント 38.9% 4位 Pontaポイント 8.3%
5位 PayPayポイント 38.1% 5位 Tポイント 7.0%
6位 WAON POINT 19.2% 6位 WAON POINT 4.4%
7位 LINEポイント 20.1% 7位 nanacoポイント 1.6%
8位 nanacoポイント 16.9% 8位 Vポイント 1.3%
9位 Vポイント 10.3% 9位 JALマイレージバンク 1.1%
10位 JRE POINT 9.2% 10位 ANAマイレージクラブ 0.8%

ポイントは原則「相続できない」

こうしたポイントは相続できるのかに、話を進めましょう。結論をいえば、亡くなった方が残したポイントは原則として相続することができません。

実は、この点では曖昧さもあり、規約では対象となるカードなどの所有者の死亡により失効する、と定めている事業者もあれば、死亡時の規定がないケースも多く存在するのです。ただ、後者の場合であっても、現状、下記の民法の規定から相続の対象にはならないと解されるのが一般的です。

(相続の一般的効力)
民法第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

故人の貯めていたポイントは、「被相続人の一身に専属したもの」(被相続人の固有のもの)とみなされるため、その権利を承継することはできない、というわけです。

通常、こうしたポイントの残高が、相続で問題になるほど高額に上ることは少ないと思われます。しかし、中には貯蓄感覚で、数十万円単位で蓄えているような人もいます。ただ、そうした場合でも、相続人が譲り受けるのは難しいと考えるべきでしょう。

ただし、故人の家族がポイントを引継ぎできるかどうかは、サービスを提供する側が定めた規約や考え方によります。残高が高額で、規約に死亡時のポイントの扱いが明示されていない場合には、念のため事業者に問い合わせてみる価値はあるでしょう。

マイルは「相続できる」ことが多い

普通の買い物に付与されるポイントに比べ、航空会社のマイル(マイレージ)は高額になりがちです。引き継げないとしたらもったいない話ですが、これらについては、例外的に「相続可」となるケースがあります。

マイルについても、相続できるかどうかは、航空会社の規約によりますが、国内大手の日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)は、マイルの相続を認めています。

例えば、「ANAマイレージクラブ」の規約には、次のようにあります。

21条 会員の死亡 会員が死亡した場合、法定相続人は、会員が積算していたマイルを、所定の手続きが完了した時点で有効な範囲で承継することができます。その際、当該法定相続人は弊社に対し、故人である会員のマイルの相続権を有することを証明する書類を、会員の死亡日から180日以内に提示する必要があります。相続の申し出が前記の期間内になされない場合は、当該会員の積算マイルはすべて取り消されます。

残されたものがマイルの場合には、相続権を得る手続きを忘れたりしないことが大事になります。上の規約にもあるように、手続きには期限があることにも注意しましょう。

一方、海外の航空会社などの場合、大手であってもマイルの相続を規約で不可としていることがあります。規約を調べ、不明な場合には、事業者に問い合わせてみましょう。

ポイント保有者が考えるべき対策

このように、通常のポイントは相続が難しく、それが可能なマイルについても、受け取る側には注意すべきことがあります。それも踏まえて、ポイントを持っている側の人が生前にできる対策にはどんなことがあるのか、考えてみます。

相続できないポイントは生前に使う

ポイントを長く貯めておくという行為には、相続財産にならないほかにも、例えば期間限定ポイントの使い忘れによる失効、といったリスクがあります。基本的に利息も付かないので、そのメリットは、限定的です(ポイントへの利息付与のサービスを提供しているケースもあります)。

インフレの世の中では、手元に置いておくだけの「お金」は、徐々に価値が下がっていきます。“ポイ活”は、取得したポイントを速やかに必要なものに変えて家計に役立てる、というスタンスで取り組むのが合理的ではないでしょうか。

家族での共有や移行のできるサービスを活用する

事業者によっては、ポイントを家族で共有したり、自分の残高を任意の人に移行したりできる仕組みを設けていることがあります。そうしたサービスに加入し、ポイントの相続はできなくても、それを他の家族が利用できるかたちにしておくのも有効な手立てといえるでしょう。

ただし、ポイント移行サービスの場合には、それに加入していても、生前に移さなかった分はやはり無効となる可能性大ですから、注意しましょう。

ポイントやマイルの「ありか」を伝えておく

いくら相続可能なマイルをたくさん貯めていても、家族がその存在を知らなければ、引き継ぐことはできません。普通の財産と違って見落とされがちですから、なおさらその「ありか」を明確にしておく必要があります。

事業者の連絡先も含めてリストアップして、家族に渡しておけば確実です。遺言書やエンディングノートへの記載も検討しましょう。

まとめ

通常のショッピングで付与されるポイントは、原則として相続財産にはなりません。一方、特定の航空会社のマイルなど、例外的に相続できるケースもあります。サービスによって対応は異なりますから、不明な場合には、事業者に直接問い合わせてみるのがいいでしょう。

中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。

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