2026年から医療保険制度はどう変わる?高額療養費・OTC薬・保険料改正のポイント

少子高齢化が進む日本では医療保険の増加が続く一方で負担が現役世代に集中し、世代間の公平性が失われていることが指摘されています。こうした問題を解決するため、2026年度から医療保険制度のさまざまな改正が実施される予定です。
本記事では2026年度以降に予定されている医療保険制度の改正について、4つの大きな変更点に沿って紹介します。
1. 2026年度医療保険制度改正の全体像、4つの主要改正ポイント
2026年度以降、大きく4つの点において医療制度の改正が予定されています。特に現役世代にとっては改正により経済的負担が軽くなるものもある一方で、年収や医療費の負担状況などの条件によっては負担が大きくなるものもあるため、自身の状況に合わせて最新の情報を確認しておくことが大切です。
ここでは、2026年3月時点の情報をもとに医療保険制度改正の全体像を解説します。
現役世代の負担軽減と世代間公平性の実現が2本柱
現役世代の負担を軽減することならびに世代間の公平性を実現することが2026年度の医療保険制度改正の大きな目的です。日本には国民皆保険制度があるため、医療機関で診療を受ける際の自己負担額は、現役世代で原則3割、75歳以上の後期高齢者では原則1割となっています。
しかし、主に少子高齢化の進行とともに増えていく医療費を補うため、健康保険料の負担が大きくなっていることが問題視されています。健康保険料は収入に応じて負担額が決定する仕組みのため現役世代の負担が大きい一方で、医療機関を利用する機会の多い高齢者ほど負担が少なくなりやすく、世代間の公平性が失われていることも問題の一つです。
現役世代の負担軽減ならびに世代間の公平性実現のため、2026年以降、医療保険制度はさまざまな改正の実施が予定されています。
施行時期は2026年4月・8月、2027年3月、2020年代後半と段階的
医療保険制度の4つの主な改正点ならびにそれぞれの施行時期は以下の通りです。
・75歳以上の年間の保険料上限を80万円から85万円へ5万円引き上げ(2026年4月実施)
・OTC類似薬77成分・1100品目に薬剤費の25%を追加負担(2027年3月実施)
・高額療養費の自己負担上限を最大38%引き上げ(2026年8月ならびに2027年8月の2段階で実施)
・75歳以上を対象に金融所得の保険料・窓口負担への反映(実施は2020年代後半を予定)
改正は時期をずらして順次行われる予定です。特に保険料・窓口負担に金融所得を加味する方法については、事前準備が必要なため具体的な実施時期はまだ検討中です。
石破政権から高市政権への転換で制度設計が大きく変更
石破内閣が退陣し、2025年10月の自民党総裁選により高市政権が誕生したことで医療保険制度改正の方針にも変更がありました。特に高市政権が当初、現役世代の負担軽減を重視する日本維新の会と連立を組んでいたことは制度設計の変更に大きな影響を与えたといえるでしょう。
2025年10月の所信表明演説では医療費負担を削減する方法としてOTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しに言及し、実際に2027年3月から実施が予定されています。
2. 金融所得の保険料・窓口負担への反映、2020年代後半に施行
金融所得の保険料・窓口負担への反映とは金融所得の多い人に対し、保険料負担の増額や医療費の自己負担割合を引き上げる方針のことです。2020年代後半の実施を目指して詳細が議論されています。ここでは2026年3月時点で提案されている金融所得を把握する方法などについて紹介します。
75歳以上の上場株式配当・譲渡益を自動把握、金融機関にオンライン提出義務化
健康保険料は原則として年間の所得に応じて負担額が決まるため、働いていない人やフルタイムで働いていない高齢者は保険料の負担が低くなる傾向にあります。しかし、高齢者の中には給与などによる収入が少なくても多額の金融所得があり、医療費を負担する経済力を持つ人が少なくありません。
しかし、2026年の時点では一人ひとりの金融所得を正確に把握するのが難しいことが問題として挙げられています。マイナンバーと紐づけされていない金融機関の口座が多いことや、証券会社の特定口座で発生した株式の譲渡益や配当金などは確定申告の義務がないことなどが理由です。
現在、法定調書を使って金融所得を把握する方法が検討されています。法定調書とは金融機関に対して税務署への提出が義務付けられている書類で、配当金や利子などの受取状況、特定口座での株式売却益や配当などの内容が記されています。
ただし、金融所得の把握に法定調書を活用するには以下のような準備が必要です。
・法定調書へ正しいマイナンバーの記載を徹底する
・法定調書のオンライン提出を義務化する
上記に加えて金融機関や税務署などでのシステム変更も必要となるため、制度の改正は2020年代後半が予定されています。
確定申告不要でも保険料・窓口負担に反映、応能負担の徹底
法定調書を活用する方法には、確定申告の有無にかかわらず一人ひとりの金融所得が正確に把握できるメリットがあります。特定口座を通じて行われた金融取引で得た利益は源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です。その結果、現行の仕組みでは給与や年金などの収入とは別に多くの金融所得があっても保険料や窓口負担に反映されないことがあるのです。
医療保険制度が改正されれば金融所得も含めた一人ひとりの負担能力に応じた保険料・窓口負担割合となり、公平性が高まります。
NISA口座は非課税のまま、資産運用への影響は限定的
NISAは一定の運用益が非課税となる制度です。法定調書を通じて金融所得を把握する制度はあくまでも保険料・窓口負担の公平性実現のために行われるものであり、NISA制度に影響を与えるものではありません。NISA口座で運用する資産から得た利益は非課税のままとなるため、資産運用への影響は限定的となる見込みです。
3. OTC類似薬の追加負担と高額療養費の自己負担上限引き上げ
OTC類似薬とは処方箋が必要な薬のうち、薬局などで販売されている市販薬(OTC薬)と成分や効能が似ている薬のことです。
健康保険が適用されないOTC薬の購入者と、医療機関を受診してOTC類似薬を処方されている患者の間の不公平感を減らすため、OTC類似薬については患者負担が引き上げられます。また、高額療養費の自己負担額についても上限額が引き上げが予定されています。
OTC類似薬77成分・1100品目に薬剤費の25%を追加負担、2027年3月施行
2027年3月より一部のOTC類似薬について、窓口負担額に薬剤費の25%を上乗せする制度が始まります。対象は指定の77成分を含む1,100品目の薬剤です。
対象となる成分には、抗アレルギー薬に含まれるフェキソフェナジン塩酸塩、解熱鎮痛剤に使われるイブプロフェンなどがあります。これらはスイッチOTCのように同様の効果・効能を持つ薬が普及しており、必ずしも医療機関を受診しなくても薬局やドラッグストアを通じたセルフメディケーションが可能な薬です。
子ども・がん患者・難病患者・低所得者は免除対象、負担は実質47.5%に
OTC類似薬の追加負担は患者にとって経済負担の増加を意味します。そのため、制度変更により特に負担が大きくなる人や支払が困難な人に対しては追加負担を免除し、従来の負担額で薬を購入できる仕組みがあります。
追加負担免除の対象となる人は以下の通りです。
・子ども
・がん患者
・低所得者
・薬剤の長期服用が必要と医師が認めた人
上記以外の人は医療費の窓口負担が3割の場合、実質的に薬剤費の47.5%を支払う必要があります。
高額療養費の自己負担上限が最大38%引き上げ、2段階で実施
高額療養費制度とは短期間に高額の医療費を払った人に対し、国がかかった医療費の一部を還付・免除する制度です。現行の高額療養費制度は年齢と所得によって月あたりの医療費の上限額が決定される仕組みです。
2026年8月、2027年8月の2回に分けて、高額療養費の自己負担額の引き上げが実施されます。自己負担上限額の増加率は年齢や所得によって異なり、2027年8月以降は最大で現行制度より38%引き上げられる人もいる見込みです。
一方で、医療費の年間上限の導入も検討されているため、人によって年あたりの医療費負担が軽減される可能性もあります。
4. 協会けんぽ保険料率の変更と家計への影響試算
中小企業に勤めている人やその家族が加入している協会けんぽは2026年度の保険料率改定を発表しました。ここでは保険料率変更の概要や家計への影響を紹介します。
医療保険料率は9.9%に引き下げ、介護保険料率は1.62%に引き上げ
協会けんぽでは医療保険料率が前年度の10.0%から9.9%に引き下げられる一方、介護保険料率が1.59%から1.62%に引き上げとなることを発表しました。医療保険料率改定の背景にあるのは、被保険者の増加ならびに賃上げの浸透による保険料収入の増加です。
介護保険料率については、高齢化の進行により介護サービス利用者が増えることから引き上げとなりました。この傾向は今後も続くと考えられます。
子ども・子育て支援金率0.23%が新設、2026年4月から徴収開始
少子化対策として子どもや子育て世代の支援を拡充するため、子ども・子育て支援金制度が始まります。2026年4月以降、年齢や子どもの有無に関係なくすべての人から医療保険料率に0.23%を上乗せした金額を子ども・子育て支援金として徴収する制度です。
なお、健康保険は従業員と企業が折半する仕組みのため、実質的な子ども・子育て支援金の額は標準月額報酬の0.115%です。集められた支援金は児童手当の拡充やこども誰でも通園制度などに充てられます。
こども家庭庁では、2026年度の被保険者一人当たりの月平均負担額を以下のように試算しています。
|
加入制度 |
月額負担額(目安) |
|---|---|
|
健康保険組合 |
約550円 |
|
国民健康保険 |
約300円 |
|
後期高齢者医療制度 |
約200円 |
年収別の保険料負担増減シミュレーション、家計への影響を試算
こども家庭庁によれば、子ども・子育て支援金制度の開始による協会けんぽの被保険者一人あたりの年収別保険料負担増加額は以下の通りです。
|
年収 |
年間負担増加額 |
|---|---|
|
200万円 |
192円 |
|
400万円 |
384円 |
|
600万円 |
575円 |
|
800万円 |
767円 |
|
1,000万円 |
959円 |
年収400万円の人は年間約4,600円、年収600万円の人は同約6,900円の負担増加となります。
まとめ
2026年以降、複数回にわたって医療保険制度の改正が実施されます。改正は主に現役世代の負担軽減と世代間の公平性の実現を目的としています。しかし、少子高齢化が進む日本では全体の医療費が増え続けていることから、現役世代・高齢者ともに経済的負担の増加は避けられないでしょう。
医療保険制度の改正については、2020年代後半に予定されている金融所得の保険料・窓口負担への反映のように詳細が決まっていないものも含まれています。今後も最新の情報をチェックすることが必要です。
中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。
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