賃上げ促進税制【2026年最新】大企業向けは廃止、中小企業向けは継続。適用要件・控除率・申請手続きを解説


賃上げ促進税制は、従業員の給与を引き上げた企業が、増加した給与等支給額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から控除できる制度です。物価上昇と人手不足が続くなか、人材確保のために賃上げを検討する中小企業にとって、負担を和らげてくれる心強い制度といえます。 一方、2026年度(令和8年度)税制改正では、大企業向け(全企業向け)の措置が2026年3月31日をもって廃止され、教育訓練費の上乗せ措置も終了するなど、制度の縮小に向けた大きな変更がありました。ただし、中小企業向けの措置は令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度まで継続され、最大35%の税額控除や5年間の繰越控除も引き続き利用できます。 本記事では、賃上げ促進税制の基本から、2026年度改正で「何が廃止され、何が残ったのか」、適用要件・控除率、税額控除額の計算方法、確定申告での手続きまでをわかりやすく解説します。
1. 中小企業向け「賃上げ促進税制」とは?制度の基本
賃上げ促進税制では、企業規模に応じて制度が適用される要件や控除率が異なります。また、毎年の税制改正によって要件や控除率が見直されているため、ここではあらためて賃上げ促進税制の基本と、これまでの改正の流れを整理します。
賃上げ促進税制の仕組みと中小企業向けの特徴
賃上げ促進税制とは、人材確保のために従業員の待遇を改善した企業が、増加した人件費の一部を法人税から控除できる仕組みです。デフレ脱却を目標に2013年から開始された所得拡大促進税制と、2021年にスタートした人材確保等促進税制を統合する形で、2022年から始まりました。 賃上げ促進税制は、条件を満たしていれば個人事業主や小規模事業者も対象です。特に資本金1億円以下の企業や従業員1,000人以下の個人事業主は「中小企業」として取り扱われ、控除率などの優遇があります。青色申告書を提出していることが前提となるため、白色申告の事業者は適用を受けられない点には注意が必要です。 なお、税額控除である点もポイントです。経費算入によって課税所得を減らす「損金算入」とは異なり、算出された法人税額(個人事業主は所得税額)から直接差し引けるため、節税効果を実感しやすい制度とされています。
直近の税制改正で何が変わった?2024~2026年度改正のポイントと今後の見通し
賃上げ促進税制は、2024年度税制改正で内容が大きく強化されました。具体的には適用期間が3年延長され、特定の条件を満たしたときの控除率の上限が引き上げられています。また、中小企業に限り、控除額が余った場合に5年間の繰り越しが可能になりました。2024年度改正の主な変更点は以下の通りです。 ・適用期間が2024年4月1日~2027年3月31日までに開始する事業年度へ延長(個人事業主は2025年~2027年の各年分が対象) ・給与等支給額の増加率(前年度比)に応じて、控除率の上限を最大40%から45%へ引き上げ(中小企業の場合) ・黒字額が小さい場合など、余った控除額は5年間繰り越しできる(中小企業のみ) ・「中堅企業(常時使用する従業員数2,000人以下の法人)」という新たな区分が新設され、大企業・中堅企業・中小企業の3区分で制度が設計 そして令和6年度改正で設けられた大企業向け措置は当初の適用期限(令和7年度末:2026年3月31日)を迎えて終了し、令和8年度改正でも延長されませんでした。あわせて、教育訓練費上乗せ措置も全区分で廃止されています。2026年度改正の詳細は、次の章でくわしく解説します。 今後の見通しとしては、中小企業向け措置も令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度が適用期限とされており、その後の延長の有無は今後の税制改正の議論次第です。適用できる事業年度のうちに確実に活用しておくことが重要といえるでしょう。
所得拡大促進税制との違いと全企業向け・中堅企業向けとの比較
所得拡大促進税制と賃上げ促進税制は、給与等の増加額に対して法人税から控除が受けられる点が共通しています。所得拡大促進税制は国民の所得を増やすことが目的でしたが、賃上げ促進税制は従業員の生活水準維持と優秀な人材の定着を図るために給与を引き上げる企業を支援することが目的です。 2024年度税制改正で「中堅企業」という区分が新設され、大企業・中堅企業・中小企業の3区分で制度が設計されていましたが、2026年度税制改正により、大企業向け措置は2026年3月31日をもって廃止されました。2026年4月1日以降に開始する事業年度は、中堅企業と中小企業のみが対象となります。中堅企業の控除率の上限は最大30%、中小企業は最大35%が設定されています。
賃上げ促進税制は節税目的にとどまらず、人材確保や定着を支援する制度です。自社の採用戦略や人件費の見通しとあわせて活用を検討することが重要です。

2. 2026年度(令和8年度)改正で何が変わった?大企業向け廃止・教育訓練費上乗せ廃止
2026年度(令和8年度)税制改正は、賃上げ促進税制にとって大きな転換点となりました。ポイントは「大企業向け(全企業向け)は廃止、中小企業向けは継続」という点です。ここでは、自社がどの区分に該当し、いつまで制度を使えるのかを判断できるよう、改正内容を整理します。
【廃止】全企業向け賃上げ促進税制は令和7年度末(2026年3月31日)で終了
これまで賃上げ促進税制には、企業規模を問わず利用できる「全企業向け(大企業向け)」の措置がありましたが、令和7年度末、すなわち2026年3月31日までに開始する事業年度をもって廃止されました。2026年4月1日以降に開始する事業年度からは、資本金1億円超かつ従業員2,000人超の企業などは、賃上げを行っても賃上げ促進税制による税額控除を受けられません。 あわせて、教育訓練費の増加に応じた上乗せ措置も令和7年度末で廃止されました。従来は、教育訓練費を一定以上増加させた場合に控除率が上乗せされる仕組み(中小企業は10%、大企業・中堅企業は5%)がありましたが、2026年4月1日以降に開始する事業年度では、企業規模を問わずこの上乗せは適用されません。この結果、中小企業の最大控除率は従来の45%から35%に、中堅企業は35%から30%に引き下げられています。 なお、「廃止」の基準は事業年度の開始日である点に注意が必要です。たとえば3月決算法人が2025年4月1日に開始した事業年度(2026年3月期)については、旧制度(教育訓練費上乗せを含む)が適用されます。一方、2026年4月1日に開始する事業年度(2027年3月期)からは改正後の制度が適用されるため、自社の決算期によって適用関係が変わります。
【継続】中小企業向けは令和9年3月31日まで、中堅企業向けは要件変更のうえ継続
一方で、中小企業向けの賃上げ促進税制は本体が維持され、引き続き利用できます。適用期間は、法人が令和6年(2024年)4月1日から令和9年(2027年)3月31日までの間に開始する各事業年度、個人事業主は令和7年(2025年)から令和9年(2027年)までの各年分とされています。控除率も、基本15%・給与増加率2.5%以上で30%・女性活躍支援の認定取得で最大35%という水準が維持されており、5年間の繰越控除も継続しています。 中堅企業向けの措置も継続されますが、以下のように要件が見直されたうえで、令和9年3月31日までに開始する事業年度をもって廃止される予定とされています。 1. 基本控除率10%が適用される要件を、給与等支給額の増加率(前年度比)4%以上に引き上げ(改正前は3%以上) 2. 基本控除率の上乗せを、増加率5%以上で5%加算、6%以上で15%加算に変更(改正前は4%以上で15%加算) 3. 教育訓練費に係る上乗せ措置(5%)を廃止(最大控除率が35%→30%に低下) なお、中堅企業の要件を満たす中小企業は、中小企業向け・中堅企業向けのいずれか有利な方を選択して活用することも可能とされています。
自社はどれに該当する?企業規模別の早見表
「結局、自社は2026年4月以降も賃上げ促進税制を使えるのか?」を判断できるよう、企業規模別の取り扱いを早見表にまとめました。
| 企業区分 | 主な対象 | 2026年4月1日以降に開始する事業年度 | 最大控除率 |
|---|---|---|---|
| 中小企業向け | 資本金または出資金1億円以下の法人、従業員1,000人以下の個人事業主など(青色申告が前提) | 継続(令和9年3月31日までに開始する事業年度・個人事業主は令和9年分まで) | 35%(基本15%+賃上げ上乗せ15%+認定上乗せ5%) |
| 中堅企業向け | 常時使用する従業員数2,000人以下の法人・個人事業主(中小企業も選択可) | 継続(要件を厳格化のうえ、令和9年3月31日までで終了予定) | 30%(基本10%+賃上げ上乗せ最大15%+認定上乗せ5%) |
| 大企業(全企業向け) | 上記のいずれにも該当しない企業 | 廃止(2026年3月31日までに開始する事業年度をもって終了) | -(適用終了) |
本記事の読者である年商2億円以下の中小企業や個人事業主の多くは、「中小企業向け」に該当すると考えられます。2026年度改正後も、中小企業にとっての賃上げ促進税制は引き続き「使える制度」です。ただし、教育訓練費の上乗せがなくなったことで最大控除率は下がっているため、控除額の見込みは改正後の控除率で計算し直しておくことをおすすめします。
3. 適用要件と控除率|最大35%控除を受けるための条件(2026年度改正後)
2026年度税制改正により、2026年4月1日以降に開始する事業年度から教育訓練費に係る上乗せ措置が廃止されました。これに伴い、賃上げ促進税制で最大控除率35%を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。 ・中小企業であること ・基本要件(給与等支給額1.5%以上増加)を満たすこと ・上乗せ要件①(給与等支給額2.5%以上増加)を満たすこと ・上乗せ要件②(認定マークの取得)を満たすこと なお、賃上げ促進税制における中小企業の定義は以下の通りです。 ・資本金または出資金1億円以下の法人、または従業員数が1,000人以下の個人事業主など ・青色申告書を提出していること
【基本要件】給与等支給額1.5%以上増加で15%控除
賃上げ促進税制の対象となるには、「雇用者給与等支給額が前年度比で1.5%以上増加」していることが必要です。この条件を満たしている場合、増加額の15%を法人税から控除できます。 雇用者給与等支給額には、国内で雇用している社員やアルバイト、パート従業員に対して支払われた給与や賞与、残業代、住宅手当などの各種手当が含まれます。所得税法上、給与所得に該当しない退職金は含まれません。また、前払い給与も対象外です。 1.5%という水準は、昨今の賃上げ相場からするとハードルは決して高くないとされています。ベースアップだけでなく、賞与の増額や手当の新設によって満たせるケースもあるため、決算前に自社の給与支給額の推移を確認してみる価値はあるでしょう。
【上乗せ要件①】給与増加率2.5%以上で30%控除
雇用者給与等支給額の増加率が前年度比2.5%以上となっている場合は控除率が15%上乗せされ、合計30%に拡大します。 なお、給与支給額の増加だけで30%もの控除を受けられるのは中小企業のみです。2026年4月1日以降に開始する事業年度では、中堅企業は以下の控除率段階で適用されます。 前年度比+4%以上:10%控除 前年度比+5%以上:15%控除(基本控除率10%+上乗せ5%) 前年度比+6%以上:25%控除(基本控除率10%+上乗せ15%) 中堅企業は「4%以上の賃上げ」をしなければ基本控除すら受けられなくなった一方、中小企業は従来通り1.5%以上でよいため、改正後は中小企業向け措置の相対的な有利さが際立つ形になっています。
【2026年3月廃止】教育訓練費の上乗せ要件(令和7年度末で終了)
教育訓練費の増加による上乗せ措置は、2026年3月31日(令和7年度末)をもって廃止されました。2026年4月1日以降に開始する事業年度では、教育訓練費をどれだけ増やしても控除率の上乗せは受けられません。 廃止前の制度では、中小企業の場合、教育訓練費を前年度比5%以上増加させ、かつ教育訓練費が雇用者給与等支給額の0.05%以上であるなどの要件を満たすと、控除率が10%上乗せされていました。この上乗せがあったため、中小企業の最大控除率は45%とされていましたが、廃止に伴い改正後の最大控除率は35%となっています。 注意したいのは、経過的に旧制度が適用されるケースです。2026年3月31日までに開始した事業年度(たとえば3月決算法人の2026年3月期、12月決算法人の2025年12月期など)については、旧制度の教育訓練費上乗せを適用できます。該当する事業年度の申告がこれからという企業は、教育訓練費の集計と証明書類の準備を忘れないようにしましょう。
【上乗せ要件②】女性活躍支援の認定取得で最大35%
女性や子育て中の従業員の活躍を推進する企業として認定されている場合、5%の控除率の上乗せを受けられます。対象となるには、以下のいずれかの認定を取得している必要があります。 ・えるぼし2段階目以上 ・プラチナえるぼし ・くるみん ・プラチナくるみん 給与等支給額2.5%以上増加(合計30%)、およびえるぼし・くるみん等の認定取得(+5%)の両方を達成している中小企業は、最大35%の税額控除が受けられます。教育訓練費の上乗せが廃止された今、中小企業が30%超の控除率を目指す手段はこの認定取得のみとなったため、採用力強化の観点も含めて、早めに取得を検討する価値が高まっているといえます。
4. 税額控除額の計算方法とシミュレーション
自社が対象になるか、実際にいくら控除されるのかがわかりにくいと感じる経営者の方も多いでしょう。ここでは、雇用者給与等支給額や税額控除額の計算方法を、シミュレーションを交えながら解説します。
雇用者給与等支給額の計算方法と対象となる給与の範囲
雇用者給与等支給額に含まれるものは、国内で雇用されている従業員に支払った以下のような費用です。なお、従業員とは正社員だけでなくパート、アルバイトなども対象ですが、役員や役員の家族など特別な関係にある従業員は含みません。 ・給与 ・賞与 ・残業代 ・休日出勤手当 ・家族手当など また、雇用安定助成金額も対象です。その他の助成金、補助金は雇用者給与等支給額に含まれないため注意しましょう。 賃上げ促進税制の適用要件である増加率1.5%以上、または上乗せ要件の増加率2.5%以上を満たしているかを確認するには、以下のように計算します。 (当事業年度の雇用者給与等支給額 - 前事業年度の比較雇用者給与等支給額)÷ 前事業年度の比較雇用者給与等支給額
具体例で学ぶ税額控除額の計算シミュレーション
賃上げ促進税制における税額控除額は、控除対象雇用者給与等支給増加額(当事業年度と前事業年度の雇用者給与等支給額の差額)に控除率をかけて計算できます。以下、2026年4月1日以降に開始する事業年度を前提とした具体例で見てみます。 【前提】 当事業年度の雇用者給与等支給額:3,600万円 前事業年度の雇用者給与等支給額:3,500万円 給与等支給額の増加率:約2.8% くるみん・えるぼし認定:取得済 控除率:35%(基本要件15%+上乗せ要件①15%+上乗せ要件②5%) 法人税額:300万円 税額控除額:(3,600万円 - 3,500万円)× 35% = 35万円 法人税額の上限:300万円 × 20% = 60万円 税額控除額には、法人税額または所得税額の20%という上限があります。このケースでは税額控除額(35万円)が上限(60万円)の範囲内に収まっているため、35万円をそのまま法人税から控除できます。
5年間繰越控除の仕組みと赤字企業でも活用できる理由
2024年度税制改正により、中小企業は当該事業年度で控除しきれなかった税額控除額を次年度以降、5年間繰り越しできる仕組みが導入されました。この仕組みは2026年度税制改正後も継続しています。これにより、赤字のため法人税を払っていない企業や、賃上げ幅が大きく控除額が法人税の20%上限を超えてしまった企業も、賃上げ促進税制の恩恵を受けられるようになりました。 ただし、繰越控除の適用を受けるには、繰越控除を受けようとする事業年度において、雇用者給与等支給額が前事業年度の雇用者給与等支給額を超えている必要があります。「一度賃上げすれば終わり」ではなく、給与水準を維持・向上させ続けることが、繰越控除を活かす前提条件になる点は押さえておきましょう。
控除率は最大水準だけを見ると有利に見えますが、実際には給与等支給額の増加額に対して適用される点に加え、税額控除には法人税額(または所得税額)の20%という上限があります。制度の適用効果を正確に把握するためにも、事前にシミュレーションを行うことが重要です。

5. 申請方法と必要書類|確定申告での手続きの流れ
賃上げ促進税制を利用しようとする企業や個人事業主は、確定申告での手続きが必要です。ここでは申請方法と必要書類について簡単に紹介します。
事前申請は不要|確定申告時に添付する必要書類一覧
賃上げ促進税制は、確定申告時に制度の対象であることを証明する書類を添付するだけで適用されるため、事前の申請は不要です。確定申告時に添付が必要な書類は以下の通りです。 ・適用額明細書(法人の場合のみ) ・控除額計算明細書 ・繰越控除限度超過額や繰越控除を受ける金額の明細書(繰越控除を受ける場合のみ) 裏を返せば、申告時に添付を忘れると原則として適用を受けられないため、決算・申告のスケジュールに組み込んでおくことが大切です。顧問税理士がいる場合は、給与支給額が増加している旨を早めに共有しておくとスムーズでしょう。
適用額明細書と控除額計算明細書の作成方法
適用額明細書は法人だけが必要な書類で、適用される租税特別措置法の条項や適用額などを記入して作成します。控除額計算明細書は、適用事業年度の給与等支給額、税額控除額など賃上げ促進税制の適用に必要な数値を記入する書類です。様式は国税庁のウェブサイトにて「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」という名称で公開されています。いずれも会計ソフトや税務申告ソフトで自動作成できる場合が多く、日頃から給与データを正確に記帳しておけば、作成の負担はそれほど大きくないとされています。
繰越控除の手続き上の注意点
2026年4月1日以降に開始する事業年度から教育訓練費に係る上乗せ措置は廃止されたため、改正後の事業年度については教育訓練費に関する記録保管の義務はなくなります。なお、2026年3月31日までに開始した事業年度について教育訓練費増加による10%の上乗せを適用する場合は、教育訓練等の実施時期・内容・期間・受講者・支払証明を記載した書類を作成し、保管しておく必要があります(確定申告書への添付は不要)。 また、中小企業が税額控除額の繰り越しを希望する場合は、未控除額が発生した事業年度以後の各事業年度の確定申告書に繰越税額控除限度超過額の明細書を添付し続ける必要があります。繰越控除は「未控除額が発生した年度」から「実際に控除する年度」まで、毎年継続して明細書を添付し続ける必要がある点が見落としがちなポイントです。
繰越控除は赤字企業でも有効ですが、適用には明細書の添付や給与増加要件の判定が必要です。継続的な税務管理が重要です。

まとめ
物価上昇や人手不足に対応するため、従業員の賃上げをする企業を後押しするために導入されたのが賃上げ促進税制です。2024年度税制改正で制度が強化され、中小企業にとっては控除率上限の引き上げや繰越控除の導入などのメリットがある制度となりました。一方、2026年度(令和8年度)税制改正では、大企業向け(全企業向け)措置の廃止や、教育訓練費上乗せ措置の廃止など、制度の縮小に舵が切られています。2026年4月1日以降に開始する事業年度からは、中小企業の最大控除率も従来の45%から35%に引き下げられました。 それでも、中小企業向けの措置は令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度まで継続しており、給与等支給額1.5%以上の増加で15%、2.5%以上で30%、女性活躍支援の認定取得で最大35%の税額控除を受けられます。事前申請は不要で、確定申告時の書類添付だけで適用されるため、賃上げを行った中小企業は積極的に活用したい制度です。 賃上げ促進税制は控除要件が複雑で、毎年の税制改正によって内容が変わることもあります。特に現在は、2026年3月31日までに開始した事業年度(旧制度)と2026年4月1日以降に開始する事業年度(改正後)が実務上並行する時期にあたり、自社の事業年度がどちらに該当するかの判断も重要です。自社に適用できる要件を正確に把握し、控除額を最大限に活かすためにも、最新の改正に精通した税理士への相談をおすすめします。
記事監修者 濱本税理士からのワンポイントアドバイス
賃上げ促進税制は、給与増加額に応じた税額控除が受けられる有効な制度ですが、適用にあたっては事業年度ごとの制度差や企業区分の判定、控除上限(法人税額等の20%)といったポイントをしっかり押さえておきましょう。 特に、雇用者給与等支給額の算定における助成金の取扱いや、繰越控除の要件は誤りやすい部分です。 また、制度は改正の影響を受けやすく、現行制度と改正後制度が並行する時期には適用関係の整理も重要になります。要件の確認だけでなく、事前のシミュレーションや申告対応まで含めて、慎重に進めていきましょう。
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