アジア大会の報奨金、五輪と違って税金がかかる?ぷよぷよ11歳金メダリスト「報奨金なしの見通し」から税理士が解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

9月26日、愛知・名古屋アジア大会のeスポーツ「ぷよぷよ」で、小学5年生の栗原悠輝選手(11歳)が金メダルを獲得しました。アジア大会史上最年少のメダリストです。

一方、競技団体の日本eスポーツ協会(JESU)は報奨金を出さない見通しと報じられ、SNSでは「ちゃんとあげて」との声が相次いでいます。五輪ではJOCが金メダリストに一律500万円を支給しますが、アジア大会に共通の制度はありません。金メダル100万円の日本陸上競技連盟のように、各競技団体が独自に決めています。

では、アジア大会の報奨金にも五輪と同じく税金はかからないのでしょうか。仮に11歳に報奨金が出た場合はどう扱われるのか。税理士に聞きました。

五輪の報奨金が非課税なのは、法律に「五輪」と明記されているから

オリンピックのメダリストがJOCから受け取る報奨金(金500万円・銀200万円・銅100万円)には、所得税も住民税もかかりません。所得税法第9条第1項第14号が、オリンピック・パラリンピックで優秀な成績を収めた人を表彰するためにJOCなどが交付する金品を非課税と定めているためです。JOCに加盟する競技団体の報奨金も、国の指定を受けた団体からであれば、金メダル500万円までが非課税になります。

きっかけは1992年のバルセロナ五輪です。当時14歳の中学生だった岩崎恭子さんの金メダル報奨金に課税されたことが大きく注目され、1994年の税制改正で非課税化されました。裏を返せば、この規定の対象は五輪とパラリンピックに限られます。アジア大会の報奨金には非課税の規定がなく、課税対象です。どの種類の所得として課税されるかは、誰から、どのような根拠で支給されるかによって変わります。五輪でも、所属企業やスポンサーから出る報奨金は課税対象です。「メダルの報奨金はすべて非課税」というのは誤解です。

アジア大会の報奨金は課税対象、陸連の100万円なら手取りは約92万〜96万円

競技団体が成績を表彰するために一時的に支給する報奨金で、役務の対価に当たらないものは、一時所得(所得税法第34条)となります。陸連の100万円がこれに該当し、ほかに一時所得がないとすると、(100万円-50万円)×1/2=25万円がほかの所得と合算されます。なお、50万円の特別控除は報奨金ごとではなく、その年の一時所得全体で最高50万円です。

この25万円にかかる税額は、本人のほかの所得と合算した所得水準で決まります。25万円の部分に所得税率20%が適用される人(課税所得330万〜695万円)の場合、所得税と復興特別所得税が25万円×20.42%=51,050円、住民税が25万円×約10%=25,000円で、合計76,050円です。所得控除や税額控除を無視すると、手取りは約92万円になります。所得税率5%が適用される人なら、税負担は約3万8,000円で、手取りは約96万円です。

会社員などの給与所得者は、給与以外の所得が年20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。

協会からの100万円が一時所得なら、11歳の税負担はゼロ

栗原選手は2026年4月にJESU公認のプロライセンスを取得したプロ選手です。協会はそのライセンスの発行元でもあるため、協会からの報奨金がどの所得に当たるかは、支給の根拠や選手との関係を踏まえて判断する必要があります。

仮に一時所得に該当し、ほかに一時所得がなければ、所得に算入される額は大人と同じ25万円です。ほかに所得がなければ、所得税の基礎控除(令和8年分は合計所得489万円以下で104万円)の範囲に収まり、所得税はかかりません。住民税も、未成年者は合計所得135万円以下なら非課税です(地方税法第24条の5、及び第295条)。

所属先以外の企業や自治体から成績を祝って出る報奨金も、一時所得となることが一般的です。

チームの契約報酬や親族からのお祝い金は、扱いが変わる

同じお金でも、「誰から」「どういう名目で」出るかで税の区分は変わります。所属する東京ヴェルディから選手契約に基づくボーナスとして支払われる場合、契約関係によって給与所得、事業所得、雑所得などになる可能性があります。いずれも、一時所得の50万円特別控除と2分の1課税は使えません。

事業所得や雑所得であれば必要経費を差し引けます。ただ、仮に必要経費のない雑所得として200万円を受け取ると、所得は200万円のままです。基礎控除104万円を引いた96万円に約4万9,000円の所得税がかかり、住民税の非課税枠も超えます。同じ200万円でも一時所得なら、所得に算入される額は75万円で、所得税はかかりません。

一方、親や祖父母、ファン有志など個人から受け取るお祝い金は、所得税ではなく贈与税の対象です。贈与税には年110万円の基礎控除があり、100万円なら非課税です。ただし110万円は贈る人ごとではなく、受け取る本人の1年間の合計で判定します。自由に使えるお祝い金として祖父母から300万円を受け取れば、(300万円-110万円)×10%=19万円の贈与税がかかります。18歳未満は優遇税率(特例税率)を使えないため、一般税率で計算します。

まとめ

五輪の報奨金が非課税なのは法律で特別に定められているためで、アジア大会の報奨金は課税対象です。陸連の100万円を一時所得として試算すると、大人は数万円の税負担と確定申告が必要です。一方、ほかに所得のない11歳なら、協会からの100万円が一時所得に当たる限り税金はかかりません。どの所得になるかは誰から、どのような根拠で受け取るかで変わるため、高額になる場合は支払う側・受け取る側とも、事前に税理士へ相談しておくと安心です。

中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。

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