貯蓄「平均2,059万円」に届かない世帯が3分の2——中央値1,264万円との795万円差はどこから生まれるのか

[取材/文責]マネーイズム編集部

「日本の世帯の貯蓄は平均2,059万円」——総務省統計局の家計調査(貯蓄・負債編)が公表したこの数字を見て、「そんなに持っていない」と感じた方は多いのではないでしょうか。実はその感覚は正しく、同じ調査で中央値は1,264万円、平均値との差は795万円あります。さらに平均値を下回る世帯は全体の3分の2にのぼります。本記事では、なぜこれほどの差が生まれるのか、数字の読み方を整理したうえで、経営者・個人事業主がこの統計をどう受け止めればよいかを解説します。

貯蓄の平均は2,059万円で過去最多、中央値は1,264万円

総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果」によると、二人以上の世帯の1世帯当たり貯蓄現在高は次のとおりです。

・平均値:2,059万円(前年比+75万円・+3.8%で7年連続の増加。比較可能な2002年以降で最多)

・貯蓄保有世帯の中央値:1,264万円(前年1,189万円)

・年間収入:681万円(前年比+3.8%)、貯蓄年収比302.3%

ここでいう「貯蓄」は預貯金だけでなく、生命保険や有価証券なども含む金融資産の合計です。中央値とは、世帯を貯蓄の少ない順に並べたときにちょうど真ん中に位置する世帯の金額を指します。平均値が「全体を足して世帯数で割った値」なのに対し、中央値は「ふつうの世帯」の実感に近い数字とされます。

795万円の差はどこから生まれるのか——平均を押し上げる上位層

差の正体は、貯蓄額の分布が大きく偏っていることにあります。同調査の貯蓄現在高階級別の世帯分布を見ると、平均値(2,059万円)を下回る世帯は66.1%と約3分の2を占めています(前年67.0%)。

一方で分布の両端も厚く、貯蓄100万円未満の世帯が10.1%あるのに対し、4,000万円以上の世帯も15.2%を占めます。平均値は極端に大きい数字に引っ張られる性質があるため、この一部の高額層が全体の平均を押し上げているわけです。

貯蓄現在高を5等分した階級別に見ると、この偏りはさらに明確です。

・第Ⅰ階級(最も少ない層):102万円

・第Ⅱ階級:534万円

・第Ⅲ階級:1,193万円

・第Ⅳ階級:2,353万円

・第Ⅴ階級(最も多い層):6,113万円

最上位層の6,113万円が平均を押し上げる構図で、第Ⅲ階級(真ん中の層)の1,193万円とは5倍以上の開きがあります。「平均2,059万円」は、多くの世帯にとって現実の目標値というより、統計上の代表値と捉えるのが妥当です。

中央値1,264万円も「やや高め」——貯蓄ゼロ世帯を除いた数字

もう一点、押さえておきたい注意点があります。公表されている中央値1,264万円は「貯蓄保有世帯の中央値」、つまり貯蓄が0円の世帯を除いて計算した数字です。

統計局は参考値として、貯蓄0円の世帯を含めた中央値も示しており、そちらは1,167万円となります。「真ん中の世帯」の姿を知りたい場合は、こちらの方がより実態に近いといえます。平均値2,059万円との差は、892万円に広がります。

また、同じ調査でも世帯の区分によって数字は変わります。会社員などの勤労者世帯(二人以上の世帯の56.2%)に限ると、平均値は1,717万円、中央値は1,015万円で、いずれも全体より低くなります。全体の平均が高く出ているのは、貯蓄の多い高齢層や無職世帯が含まれているためです。実際、世帯主が65歳以上の世帯では貯蓄2,500万円以上が36.3%を占めています。

年代で景色が変わる——50歳未満は「負債超過」

年齢階級別に貯蓄と負債の両方を見ると、印象はさらに変わります。二人以上の世帯の貯蓄現在高から負債現在高を差し引いた「純貯蓄額」は次のとおりです。

・40歳未満:貯蓄994万円-負債1,882万円=マイナス888万円

・40〜49歳:貯蓄1,381万円-負債1,483万円=マイナス102万円

・50〜59歳:貯蓄1,756万円-負債743万円=プラス1,013万円

・60〜69歳:貯蓄2,843万円-負債234万円=プラス2,609万円

・70歳以上:貯蓄2,471万円-負債81万円=プラス2,390万円

50歳未満の世代は負債が貯蓄を上回る「負債超過」です。ただしこれは家計が苦しいことを意味するとは限りません。負債の91.9%は住宅・土地のための負債、つまり住宅ローンであり、住宅という資産の裏返しでもあるからです。負債保有世帯の割合は40〜49歳が67.0%と最も高く、年齢とともに下がっていきます。

つまり同じ「平均2,059万円」でも、40代の世帯と60代の世帯ではまったく意味が違います。比べるなら全体の平均ではなく、自分と同じ年代・同じライフステージの数字を見るほうが有益です。

経営者・個人事業主がこの数字を読むときの3つの注意点

中小企業の経営者や個人事業主にとって、この統計はそのまま自分に当てはまるものではありません。読み方のポイントを3つ挙げます。

・1. そもそも調査対象に占める割合が小さい:家計調査の二人以上の世帯を1万として世帯数の分布を見ると、勤労者世帯5,620、無職世帯3,450に対し、個人営業などの世帯は930。全体の1割弱にとどまります。平均値・中央値ともに、会社員世帯と高齢無職世帯の影響を強く受けた数字です。

・2. 法人の資産は含まれない:家計調査が捉えるのはあくまで世帯の金融資産です。会社に内部留保があっても個人の貯蓄には計上されません。逆に、事業への再投資を優先して個人の蓄えが薄くなっているケースも珍しくありません。経営者は「法人+個人」を合わせて資産の全体像を把握する必要があります。

・3. 退職金と年金の前提が違う:会社員には退職金や厚生年金がありますが、個人事業主にその仕組みはなく、法人経営者も役員退職金は自ら準備するものです。統計の平均値と比べて一喜一憂するより、自分の引退時期から逆算して必要額を考えるほうが実践的です。

備えの選択肢としては、経営者・個人事業主向けの積立制度である小規模企業共済(中小機構)があります。掛金は月1,000円から7万円まで500円単位で設定でき、全額が所得控除の対象となり、共済金は一括受取りなら退職所得、分割受取りなら公的年金等の雑所得として扱われます。ただし資金が長期間拘束される点や、加入期間が短いうちに任意解約すると受取額が掛金の合計を下回る場合がある点には注意が必要です。iDeCoやNISAとあわせ、事業の資金繰りに無理のない範囲で、制度の特性を理解したうえで選ぶことが大切です。

なお、iDeCoは2027年に掛金上限が引き上げられる予定です。詳しくはこちらの記事で解説しています。

iDeCo(個人型確定拠出年金)2027年改正|掛金上限が最大2.7倍に!経営者・個人事業主が押さえるポイント

まとめ

ポイントを整理します。

・二人以上の世帯の貯蓄現在高は平均2,059万円(7年連続増加・2002年以降で最多)、貯蓄保有世帯の中央値は1,264万円で、差は795万円

・差が生じるのは分布の偏りが原因。平均値を下回る世帯が66.1%と約3分の2を占め、最上位2割の階級は6,113万円

・中央値1,264万円は貯蓄0円の世帯を除いた数字。0円世帯を含めた参考値は1,167万円

・50歳未満は住宅ローンにより純貯蓄額がマイナス。年代を揃えて比較することが重要

・経営者・個人事業主は調査対象の1割弱。法人資産を含めた全体像と、退職金・年金の前提の違いを踏まえて考える

統計の平均値は、自分の家計を測る物差しとしては粗いものです。数字に振り回されるのではなく、自分の年代・働き方・引退時期に合わせて必要額を試算することから始めてみてください。

老後に必要な金額の考え方は、こちらの記事も参考になります。

【2026年最新】30代・40代でFIREに必要な金額はいくら?新NISA・iDeCo活用シミュレーション

小規模企業共済やiDeCo、役員退職金の準備は、掛金の設定額や受取り方によって手取りが大きく変わります。事業の資金繰りとのバランスもあわせて考える必要があるため、顧問税理士に早めに相談し、自社と個人の数字で試算したうえで判断してください。まだ顧問税理士をお持ちでない場合は、ビスカスの税理士無料紹介サービスをご活用ください。

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