100歳以上が初の10万人超え、親100歳・子80歳の「老老相続」で税金はどうなる?税理士が解説

[取材/文責]マネーイズム編集部
プロゴ税理士事務所代表 好川 寛(税理士)

厚生労働省は9月15日、全国の100歳以上の高齢者が10万7,677人になったと発表しました。

前年から7,914人増え、初めて10万人を超えています。このうち女性は9万4,298人で、全体の87.6%を占めます。

100歳の親を相続するのは、70〜80代の子どもです。相続人自身も高齢になる「老老相続」では、相続税や生前対策で何が起きるのでしょうか。税理士に聞きました。

100歳の親を相続するのは70〜80代の子。「老老相続」で起きること

「老老相続」は法律用語ではありませんが、亡くなる人だけでなく、財産を受け継ぐ相続人も高齢である相続を指して使われます。

問題になるのは大きく2つです。1つは、相続人自身の判断能力が低下し、手続きや対策が進まなくなること。もう1つは、最初の相続から短期間で次の相続(子から孫へ)が起きやすくなることです。

意思能力が低下すると、生前贈与や遺産分割が進まないことも

生前贈与や遺言、不動産の売却には、本人の意思能力が必要です。認知症と診断されただけで直ちに意思能力が否定されるわけではありませんが、意思能力が認められない状態になると、節税目的の贈与や資産の組み替えを新たに行うことは難しくなります。

成年後見人を付ければ自由に相続対策を続けられるわけでもありません。成年後見制度は本人の財産を守るための制度なので、相続税対策を目的とした親族への贈与は原則として認められません。

さらに見落とされがちなのが、親より先に子の判断能力が低下するケースです。相続人の1人に意思能力が認められないと遺産分割協議が進まず、後見人の選任を待つ間に相続税の申告期限(10か月)を迎えることがあります。

未分割のまま申告すると、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を当初申告で使えず、いったん多めに納税する場合があります。一定の手続きをしておけば、分割後に更正の請求で精算できます。

今から始める生前贈与は「7年ルール」に注意

亡くなる前の一定期間に受けた暦年贈与は、相続税の計算上、相続財産に加算されます。この期間は3年から7年へ段階的に延長中です。

2026年中に相続が起きた場合はまだ3年ですが、2027年以降は2024年1月1日以後の贈与が順次対象となり、2031年以後の相続では原則7年になります。延長された4年分については、合計100万円まで加算されません。

たとえば2026〜2030年に毎年110万円、計550万円を贈与し、2031年に相続が起きた場合、450万円が相続税の課税価格に加算されるケースがあります。毎年の贈与税がゼロでも、相続税の対象から外れるとは限りません。

こうした場合、相続時精算課税が選択肢になることもあります。2024年から年110万円の基礎控除が設けられ、この範囲の贈与は相続時にも加算されません。

ただし、一度選ぶとその贈与者について暦年課税には戻せません。暦年課税と相続時精算課税のどちらが有利かは、今後の贈与額や財産構成まで含めて判断する必要があります。

また、相続や遺贈(死亡保険金を含む)で財産を取得しない孫への暦年贈与であれば、原則としてこの加算の対象になりません。

10年以内に2回相続が起きたら「相次相続控除」

100歳の親の相続から10年以内に、80代の子が亡くなるケースもあります。このとき使える可能性があるのが「相次相続控除」です。

1回目の相続で子が負担した相続税の一部を、2回目の相続税から差し引く制度で、控除額は2回の相続の財産額や経過年数などによって決まります。

注意したいのは、1回目の相続で配偶者の税額軽減を使い、その配偶者の相続税がゼロだった場合です。その配偶者が数年後に亡くなっても、その人について相次相続控除は生じません。

そのため、1回目の相続税だけを最小にする分け方が、二次相続まで含めて最も有利とは限りません。

今からできるのは「遺言」「判断能力低下への備え」「二次相続の試算」

1つ目は、意思能力があるうちに遺言を作ることです。老老相続では、財産を渡す予定だった子が親より先に亡くなる可能性もあります。「長男が先に亡くなった場合は孫に」といった予備的な内容まで決めておけば、その後の遺産分割を減らせます。

2つ目は、判断能力が低下した後への備えです。任意後見や家族信託を使えば、一定の範囲で財産管理を家族などに任せられます。ただし、家族信託そのものに相続税を下げる効果があるわけではありません。

3つ目は、親から子、子から孫への2回の相続をまとめて試算することです。贈与の方法や配偶者の税額軽減の使い方によって、2回の相続を合わせた税額は変わります。

こんな状況なら早めに税理士に相談を

一つの目安は、財産が相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数。子2人なら4,200万円)を超えそうな場合です。

相続人にも高齢の人がいる、自宅など分けにくい不動産が財産の中心、すでに暦年贈与を続けている、といった家庭も早めに確認しておくとよいでしょう。

過去10年以内に家族の相続があった場合は、相次相続控除を使える可能性がないか確認しておくことも重要です。

まとめ

100歳の親を70〜80代の子が相続する場合、親だけでなく相続人自身の判断能力や、その次の相続まで考える必要があります。

高齢になってからの贈与だけに頼らず、意思能力があるうちに遺言などを整え、子から孫への二次相続まで試算しておくことが重要です。

中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。

プロゴ税理士事務所代表 好川 寛(税理士)

東京国税局で15年にわたり、税務調査・審理・国税不服審判所の業務に従事。非居住者課税の相談実務に精通する。大手YouTuberエージェンシーでの実務経験から、フリーランス・インフルエンサー特有の税務にも明るい。その後、IT企業でのプロダクトマネジメントを経て神奈川県川崎市で独立。現在はクリエイターやスタートアップの税務支援を中心に活動し、税務メディアの記事監修も多数手がける。国税の現場で培った課税庁側の視点を活かした解説を得意とする。

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